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2024-07-09

「令和じゃない熱気がここにあります」名古屋シネマスコーレで映画 『東京ランドマーク』舞台挨拶 藤原季節さん、毎熊克哉さんらが登壇


 

7月6日(土)から19日(金)までシネマスコーレで公開される映画『東京ランドマーク』は、 まだ何者でもない若者たちがもがきながら日々を過ごす模様と、行き場のない寂しさと、無責任な優しさが交差する味わい深い作品です。 撮影から約6年の年月をこえて封切られた映画『東京ランドマーク』は撮影当時25歳の藤原季節さんにとっての初主演映画となります。

名古屋・シネマスコーレでの公開2日目、七夕の日に映画『東京ランドマーク』を作りあげた映像製作ユニット「Engawa Films Project」(通称:エンガワ)から柾賢志さん、 毎熊克哉さん、同じくエンガワで本作の脚本・監督を務めた林知亜季さん、主演の藤原季節さん、大西信満さん、石原滉也さんが上映後の舞台挨拶に登壇しました。シネマスコーレの印象、仲間たちとの絆、今後の展望などを話しました。気温以上の熱気で劇場を包んだ舞台挨拶の模様をレポートします。(取材日:2024年7月7日)

満席・立ち見の客席を前に「シネマスコーレにこのメンバーで立てて嬉しい」「令和じゃない熱気がここにあります」「圧がすごい」とタジタジ

映画『東京ランドマーク』は、 柾賢志さん、毎熊克哉さん、佐藤考哲さん、林知亜季さんの4人で2008年に結成された映像製作ユニット「Engawa Films Project」 が手がけた初の長編作品です。 桜子(鈴木セイナさん)という家出少女を、 コンビニのアルバイトで生活する稔(藤原季節さん)と稔の親友タケ(義山真司さん)が匿うことになったことから始まる不可思議な三人の関係…現代の東京に生きる若者たちが自身が持つ閉塞感から解放されていく様子が描かれています。主演は『his』『くれなずめ』『佐々木、 イン、 マイマイン』『のさりの島』 などで活躍する藤原季節さんがつとめています。本作の撮影は2018年に行われており、当時25歳だった藤原さんにとって初の主演作であるという点で、熱量の高さが感じられる作品です。

映画 『東京ランドマーク』の上映後のスクリーン前に主演の藤原季節さん、共演の大西信満さん、石原滉也さん、 エンガワから林知亜季監督、毎熊克哉さん、柾賢志さんが登壇すると、 シネマスコーレを震わすような拍手が起こり、立ち見が出るほどの盛況ぶりとなった会場内は外の気温以上の熱気に満たされました。

毎熊さんは「僕はスコーレは2回目なのですが、 2回とも出演作でなくて」とおどけつつ、「個人的な付き合いが深いメンバーと撮った作品で、このメンバーとスコーレの舞台挨拶に立てるというのは凄く嬉しいです」と話しました。 藤原さんは「東京では今、あまり立ち見ができないんです。 僕が子供のころは立ち見ができていたので、 今なんかタイムトリップしたような…令和じゃない熱気がここにあります」 というと客席がどっと沸きました。 登壇するとき観客との段差がほぼない状態に一同驚いたそうで、 大西信満(しま)さんはシネマスコーレを作った若松孝二監督を振り返り、「お客さんと同じ目線で話すことを若松監督が大事にしていた」 と言うと、皆大きく頷きながらも「ここまでの距離感はなかなか無い!圧がすごい」とタジタジの様子も見せました。

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「物語を通して対話をする機会をくれました」と藤原季節さん 3時間30分を70分に!決めるのは監督、毎熊さんはズバズバ担当

シネマスコーレのアットホームな雰囲気のせいか大西さんが「毎熊って、大阪の時もそうだったけど地方に行くと訛るよな」と毎熊さんをイジり、 メンバーもそれに乗っておしゃべりするというようなフランクな関係性が見える瞬間がありました。 登壇者の素の表情も見られるのは舞台挨拶の醍醐味。観客たちもニッコリして楽しんでいました。藤原さんは撮影当時について「毎熊さんと林さん(監督)とは長い付き合いで友達として一緒にいました。 そしてタケを演じた(義山)真司とも僕は友達だったけれど、 二人とも状況が落ち込んで先が見えなくて、会えば喧嘩ばかりで危機的だった」と振り返り、「林さんが映画という物語を通して対話をする機会をくれました。この映画で友人と家族と向き合って…物語に集中し過ぎて映画館でかかるとか全国に広がるとかいうイメージができていなかったです」と語りました。 さらに「いざ公開してみると、 自分の好きな人しか居ない空間を自分たちで作り出すことができた。 頑張ってよかった」と力強く話すと、客席から温かい拍手が送られました。

 

編集について聞かれた林監督は「最初に編集で繋いだ時は3時間30分くらいありました。 誰に言われた訳でもないけれど、 70分まで削って良かったと思います」ときっぱり。毎熊さんは「決めるのは監督ですが、 僕はズバズバ担当で”切りましょう”って結構言いました。 捨て難いシーンがたくさんあって、監督と2人で削って、季節や義山(真司)などの思い入れのある場面を切ろうと言うのは結構心苦しかった」と胸の内を明かしました。藤原さんは 「なんで切ったの?というのはありました」と、出演していた友達のシーンがカットになったことを挙げ、 申し訳ないという想いを抱いたと素直な気持ちを述べました。「でもその友人は僕の気持ちを超越していました。市川準監督の”良い監督とは思い入れのあるシーンをカットできる人”と言ったという文章を読んだようで、林監督のことを思い出したらしいです。思い入れがあるからこそ切っていくということを、この作品でやってきたのかなと思います」 とまとめました。

