toggle
2021-08-11

新しい才能との出会いや発見の喜び 映画『竜とそばかすの姫』細田守監督に名古屋でインタビュー


 

7月16日の公開から3週連続で全国映画動員ランキング1位を獲得した映画『竜とそばかすの姫』はインターネットの仮想世界<U(ユー)>を舞台にした細田守監督の最新作です。ディズニーアニメーション映画『美女と野獣』をモチーフに、歌姫の“ベル”というアバターで一躍注目を浴びる高知の田舎町で暮らす女子高生・すずと、竜の姿をした謎の存在の関係が描かれている物語です。

細田監督が名古屋でインタビューに応じ、本作が声優初挑戦となるミュージシャンの中村佳穂さんや幾田りらさんについて、モチーフとした『美女と野獣』の好きな部分やミュージカルアニメを作ることの難しさを感じたエピソード、映画を通じての発見や出会いの面白さなどを話してくれました。(取材日:2021年8月5日)

「現代にとって‟美女”とは何か、‟野獣”とは何かを考えました」

映画『竜とそばかすの姫』は過疎化が進む高知の田舎町で父と暮らす17歳の女子高生・すずが、インターネットの仮想世界<U(ユー)>と出会い、成長していく姿を描いた作品です。ベルというアバターで参加し、心に秘めてきた歌を歌うことで、あっという間に世界に注目される存在となっていく彼女と竜の姿をした謎の存在の関係が描かれています。

細田守監督は「本当はミュージカルにしたかったんですが、日本で作るのは前例がなくて難しいんですよ」と話し、ディズニー出身のアニメーターであるグレン・キーンさんが手がけたNetflixのアニメーション『フェイフェイと月の冒険』の制作初期段階を見学したことを教えてくれました。日本では音楽先行で制作することの難しさを話し「先に絵コンテがいるんですよ」と音楽シーンの絵コンテに苦労したことを振り返り「参加した3-4人の作曲家が絵コンテから素晴らしい曲を作ってくれました」「完全なミュージカル映画にはなっていないけれど、歌が主人公の気持ちを伝えて、それが観客にも届くものを頑張って作りました」と完成した作品に自信の表情をのぞかせました。

また『美女と野獣』をモチーフにしたことについて細田監督は「『美女と野獣』が好きなのは、野獣が好きなんです。暴力的な面がありながら、心の中は別である二面性が好きです」と答えました。「現代にとって‟美女”とは何か、‟野獣”とは何かを考え、『美女と野獣』をアップデートできたような気がしています」と話し、何かを乗り越えたり、立ち向かったりする主人公の美しさが描かれている後半のシーンに触れながら「守らなきゃいけない人を絶対に守るというのが美女」と現代の美女に対する考えを述べました。

「萌歌ちゃんが固定概念を覆してくれた」映画『未来のミライ』名古屋試写会 上白石萌歌さんと細田守監督が登壇

映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』佐藤健さん&土屋太鳳さん名古屋の特別上映会の舞台挨拶に登壇!

新たな才能との出会いや発見を楽しんでいる

映画『竜とそばかすの姫』で主人公・すず/ベルの声を務めたミュージシャンの中村佳穂さんについて「これだけ新鮮ですごい力の持ち主って、そんないないですよ。彼女が正解ですよ」と力強く話しました。2年前に奈良の靴屋でのライブで初めて生で見たことを明かし「(中村さんには)曲を作ってくれたら、詩を書いてくれたらと思っていたのですが、オーディションでセリフを言ってみてもらったら、すごいと思って、この作品が中村佳穂と出会えたことがすごいんですよ」と感慨深げに語りました。

すずの親友役の声を務めた幾田りらさんはYOASOBIのボーカルikuraとしても活動するシンガーソングライターで、細田監督は「これでお芝居の経験がゼロなんですよ!!本当にうまいし、びっくりするくらい表現力があるし、キャラクターを掴んでるし、底知れないポテンシャルを持っているなと思いました」と大絶賛していました。

中村さん、幾田さんともに声優初挑戦であることについて、声優がやるべきというアドバイスも参考になると言及しながら「こういう才能との出会いの喜びが観客の方にも伝わるといいなと思っています」と話し、細田監督は「発見が面白いんですよ」と映画での新たな才能との出会いや発見を楽しんでいることを教えてくれました。

映画『竜とそばかすの姫』で描いた仮想世界<U(ユー)>のイメージについて「『サマーウォーズ』のころとは、インターネットの立ち位置が全然違います。もっと複雑で、誹謗中傷、悪口雑言がインターネットの代名詞みたいになっていて、良い面だけじゃなくて、悪い面、困った社会問題を反映する、もう一個の世界という実感をもってもらえるような世界にしたいと思いました」と語りました。

仮想世界<U(ユー)>を手掛けたロンドン在住の建築家・デザイナーのエリック・ウォンさんについて「インターネットで探したんです」と話し、映画のストーリーと同様に才能が開ける可能性を秘めたインターネットの良い面を作品作りを通じて実感できたようで「誹謗中傷で引っかかっている場合じゃないんです」という言葉からはインターネットの未来に希望を持っている強い想いが伝わってきました。

名古屋は一番熱量が高い!玉城ティナさんと小関裕太さん 映画『わたしに××しなさい!』舞台挨拶

「初めて親が褒めてくれた」成田凌さん初主演映画『カツベン!』周防正行監督と愛知津島で舞台挨拶

作品概要

映画『竜とそばかすの姫』

公開日:2021年7月16日(金) ※IMAX同時公開

原作:細田守

監督・脚本:細田守

出演:中村佳穂、成田 凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら、森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世、森川智之、宮野真守、島本須美、役所広司、石黒賢、ermhoi、HANA、佐藤健

企画・制作:スタジオ地図

©2021 スタジオ地図


関連記事