toggle
2023-04-11

“おもしろうてやがて悲しき”「声に出して笑ってください」映画『銀河鉄道の父』役所広司さんと成島出監督 名古屋舞台挨拶に登壇


 

5月5日(金・祝)より公開となる映画『銀河鉄道の父』は直木賞を受賞した門井慶喜さんの同名小説が原作で、役所広司さん主演で実写映画化された作品です。成島出監督がメガホンをとり、宮沢賢治の生涯を“父親の視線”から捉え、宮沢賢治と父の“親子愛”を描き出し、宮沢賢治役で菅田将暉さん、妹トシ役で森七菜さんが出演しています。

公開に先立ち特別先行上映会が名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマで行われ、上映前の舞台挨拶に役所広司さんと成島出監督が登壇しました。岐阜県恵那市で主な撮影が行われた本作、成島監督が原作と出会った時のことやキャスティングについて話し、役所さんは賢治の父・政次郎について、撮影中の様子や見どころを語りました。和やかな雰囲気で進んだ舞台挨拶の様子をご紹介します。(取材日:2023年4月10日)

「監督も僕も名古屋が大好き!」和やかな雰囲気の舞台挨拶

映画『銀河鉄道の父』は第158回 直木賞を受賞した同名小説が原作で、主演をつとめる役所広司さんは宮沢賢治の父・政次郎を演じています。原作者の門井慶喜さんは大量の宮沢賢治資料の中から父・政次郎について書かれた資料をかき集め、宮沢賢治の生涯を父親の視線を通して綴っています。役所さん演じる父・政次郎は家業の質屋を営む責任感と情熱のある明治の男でありながら、長男・賢治が生まれると子育てに熱心で、子供にはめっぽう甘いチャーミングな父親です。菅田将暉さん演じる長男・賢治は質屋を継ぐことに反発し、学力もないのに学問の道へ進んだり、農業や宗教の道に進み、生活力もなく、親に金を無心するなど、親泣かせの我が道を行くダメ息子。賢くしっかり者で、親バカの父と、ダメ息子の兄が上手くいくように、2人を指南する賢治の妹・トシを森七菜さんが演じています。映画『銀河鉄道の父』は人間味あふれる親バカ・ダメ息子の日々がユーモアたっぷりに描かれ、親子の衝突や家族の絆に共感し、底なしの“親子愛”を堪能できる映画です。

公開を前に、名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマで特別先行上映会が行われ、役所広司さんと成島出監督が多くの観客が集まった会場に登場すると、大きな拍手が起きました。成島監督が撮影現場でスタッフやキャストにプレゼントしたTシャツを着ていたことから役所さんが「僕も着て来ればよかった」と話すなど、和やかな雰囲気で舞台挨拶がスタート。

役所さんと成島監督がタッグを組んだ映画『ファミリア』(2023年公開)は主に愛知県豊田市で撮影していて、役所さんは「監督も僕も名古屋が大好き!」と伝え、成島監督は『聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実』(2011年公開)について「明治村でずっと撮影していて、県庁や市役所でも撮影をしました」と名古屋との縁を話しました。

役所広司さん演じる賢治の父「厳しい顔してますけど隙だらけ」「ユーモアや愛嬌がでている」

映画『銀河鉄道の父』の制作のきっかけとして成島監督は「原作を本屋さんで手に取って読んだらすごく面白くて、政次郎は厳しい人だという定説でしたが、この原作は全く逆で、親バカで育メンのはしりのようなイメージでユーモラスでチャーミング。これは映画にしたいと思いました」と語りました。役所さんは「(宮沢賢治について)「銀河鉄道の夜」と「雨ニモマケズ」ぐらいしか知らなかったんですが、この映画に携わって原作とかいろんな資料を読ませてもらって、宮沢賢治の文学の素晴らしさをやっとわかるようになったと感じてます」と話しました。

役所さんは賢治の父・政次郎について「厳しい顔してますけど実は隙だらけの親父で、妻や子供たちから心配されていて、ユーモアや愛嬌がでていると思います」と伝えました。成島監督は「原作を読んだ時に、お父さんは役所さん、息子は菅田さん、というのは最初にイメージしました。次に(妹役の)森七菜さんが決まって、理想的なキャスティングができて、皆さんの奏でるハーモニーが素晴らしくて、幸せな現場でした」と振り返りました。

菅田将暉さんと初共演の役所広司さん「お互いに花巻弁の勉強をしていました」

初共演の菅田将暉さんについて聞かれた役所さんは「お互いに花巻弁の勉強をしていました」と休憩中の様子を紹介し、「家族そろって座って待っているうちに、家族の雰囲気が出来上がってきた気がします」と話しました。役所さんと菅田さんによる宮沢親子について成島監督は「大ゲンカもしますが、晩年に和解していってほのぼのした親子になる、この振り幅はこの2人だからこそだと感じました」と初共演だった2人を絶賛しました。

賢治の妹・トシ演じるを森七菜さんについて「一番しっかりしている影の大黒柱」と言われていることについて話題になり、役所さんは「彼女は自分にその要素はないと言っていますが、実際しっかりしているんです。監督が芯の強さを見抜いてキャスティングしたのでは」と撮影中に感じたことを教えてくれました。成島監督は賢治の悩みやトシの考えは今の若者の気持ちに通じるところがあると感じていると言い「(森さんに)時代劇と思わないで演じてほしいと話しました」と教えてくれました。

