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2021-08-10

「自主映画って人間力を問われるんですよ」映画『シュシュシュの娘』入江悠監督に名古屋でンタビュー


 

8月11日に名古屋シネマスコーレを含む全国20館以上の劇場で一斉プレミアム試写会が開催され、8月21日から公開となる映画『シュシュシュの娘』は『22年目の告白~私が殺人犯です~』『AI崩壊』などメジャー映画の監督としても活躍している入江悠監督が『SRサイタマノラッパー』シリーズ以来10年ぶりとなる自主映画です。福田沙紀さん演じる市役所に勤める25歳の主人公が大切な先輩の自殺をきっかけに、ある方法で市政に立ち向かっていく物語で、痛快かつ、程よいゆるさのあるテイストは観た後に明るい気持ちになれる作品です。

入江監督が名古屋でインタビューに応じてくれました。プロジェクトの始まりや自主映画に対する思い、シネマスコーレの思い出などを語ってくれました。(取材日:2021年7月21日)

福田沙紀さん演じる女性を主人公にした理由

映画『シュシュシュの娘』は入江悠監督が自らの資金とクラウドファンディングの支援金のみで製作し、コロナ禍で苦境に立たされているミニシアターに恩返しをしようと立ち上げた自主映画プロジェクトです。入江監督はプロジェクトを始めるきっかけとして「コロナになって予定していた仕事が2つくらいなくなって、何もやることがなくて、来年もどうなるかわからない状態で、急にカッとなって書いたんです」と家に籠って数日間で集中して映画『シュシュシュの娘』の脚本を書きあげたことを教えてくれました。

地方にある架空の田舎街を舞台に、福田沙紀さん演じる市役所に勤める25歳の主人公が大切な先輩の自殺をきっかけに、ある方法で市政に立ち向かっていく物語です。外国人差別などの問題も描いていることについて「『ビジランテ』でも描いていて、深めていきたいテーマでした」と話し、主人公が女性であることについて「男性を主人公にすると、どんどん暗くなれるんですよ。地面を這いつくばる桐谷健太みたいな感じになる」と笑いながら話しました。また入江監督は「ミニシアターに行ったことがない人にも観に来てもらえるよう、女性主人公の方がポップさがだせるのでは?と考えました」と理由を明かしました。

作品の内容は行政の不正や外国人差別などを扱っていても、暗い雰囲気ではなくゆるさと笑いのあるテイストに仕上がっていることについて「痛快だった、笑えた、現実を忘れられたというような感じにしたかったんです。現実が暗いときに、ふんばって笑い飛ばしちゃうのも映画の役割かも」と話し、入江監督の原体験として、岡本喜八監督の『独立愚連隊』があることを教えてくれました。

「自主映画って人間力を問われるんですよ」「できれば毎年やりたい」

映画『シュシュシュの娘』は入江監督にとって、『SRサイタマノラッパー』シリーズ以来10年ぶりとなる自主映画です。瀬々敬久監督の『菊とギロチン』や 鈴木卓爾さんや古澤健さんによる『ゾンからのメッセージ』を鑑賞したり、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の審査員をつとめるようになったことから「自主映画の自由さが羨ましく感じて、(自分の)人間力が衰えているんじゃないかと不安になりました。(メジャー映画では)才能のあるスタッフに支えられているだけで、一人で映画が撮れるのか?」と感じていたことを話しました。

入江監督はオーデションから撮影場所を探したり、貸してもらえるように交渉するなど、すべての作業を自分で行ったそうで「自主映画って人間力を問われるんですよ。自分のことを信頼してもらえないといけなくて」と10年ぶりの自主映画の制作で苦労も多かったそうですが「やったら楽しくて、できれば毎年やりたいと思いました」と今の気持ちを口にしました。

