全観客の「ピロピロ」迎えに満面の笑み「自主制作で続けていきたい」映画『JUNK WORLD』堀貴秀監督が名古屋で舞台挨拶に登壇
6月13日(金)より公開の映画『JUNK WORLD』は堀貴秀監督によるSFストップモーションアニメ「JUNKシリーズ」の第二弾です。2021年に公開された『JUNK HEAD』は環境破壊で地上に住めなくなり人類滅亡の危機が迫る未来で、地下世界で進化していった人工生命体を描いた物語で、堀監督が7年の歳月をかけて完成させた作品で、インディーズ映画界に旋風を巻き起こしました。映画『JUNK WORLD』は『JUNK HEAD』の1000年以上前が舞台になっていて、地下世界の異変を探る人間と人工生命体による調査チームが地下都市を目指す物語で、3部作の完結編である『JUNK END』の制作も予定されています。
映画『JUNK WORLD』の公開を記念して、名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマで公開記念舞台挨拶が行われ、上映後のスクリーンの前に堀貴秀監督が登壇しました。制作秘話や苦労話なども話しながら、本作で取り組んだ新しい試みや自主制作にこだわり続けていることなどを伝えました。舞台挨拶の最後には堀監督のサイン入りポスターを賭けたじゃんけん大会も行われ、白熱した戦いが繰り広げられました。(取材日:2025年6月15日)
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観客全員の「ピロピロ」で迎えられた堀貴秀監督「最初に日本語吹替版で世界観を知ってほしい」
映画『JUNK WORLD』の公開3日目に名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマで行われた舞台挨拶付き上映は全座席のチケットが完売していて、本編を上映し終えたばかりのスクリーンの前で、堀貴秀監督による舞台挨拶が行われました。MCの呼びかけで、観客全員が本編に出てくる“テリア”というキャラクターを真似て、眉毛の上あたりで人差し指と中指を動かしながら「ピロピロ~ピロピロ~」と言って監督を迎えるという異様な空間になりました。客席を眺めながら満面の笑みで自身も「ピロピロ」しながら登壇した堀監督は「なかなか気合の入ったピロピロじゃないか」と本編に出てくる“モース”というキャラクターのセリフを発して観客を沸かせました。観客たちは心の中で「恐縮でーす!」と応えていたことでしょう。「何のこと?」と思われた方は映画『JUNK WORLD』の本予告映像をご覧ください。
堀監督の登壇前に上映した日本語吹替版について「当然ながらプロの役者は誰もいなくて、スタッフだけで収録しました」とMCが説明し「なかなか気合の入ったピロピロじゃないか」も堀監督の声であったことが明かされました。堀監督は「冒頭のナレーションから、ダンテ、子ロビン、怪獣のちっちゃいキャラなどもやりました」と監督を含めて3名ほどで全キャラクターを演じていることを教えてくれました。
また前作『JUNK HEAD』では、全てのキャラクターが日本語ではなく謎の言語を使っていて、日本語字幕が付いている通称:ゴニョゴニョ版(日本語字幕)だったのですが、堀監督は「普通に日本語で喋りたかったけど、ゴニョゴニョは仕方なくやった苦肉の策。それがなぜかウケけちゃった」と告白。『JUNK WORLD』では日本語吹替版のみの制作で進めていたところ、前作のゴニョゴニョ版の人気を鑑みて急遽ゴニョゴニョ版(日本語字幕)も作成し、結果的に2バージョンが公開されているのですが、公開初日のXの反応を見た堀監督がゴニョゴニョ版を見た人が多いことに焦ったそうで「まずは日本語吹替版を!」とポストしたことを明かしました。
舞台挨拶でも堀監督は「まずは日本語版を見てほしい」と言い、1秒間に4文字程度という制限のある字幕だと情報量が半分くらいになってしまうそうで「最初に日本語吹替版で世界観を知ってほしいです」とアピールしました。
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名古屋の夜の街で働いていた苦い過去 名古屋出身の若いスタッフも参加
名古屋に纏わるエピソードとして堀監督は「ホストクラブで皿洗いのアルバイトをしていたことがあります」と話し、流れでホールでピンクのスーツを着てホストの仕事もすることなったそうですが「人生で一番つらい仕事で、1ヶ月ぐらい我慢したんですけどもう限界と思って、初めて仕事でバックれました」と苦々しい名古屋の思い出を語ってくれました。
