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2021-09-11

窪塚洋介さん、豊田利晃監督が観客たちと濃密トーク!映画『全員切腹』公開記念 名古屋センチュリ―シネマで舞台挨拶


 

映画『全員切腹』の名古屋のセンチュリーシネマでの公開を記念して、『狼煙が呼ぶ』『破壊の日』『全員切腹』三作が上映され、上映後に窪塚洋介さん、豊田利晃監督の舞台挨拶が行われました。企画のきかっけから窪塚さんへのオファー、撮影中のエピソードなど、観客からの質問に答えながら、たっぷりと話してくれました。上映後のトークだったことから映画の内容に触れる話題も多くあり、本レポートではネタバレにならないように配慮します。映画館で映画を観る体験について熱く語っていた窪塚さんと豊田さんによる1時間近くに及んだ濃密な舞台挨拶の様子をレポートします。(2021年9月5日)

「今までで一番長ゼリ(フ)」「自分とかけ離れているメッセージじゃないからすごく覚えやすい」

映画『全員切腹』が公開中の名古屋センチュリ―シネマで豊田利晃監督による26分の短編映画で、窪塚洋介さんが主演しています。映画『全員切腹』の公開を記念して行われた『狼煙が呼ぶ』『破壊の日』『全員切腹』三作上映後の舞台挨拶に窪塚さんと豊田監督が登壇しました。販売されていた席数の約半数のチケットは完売しており、映画を観終えたばかりの観客の大きな拍手で迎えられました。

窪塚さんは「豊田監督のお抱え俳優の窪塚洋介です」と挨拶し、「あの濃度の3本を見て具合が悪くなった人は、すっと手を挙げてもらったら救護班が入ってきますので、気兼ねなくお伝えください」と映画を観終えたばかりの観客を気遣い、ジョークを交えて優しく話しかけました。

豊田監督は2019年に『狼煙が呼ぶ』、2020年に『破壊の日』、2021年に『全員切腹』と毎年夏に短編映画を発表しています。それぞれの制作理由を明かしながら「どんな選択をして、どのように人が生きるのかを問いたくて作った映画です。長いセリフを思いついて、これができるのは窪塚洋介しかいないんじゃないかと思ってオファーしました」と『全員切腹』が生まれた背景について語りました。

豊田監督が「巻物に出演オファーを書いて、脚本と一緒に家に送ったんですよ」と窪塚さんへのオファーについて話すと、窪塚さんは「巻物も長いんですよ毛筆で、脅迫状かと思った」と笑いながら話し「これ逃げられないやつだなと思って、快く受けさせていただいた」と教えてくれました。

本作のクライマックスでの窪塚さんの長いセリフは圧巻で、映画の見所のひとつでもあるのですが、窪塚さんは「今までで一番長ゼリ(フ)だったと思うんですけど、すっと覚えられるんです。自分とかけ離れているメッセージじゃないので、すごく覚えやすいんですね」と話し、豊田監督は「セリフの強弱の付け方、がなりを入れる場所とか、捉え方が音楽的なんです」と振り返りました。窪塚さんも「長い曲を演奏しているような気になって、アイディアが出るけど気持ちを持っていけるか」と事前のイメージを撮影現場で実際に表現できるかわからなかったことを明かしました。すでに鑑賞した家族の反応も良かったそうで「自分の身内、仲間や家族に観てもらえる、窪塚の代表作と呼べる作品になったかなと思います」と作品への自信をのぞかせました。

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「現実に戻ってこれていなかったかもしれないです」「芯から生きる力が湧いてくる」

栃木県の山奥にある神社で撮影を行ったという映画『全員切腹』のクライマックスシーンについて窪塚さんは「携帯の電波が入らない場所モノをつくるって経験はそうそうできない」と話し、神域での撮影が特別なものだったと振り返りました。

窪塚さんは「撮影が終わって、ちょっと動けなくて、記憶があいまいになっていて、現実に戻ってこれていなかったかもしれないです」と役に入り込んでいた様子を明かし、映画のポスターになっているピースサインの写真を撮った記憶もあまりないと話しました。観客からの質問で、ポスターにこの写真を選んだ理由を聞かれた豊田監督は「普通だとクライマックスシーンを使うけど、ネタをばらししたくなかった。ピースは窪塚洋介らしいし、何処から見ても目が合うんです」と答えました。確かにこのポスターの窪塚さん、何処から見ても目が合う気がします。

衝撃的なラストについての質問に豊田監督は「希望というか兆しを残さないと、映画の読後感がよくないかなと思って。残酷な映画なんだけど、腑に落ちる、さわやかになれる。僕自身がそういう映画が好きなんです」と答えると、窪塚さんは「監督の作品は、自分の奥のほう、芯から生きる力が湧いてくるみたいなところがありますよね」と重ねて答えました。

豊田監督が「感情の震えが伝わっていけばいいな」と映画に込めた想いを口にすると「知人が『この映画って4Dなんだね、座席がすごい震えて』って言ってて」と窪塚さんが映画館で観たことで体感できる低音の震えについて説明し「何で観るかで全く違う映画体験になるので、映画館で観てほしいなと思いますね」と語りました。豊田監督が「配信を待つのもあるけど、やっぱり映画館の音、スクリーンで、暗闇で知らない人と共有する(良さがある)。若い人達に映画館に来てもらえるような映画を頑張って作りましょうかね!」と展望を話すと、窪塚さんは「お供します!!」と笑顔で豊田監督を見つめました。

コロナ禍での様々な困難との向き合い方についての質問に対して、窪塚さんは「人のせいとか時代のせいとかコロナのせいとかにしてたらもったいない」「チャンスになるものもチャンスになってこないから、元気に前向きにいることは忘れないようにしようと思ってる」と力強くメッセージを伝えました。SNSでの匿名の攻撃について豊田監督は「人が楽しんでいることに対する妬みが加わっている気がして、それを喜べる自分でいたい」と話し、「人のネガティブな感情」や「人間の集団で作る負の感情」など映画のテーマにも関わる話にも触れ、映画鑑賞後だからこそ共有できる濃密な時間を観客とともに過ごしていました。最後に窪塚さんは「こんな時代になお、自分らしく生きようとしている、生きている人の支えや道しるべになれていたら嬉しいなと思います。少しでも生きやすい今を、明日を迎えていきましょう!」と舞台挨拶を締めくくりました。

作品概要

映画『全員切腹』

センチュリ―シネマで公開中(鑑賞料金:1000円)

◎監督・脚本:豊田利晃

◎出演:窪塚洋介、渋川清彦、芋生悠、ユキリョウイチ、飯田団紅

◎撮影:槇憲治

◎照明:宗賢次郎

◎録音:吉田憲義

◎美術:佐々木尚

◎音楽:切腹ピストルズ、中込健太(鼓童)、住吉佑太(鼓童)、照井利幸、中村達也、ヤマジカズヒデ、Mars89

公式HP https://www.toyodafilms.net/zeninseppuku

2021年/日本/26分


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