スタッフはコロナ禍で行き場をなくした若者や学生を集めるなどし「プロのスタッフがいなくて、やりたい持ち場を選んでもらって、最初にプロから仕事内容のレクチャーを受けてもらいました」と話し、ある小道具の準備について「プロのスタッフならすぐに正解にたどり着けるんですけど、学生と一緒に調べたり、夏休みの工作をしているような感覚で、そういうプロセスが楽しかったです」と振り返りました。

メジャー作品との違いについて「止める人がいないんですよ。それが一番大きく違うところです。何でもできちゃう、それが怖さでもあるんですけど、自分だけが面白いと思っていたらどうしようと自分を試されている感じで、一人の人間に戻った感じがしました」と笑いながら話していました。

「シネマスコーレは一番、熱かったです!」

入江監督は「ミニシアターに人生を救われました。18歳に大学受験に失敗して、引きこもりがちになって、予備校にも行かなくなって、隣の県のミニシアターに行くことだけが社会との繋がりだったんです。ミニシアターはひとりぼっちの人を受け止めてくれる場所ですよね」とミニシアターに対する熱い想いを語りました。

名古屋シネマスコーレの思い出を聞くと、「シネマスコーレは一番、熱かったですよ!『SRサイタマノラッパー』シリーズを一番たくさん上映してくれた映画館なんです!」と話し、副支配人の坪井篤史さんについて「最初に会ったときに、名古屋のB級グルメを食べに行ったんですけど、喋ることに夢中になってパスタが全然減らなくて」と話してくれました。鉄板ナポリタンでしょうか?坪井さんに密着した映画『シネマ狂想曲〜名古屋映画館革命〜』に出てくるあのシーンまんまですね。

名古屋の映画狂人・坪井篤史さんに密着した『劇場版 シネマ狂想曲~名古屋映画館革命~』

入江監督は「スコーレの坪井さんの熱量は、映画館の人と一緒に映画をお客さんに見てもらってるなって感じられます」と話し「映画のコンシェルジュ的な人で、あと1本映画観るならと聞いたら、すごい勢いで返ってくるんですよ!」と坪井さんの熱量を楽しそうに話してくれました。

映画『シュシュシュの娘』は「コロナ禍で苦境に陥った全国ミニシアターを応援したい」という入江監督の想いが形になった作品です。8月11日の「全国一斉プレミアム試写会」の入場料はすべてが各劇場へ寄付となります
。オンライン舞台挨拶では、入江悠監督、福田沙紀さん、根矢涼香さん、井浦新さんが登壇される予定です。名古屋シネマスコーレでももちろん行われますので、公開より一足早くご覧になりたい方は、ぜひこの機会にシネマスコーレへ足を運んでください。

シネマスコーレ(名駅)


Address:名古屋市中村区椿町8-12 アートビル1階

Tel: 052-452-6036

名古屋市中村区椿町8-12

作品概要

映画『シュシュシュの娘』

8月21日から名古屋シネマスコーレほかで公開

出演:福田沙紀、吉岡睦雄、根矢涼香、宇野祥平、金谷真由美、松澤仁晶、三溝浩二、仗桐安、安田ユウ、山中アラタ、児玉拓郎、白畑真逸、橋野純平、井浦新

製作・脚本・監督・編集:入江悠

プロデューサー:関友彦 /撮影:石垣求 /照明:高井大樹

録音・整音:古谷正志 /音楽:海田庄吾 /装飾・小道具:武富洸斗

美術アドバイザー:田中真紗美 /小道具制作協力:松永桂子

衣裳デザイン:髙橋正史 /スタイリスト:小宮山芽以 /ヘアメイク:河本花葉

特殊メイク:百武朋 /アシスタントプロデューサー:大條瑞希 /監督助手:宮本紘生

ロケーションコーディネーター:高畑祐史 /制作主任:宮司侑佑

宣伝美術: 寺澤圭太郎、崎田ハヤト

制作プロダクション・配給:コギトワークス /企画・製作:BROCCO FILMS

DCP / 88 分 / カラー / スタンダード / 5.1Ch (モノラル・センターのみ) / 2021 / 日本

映画公式 H P https://www.shushushu-movie.com


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