有名監督や俳優による電撃訪問も!伏見ミリオン座のコラージュトイレに潜入しました!きっかけや今後の展望も!
名古屋市中区の伏見ミリオン座は伏見駅の北東エリアに位置し、地上7階建てのビルに4つのスクリーンを持つ映画館です。“感動を日常に”をコンセプトに、単館系作品を厳選して上映していて、映画愛にあふれた空間を楽しむ映画館として、多くの映画ファンが集う場所となっています。
SNSで「伏見ミリオン座のトイレが凄い」と話題になっていることから、名古屋の映画情報サイトCine@nagoya(シネアナゴヤ)では噂のトイレに潜入取材を試みました。担当である岩﨑方哉副支配人の立会いの下で撮影を行い、トイレでのコラージュを始めたきっかけやこれまで来館した映画監督や俳優のエピソード、制作時のこだわりなどを聞きました。(取材日:2023年4月14日)
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伏見ミリオン座のコラージュトイレ 3番目の壁が完成間近
伏見ミリオン座は2019年4月19日に伏見駅の南西エリアから北東エリアに移転オープンしたスターキャット・ケーブルネットワークの直営映画館です。地上7階建てのビルに4つのスクリーンがあり、世界の良質な作品を上映しています。そんな伏見ミリオン座のトイレがSNSを中心に話題となっています。
伏見ミリオン座の1階入口からカフェミリオンやチケットカウンター、券売機を左側にして直進し、突き当りを左へ曲がった通路の先にある男子トイレ。外側からは普通のトイレのように見えるのですが、一歩中へ入ると、そこには目を疑うような光景が広がっていました。
右側の大きな壁を埋め尽くされた映画俳優の顔、顔、顔。中央にオードリー・ヘプバーン、その上にトム・クルーズ、ライアン・ゴズリング、下には松坂桃李さんに広瀬すずさん、エリザベス女王まで、上から下まで隙間なく貼ってあります。さらに奥の小便器の上のスペースにも広がっています。
そして左側を見てみると、洗面手洗器の鏡の上にもびっしりと顔、顔、顔。映画『ザ・ホエール』で第95回アカデミー賞主演男優賞を獲得したブレンダン・フレイザーが目に飛び込んできます。この壁はまだ少し白い部分が残っていて、間もなく完成する予定だそうです。
大小さまざまな俳優の顔写真が貼られているので、時間をかけて隅々まで見たくなってしまうのですが、あくまでもここは男性用トイレ。お客様がトイレを使用する際は外で待機し、担当者立会いの下、できるだけ短時間で撮影を行いました。
アルバイトスタッフの発案でスタート きっかけは移転オープン1周年の裏企画
“伏見ミリオン座のコラージュトイレ”がスタートしたのは、2020年3月末。担当しているのは、現在、伏見ミリオン座の副支配人である岩﨑方哉さんです。移転オープン1周年の記念に、伏見ミリオン座では移転してから1年間で上映されたチラシを壁一面に貼る館内装飾が行われていました。
〈移転・新館オープン1周年の館内装飾〉
その裏で、当時、アルバイトスタッフだった岩﨑さんが「ちょっとふざけた企画をやりたい」と支配人の許可を得ることもなく、誰にも言わずに小便器上のスペースにチラシのコラージュを始めたのが“伏見ミリオン座コラージュトイレ”のきっかけです。アメリカ映画に出てくる学生ロッカーにステッカーが乱雑に貼ってある感じが好きで、チラシの切り抜きやステッカーを貼ることが好きだったという岩﨑さん。コラージュを始めてすぐ、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために愛知県に緊急事態宣言発令され、2020年4月から約2か月間、伏見ミリオン座は休館していましたが、その間も届いたチラシを切って貼ってを続けていました。
小便器上のスペースの3分の1程度が埋まった頃、「ミリオン座のトイレ、なんか始まっている」というお客様のTwitter投稿を発見した支配人にバレてしまい、怒られるかと思ったそうですが「まあ、ここまで来たんだし、いいんじゃない」と続けられることになり、約1年間で1番目の壁が完成しました。
町山智弘さんのリツイートで話題に!コラージュのルールとこだわりは?
