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2022-05-10

深田晃司監督が名古屋で小中高校生に映画の魅力を伝える「メ~テレシネマ映画祭presents ティーン映画ワークショップ」レポート


 

メ~テレ(名古屋テレビ放送)は、2022年4月に開局60周年を迎えたことを記念し、映画をより地元の人々に親しんでもらおうと「メ~テレ60周年 メ~テレシネマ映画祭2022」を開催、5月3日~5日には、深田晃司監督による「メ~テレシネマ映画祭presents ティーン映画ワークショップ」が行われました。3日の小中学生に向けた「映画鑑賞セミナー」の司会をつとめた元メ~テレのアナウンサーで、映画ライターやコラムニストとして活動している神取恭子さんが、「映画鑑賞セミナー」と4日、5日に行われた高校生対象の「映画制作ワークショップ」の様子をレポートしてくれました。

5月20日~26日まで伏見ミリオン座で行われる、メ~テレがこれまでに製作した劇場映画の一部を特別上映する「メ~テレシネマ映画祭2022」の内容や2022年度に公開が予定されている「メ~テレ60周年作品」3作品もご紹介します。

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小中学生に向けた「映画鑑賞セミナー」で語られた“フィードバック”の大切さ

5月3日に名古屋市中区の東別院ホールで行われた「映画鑑賞セミナー」には小中学生(保護者含む)83人が参加しました。午前の小学生の部ではフランスのアニメ映画『マロナの幻想的な物語』、午後の中学生の部ではチャールズ・チャップリンの『モダン・タイムス』が上映されました。深田晃司監督が講師となって鑑賞前の事前学習や鑑賞後の学習会も行われ、「映画の楽しさを知ろう!」をテーマに映画の歴史や映画鑑賞のポイントがレクチャーされました。

映画上映前の事前学習では「映画はいつごろから始まったのか?」「映画の元になったものは何か?」「最初に映画を上映したのは誰か?」など、深田監督からのクイズに参加者が積極的に回答する姿が見られました。また中学生の部では、カメラの原理を知ってもらうために段ボール箱で作った「カメラ・オブスキュラ」を使用。「カメラ・オブスキュラ」とは、カメラが発明されるより前、外の風景を部屋の中に映し出すために使われていた道具で、保護者を含めた参加者たちは東別院ホールから、隣のメ~テレ本社内の多目的ホールに移動して、思い思いに段ボール箱をのぞき込み、カメラの元となった仕組みを体験しました。上映後の学習会では、フランスの学校で行われている映画鑑賞教育を参考に「鑑賞ノート」を使用して映画鑑賞のポイントを学びました。

小学生の部の『マロナの幻想的な物語り』では、主人公のマロナの名前の変遷や、場面の並べ替え、さらに劇中の画風やそれらに関連するモダンアートについての解説もあり、最後の質疑応答では画の表現に関する疑問を投げかける参加者が多く見られました。中学生の部の『モダン・タイムス』では、サイレント映画からトーキー映画への移り変わりや、高度成長期、大量生産・大量消費の時代へと変化する中で、喜劇役者としてチャップリンはどのようなことにこだわったのか、また場面展開や音楽に込められたメッセージなど、午前中の小学生に向けた話よりも、さらに深い内容の鑑賞ポイントが伝えられました。

参加者の中で関心が高かったのは、“フィードバック”の大切さについて。常日頃、私たちは同じものを見ているつもりでも、人によってそれぞれ見ているもの(捉え方)が違う。自分の見えている世界を表現・発信することが重要であると「モダン・タイムス」を例に分かりやすく解説していました。“フィードバック”することで、他人の見ている世界を理解することができ、自分の苦しみなども共感してもらえるかもしれません。「人種問題やジェンダー問題など、“フィードバック”してきた歴史により、法律が変わり、世界が変わるきっかけになった」と、具体的な例を挙げ、中学生にもわかりやすい言葉で伝えていました。

