指名手配犯・桐島聡を演じる上で大切にしたことは? 映画『「桐島です」』毎熊克哉さんに名古屋でインタビュー
7月4日(金)より伏見ミリオン座他にて全国公開となる映画『「桐島です」』は、1970 年代に起きた連続企業爆破事件に関与したとして全国指名手配されていた「東アジア反日武装戦線」メンバーで、約半世紀にわたり逃亡生活を続けた桐島聡の人生を描いた作品です。
長い間、「ウチダヒロシ」という偽名を使い神奈川県藤沢市内の土木関係の会社に住み込みで働き、ひっそりと暮らしていましたが、2024年1月26日に“桐島容疑者(70)とみられる人物が末期の胃がんのため、神奈川県内の病院に入院していることが判明”というニュースが流れるやいなや、令和の日本に衝撃を与えました。「最期は本名で迎えたい」と語り、報道の3日後に亡くなった桐島は何を思い、どんな事件を起こし、その後どんな逃亡生活を送っていたのか。ナゾに満ちた桐島の軌跡を『夜明けまでバス停で』(22)の高橋伴明監督と脚本家の梶原阿貴さんがシナリオ化。事件を知る世代はもちろん、知らない世代でにとっても興味深い作品になっています。
桐島を演じる毎熊克哉さんは、主演映画『ケンとカズ』(16)で注目されて以来、ドラマ「恋は続くよどこまでも」(20)や大河ドラマ「光る君へ」(24)で魅力的なキャラクターを演じ、現在公開中の映画『初級演技レッスン』でも主演をつとめる注目の俳優です。本作では20 代から 70 歳で亡くなるまでの桐島を演じ切っています。また、さそり部隊のメンバー・宇賀神寿一役を『SR サイタマノラッパー』(09)、映画『心平、』(24)主演の奥野瑛太さん。桐島がライブハウスで出会い相思相愛の仲になるミュージシャンのキーナ役をドラマ『バイプレイヤーズ』(17〜)のジャスミン役で脚光を浴び、『春画先生』(23)で新境地を見せた北香那さんが演じています。
桐島とはどんな人間だったのか。毎熊さんが名古屋でインタビューに応え、作品のみどころや初挑戦となったギター弾き語りについて、また桐島を演じる上でいちばん大切にしたことを教えてくれました。(取材日:2025年5月28日)
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「誰にも分からないことを想像しながらつくっていった」日本映画界の重鎮・高橋伴明監督と初タッグ
逃亡の末亡くなった桐島は被疑者死亡のため不起訴処分になっています。何を思い、どんな事件を起こし、指名手配されてから、どんな逃亡生活を送っていたのか、桐島とはどんな人だったのか。ナゾだらけの題材を扱った今作。桐島を演じた毎熊さんは「初めて脚本を読んだとき時系列に沿って時が流れていって、すごくシンプル。その中に、いろんなものがうごめいていて、すごく想像力が掻き立てられる脚本だと思いました」と話しました。「誰にも分からないことを想像しながらつくっていった」と役作りについて話し、事前に高橋監督と“桐島像”のすり合わせはなかったそうで「こういう桐島だったんじゃないか、というのは台本に“匂い”としてあった。なのでその匂いを僕がどう体現するか。自分で想像をして、(監督に)何か言われたらそれに従おうという心持ちでした」と撮影前の気持ちを明かしました。
配役を得た上で高橋監督とタッグを組むのは初めてという毎熊さんは「自分が70代より上の監督とご一緒することはなかったので、とても新鮮でした」と話しました。“暇を持て余す”という演出も、40代~50代の監督と70代~80代の監督ではその感覚が違う。「どんな指示をされるのか分からないから楽しかったです」と撮影を振り返りました。
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日常を繰り返した“長さの重み” 毎熊さんが「葛藤を表現」したシーンとは?
