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2020-12-18

裏社会からみた“もうひとつの昭和史” 映画『無頼』井筒和幸監督に名古屋でインタビュー


 

12月26日より名古屋シネマスコーレで公開となる映画『無頼』は井筒和幸監督の8年ぶりとなる新作です。EXILEの松本利夫さん演じる貧困から命懸けで這い上がり、ヤクザ一家の組長となった男の生き様とあわせて、東京オリンピックや三菱重工ビル爆破や、オイルショックやロッキード事件など昭和の事件や風俗を絡めて、裏社会からみた“もうひとつの昭和史”が炙り出される作品です。

井筒監督が名古屋でインタビューに応じ、岐阜県の東濃エリアでの撮影について、撮影時の苦労や演出の様子、作品に込めた想いやメッセージを語ってくれました。(取材日:2020年11月25日)

裏社会からみた“もうひとつの昭和史”キャストの決め手「顔」

映画『無頼』はヤクザ者たちの生き様を通じて、戦後の動乱期から高度経済成長、バブル経済の崩壊までを描いた作品です。街頭テレビ、ケネディ暗殺、東京オリンピックや60年安保運動、オイルショックや田中角栄のロッキード事件など時代ごとの出来事が盛り込まれた、裏社会からみた“欲望の昭和史”として楽しみながら観ることができます。

物語の中心となるのは、自分と同じ貧しい境遇で育ったはみだし者たちを束ねて、小さなヤクザ一家の親分となり、弱肉強食の世界をのし上がっていった男の半生記で、EXILEの松本利夫さんが演じています。井筒監督は松本さんの印象を「ダンサーに見えない。昭和っぽい顔だなと思ってキャスティングしました」と話しました。松本さんは、20歳頃から60歳までの男気のあるアウトローを演じています。本作には400余名の役者が出演していますが、松本さんだけでなくオーディションでの決め手は「昭和の顔」でした。迫力の抗争シーンが続く本作について、演出部チームは「2カ月間くらいリハーサルをして、シーンの細部を詰めていきました」とみっちり、演技に時間をかけたと教えてくれました。

昭和の風景が残る岐阜、多治見、中津川、明治村などでも撮影

昭和30年~40年代の風景が残る岐阜県の東濃エリアでの撮影について井筒監督は「こちらのエリアには本当に助けられた」と。「岐阜、多治見、中津川などには昭和の建物が残ってるという情報があって、制作部が見つけてきてくれた」壊してもいい建物もあったそうで「多治見で撮影した殴り込みのシーンで、スタントマンが(車で)本当に突っ込んでいったんだよ!」と東濃地区での撮影を振り返りました。町の銀行に嫌がらせをするシーンについて「岐阜のあたりにある閉じた信用金庫に協力してもらった」と話し、「あれは地上げ屋がよく使う脅し方で、当時は一般的だったんだ」と様々なトリビアを教えてくれました。また網走刑務所の中のシーンは愛知県の明治村でロケをしたそうです。また昭和の空気感を出すためにあえてデジタルでなく、スーパー16ミリフィルムで撮影したと明かしてくれました。

「生きるヒントがあると思います」

井筒監督は東映ヤクザ映画などを例に挙げながら「70年代は実録映画が流行ってて、僕も道頓堀東映に通い詰めましたよ」と20代の頃の話を。「映画館も夜中に超満員で、組のために命を張ろうと行動して死んでいく「仁義なき戦い」シリーズを観て、あの頃の僕らもこれからの人生に悩んでたから、刺激を受けた」と語り「既成のレールに乗りたくない、もっと自由に脱線したかったんです」と当時の想いを振り返りました。

昭和をのし上がってきたチンピラの世界を描いた本作の公開にあたり井筒監督は「同調圧力や炎上を気にして我慢して生きるのが当たり前だと思っている若者に、もっと自分のことに欲を持って、自由を生きろというメッセージを伝えたいです。生きるヒントがあると思います」と作品に込めた熱い想いを語りました。

作品概要

映画『無頼』

12月26日からシネマスコーレで公開

監督:井筒和幸

出演:松本利夫(EXILE) 柳ゆり菜 中村達也 ラサール石井 小木茂光 升毅 木下ほうか 他

主題歌:泉谷しげる 「春夏秋冬〜無頼バージョン」

製作・配給:チッチオフィルム

配給協力:ラビットハウス

2020年/日本/146分/カラー作品/ビスタサイズ/5.1ch/R15+

映画『無頼』公式サイト www.buraimovie.jp

映画「無頼」公式twitter @buraimovie2020

YouTube「井筒和幸の監督チャンネル」

©2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム


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