前作『JUNK HEAD』の時には「(堀監督と2名ほどのスタッフの)平均的に3人ぐらいで長編映画仕上げた」と振り返り、『JUNK WORLD』では倍の6人になったと話し、第一線でやってるプロの職人を雇う余裕はなかったと明かし「若い人で激アツに応募してくる人がいっぱいいて、センスもあって、千葉にあるスタジオの近くまで移住する気概のある人たちがいて、20代で名古屋から来た人もいました」と本作に参加した若いスタッフについて語りました。
非効率万歳!全ては作りたいもののために「映画は自主制作で続けていきたい」
『JUNK WORLD』の制作にあたって、前回と変わったこととして、3Dプリンターを導入して、人形作りの効率化を図ったことや。3DCGで映像を作ったりもしたと話しました。しかし、3DプリンターもCG制作も経験のないスタッフの集まりだったため「手探りだった」と苦労も多かったことを明かし「完成したのが奇跡のような作品です」と観客に語りかけました。前作に引き続き、エンドロールでは制作中の様子が垣間見れるメイキング映像が映し出され、少人数のスタッフで情熱とこわわりを持って制作していたことが伝わってきます。メイキングでコマ撮りする人形の動きにこだわるあまり「まずは自分たちで一度演技をして、日本語を喋る口も意識して動画を撮って、その動きを人形にトレースしました」とモーションキャプチャではなく、アナログな作業を続けていたことも話してくれました。
また、劇中に登場する造形物にも徹底したこだわりが詰まっていて「変形する飛行機」について「変形する飛行機を作ったのに、変形するシーンを端折ってしまった」と一見すると非効率に見える制作をしていたことも伝えました。堀監督は「オークションにかけて売ろうかと思って」と劇中に出てくる造形物のその後についても考えているようで、全ては第3弾の『JUNK END』を完成させるための原資にしたいという思いがあるそうです。今後、『JUNK WORLD』の造形物がじっくり見られるイベントも検討しているようなので、生で造形物が見られる機会を楽しみにしたいですね。
映画は自主制作を貫く「独立性を持って稼がなきゃいけない」物販でも応援を!
映画『JUNK WORLD』の配給はアニプレックスが行っていますが、MCを担当したアニプレックスのプロデューサーは「堀監督が映画は自主制作で続けていきたいと話していて、その理由を自分で自由に作りたいから」とし、外部からの出資を受けることはなく「自分で稼いで自分で作るっていうスタンス」を貫いていると語り「そこは僕らも尊重してます」と伝え「造形物を売るというのもその一環」と堀監督のスタンスに協力的な姿勢を示し、劇場で販売しているパンフレットのPRもしていました。
映画『JUNK WORLD』のパンフレットも堀監督が自身で制作していて、1冊2500円と映画のパンフレットにしては高額ですが、総ページ数が150ページを超える設定資料集のようなムック本仕様になっていて、映画を観た人なら欲しくなる1冊です。舞台挨拶付き上映が行われたミッドランドスクエアシネマでは、上映前の時点ですでに完売していて、入荷待ち状態でした。舞台挨拶後のグッズ売り場は多くの人が列を作っていたので、グッズも人気のようです。
堀監督は映画を作るだけでなく物販でも稼ぐようにしていて、映画『JUNK END』に向けての資金集めの施策のひとつとして模索しているので、観客と一緒に映画を作っていくプロジェクトとして、参加してほしいと呼びかけていました。堀監督は「自分はど素人から映画を作り始めて、自分が見たいオリジナルの、新しいものを観たい、衝撃を受けたいと思って作り始めたので、そのためには独立性を持って稼がなきゃいけない」と自身のスタンスを熱く語りました。じゃんけん大会やフォトセッションタイムで盛り上がる中、舞台挨拶の最後には「第2部がなんとか完成して、3作目に取り掛かれることになりました。頭の中にはものすごい面白い作品が完成しているんで、あとは頑張って皆さんにお届けします」と思いを伝えて、大きな拍手を受けながら降壇しました。
作品概要
6月13日(金)よりミッドランドスクエアシネマほかで公開
監督・脚本・撮影・照明・編集:堀貴秀
全国公開中
配給:アニプレックス
©YAMIKEN