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2020-11-05

ラブホテルを舞台に繰り広げられる切ない人間模様 波瑠さん主演映画『ホテルローヤル』武正晴監督に名古屋でインタビュー


 

11月13日公開の映画『ホテルローヤル』は発行部数100万冊を超える桜木紫乃さんの同名小説が原作で、『百円の恋』の武正晴さんが監督をつとめています。波瑠さん演じる親から引き継いだラブホテルで働く主人公があるできごとを契機に新たな世界に飛び出すまでの物語で、松山ケンイチさん、安田顕さん、伊藤沙莉さん、岡山天音さんなどの魅力的なキャストによるそれぞれの切ない人間模様も魅力です。

今年7月に『銃2020』でもインタビューに応えてくれた愛知県出身の武監督が多忙な中、再び名古屋でインタビューに応じてくれました。出演した俳優・女優への信頼や、撮影秘話などを語ってくれました。(取材日:2020年10月6日)

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波瑠さんと松山ケンイチさんのラブホテルでの共演シーンは…

映画『ホテルローヤル』は北海道の釧路湿原を望むラブホテルを訪れる様々なカップルや、そこで働く人々の人間模様を描いていて、物語の舞台である親が建てたラブホテルで葛藤を抱えながら働く主人公を波瑠さんが好演しています。主人公の眼鏡姿は原作者の桜木さんのイメージと重ね、波瑠さん自身も眼鏡が似合うことから決まったそうです。

彼女が原作を読んでいたことを知った武監督は「演技は波瑠さんに任せました」と話しました。松山ケンイチさんが演じるアダルトグッズを扱う出入り業者に想いを打ち明けてからのシーンは「(原作でも)男としてはドキっとするような、男を突き上げるようなことが描かれ、作者の筆が一番立っていると感じた」と武監督が話すほど大切な場面です。

映画では長回しで撮影されおり「あのシーンをきっちり演じられるのはさすが」と波瑠さんを絶賛し「キャスティングの勝利です」という言葉も残しています。原作者の桜木さんも「強い北海道女そのもの」と主人公を体現する波瑠さんに太鼓判を押していました。

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ラブホテルの部屋は「もうひとつの主人公」 北海道の四季にこだわった作品

映画の原作である小説『ホテルローヤル』はホテルを経営する家族や出入りの業者、スタッフやお客など立場が異なりつつも、それぞれの人間関係を紡がれていくオムニバス作品です。小説を読んだ武監督は「素敵な作品だから、原作を好きな人をがっかりさせたくない」と小説に沿ったものを作ろうと決めていたそうです。映画化にあたり武監督は「作品中の人々を一本に繋げるためには203号室が必要で、この部屋はもう一つの主人公になりうると考えました」と脚本制作について語りました。

監督は原作者の桜木さんの全作品を読み「桜木さんは北海道に暮らし続け、釧路にこだわっています。そのこだわりに面白さを感じたし、原作のよさを表したくて北海道で全編撮影することになりました」と教えてくれました。通常とは異なり北海道出身のスタッフを配置したことで、雪が降るタイミングや木枯らしの音などオリジナリティが出せたと話し「ラブホテルの閉鎖的な部屋のシーンが多い中で、どのように四季をあらわすか、年月や朝昼夜をどう見せるかも映画的なチャレンジだった」と語ってくれました。武監督のこだわりが詰まった北海道の四季をぜひスクリーンでご覧ください。

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原作にはない主人公の部屋から生まれた台詞と原風景 エンドロールまで楽しんで

映画には釧路湿原が一望できる主人公の部屋が登場します。この部屋でのシーンは原作にはなく、映画ならではのセットとして作られました。武監督が「主人公の部屋はどこだろう」とスタッフと議論して「ラブホテルを作った親父が愛する娘のために用意した部屋は、見晴らしが良いのではないか」という着想から安田顕さんが演じる父親の「“この風景、最高だろ”という台詞」が生まれ、部屋からの風景を「主人公の原風景として留めておきたかった」ことを明かしました。設定が決まり、控え室として使っていた建物の廊下に大きな窓があることを偶然見つけたスタッフが「これ、眺めの良い部屋になりませんか?」と廊下に柱を立ててドアをつけてセットが作られたそうです。

その大きな窓に釧路湿原のオールシーズンの風景をCGではめ込むアイデアが浮かび、主人公の原風景が形になりました。今まで以上にCGを使ったことが監督やスタッフにとっても挑戦だったと述べました。主人公の部屋からホテルスタッフの事務所を結ぶ階段などのホテル全体のイメージを広げ設計図を考えていくことも「原作にはない、僕らの発見として重要な場所は主人公の部屋でしたね。美術の技術的な苦労をしたけれど上手くいきました」と自信の表情を見せました。

また、武監督は「エンドロールまで演出するのがスタイルで、いわばカーテンコールみたいなものです」と話し、今作のエンドロールも愛おしい登場人物たちをふり返って、映画の余韻を楽しめるものになっています。また主題歌は武監督が当初から1978年発売の柴田まゆみさんの名曲「白いページの中に」をイメージしていたそうで、エンドロールで流れるLeolaさんがカバーした同曲の歌声は歌詞ともに胸に響きます。

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作品概要

映画『ホテルローヤル』

11月13日(金)よりセンチュリーシネマほかにて公開

原作:桜木紫乃『ホテルローヤル』(集英社文庫)

監督:武正晴

脚本:清水友佳子(NHK連続テレビ小説『エール』)

音楽:富貴晴美
出演:波瑠、松山ケンイチ、安田顕、余貴美子、伊藤沙莉、岡山天音ほか

配給:ファントム・フィルム

2020/日本/カラー/5・1ch/104分/シネスコ/

©桜木柴乃/集英社 ©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会


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