20人の高校生が参加「映画制作ワークショップ」深田晃司監督も高校生の脚本を撮影

5月4日、5日にメ~テレ社内で行われた高校生を対象とした「映画制作ワークショップ」は深田晃司監督から映画制作の過程を学びながら、実際にグループで簡単な撮影機材を使用して短編映画制作を行うという充実した内容。日本を代表する映画監督に直接指導を仰げるとあって、2日間で合計20人の映画好きの高校生が集まりました。中には“映画甲子園に参加したことがある”“すでに役者経験がある”といった、将来、映画監督・役者を志望している意欲的な学生の姿もありました。

各日、朝9時から夕方6時まで終日行われた「映画制作ワークショップ」では参加者がA~Cの3班に分けられ、脚本制作・芝居・撮影のすべてを体験しました。大まかな流れは脚本制作①(シチュエーション設定・ロケハン)、脚本制作②(セリフ・構成作り)、脚本制作③(芝居リハ)、撮影準備・発表、芝居・撮影(A班芝居・B班撮影、B班芝居・C班撮影、C班芝居・A班撮影)、深田監督撮影、上映。これを1日で?!と驚きますが、適宜休憩や換気時間を設けながら行われました。

今回の映画制作は「75文字演劇」、1セリフ5文字×15セリフ以内、テーマは「別れ」、必ず1人以上が(画面の)外にはける、1シーン1カット、タイトルをつけるというルールがありました。脚本から撮影まで、すべてを1日で終わらせるため“ある程度の制限があった方が脚本作りなどに迷わなくていい”という意図があるそうですが、“1セリフ5文字”というのが憎い。“ありがとう”“さようなら”“げんきでね”“がんばって”など、5文字で表現できる感情・シチュエーションは結構たくさんあり、自分の中から効果的な5文字の言葉を絞り出すのも楽しそうです。

他のワークショップでは、4文字、という場合もあると深田監督が教えてくれました。4文字はさらに語彙力と構成力が必要になりそうです。そして「別れ」というテーマについて、ストレートに“卒業”を描く班もあれば、すぐには理解できない意外な「別れ」を表現した班もあり、5月3日の「映画鑑賞セミナー」で深田監督が解説してくれた“フィードバック”について改めて考えることができました。

撮影場所として使えるのは、メ~テレ社内の3カ所。1階ロビーおよび多目的ホール「ウルフィモフモフパラダイス」と6階カフェテリアのテラス、7階屋上テラス。それぞれの班が脚本に合う場所をロケハンで選びました。7階と6階の高低差を利用した班、一番主張が強く使いづらそうな「ウルフィモフモフパラダイス」をうまく活用した班もありました。

撮影で学生たちを悩ませたのは、1シーン1カットの難しさ。脚本の上では生き生きと動いていた登場人物も、実際にロケ現場に立ちカメラを覗いてみると、想像通りにはいかないことを実感していました。また、今回のワークショップでは、物語を作成した班が演者として芝居をし、別の班が監督やカメラマンを担当するため、それぞれの班の意見を聴きつつ、共によりよい良いゴールを目指すためディスカッションをしていました。映画制作におけるコミュニケーションの重要性も実感できたのではないでしょうか。

機材の使い方などはもちろんレクチャーしますが、基本的に深田監督も周りのスタッフも手助けはしません。学生たちのやり取りを見守り、煮詰まっていて困難そうだと判断した場合にのみヒントを与えていました。

さらに高校生の作った脚本を深田監督が撮影したらどうなるのかを実際にやって見せてくれました。深田監督は撮影の前に、動きやセリフについてしっかりと演技指導(演出)を行っていました。すべての作品で学生たちが一瞬で役者になりました。出来上がった作品は短いながらも深田監督作品特有の不穏で胸をざわつかせる雰囲気があり、さすがとしか言いようがなかったです。世界を魅了する深田監督の演出を間近で見られるのはもちろん、深田監督の目線で描くと、脚本の色彩はどのように変わるのか、参加した学生の皆さんは大きな刺激を受けたことでしょう。

高校生が書いた、よく言えばフレッシュな、別の言い方をすれば粗削りな脚本を、その場でプロの作品に仕上げなければならないのは、世界基準の演出力を持ってしても、刺激的な時間だったのかもしれません。深田監督も「瞬発力が鍛えられて良かった」と感想を話してくれました。上映会では高校生の作品と深田監督の撮影した作品を観て、登場人物の配置、カメラ位置の違いなどで、同じストーリーでも芸術的な映像に変わることを感じられました。