映画『「桐島です」』では、一連の連続企業爆破事件が犠牲者を出したことで、深い葛藤に苛まれながらも「ウチダヒロシ」という偽名を使い逃亡生活を続ける桐島の姿が描かれています。工務店に住み込みで働き、静かな生活を手にし、周りからは「うーやん」と慕われ、時にはライブハウスで音楽を楽しむ姿も。脚本に“匂い”としてあった「桐島ってこういう人間だったんじゃないか」が毎熊さんによって表現されるたびに桐島のナゾに近づいたような感覚になります。そのひとつに、桐島が住んでいるアパートの階段を丁寧に修理する場面があります。毎熊さんは「そういうところに桐島のイメージが描かれている」と話し「自分はそれをいい人として演じる感覚はなかったです。人にホコリがついていたら取る感覚に似ています。気になったから修理したっていう感じでした」と自身の解釈を大切にしながら演じていたことを教えてくれました。
また毎熊さんは「つまらない冗談を言うところが好きですね」と桐島が劇中で得意気に披露する“ある冗談”についてもふれ「実際にそういう人だったかは分からないけど、口が達者なわけじゃないのに冗談ひとつを言う心をもってるところが好きです」と話す姿に毎熊さんの桐島への愛着を感じました。桐島渾身の“冗談”はぜひスクリーンで聞いてくださいね。そして、毎熊さんが桐島を演じる中で「いちばん大事にしていた」と話してくれたのが、桐島が朝起きて顔を洗い、歯を磨いて、コーヒーを淹れる、何気ない日常が繰り返されるシーンです。
「約40年、アパートのあの部屋にいた。いつでも逃げられるように靴が置いてあったりする中で、淡々とした中にある葛藤を表現できるのは、あそこのシーンしかなくて」と明かし、「日々、いろんな朝を迎える。誰にも見つからずに迎えられたっていう安堵の朝もあれば、いつまでこの生活を続けるんだろうって、もう自首したいなって思う朝もあっただろうし。70歳になるまで、ずっと繰り返した日常の長さの重み。僕はこの映画の肝だなと思って演じていました」と静かに力を込めて語りました。
ギター弾き語りは初めて!北香那さんも「緊張したって言っていました!」
生前の桐島聡はブルースやロックなどが好きで、音楽好きが集まる藤沢市内のバーに通っていたこともあり、映画『「桐島です」』の中でもライブハウスで音楽を楽しむ桐島が描かれています。そこで桐島は北香那さんが演じる歌手・キーナと出会い、歌声に心を動かされ相思相愛の関係となっていきます。劇中では北さん、毎熊さんともに河島英五さんの名曲「時代おくれ」のカバーをギターの弾き語りで披露しています。毎熊さんは「ピアノの弾き語りは映画『マイ・ダディ』(2021年公開)で経験したことがあるけど、ギターの弾き語りは初めて」と話し「こういう職業なんで、歌と踊りはなんとなく絶対に通るところなんですけど、ギターを弾きながら歌うっていうのはまた別で」と苦笑い。
北さんと同じ日に弾き語りシーンの撮影をされたそうで「周りにたくさんスタッフがいて、よーい!で撮影がはじまる。北さんも“めちゃくちゃ緊張した”って言っていました!」と撮影の裏側について話しました。練習ごとは早めに始めたいタイプという毎熊さんは撮影の1ヶ月前から練習に励んでいたことも教えてくれました。弾き語りの場面は作品の中でも重要なシーン。桐島の人生と「時代おくれ」の歌詞が見事なまでに重なり、なんとも言えない心情になります。
映画『「桐島です」』は北さんに加え、さそり部隊のメンバー・宇賀神寿一役を演じる奥野瑛太さん、隣の部屋に住む男役の甲本雅裕さん、山中聡さん、白川和子さん、下元史朗さん、趙珉和さんといった高橋監督に縁の深いキャスト陣が集結。さらに、“謎の女”として高橋監督のパートナーで昭和を代表する女優の高橋惠子さんが出演。本作のタイトルに触れた惠子さんが伴明監督作品に初めて自ら出演を希望したことでも話題を呼んでいます。約半世紀、名前を偽り生きた桐島。彼が逃亡生活のラストをどんな思いで迎えるのか、ぜひ映画館で確かめてください。映画の結びには毎熊さんいわく「強烈なおまけ」が。どんなラストが待っているのか、お見逃しなく!