大西さんは「自分と季節の対決シーンが台本にあって、5年とか10年とかに1本くらいの激しいシーンになると設定して演じました」 と言うと、 林監督は 「取りました」 と涼しい顔で答えました。 製作陣と演者のせめぎ合いが感じられる一幕でした。大西さんが 「切る繋がりで、髭を剃るシーンに関連付けて欲しそうな人がいる」と石原滉也さんの顔をチラリ。石原さんは冒頭でF1について話しながら髭を剃る男性を演じています。石原さんは 「『東京ランドマーク』 の始まりで、 F1のことを喋っていて…あれ大丈夫でした?」 と不安顔。観客に問いかけると、首を縦に振る人、拍手する人でいっぱい。毎熊さんは 「あのシーンは編集の最初から最後まで残っていた」と太鼓判を押しました。ホッとした顔の石原さんは 「当時、23才で初めての仕事で、何も分からない中でがむしゃらにやってきて、 今年30才になります。あの頃のテンションで何事もやるのはキツイな、 と思っていたところ” ランドマーク” が動き出して…当時の若かった自分が戻ってきていると思います」と今の心境を話すと客席から 「おぉ~」 と声が上がりました。 石原さんにとっても本作は” ランドマーク” のような存在と言えるでしょう。舞台挨拶中、カメラを手に撮影に徹している柾さんは、お話には加われませんでしたが、 壇上のメンバーにしっかり寄り添い、 メンバーの言葉に表情が緩む姿が印象的でした。

毎熊さん 「縁側みたいなところで観られる映画祭をやりたい」 藤原さん「全国の映画館に行きたい」

藤原さんが「この映画を見たときに、情景が本当に印象に残る映画だと思いました。 皆さんの中でもその情景が残っていて下さったなら嬉しい」と話すと、毎熊さんは「作品に出てくる情景と、観る人各々の情景がリンクするイメージがあって、普遍的な感じです。自分は広島で青春時代を過ごした親友と自転車で二人乗りしている記憶などがくすぐられました」と編集初期のラッシュで感動したことを明かし、「ストーリー重視でなく、情景を押し出したほうが魅力的だと思いました」と述べました。大西さんは「そうなっているね」と同意。林監督は 「情景を撮るときは心象風景を撮るような感じでした。カット割りはあまり考えてなかった」と言うと藤原さんは「鍋のシーンがノーカットなんです。一応他の角度からも撮影していますが、カメラ1個でいいかもって」と述べ、石原さんは「休憩中も、林監督はカメラをまわしていたよね」と当時を振り返りました。

シネマスコーレを舞台にした映画 『青春ジャック 止められるか、 俺たちを2』の話題になり、藤原さんは「井浦新さん演じる若松監督が劇中で”俺の映画を上映する映画館を作る”という台詞があって、これを聞いた瞬間に夢を語っていいんだと泣けてきました。エンガワも映画館を作りたいと言っていましたが、あの夢はどうなったの?」 と毎熊さんに尋ねました。 毎熊さんは 「映画館を作りたいと言うよりは、 自分達で作った映画、 もちろん他の人の作品も集めて、 縁側みたいなところで観られる映画祭をやりたいな」と答え「どうなったの?」 と改めて林監督に振ると林監督は「俺!?誰かしら動いてくれたら」とマイペースに話しました。

結びに藤原さんが「地方の映画館に自分で足を運ぶことのありがたさを感じています。コロナ禍に井浦さんが”ミニシアターパーク”を立ち上げて活動していました。 参加できなかった自分に井浦さんは『今はできなくていい、 いつかやれればいい』と言ってくれました。実際、自分の足で劇場に来て、新さんがやってきたことの意味が分かってきた気がします。 今後は頑張って全国の映画館に行きたいという夢が具体的になってきました」と熱く語ると大きな拍手が鳴り響きました。七夕の日に行われた映画『東京ランドマーク』の舞台挨拶。作品のヒット、二人の願いが叶うことをお客さんも祈っているようでした。そして藤原さんは「13日から 『止められるか、 俺たちを』 『青春ジャック』 が上映されます。 『止め俺』 に僕と、 ここにいる大西信満さん、 毎熊克哉さんが出演しているので、 是非見に来てください。 よろしくお願いします」 とアピールしました。

舞台挨拶のあと、 シネマスコーレ2階でパンフレットを購入した方へのサイン会が行われました。 会場から続く列は路上まで続き大盛況!時間が許す限り観客との交流を楽しんでいました。

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作品概要

映画『東京ランドマーク』

7月6日(土)~19日(金)名古屋・シネマスコーレで公開中

2024年5月18日より東京・新宿 「K’s cinema」 ほかで順次公開

監督・脚本:林 知亜季

出演:藤原季節、 義山真司、 鈴木セイナ、 浅沼ファティ、 石原滉也、 巽よしこ、 西尻幸嗣、 柾賢志、 幸田尚子、 佐藤考哲、 大西信満

配給:Engawa Films Project

2023年製作/79分/日本

配給:Engawa Films Project


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