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2023-12-14

名古屋シネマスコーレで映画『NO 選挙,NO LIFE』公開初日 前田亜紀監督、畠山理仁さん、大島新プロデューサーによる舞台挨拶とトークイベント


 

12月9日(土)より名古屋のシネマスコーレで上映中の映画『NO 選挙,NO LIFE』は選挙取材歴25年のフリーランスライターである畠山理仁さんの情熱と苦悩に迫るドキュメンタリー作品です。2020年公開の『なぜ君は総理大臣になれないのか』、2022年公開の『香川1区』など選挙にまつわる映画を発表し続けているネツゲンに所属する前田亜紀さんが監督をつとめ、大島新さんがプロデューサーを担っています。

シネマスコーレでの公開初日に前田亜紀監督、畠山理仁さん、大島新プロデューサーによる舞台挨拶とトークイベントが行われました。3人でのトークに加え、参加者からの質問に応じるなど、選挙や投票について熱く語る濃厚な時間となったイベントの様子をご紹介します。(取材日:2023年12月9日)

満員の観客の前に登場した前田亜紀監督、畠山理仁さん、大島新プロデューサー

映画『NO 選挙,NO LIFE』が名古屋シネマスコーレでの公開初日を迎え、映画の上映後に満員の観客の前に前田亜紀監督、畠山理仁さん、大島新プロデューサーが登場しました。前田監督が観客に感謝の気持ちを伝え、畠山さんは「18歳の時に河合塾に通っていて、まさか自分が映画の主要な登場人物になって、シネマスコーレで上映されるとは思っていませんでした」と挨拶。

畠山さんは主要候補から泡沫候補まで立候補者全員取材をモットーに選挙取材を続けており、「僕しか見ていなかった風景を見てほしいと思いました」と前田監督からのオファーを受けた理由を話しました。畠山さんは「選挙に出ている人を馬鹿にしてしまう風潮が日本にはあって、それは違うと思う。無名の候補者を馬鹿にするような社会は、無名の有権者である私たち一人ひとりを馬鹿にしている社会と同じだと思います」と重ね「それぞれが自由に選挙に挑戦している姿や候補者の魂の叫びに触れると、自分が楽しいと思う、やりたいことをやっていっていいんだと勇気づけられます」と選挙取材によって力をもらっていることを語りました。

選挙の映画?迷える中年青春ドキュメンタリーに「元気をもらった」

映画『NO 選挙,NO LIFE』の名古屋シネマスコーレでの初日舞台挨拶の後には、2階のスコーレインディーズスペースに場所を移してトークイベントが開催され、40名程度の観客の前に再び前田亜紀監督、畠山理仁さん、大島新プロデューサーが登場。大島プロデューサーは映画を観た人から「選挙の映画だと思って見に来たら、結果として迷える中年青春ドキュメンタリーだった」という感想や自分のやりたいことと仕事の間で悩んでいた人から「元気をもらった」などの声が届いていることを紹介。

前田監督は「通常は主要候補しか知らない中で、独立系の一人で立ち上がって社会に何かを訴えている人たちを畠山さんをフィルターにして伝えたい」という思いで取材を始めたことを話し、畠山さんから「辞めたい」という発言が出てきて、作中での畠山さんが伝える選挙の面白さと畠山さんのフリーランスライターとしての苦悩のバランスに頭を悩ませたこと明かしました。畠山さんも「あんなに辞めたいと言っているとは思わなかった」と映画を観て改めて感じたようですが「映画を作ってもらった責任として、次の人が出てくるまで繋ぐことと、次の人が出てくるように夢をもって飛び込んでもらえるような仕事にしていきたいと思いました」と話しました。

「選挙特番で池上彰さんのように喋るのはどうですか?」

畠山さんの経済的な厳しさが話題になると、大島プロデューサーから「畠山さんの仕事を見ていると、インプットとアウトプットのバランスが悪いなと思いました」と指摘。畠山さんは「お金儲けがうまくないのは自覚しています」としながら、先輩から言われた言葉として「フリーランスの記者は、組織のジャーナリストと違って、金をかけるか、時間をかけるか、命をかけるかしかないと言われたことがあります」と紹介し、「面白いものを書こうと思ったら、誰よりも取材をしなければいけない」「誰よりも取材している自信があるから、書いたものを自信をもって薦められるんです」とライターとしての考えを主張しました。

前田監督が「話す仕事も増えているのはいいですよね」と話し「映画がヒットして、選挙特番に池上彰さんのように喋るのはどうですか?」と提案。「選挙ライターという肩書で、選挙の現場でいろんなものを見てきているから、素朴な疑問にも経験値で教えてくれます」と取材中に感じた畠山さんの魅力を伝えました。大島プロデューサーが「畠山アーカイブは半端ないから」と伝え、畠山さんも「ニコニコ動画の選挙特番に出たりはしています」と話していました。

「やっぱり取材に行って良かったと思うんです」

2023年4月の統一地方選挙で69人の候補者全員取材をしたという畠山さんは「1日に29人に会って、5日間で全員取材できて、金曜にYouTubeに出せて記録更新できて」と精力的に活動をした後、2ヶ月半、選挙取材をお休みしていたそうです。その後、埼玉県知事選挙の取材で独立系の候補の演説を聞いて泣いている80歳くらいの女性とそれを見て候補者も泣いているのを見たと話し「やっぱり取材に行って良かったと思うんです」とやはり選挙取材が辞められないと気が付いたと話し、「カードの請求が来て青ざめました」と会場を笑わせました。選挙取材仲間から「怖い映画ですね。中毒者の末路を見る気持ちで、自分もこうなったらどうしようと」と言われたことを紹介。

