映画『北風アウトサイダー』名古屋舞台挨拶に崔哲浩監督、永田もえさん、田中あいみさん、玉木惣一郎さん、許秀哲さんが登壇
2月25日(金)から名演小劇場で公開となった映画『北風アウトサイダー』は大阪生野で暮らす在日朝鮮人の4兄妹が様々な苦難のなか支え合い、乗り越えて行こうとする固い絆が描かれた人情物語で、アウトレイジな場面も魅力的な作品です。名古屋での公開にあたり、2月26日と27日に崔哲浩監督と出演者による舞台挨拶が名演小劇場で行われました。
崔監督、永田もえさん、田中あいみさん、玉木惣一郎さん、許秀哲さんが登壇した、26日の夜の部の舞台挨拶の様子をご紹介します。(取材日:2022年2月26日)
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みんなで作り上げた映画『北風アウトサイダー』 女優達が支えた舞台裏
上映後の興奮冷めやらぬ中、監督・主演の崔哲浩さんが登壇すると客席から熱い拍手が起こりました。嬉しそうな表情で崔監督は「皆さん、2時間半の映画の後でお疲れでしょうが、舞台挨拶にもお付き合いください」と挨拶しました。その後、出演者の永田もえさん・田中あいみさん・玉木惣一郎さん・許秀哲さんも登壇し和気あいあいとしたトークがスタート。崔監督が出演者一人一人に話を振って、話を引き出す司会役を務めました。
作中の4兄妹の母(オモニ)役の永田さんについて、崔監督は「永田さんは映画の俳優部 だけでなく裏方も担当して、結婚式のシーンの料理を作ったり、小道具を作ったりと表も裏も関わってくれました」と紹介し、その長きにわたる『北風アウトサイダー』の撮影で特に印象的だったことを永田さんに問いかけました。永田さんは「私はスクリプター(記録)の役割も担っていたので学ぶことが多かったです」と実感を込めて話し「そして、何よりオモニ役では精神疾患でワ~っとなる(錯乱する)シーンがあって、子役たちが本気で怖がっていて…」と苦笑いしながらこたえました。三重県のご出身ということで、地元で上映できる嬉しさ一杯の永田さんがまだまだ話そうとすると「はいは~い、次の人にまいりましょう」と崔監督が永田さんの思いを受け入れながらも司会進行、座長ぶりを発揮しました。
田中さんは本作で主人公の弟の妻:朱美を演じています。役作りについて「(夫・娘役との)家族関係を大切にしなければと思ったので、まず3人でホルモン焼き屋さんに行ってパパ・ママ・ナミとそれぞれの役で呼び合うように決めました。そして撮影の間はずっとタメ口でいるように、プライベートでも家族のように過ごすようにしました」と述べました。長いこと”家族”として作品の中にいたため「チョロ(夫)に殴られるシーンでは夫や娘のやり場のない気持ちが分かるし、私が家族を支えないと…という想いが溢れて、演じていてつらかったです」と明かしてくれました。また、永田さんと同じく裏方も兼任したことに触れ「現場の受付や、チェック、お茶を作ったり、戸締りなどをしました」と田中さんが話すと、観客たちも「へ~」と作品の裏方の話に驚いた様子で興味深そうに聞き入っていました。作品制作を陰ひなたで支えた2人の女優に崔監督が感謝のまなざしを向けていたのが印象的でした。
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「若いの」のがんばりに目を細める崔監督、先輩俳優たち ロビーで観客との交流も
崔監督は「玉木さん、今日も青いスーツお似合いですね」といじりながら玉木さんに話かけ、「玉木さんは、最後に震えながらスマホを打つ若者…最初にも出てくる石丸という役と、助監督もされました。この『北風アウトサイダー』に参加する前と後の変化はありましたか」と問いかけました。玉木さんが「人間になれたことですかね」と答えると崔監督は「ふはは(笑)、どういうこと?」と突っ込みを入れました。「僕はこの作品の前はほとんど映像の仕事がなくて舞台ばかりだったんです。だから初めの撮影時に緊張で動きがぎごちなくなって”ロボット”と呼ばれました…」と玉木さんがいうと崔監督も「覚えてるよ~」と合いの手を入れました。1年半位の撮影期間で俳優といて成長したことを述べ「乱闘シーンでボコボコにされるシーンもあり、そこで評価いただいて『北風アウトサイダー』のあとで映像のお仕事がいただけるようになったので、人間になれたかな…と。崔監督にはこの映画で10年分の経験をさせるからついてきてくれという言葉を信じてやってきました。長い撮影期間で大変でしたが、やりきることの大切さを学びました」と張りのある声で述べました。
続いて「許(ホ)さん、身長何センチですか?モデルみたい」と優しく話しかける崔監督。「183センチです」と答えた許さんに対して崔監督は「この作品に参加して衝撃的だったエピソードは?」と質問しました。許さんが答えようとした瞬間、マイクのトラブルが…。許さんはひるまずに地声で「オーディションに通って、いただいていた役が結婚式の参列者だったんです。だからハッピーオーラ全開で現場に入ったら、急に監督から呼び出されて”役を変える”と言われました」と話し出し「悲劇の引き金になる人物の相棒役ということで、ハッピーと真逆な役なんですよ。でも、セリフもあって朝鮮語も話せて、本当に幸せです」と最後まで地声で語りました。崔監督が「オーディションの時から媚びずに、現場でも居方がよくて”彼が目立つようにしたいな”と役をチェンジしました」と明かすと「ありがとうございます!!」と崔監督に一礼する許さんの姿に客席から温かな拍手が送られました。舞台挨拶前に、舞台袖で玉木さんと許さんを「若いの」と愛情込めて呼んでいた永野さん・田中さんは後輩たちのスピーチに目を細めていました。
舞台挨拶の後はキャストがロビーに立って、来場した観客に感謝の気持ちを込めて見送りをし、ポスターへのコメントのお願いや、写真撮影に応じるなど、観客と交流する時間を楽しんでいました。
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作品概要
2月25日(金)より名演小劇場にて公開
監督・脚本:崔哲浩
出演:崔哲浩 櫂作真帆 伊藤航 上田和光
浦川奈津子 遠藤綱幸 佐野いずみ 新宮里奈 梅津翔
田中あいみ 秋宮はるか 千賀多佳乃 福本翔 玉木惣一郎
松田俊大 杉浦豪 大原広基 黒田焦子 藤代麻美 永田もえ
永倉大輔 松浦健城 竜崎祐優識 並樹史朗 岡崎二朗
助監督:上田 和光 制作:田中 あいみ / 秋宮 はるか 編集:松原 雅人
音楽:Les.R yuka / 野島健太郎
主題歌:「あなたへ〜北風に乗せて〜」Les.R yuka
制作:ワールドムービーアソシエーション
配給:渋谷プロダクション
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