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2019-03-18

映画『きばいやんせ!私』武正晴監督、坂田聡さん、眼鏡太郎さん登壇の名古屋舞台挨拶レポート&インタビュー


 

3月9日から全国で公開中の映画『きばいやんせ!私』は九州本島最南端の町・南大隅町に伝わる伝統的な祭りの復活と夏帆さん扮する不倫騒動で左遷された女子アナウンサーが仕事へのやる気を取り戻していくユーモアあふれるヒューマンドラマです。『百円の恋』の武正晴監督と脚本家の足立紳さんが再ダッグを組んだ作品で南大隅町で実際に行われている「御崎祭り」を題材にしています。

町役場の担当者を演じた坂田聡さんと武正晴監督が名古屋市内で行われた上映後の舞台挨拶に登壇して撮影中のエピソードなどを話し、サプライズゲストとして眼鏡太郎さんも登場しました。舞台挨拶後には3人が取材に応じ、主演の夏帆さんや太賀さんについて、方言のセリフの難しさについて語りました。(取材日:2019年3月17日)

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九州本島最南端の町・南大隅町の「御崎祭り」を映画で復活

映画『きばいやんせ!私』は九州本島最南端の町・南大隅町で1300年ほどの歴史を持つ「御崎祭り」が題材となっています。2日間に渡って御神体を担ぎながら約20kmを巡幸するという壮大な行事で、映画では役者たちが神輿を担いで撮影に挑みました。名古屋市中区のセンチュリーシネマで行われた映画上映後の舞台挨拶に町役場の担当者を演じた坂田聡さんと武正晴監督が登壇しました。坂田さんは「日本男児として恥ずかしいんですけど神輿を担いだことがなくて、(撮影中は)肩が痛かったです。ツルツル滑るんですよ。力の入れ具合がわからなくて、神輿を担ぎながら坂道を降りるのが難しかったです」と撮影を振り返りました。武監督は「地元の人みんなが(撮影に)参加してくれて(映画の)撮影をしているというより、祭りの中にたまたま我々がいるという感じでした」と話しました。

どんぴら坂と言われる狭く急な坂道を神輿を担いで下りるシーンについて、武監督は「だんだん、みんなカメラを忘れていましたね。坂田さんは普通の顔になっていましたよ」と撮影の過酷さを語り、坂田さんは「後ろの眼(鏡太郎)さんと背(の高さ)が全然違うんで、同じ身長じゃないと力が分散されないんですよ」と話すと場内にトランペットの音が聞こえ、劇中と同じように眼鏡太郎さんがトランペットで「アメイジング・グレイス」を吹きながらサプライズで登場しました。

眼さんは「(背が低く)神輿に届かないから、僕の分を坂田さんが担いでくれて本当に申し訳なくて」と話題になっていたシーンについての気持ちを口にしました。坂田さんが「(ちゃんと担いでいないのに)辛そうな顔してるのが本当にむかついて!」と笑いながら話すと、このシーンの眼さんに注目して映画を鑑賞したという武監督は「確かに担いでないのに辛そうな芝居をしてるんですよ!一緒にやった人は相当むっとしてるんじゃないかなぁと思いました」と眼さんに詰め寄っていました。

また、かなり危険な撮影だったため、鹿児島弁を話す地元の青年役の太賀さんも標準語になってしまっていたと武監督が明かしました。

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南大隅町のおおらかさと町の人々の協力に助けられた

愛知県知多市出身の武監督はこれまで地元の祭りに積極的に参加してこなかったそうで「映画をきっかけに(祭りに)一緒に参加させてもらって本当にありがたかったなと思いますね」と述べました。さらに「坂の階段らしきものは、江戸時代から続いている足場で先人が神輿の足の運びを知らせるための石が置いてあるんですよ。神輿を担がせることによって昔の人が次の人に向けて何か知らているんです」と話し「お祭りは大人の世界に若者が入っていく通過儀礼として必要なんですよ」と各地方に伝わる祭りの意義を語りました。

武監督は「(シナリオハンティングへ行った脚本家の足立紳さんから)お神輿をトラックで運んでいたと聞き、どうしようか悩んで、そのまま映画にしてしまおうということになりました」と映画の企画のスタートを教えてくれました。実際の場所で、実在する祭りを題材にしているので「一番の問題は町の人が怒りだすのではないかと思っていました」と当初の不安を口にし「クソ祭りとかクソ田舎というセリフが全部OKになったり、女人禁制で1600年続いた神輿に女の人が触っていいのかも心配でしたが、あっさりOKが出たことにびっくりしました」と南大隅町のおおらかさに驚いたと語りました。俳優が参加する映画の撮影は実際の祭りとは別に行っており、町の人々の協力に助けられたと話しました。

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舞台挨拶後のインタビューで主演の夏帆さんに感謝!