7/13(日) 映画『「桐島です」』公開記念舞台挨拶 !@伏見ミリオン座
映画『「桐島です」』の公開を記念して、名古屋の伏見ミリオン座で、7月13日(日)に公開記念舞台挨拶が行われます。映画『「桐島です」』で桐島聡を演じた毎熊克哉さん、製作総指揮の長尾和宏さんが来館し、本編上映後に舞台挨拶に登壇します。また、当回を鑑賞し、映画『「桐島です」』のパンフレットを購入した方を対象にサイン会も開催されます。オンラインでの先行販売は始まっていて、劇場窓口での販売は7月11日(金)劇場オープンからとなります。(オンラインにて完売の場合は窓口販売はありません)
【日時】2025年7月13日(日)16:45の回 上映後
【登壇】毎熊克哉さん、長尾和宏さん(製作総指揮)(予定)
【場所】伏見ミリオン座 ミリオン1
【料金】通常料金
(※各種割引・サービス料金適用可・ムビチケ使用可 ※無料招待券使用不可)
偽名で⽣きてきた。
けれど⼼までは、偽らなかった――/㊐ :の回
「#桐島です」舞台挨拶の回
予約開始しました▽https://t.co/BgRCjWW9fq
※購入間違いにご注意ください約49年の逃亡生活を経て2024年1月29日に本名を告げて死去した謎の男、桐島聡の軌跡と〈青春の正義〉 https://t.co/ZdfeK4IZ0H pic.twitter.com/som6kvHzS2
— 伏見ミリオン座 / センチュリーシネマ (@fusimimillionza) June 24, 2025
作品概要
7月4日(金) 伏見ミリオン座、イオンシネマ名古屋茶屋、刈谷日劇、イオンシネマ豊川 ほか全国公開
〈あらすじ〉
1970年代、高度経済成長の裏で社会不安が渦巻く日本。大学生の桐島聡は反日武装戦線の活動に共鳴し、組織と行動を共にする。しかし、一連の連続企業爆破事件で犠牲者を出したことで、深い葛藤に苛まれる。組織は警察当局の捜査によって、壊滅状態に。指名手配された桐島は偽名を使い逃亡、やがて工務店での住み込みの職を得る。ようやく手にした静かな生活の中で、ライブハウスで知り合った歌手キーナの歌「時代おくれ」に心を動かされ、相思相愛となるが…。
出演:毎熊克哉、奥野瑛太、北香那、原田喧太、山中聡、影山祐子、テイ龍進、嶺豪一、和田庵、伊藤佳範、宇乃徹、長村航希、海空、安藤瞳、咲耶、長尾和宏、趙珉和、松本勝、秋庭賢二、佐藤寿保、ダーティ工藤 白川和子、下元史朗、甲本雅裕 高橋惠子
監督:高橋伴明
製作総指揮:長尾和宏
企画:小宮亜里
プロデューサー:高橋惠子、高橋伴明
脚本:梶原阿貴、高橋伴明
音楽:内田勘太郎
撮影監督:根岸憲一
照明:佐藤仁
録音:岩丸恒
美術:鈴木隆之
衣裳:笹倉三佳
ヘアメイク:佐藤泰子
制作担当:柳内孝一
編集:佐藤崇
VFXスーパーバイザー:立石勝
助監督:野本史生
ラインプロデューサー:植野亮
制作協力:ブロウアップ
配給:渋谷プロダクション
製作:北の丸プロダクション
2025年│日本│カラー│アメリカンビスタ│5.1ch│日本語│105min
Ⓒ北の丸プロダクション