今回、元メ~テレのアナウンサーで、映画ライターやコラムニストとして活動している神取恭子さんが「メ~テレシネマ映画祭presents ティーン映画ワークショップ」の様子を写真とレポートを届けてくれました。3日の小中学生に向けた「映画鑑賞セミナー」では司会をつとめた神取さん、素敵なレポートをありがとうございました。

 

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深田監督から映画を観ること、映画を作ることの魅力を直接受け取ることができ、大きな刺激を受けた方も多いのではないでしょうか?この出会いが名古屋発の映画人を生み出し、名古屋の映画文化がさらに広がっていくことを心から願っております。今後もこのような機会が名古屋で開催されることを強く希望します。メ~テレさん!ぜひ、よろしくお願いします。

5/20~26 伏見ミリオン座で「メ~テレ60周年 メ~テレシネマ映画祭2022」

メ~テレは世界に発信する日本のエンターテイメントとして、劇場映画の製作に積極的に取り組んできました。メ~テレがこれまでに製作した劇場映画の一部を伏見ミリオン座で1週間限定で特別上映します。河瀨直美監督、樹木希林さん主演で大ヒットを記録した2015年公開の『あん』、『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督による2018年公開の『寝ても覚めても』、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した深田晃司監督による2016年公開の『淵に立つ』など、多くの作品が再上映されます。カンヌ国際映画祭をはじめとする複数の映画祭で評価を受けた作品をこの機会にぜひ大スクリーンでご覧ください。

イベント名:「メ~テレ60周年 メ~テレシネマ映画祭2022」

日時:5月20日(金)~5月26日(木)

会場:伏見ミリオン座(名古屋・中区錦二丁目15-5)

上映作品:「あん」(2015) 「淵に立つ」(2016) 「勝手にふるえてろ」(2017)「寝ても覚めても」(2018) 「愛がなんだ」(2019)「his」「ホテルローヤル」「本気のしるし(TVドラマ再編集劇場版)」(2020)

入場料:1,300円 ※価格は全て税込

5/21(土) メ〜テレシネマ映画祭 in 名古屋『ホテルローヤル』武正晴監督トークイベント

日時:5月21日(土) 9:00~上映(上映後にトークイベント)

内容:メ〜テレシネマ映画祭 in 名古屋トークイベント 上映後に武正晴監督登壇

場所:伏見ミリオン座

5/21(土) メ〜テレシネマ映画祭 in 名古屋『本気のしるし≪TVドラマ再編集劇場版≫』深田晃司監督トークイベント

日時:5月21日(土) 14:10~上映(上映後にトークイベント)

内容:メ〜テレシネマ映画祭 in 名古屋トークイベント 上映後に深田晃司監督登壇

場所:伏見ミリオン座

5/22(日) メ〜テレシネマ映画祭 in 名古屋『淵に立つ』深田晃司監督トークイベント

日時:5月22日(日) 11:35~上映(上映後にトークイベント)

内容:メ〜テレシネマ映画祭 in 名古屋トークイベント 上映後に深田晃司監督登壇

場所:伏見ミリオン座

5/22(日) メ〜テレシネマ映画祭 in 名古屋『あん』ドリアン助川さんトークイベント

日時:5月22日(日) 14:05~上映(上映後にトークイベント)

内容:メ〜テレシネマ映画祭 in 名古屋トークイベント 上映後に原作者・ドリアン助川さん登壇

場所:伏見ミリオン座

5/25(水)『わたし達はおとな』舞台挨拶付き先行上映

日時:5月25日(水) 18:35の回

内容:主演の木竜麻生さんが登壇 6月10日公開の『わたし達はおとな』先行上映 上映前に舞台挨拶

場所:伏見ミリオン座

映画『寝ても覚めても』濱口竜介監督・東出昌大さんに名古屋でインタビュー

映画『愛がなんだ』岸井ゆきのさん、今泉力哉監督 名古屋での公開初日舞台挨拶&インタビュー

映画『his』宮沢氷魚さん・藤原季節さんに名古屋でインタビュー

映画『勝手にふるえてろ』主演の松岡茉優さんが名古屋で舞台挨拶!