映画『きばいやんせ!私』は夏帆さん演じる不倫騒動で左遷されて投げやりな日常を送る女子アナウンサーが祭りの取材を通じて、仕事への向き合い方が変わっていく物語です。主人公は酒癖が悪く、奔放なところもあり、スタッフに悪態をつくなど、かなりパンチの効いたキャラクターです。武監督は「主人公が性格悪いと映画が作りやすいんです」と話し「果たしてこのヒロインをやってくれる方がいるのだろうか」と心配していたそうですが「夏帆さんが『こういう役、やってみたかった』とすぐに決まったので、ありがたかったです」と話しました。

劇中には主人公のベットシーンや急いでパンツを履くシーンなどもあります。武監督は「普通の女優さんだったら『脚本家と監督、ちょっと、』と事務所に呼ばれて、台本を書き直したり怒られたりするところも果敢にチャレンジしてくれました」と夏帆さんへの感謝の気持ちを述べていました。「映画のスタートの時点で、微妙なキャラクターのほうが、映画が終わった後で、ちょっとマトモになるのではないかと希望がみえるのではないかと思います」と映画のキャラクターの作り方についての考えを話しました。主人公は「御崎祭り」の取材を通して、仕事への向き合い方が変わっていくのですが、武監督は「我々自身がなぜこの仕事をしているのかを主人公と一緒に気づかせてもらった」と語りました。

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太賀さんを「御崎祭り」の跡継ぎに!?見事な鉾竿に「俳優は凄い!」

町役場の担当者役の坂田さんは劇中で見事な鹿児島弁を披露しています。坂田さんは「南大隅町の方々に喜んでいただくというのが一番なので、方言についても丁寧に向き合いました」と語り、「空いている時間にふらふら歩いて地元の方にご挨拶しているうちに、大歓迎されまして」と南大隅町の方々とコミュニケーションを大切にしていたと話しました。眼さんが「坂田さん、地元の方に凄く人気がありましたよね」と言うと、坂田さんは「(町の方に)撮影が終わった後もずっとここに居ろと言われました」と笑って話しました。役を越えて、本当の役場の人だと思われていたのかもしれないですね。セリフのない眼さんは「方言はみなさん凄く苦労されていて、坂田さんも『今日は来ないでくれ』と部屋にこもって練習される日もありました」と宿泊場所での様子を話し、坂田さんが練習の日は方言のセリフが少ない宇野祥平さんと飲んでいましたと明かしました。

坂田さんは「限られた時間でイントネーションなどで近づけていくんですけど、地元の人にはなれないんですよ」と完璧な方言ではないと話しました。太賀さんも鹿児島弁で地元の青年を演じているのですが「太賀くんと話していたのは方言は平均点以上の70点くらいまで(頑張って)、感情部分の役者業がおろそかにしないように気を付けました」と方言と感情面の表現のバランスを考えていたことを語りました。

「御崎祭り」を題材にした映画が公開されたことによる今後の祭りへの影響を聞くと、武監督が「祭りの時くらい帰ろうかなというきっかけになれば」と若い人が興味を持ってくれることへの期待を口にしました。鹿児島の方でも「御崎祭り」を知らない人もいるそうで、坂田さんが「盛り上がってほしいですよね!太賀くんが毎年、行って!」と構想を述べると武監督も「みんな、跡継ぎができたと喜んでいました」と笑いながら話しました。劇中で太賀さんが大きな鉾を持って御輿を先導し、できるだけ地面の近くまで下げる鉾竿シーンがあるのですが、相当な体力と技術を要すると言われています。誰でもができるわけではない鉾竿をやり遂げた太賀さんについて武監督は「俳優は凄いです。俳優だから映画の撮影だからできるんですよ」と健闘を称えました。

映画での「御崎祭り」のシーンはスペイン音楽にのせて神輿を担いで7つの集落を巡る映像が続くのですが、武監督は「行進やパレードがテーマで、最後の祭りのシーンは挑戦でした。こんな映画は観たことないと思いましたが、音楽はかなりこだわりました」と話しました。「きばいやんせ」は鹿児島弁で「がんばれ」を意味します。大きな神輿を担いで歩んでいく様子は「がんばれ」と声をかけたくなり、自分自身に対しても「がんばれ」と勇気がもらえます。



作品概要

映画『きばいやんせ!私』

3月9日(土)よりセンチュリーシネマほかにてロードショー

出演:夏帆、太賀、岡山天音、坂田聡、眼鏡太郎、宇野祥平、鶴見辰吾、徳井優、愛華みれ、榎木孝明、伊吹吾郎

監督:武正晴/脚本:足立紳 山口智之

原作:足立紳「きばいやんせ!私」(双葉社刊 著:工藤晋)

音楽:山元淑稀/主題歌:花岡なつみ「Restart」(テイチクエンタテインメント)

配給:アイエス・フィールド

作品公式HP http://kibaiyanse.net/

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