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2021-10-08

「ニコラス・ケイジは22歳の若手俳優のように謙虚で従順」映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』園子温監督リモートインタビュー


 

10月8日より公開の映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』は愛知県豊川市出身で数々の衝撃作で世界的にも評価の高い園子温監督のハリウッドデビュー作です。架空の未来都市サムライタウンを舞台に、主演のニコラス・ケイジさんが演じるのは制限時間内にある女性を連れ戻すことを命じられた男です。

15年来の念願だったというハリウッドデビューを果たす園監督にリモートでインタビューしました。当初の脚本から大幅にアレンジして完成した作品について、滋賀県彦根市を中心に行われた撮影現場やニコラス・ケイジさんの様子、今後の展望などについて話してくれました。(取材日:2021年10月1日)

元の脚本から75%を書き直す 独創的な世界観は日本撮影による産物

映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』はニコラス・ケイジさんが主演する園子温監督のハリウッドデビュー作です。物語の舞台となる架空の未来都市サムライタウンは江戸時代風の建物に西部劇の酒場と遊郭が融合したような街並み、銃をもったカウボーイと刀で武装する用心棒も登場し、様々な要素が混在する観たことのない世界観が魅力です。

園監督は15年程前からハリウッド映画を撮りたいと行動していたそうで「なかなかうまくいかずに時間がかかっていました」とこれまでの苦労をのぞかせました。そして、3年前に送られてきた本作の台本について『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年公開)と『ニューヨーク1997』(1981年公開)の2作品が重なったような内容だったことを明かし「読む前からOKするつもりでした。クランクインまでに面白く脚色できる気がしたので」と説明しました。

本作の独創的な世界観が生まれた理由として、2019年2月に園監督が心筋梗塞を患ったことが関係していて「メキシコが舞台のマカロニウエスタン映画になるはずだったのが、ニコラス・ケイジが僕の身体を心配して日本で撮ろうと言って、日本で撮ることになったのが大きいです」と答え「日本でやるならチャンバラアクションにしようと思って、東西が合体したようにして、元の台本から75%くらいは自分で書き直しました」と話しました。斬新なアイディアが次々に登場する本作の世界観について「どれだけ飛べるか、今までのイメージと違うものが作れるか、二番煎じは嫌なんですよ」と古今東西の映画を観ながらアイディアを生み出していることを明かしました。

本作は滋賀県彦根市と米原市をメインに撮影が行われていて、園監督は「大スケールのクロックタワーなどをCGなしで作れる場所がありました」とたくさんの囚われた住民たちが暮らす廃墟化した時計台が象徴的なゴーストランドについて話しました。サムライタウンは彦根市鳥居本町の「彦根オープンセット」と京都の「東映太秦映画村」で撮影を行ったそうで、「使い勝手が良かったです」と教えてくれました。

園監督は「日本人のいつものスタッフで撮影したので、ハリウッドに来た気がしなかったです」と話し「だいぶ前にデビューしていたらハリウッドの優等生を目指していたかもしれないのですが、ハリウッドに対して憧れも壁も感じないし、普段通りという気持ちになれたんです」と答えました。「プロデューサーたちも許容してくれたので助かりました。日本で大作映画を撮るほうが障壁があるような気がしました」と様々な環境で作品を作ってきた園監督は率直な感想を聞かせてくれました。また今後の活動について「2作目からはキャストもスタッフも、日本人1人もいないくらいの感じにします。来年はアメリカで2本撮る予定です。量産系になります(笑)次からは僕のオリジナル脚本でやれるんで!」とハリウッドでの映画製作に邁進していく今の想いを語ってくれました。

彦根市鳥居本町「彦根オープンセット」でも撮影が行われた映画『燃えよ剣』グッズプレゼント

「ニコラス・ケイジは22歳の若手俳優のように謙虚で従順」坂口拓さんの弟子のよう?

映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』はニコラス・ケイジさんが演じる悪名高き銀行強盗のヒーローが、サムライタウンの悪徳支配者ガバナーのもとから逃げ出した女・ソフィア・ブテラ演じるバーニスを連れ戻すよう命令を受け、ゴーストランドへ向かう物語です。

園監督は本作への出演が決まったニコラス・ケイジさんと東京で会ったと明かし「『アンチポルノ』で号泣して、『紀子の食卓』は感動したというマニアックな意見で信用できるなと思いました」と園監督のファンだったと話しました。「SPをつけることもなく1人でブラっと来て、安居酒屋で2時間飲み放題を安いね!っていいながら飲んでいました」とフランクな様子だったことを教えてくれました。撮影現場での様子についても「とにかく彼は22歳の若手俳優のように謙虚で、いい意味でスター性を発揮せず、監督の言われたとおりにやりますという従順な人でした」と話しました。

映画の終盤でニコラス・ケイジさんとTAK∴(坂口拓)さん演じる用心棒・ヤスジロウが対決するアクションシーンは非常に迫力があり、見応えがあります。園監督は「ヤスジロウはカバン持ちの役だったのを坂口拓が演るならと、剣豪にしちゃったんです。三船敏郎VS仲代達矢のイメージでした」と教えてくれました。撮影の準備は相当大変だったようで、園監督は「ニコラスが必死でついていってましたよ。練習も全部出て、真夜中まで一緒で、もっと、もっとと(坂口)拓もスパルタになってて、ニコラスが謙虚すぎて、弟子みたいに扱ってました」と笑いながら明かしました。厳しく指導しすぎた坂口さんが「やばっ!ニコラス・ケイジだった」というような瞬間もあったそうです。

ヒロイン・バーニスを演じたソフィア・ブテラさんのアクションも素晴らしかったと振り返り「切れがすごくて、足もすごく上がるし、(坂口)拓も驚いていました」と話しました。またソフィア・ブテラさんの出演が決まった経緯について「『CLIMAX クライマックス』のギャスパー・ノエ監督が『園子温の映画だったら出るしかないだろう』と言ってくれたらしく、内容よりも、問答無用で出なくてはいけない気持ちだったそうです」と教えてくれ、「ギャスパー・ノエにありがとうですよ」と笑顔をみせました。

撮影現場でのニコラス・ケイジさんと日本人のキャストやスタッフとの交流について聞くと「撮影が終わると俳優・女優、スタッフも交えてなるべく飲むようにしていて、安居酒屋で、ニコラス・ケイジに質問攻めで、芝居ってどうやったらうまくなるのかとか聞いてましたよ」と教えてくれました。また、本作をきっかけにニコラス・ケイジさんと結婚した芝田璃子さんは元々、園監督のワークショップに参加したり、エキストラとして出演していたこともあるそうで、園監督は「ゴーストランドに並んでいるマネキン少女の1人で出演していて、(ニコラス・ケイジさん演じる)ヒーローが顔についたマネキンを剥がすと『違った』って言うんだけど、心の中の声は『見つけた!』だったのかも」と教えてくれました。

作品概要

映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』

原題:Prisoners of the Ghostland

監督:園子温

キャスト:ニコラス・ケイジ ソフィア・ブテラ ビル・モーズリー ニック・カサヴェテス TAK∴ 中屋柚香 YOUNG DAIS 古藤ロレナ 縄田カノン

脚本:アロン・ヘンドリー レザ・シクソ・サファイ

音楽:ジョセフ・トラパニーズ

提供:POTGJPパートナーズ

レーティング:PG-12

配給:ビターズ・エンド

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(2021/アメリカ/105分/カラー)


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