ラブホテルを舞台に繰り広げられる切ない人間模様 波瑠さん主演映画『ホテルローヤル』武正晴監督に名古屋でインタビュー

アンバサダー松井玲奈が語る!『メ~テレシネマ映画祭2022』の魅力【#1】

「メ~テレシネマ映画祭2022」のアンバサダーに愛知県出身の松井玲奈さんが就任しました。松井さんは「ノットヒロインムービーズ」の第2弾『よだかの片想い』(2022年9月16日全国公開)に主演されています。

映画単独初主演の松井玲奈さんが映画『幕が下りたら会いましょう』名古屋舞台挨拶に前田聖来監督と登壇

『続・ゾッキ』を期待! 竹中直人監督、山田孝之監督、齊藤工監督、豊橋出身・松井玲奈さんも登壇 映画『ゾッキ』愛知県横断舞台挨拶

2022年度には「メ~テレ60周年作品」として3作品が公開決定!

2022年度には「メ~テレ60周年作品」として、以下の3作品の公開が決定しています。メ~テレと制作会社ダブがタッグを組み、“へたくそだけど私らしく生きる”等身大の女性のリアルをつむぐ映画シリーズ「ノットヒロインムービーズ」の第1弾『わたし達はおとな』、第2弾『よだかの片想い』に加え、深田晃司監督の9本目の長編映画では木村文乃さんが主演をつとめます。

『わたし達はおとな』(2022年6月10日全国公開)

『わたし達はおとな』 ©2022「わたし達はおとな」製作委員会

「ノットヒロインムービーズ」第1弾となる作品。主演は、『菊とギロチン』『鈴木家の嘘』で多くの映画賞を受賞し、その後、幅広い分野で活躍する女優、木竜麻生さん。共演は、映画『his』『くれなずめ』などに出演し、唯一無二の存在感と演技力を持つ藤原季節さん。メガホンをとるのは、20代初となる「市川森一脚本賞」を今年受賞した加藤拓也監督。オリジナル脚本による初めての長編映画です。脆く崩れやすい日常、“少女”から“女性”になる過程、甘く切ない恋のほろ苦さや歯がゆさ、葛藤を描いた、等身大の恋愛映画です。

『よだかの片想い』(2022年9月16日全国公開)

『よだかの片想い』 ©2021映画「よだかの片想い」製作委員会

「ノットヒロインムービーズ」第2弾となる作品。直木賞作家・島本理生の恋愛小説「よだかの片想い」を、新鋭・安川有果監督が映画化。主演は松井玲奈。公開を前に第34回東京国際映画祭「アジアの未来」部門ノミネートされました。幼い頃から顔にあるアザのせいで恋や遊びを諦めて生きてきた主人公アイコが、人生初めての初恋を通して成長する姿を瑞々しく描きました。

「ノットヒロインムービーズ」では、次世代を担う映画監督と俳優たちを組み合わせ、それぞれの感覚と才能を思う存分発揮できる場を生み出し、輩出するプロジェクトです。何ドンもされない。胸キュンもしない。恋とか愛とか生きるとか自意識とか、考えすぎてこんがらがって。それでももがいて生きている“ヒロイン”になりきれない“ヒロイン”たちの物語を描きます。

『LOVE LIFE』(2022年秋・・・公開予定)

『LOVE LIFE』 ©2022映画「LOVE LIFE」製作委員会 &COMME DES CINEMAS

主演は木村文乃さん。日本映画界を支える深田晃司監督の9本目の長編映画。構想20年を経てついに完成させた人間ドラマ。物語の着想のきっかけとなったのは、日本を代表するミュージシャン・矢野顕子の「LOVE LIFE」。「ひとつとして、同じ形をした愛は無い」と歌った名曲を、深田監督が「愛」と「人生」に向き合う一組の夫婦の物語として完成させました。

 


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