岐阜県恵那での撮影「地元の婦人会の皆さんが“お帰りなさい”って」岩村町からの観客も

宮沢賢治が過ごした岩手県花巻市の町並みに近い岐阜県恵那市で撮影が行われたことが話題になり、役所さんは映画『キツツキと雨』(2012年公開・沖田修一監督)の撮影以来だったと言い「地元の婦人会の皆さんが“お帰りなさい”って垂れ幕を作ってくれて、撮影中も差し入れをしてもらったり、お世話になりました」と話しました。客席には「岩村から来ました!」と手を挙げている方もいて、役所さんも成島監督も「お世話になりました」と御礼の気持ちを伝えていました。

映画『銀河鉄道の父』は2022年5月から6月にかけて恵那市岩村町(岩村町本通り、木村邸、勝川家他)、明智町(さつき旅館、逓信資料館)で主な撮影が行われています。役所さんはロケ地について「本当に素晴らしいところです」と改めて言葉にし、成島監督は「古い町並みの映画を撮るのが大変なので、(ロケ地の恵那市の方に)日本映画の宝になりますから50年、100年保存していれば、必ず多くの撮影隊が来ると思いますと伝えました」と話しました。

また成島監督は病院のシーンは名古屋市内で撮影したことも話しました。撮影が行われたのは、名古屋市千種区城山町の城山八幡宮境内に残っている旧昭和塾堂だそうです。旧昭和塾堂は1928年に城山天満宮の境内に愛知県が建設した建物で、1970年から2017年まで愛知学院大学大学院歯学部研究棟として使われていたようです。また、旧昭和塾堂は織田信長の父である織田信秀が築き、弟の織田信行(信勝)の居城となった末森城の二の丸跡に建てられています。様々な歴史のある場所で撮影が行われたことがわかりました。旧昭和塾堂(名古屋市ホームページ・千種区史跡散策路より)城山八幡宮 昭和塾堂サイト

 

〈関連記事〉

映画『三度目の殺人』の撮影地・名古屋市役所に行ってみました(極秘撮影の理由と撮影地決定の経緯)

映画『僕と彼女とラリーと』名古屋の完成披露上映会に森崎ウィンさん、田中俊介さんが登壇

「大きな転機は20歳の上京」映画『僕と彼女とラリーと』深川麻衣さんが愛知県先行公開記念舞台挨拶に登壇

「宮沢家の家族がとてもいいアンサンブル」「庭先でお茶を飲みながら話すシーンが幸せな瞬間」

舞台挨拶も終盤になり、見どころを聞かれた役所さんは「観る前の皆さんの前で、つい内容をしゃべってしまう事があって、怒られるんです」と笑顔になり「宮沢家の家族がとてもいいアンサンブルで、それぞれの役割を、それぞれがちゃんと果たしていて、親も子もお互いのことを大切にしている、愛情や絆が表現されています」と話しました。さらに役所さんは「後半になりますが、賢治がやっと農業と文筆活動で落ち着いて、賢治と父親が庭先でお茶を飲みながら話すシーンが父親にとっても賢治にとっても幸せな瞬間だったのではないかなと思います」と具体的なシーンをあげて語りました。

成島監督は様々な年代の観客が集まった客席に向けて「リラックスして笑ってほしいです。“泣けた”だけでなく、”笑えた”という感想もお願いしたいです」と伝えました。ユーモア溢れるシーンも多くあることを紹介し、「偉人モノを作るつもりはなくて、みんなに通じる家族の物語なので、笑って泣いてもらえれば」と話しました。役所さんも「(政次郎が)みんなに振り回されて、“おもしろうてやがて悲しき”という王道で、よくできた話です」と松尾芭蕉が岐阜の長良川で鵜飼を見学して詠んだといわれる「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」になぞらえて話し「強要しませんが、おかしかったらどうぞ声に出して笑ってください」と成島監督の発言を後押ししました。

作品概要

映画『銀河鉄道の父』

5月5日(金・祝)より全国公開

<STORY>

宮沢賢治の父・宮沢政次郎。父の代から富裕な質屋であり、長男である賢治は、本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は適当な理由をつけてはそれを拒む。
学校卒業後は、農業や人造宝石、宗教と我が道を行く賢治。政次郎は厳格な父親であろうと努めるも、賢治のためなら、とつい甘やかしてしまう。やがて、妹・トシの病気を機に、賢治は筆を執るも―。

出演:役所広司 / 菅田将暉 森七菜 豊田裕大 / 坂井真紀 / 田中泯

監督:成島出

原作 門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社文庫)

脚本 坂口理子

音楽 海田庄吾

主題歌:いきものがかり「STAR」(ソニー・ミュージックレーベルズ)

製作:木下グループ

制作プロダクション:キノフィルムズ / ツインズジャパン

配給:キノフィルムズ

助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

©2022「銀河鉄道の父」製作委員会

Twitter:@Ginga_Movie2023

公式サイト:ginga-movie.com


関連記事