約1年間かけて一番目の壁が完成したときに、岩﨑さんが「実は、こんなことやっていました」と伏見ミリオン座のTwitterで投稿したところ、映画評論家の町山智弘さんが「狂気!?」というようなコメントを付けてリツイートしてくれ、SNSで話題になりました。映画好きの方々からの多くのコメントが届いたり、舞台挨拶で来館した映画監督やキャスト、映画関係者からの好反応をもらったことが自信に繋がり、2番目の壁となる右側の大きな壁にもコラージュを始めました。
2番目の壁の中心は2022年5月6日公開の映画『オードリー ・ヘプバーン』のオードリー・ヘプバーン。チラシが届いたときに、オードリー・ヘプバーンの写真を壁の中心にすることを決め、コロナも落ち着き、上映作品も増えていったことから、約10ヶ月で完成しました。
岩﨑さんにコラージュのこだわりを聞いたところ、コラージュで使用するのは、伏見ミリオン座と系列のセンチュリーシネマで上映される映画のチラシに限定しているとのこと。2館での上映ラインナップのみで構成することで、伏見ミリオン座にしかできないコラージュになっている点が魅力です。映画チラシを2枚使い、表面と裏面に印刷されている人物の顔写真を全て切り抜いて貼っていくのですが、コラージュのルールは「文字を入れないこと」「あまりにも小さな写真を省くこと」「同じ作品はなるべく離すこと」。しかし、映画『RRR アールアールアール』については「主人公2人を背中合わせにしています」と作品によってはルールを破ることもあるそうです。
大きな写真の間にできた隙間を小さな写真で埋めていくようにしていて、それぞれの配置は担当の岩崎さんのフィーリングで決めているそうです。岩﨑さんは「切りやすいとか、あの隙間を埋められるななど、コラージュ目線でチラシを見てしまっています」「多分ここに貼られるために、この形だったのかというような奇跡的な出会いもありました」と笑いながら教えてくれました。
そして、まもなく完成する予定の洗面台のガラス上の3番目の壁には、鏡を使った遊び心も。左端に鏡に映るような配置で貼られているのは映画『恋する惑星』の有名なあのシーン、岩﨑さんは「わかる人にだけわかってもらえれば」と微笑んでんでいました。
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マチュー・アマルリック監督と片桐はいりさんも感激!来館記念の写真も!
約3年間に渡って続けてきた男子トイレのコラージュを振り返って嬉しかったこととして「マチュー・アマルリック監督の来館」を挙げました。2022年9月19日に映画『彼女のいない部屋』の舞台挨拶でマチュー・アマルリック監督が来館した際、カフェで打ち合わせをしながら、ひつまぶしを食べていたマチュー監督に「男子トイレをみてください!」と声をかけたそうです。
トイレのコラージュに驚きながらも『彼女のいない部屋』のチラシも貼っていたので凄く喜んでいたそうで、「僕の写真はどこ?」と探していたそうです。チラシ裏のマチュー監督の写真も小さいながら貼ってあったので、場所をお伝えしたそうです。
また最近では、2023年3月25日に片桐はいりさんが系列のセンチュリーシネマで行われた『もぎりさん』『もぎりさん session2』の上映とアフタートークイベントで来名した際に、伏見ミリオン座に来館されました。片桐さんは「東京の友人から“名古屋に行くなら伏見ミリオン座の男子トイレに行け”という謎のメッセージを残された」とセンチュリーシネマのスタッフに伝えたそうで、岩﨑さんに「片桐はいりさんが行くかもしれない」と連絡があったとのこと。
コラージュトイレをみた片桐さんはとても感動していたそうで、初期に貼ったチラシの中には色あせているものもある事を伝えると「それも味だし、さらに重ねて行っても面白いんじゃない」と言ってもらえたそうです。来館の記念にトイレで撮影した写真や「男子トイレで待つ!」とメッセージの入ったサイン色紙も飾ってありました。
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「最初は名物になるなんて思いもしませんでした」4番目の壁はどこに?
就職活動の時に「何か一つ突き抜けた経験を持て」というアドバイスが印象に残っていると話す岩﨑さんは“コラージュトイレ”が伏見ミリオン座の名物として定着していくようにこれからも続けていきたいと考えているそうです。4番目の壁をどこにするのかは悩んでいて、水に濡れない場所、暗すぎない場所、など貼れる場所を考えている中、お客様からは女性トイレでのコラージュ要望もあるそうです。
コラージュの制作は岩崎さんがオープン直後やレイトショーなどの男性トイレの利用者の少ない時間帯に行っているそうですが「僕の感覚でやっているので、チラシの切り抜き方も説明ができないんです」と人に任せるが難しいことを明かしました。女性トイレでの作業になるとオープン前か閉店後の作業になることも悩んでいるそうです。まだ詳細は決まっていないそうですが、岩﨑さんは「4番目の壁を始める時は、SNSでつぶやくと思います」と今後の展開を匂わせてくれました。
岩﨑さんは「最初は名物になるなんて思いもしませんでしたが、自分の趣味で勝手に初めたことが話題になって嬉しいです」と話し「作業自体が趣味でもあるので、気分転換にもなります」と副支配人としての仕事も多忙で作業時間を作るのも大変なようですが、楽しみながらコラージュを続けているそうです。コラージュの作業中にお客様に遭遇したこともあり「君だったんだ!」「計画書ないんでしょ」「いいセンスだね」「ミリオン座のこういうところが好き」と言ってもらえたこともあると嬉しそうに話していました。また岩崎さんはアルバイトスタッフの面接時に「男子トイレをみて、この映画館いいなって思った」と学生さんから言われたことがあると頬を弛めていました。
伏見ミリオン座は「良質な作品をお客様に届けていくと同時に、映画館をエンタテインメントとしてさまざまな世代に楽しんでいただける場所」と打ち出していて、稲垣支配人も「スタッフが楽しんでいなければ、お客さんを楽しませることはできない」と岩崎さんの挑戦を温かく見守っている様子でした。
施設概要
伏見ミリオン座
Address:名古屋市中区錦二丁目15番5号