コロナ禍を経て「一番、票を取らなかった人の得票数があがっている」とし投票率は変わらなくても選挙の動向に変化を感じているとし「メジャーな候補者の活動量が少なくなって、出馬している候補者を有権者が情報をとりに行くようになった」「コロナの時に、自治体のトップが誰であるかで給付金などの対応が違ったので自治体の選挙は自分たちの生活に大きくかかわるんだと気が付いたんじゃないか」などと推察していました。「組織票は組織票でまとまった票を取るために努力していて、それに勝つためには、自分にしか投じることができない一票なので、捨てるのはもったいない、捨てるべきではないと思います」と選挙への参加を呼びかけました。

決起集会さながらにガンバロー三唱

トークイベントの最後には観客から質問を募ると多くの手が挙がり「白票の価値」について聞かれると、畠山さんは「白票には価値がないと言うようにしています。他の立候補者への批判票だと言う人もいるけど受けとる政治家の感受性が高くない」と考えを述べ「選挙はよりマシな地獄の選択、自分の考えにピッタリの人が立候補していることはない」と断言し「選挙に当選できるのは立候補した人だけで、自分の考えに一番近いことをやってくれそうな人に投票するのが選挙だと思っていないといけない。日本人はマジメで自分の考えにピッタリ合っていないから投票に行かないで票を捨てていると、自分の考えから遠い人が当選してしまいます」と力強く伝えました。

さらに畠山さんは「自分の考えとピッタリの人に入れたいなら自分が立候補するしかない!それをしないなら、よりマシな方に入れる。もしくは次の選挙で出てほしいと思う人に出てもらえる環境作りをする」「政治に無関係ではいられないので、自信をもって1票を投じられるように情報を集めてほしいと思います」と選挙への参加を強く呼びかけました。また外国人参政権についての質問では「声をあげることで仲間が見つかると思います。一人で孤独にならずに、仲間を見つけてもらいたいし、人に伝えてほしい」と伝えていました。

イベントの最後に、前田監督は「選挙というタイトルがつくとお客さんが入りずらいのではないか」と選挙への関心が低いことから不安もあったことを伝え、口コミで広げてほしいと伝えました。畠山さんは「この映画を広げていただくには皆さん、一人一人の力が必要です」と選挙の決起集会さながらに観客に語りかけ、観客と一緒にガンバロー三唱をしてイベントは幕を閉じました。

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作品概要

映画『NO 選挙,NO LIFE』

12月9日(土)より、シネマスコーレにて公開(11月18日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開)

シネマスコーレ上映スケジュール

12/9(土)~15(金) 14:20~16:10

12/16(土)~21(木) 10:00~11:50

12/22(金) 9:40~11:30

12/23(土) 11:50~13:40

シネマスコーレ(名駅)

Address:名古屋市中村区椿町8-12 アートビル1階

名古屋市中村区椿町8-12

[あらすじ]

2022年7月の参院選・東京選挙区で 34 人の候補者全員への取材を試みる畠山に文字通りの“密着取材”を敢行。 都内各所で行われる候補者の街宣を分刻みで巡っていくと、そこには超個性的な候補者の姿が。候補者が珍種な ら、取材者である畠山もまた珍種。1 人で選挙現場を走り回り、睡眠時間は平均2時間…。本業である原稿書き もままならず、
経済的に回らないという本末転倒な生き方を続けてきた。畠山ももう 50 歳。お金にならない選 挙取材人生によって、これまで家族にも散々迷惑をかけてきた。「この生き方もそろそろ潮時」と、参院選の最 終日、引退を口にした。9 月に行われた沖縄県知事選の取材を最後にすると語る畠山を追って、沖縄へ。そこで 出会ったのは、他の地域では見られない、有権者の選挙への高い参加意識と、民主主義を諦めない県民の思い だった…。

[畠山 理仁 はたけやま・みちよし プロフィール]
フリーランスライター。1973 年愛知県生まれ。早稲田 大学第一文学部在学中の 1993 年より、雑誌を中心に 取材、執筆活動を開始。大学には 4 年間在籍したが卒業せず除籍。 第15 回開高健ノンフィクション賞受賞作「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」(17 年・集英 社)著者。同書は「咢堂ブックオブ・ザ・イヤー選挙部 門大賞」「日隅一雄情報流通促進賞奨励賞」「及川眠 子賞」「角岡伸彦ノンフィクション賞」など 5 賞を受賞 した。2021 年 10 月に出版した「コロナ時代の選挙漫 遊記」も「咢堂ブックオブ・ザ・イヤー選挙部門大賞」 を受賞。他の著作に「記者会見ゲリラ戦記」(扶桑社 新書)、「領土問題、私はこう考える!」などがある

監督:前田亜紀(『なぜ君は総理大臣になれないのか』(20)、『香川 1 区』(22)、『劇場版 センキョナンデス』(23)、『国葬の日』(23)プロデューサー)

プロデューサー:大島 新

製作:ネツゲン

編集:宮島亜紀

音楽:The Bassons(ベーソンズ)

2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/109 分

配給:ナカチカピクチャーズ

©ネツゲン


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