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2022-03-01

ドキュメンタリー映画「ムクウェゲ 『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」立山芽以子監督にオンラインインタビュー


 

3月4日から公開となる映画「ムクウェゲ 『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」はTBSで長年に渡って報道に携わってきた立山芽以子さんによるドキュメンタリー作品です。アフリカ大陸、コンゴ民主共和国・東部ブカブで20年以上に渡って、40万人以上の女性たちがレイプの被害を受け続けているという事実を、女性たちの治療を続けてきたデニ・ムクウェゲ医師や彼が作ったパンジ病院の取り組みだけでなく、様々な角度から取材しています。

被害を受けた女性たちに加え、加害者側のインタビューをも含む映像は直視し続けるのが苦しくなるほどの内容で、今もまだコンゴで実際に起きているのだと思うと、いたたまれなくなり、心が強く揺さぶられます。公開を間近に控えた立山監督にオンラインでインタビューし、ムクウェゲ医師への取材のきっかけやコンゴ取材で感じたこと、公開直前の想いなどを聞きました。(取材日:2022年2月25日)

ノーベル平和賞受賞がきっかけで叶ったコンゴ取材

映画「ムクウェゲ 『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」で中心的に描かれているデニ・ムクウェゲ医師はコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)でレイプ被害にあった女性たちを長年にわたり治療してきた功績が評価され、2018年にノーベル平和賞を受賞しました。立山監督がムクウェゲ医師を初めて取材したのは2016年。「アフリカの研究者からムクウェゲさんの活動を聞き、来日した際に取材しました」と話し「放送後の反響もあり、現地取材をしてみたい気持ちはあったものの、すぐに行くことはできませんでした」と当時を振り返りました。ムクウェゲ医師のノーベル平和賞受賞をきっかけに、コンゴに取材に行けることになった立山監督は「巡り合わせが良かったです。よく上司の許可が出たと感謝しています」と2週間の現地取材について語りました。

被害者と加害者へのインタビュー「聞いたからには、伝える義務がある!」

映画「ムクウェゲ 『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」では、パンジ病院で治療を受けた女性たちが自身の体験を語ってくれています。立山監督は「パンジ病院側と相談の上で、インタビュー対象者を決めていて、看護師などの病院スタッフが通訳をしてくれて、行き過ぎた質問をしていたら、チェックして、言葉をうまく言い換えてくれるなどの配慮をしてくれていました」と、入院している患者たち一人ひとりの状況を把握しているパンジ病院の協力が大きかったことを教えてくれました。女性たちへのインタビューについて「言いたくないこと、思い出したくないことを言わせて、申し訳ない気持ちもあります」と当時を思い返しながら「聞いたからには、伝える義務がある!と言い聞かせていました。勇気を持って喋ってくれた人たちに感謝です」と強い想いを持って取材にあたり、本作を作り上げたことを教えてくれました。

本作の内容に加害者へのインタビューが含まれていることについて「元々、加害者側の言い分を聞きたいと思っていて、探してもらっていました」と話し「加害者側も、取材意図を理解した上で出演してくれました」と教えてくれました。現地で立山監督が聞いた加害者が語る言葉の数々から、かつて彼らが加わっていた武装勢力の存在、武装勢力が女性たちをレイプする目的と言葉を失うほどの残虐さを知ることかができます。加害者側の現状が映し出されていることは、この問題の核心を伝えるために必要なのだとわかるはずです。

ドキュメンタリー映画『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』佐古忠彦監督に名古屋でインタビュー

「佐古(忠彦)さんの拓いてくれた道だと思います」

映画「ムクウェゲ 『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」 は2021年3月に行われた「TBS ドキュメンタリー映画祭」での上映に向けて作られた作品のひとつです。立山監督はこれまでにも『news23』や深夜のドキュメンタリーでムクウェゲ医師の活動を伝えてきていますが「映画になったことで、より多くの人に観ていただくチャンスであること、集中して観ていただけることはありがたいと思っています」と語りました。

TBSのドキュメンタリー映画としてこれまでに『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』や『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』などを手掛けてきた佐古忠彦さんについて「3本の映画を作られて、ヒット作も出して、私たちもそういうことができるんだと思えるようになったのは、佐古さんの拓いてくれた道だと思います」と話しました。また立山監督は佐古さんが『news23』のキャスターだった時にディレクターをしていた間柄で「今回もアドバイスをしてもらったり、感謝しています。佐古さんがいなければムクウェゲが映画になることもなかったと思います」と語りました。

テレビ放送を主戦場としてきた立山監督は「わざわざ映画館まで行って、お金を払ってまで観る価値はあるのか?と不安になることもあります」とテレビマンならではの感覚で、公開を迎えるにあたって不安や緊張があることを教えてくれました。

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作品概要

映画「ムクウェゲ 『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」

3月4日(金)より伏見ミリオン座ほか全国ロードショー

アフリカ大陸、コンゴ民主共和国・東部ブカブ。

この地は「女性にとって世界最悪の場所」と呼ばれている。20年以上の間、ここでは40万人以上の女性たちがレイプの被害を受け続けている。

その女性たちの多くを無償で治療してきたのが婦人科医、デニ・ムクウェゲである。彼のパンジ病院には、肉体的、精神的な傷を負った女性たちが運び込まれてくる。年間で2500~3000人。なぜ、このような犯罪が後を絶たないのか。

この地にはレアメタル、錫など豊かな鉱物資源が埋まっている。武装勢力はその利権を得るために、性暴力という武器をつかい、住民を恐怖で支配しようとしているのである。個人の欲求とは異なる、組織的な性暴力。ある時、ムクウェゲ医師は「その根源を断ち切らない限り、コンゴの女性たちに平和は訪れない」と気づいた。そして、この地で起きていることを世界に訴え始めたのである。しかし、その勇気ある行動によって、自身の命を狙われることになる。

2018年、長年の活動にたいしてノーベル平和賞が授与された。しかし、ムクウェゲ医師の闘いは終わることはなく、今も続いている。本作はその闘いの日々を追ったドキュメンタリーである。私たちが生きる、同じ世界で起きていること。決して他人事と思ってはいけない現実がここにはある。

語り:常盤 貴子

監督:立山 芽以子

製作:竹内 明

エグゼクティブプロデューサー:大久保 竜、渡辺 信也

プロデューサー:藤井 和史、松原 由昌

配給:アーク・フィルムズ

製作著作:TBSテレビ

2021年/日本/カラー/ビスタ/ステレオ/75分 ©TBSテレビ

石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞・草の根民主主義部門大賞受賞

公式サイト mukwege-movie.arc-films.co.jp

公式Twitter @mukwege_movie


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