本物の重厚感をスクリーンで味わう映画『信虎』主演の寺田農さんに名古屋でインタビュー
11月12日より名演小劇場、TOHOシネマズ津島などで公開となる映画『信虎』は武田信玄の父、信虎の晩年が描かれた本格時代劇です。信玄から追放され30年のときが流れたころ、信玄が危篤に陥ったことを知った信虎が再び武田家で復権しようと甲斐への帰国を試みるも、孫の武田勝頼と其の寵臣に阻まれてしまい・・・80歳の「虎」が武田家存続の為に最後の知略をめぐらせるというストーリーです。意外な結末にも注目です!
映画『信虎』の公開を記念して、主役の信虎を演じた寺田農(みのり)さんが名古屋でインタビューに答えてくれました。脚本協力のいきさつ、時代劇への思い、撮影の裏話など、知的で洒脱なおしゃべりの中で答えてくれました。(取材日:2021年10月14日)
新着情報
Contents
武田信玄公の生誕500年記念映画『信虎』主演は寺田農さん!ヒロインは谷村美月さん、豪華俳優人が勢ぞろい
映画『信虎』は武田信玄生誕500年、甲府開府500年を記念して製作された時代劇で、武田信玄の父・信虎の晩年を描いた物語です。勢力を伸ばす信長と真っ向から勝負しようと暴走する孫の勝頼を止め、武田家を存続させようと知略をめぐらせる80歳の信虎の姿が描かれています。
『平成ガメラ』シリーズや『デスノート』の金子修介さんがメガホンを取り、映画『肉弾』『ラブホテル』や『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐の声優として知られ、数々の大河ドラマなどの時代劇作品に出演されてきた寺田農さんが36年ぶりに主演をつとめました。武田家の映画『影武者』から40年、『天と地と』から30年。『天と地と』で上杉謙信を演じた榎木孝明さんが再び本作で謙信を演じるほか、永島敏行さん、渡辺裕之さんらベテラン俳優が重要人物として出演、また前大河ドラマ『麒麟が来る』でインパクトある演技で話題となった矢野聖人さんなど若手俳優も戦国乱世を生き抜く姿を巧みに演じています。ヒロインには谷村美月さんが配され、信虎の娘15歳のお直を好演しています。
脚本にも協力した寺田農さん「難しいことは分からなくていい、若い人に時代劇をみて本物を感じて欲しい」
史実に数行しか残されていない部分をファミリードラマとしても、妄執に囚われる老武将・信虎の姿をのぞき見るようにも感じられる本作『信虎』。寺田さんに脚本協力について伺うと「撮影台本になるまで相当の量がありました。最初は映画6時間くらいかかるんじゃないかという研究論文みたいなね」と述べ、「武田家の歴史研究家の宮下さんが初稿を書いているから、思い入れがありすぎて内容を切れないんですよね」と話しました。「歴史特集でなく映画としてやるには、もう少しドラマチックにするべきだし、だから金子監督と僕とで断腸の思いで映画の尺に合うまで切ったんです。そして台詞回しのアドバイスも申し上げたわけです」と脚本にかかわった経緯を教えてくれました。エンドロールに脚本協力として名前が挙げられていることについて「ああいうのは、いらないんだって」と照れくさそうに話す寺田さんの表情が印象的でした。
時代劇について「もう若者の100人のうちおよそ78人は『忠臣蔵』を知らない時代になっています。そういう若い世代に向けて分かりやすく何とか伝えようとするとテロップでいっぱいになる・・・むしろ分からなくなる」と笑い、「研究家たちは全部伝えたいから内容を削られない。難しいですよね」と話しました。映画の初号を試写して脚本・共同監督の宮下さんに感想を聞かれた際の答えは「長い」の一言だったと明かしました。
「面白ければ長いと感じません。分かりやすいと面白いは違うからね」と述べ、試行錯誤して本作の形になったそうです。「難しいことが分からなくてもいいんです。ただ本物の建物、床の黒光りするところとか、天目茶碗とか、5百年ってこういう重厚感なんだと感じてもらえればいいのです。重要文化財の肖像画が平気で登場するところに“只者ではない”と感じてくれれば、時代劇が普通に見られるようになると思います。そういった意味で若い人にいっぱい見てほしいな」と語りました。
また、黒澤明監督作品『影武者』などの音楽を担ってきた池辺晋一郎さんが『信虎』で聞かせる音楽について「近年の、映画音楽の最高傑作じゃない?」と前のめりで話しました。戦国武将たちがいた時代の粋を惜しみなく映し出し、スタッフやキャストの熱い思いがこめられた映画『信虎』ぜひスクリーンでご覧ください。
役者のために電柱を抜いた 映画『散り椿』中日新聞特別試写会に岡田准一さんと木村大作監督が登壇
史実に基づく、本物の武蔵を描いた映画『武蔵ーむさしー』三上康雄監督に名古屋でインタビュー
動物の出演料は高い?!役者は体力と忍耐力
映画『信虎』の撮影中のエピソードを伺うと寺田さんはニコニコして「道中、馬が出てくるでしょ?あれは本物にこだわって当時と同じ種類の馬なんです。サルもだけど、動物は出演料が高くてね、言うこと聞かない割りに高いんですよ」と教えてくれました。動物たちの演技も見所のひとつです。
そして「主演はね、すべてのシチュエーションを整えてくれたら信虎役として頭を坊主にして衣装を着て台詞言えば何とかなるのよ」といたずらっぽく微笑み「でも、寒いのがイヤだったね。あとは楽しくてね」と話しました。主な撮影場所がお寺で、朝8時から夜7時までの貸し出しで火気厳禁だったとのこと。「ストーブひとつ持ち込めないんですよ。寒いけど我慢しなきゃだなぁ」とこぼしました。また、「僕は丸坊主でメイクなどに時間がかからず済んで良かったけれど、衣装を着てカツラもつけて・・・という役者さん達は朝3時くらいから準備しているし、スタッフも含めて大変だったよね」と労い「役者は体力のみ!体力と忍耐力ですね」と話しました。
そんな役者人生を長年、しかも第一線で走り続けている寺田さんに“元気の源”を伺うと「何もしないこと」とシンプルな答えが返ってきました。「体にいいから、これをするとかしないとか逆にストレスになるじゃない。僕はそういった意味で鈍いのかな、ストレスを感じたことがないんです。イライラしても雰囲気が悪くなるだけだから、イライラすることは僕にはないんです」と話しました。ありのままを受け入れる度量の大きな寺田さんが、妄執にとらわれジタバタする信虎を演じる面白さを感じた一瞬でした。息子の信玄に追放され悪逆非道と史実で言われてきた“信虎”を、本作ではどこか憎めずチャーミングに感じさせるのは寺田さんだからこそ成せる技なのでしょう。「映画はね、いろいろな人たちが集まって“ああでもない、こうでもない”って言い合って作り上げることが面白いんですよ」と製作の魅力を述べた寺田農さんの長年の役者人生の集大成とも言える映画『信虎』。戦国時代の一場面を目撃しているような、久々の本格的時代劇をお楽しみください。
作品概要
11月12日(金)より名演小劇場、TOHOシネマズ津島にて公開
出演:寺田農/谷村美月、矢野聖人、荒井敦史/榎木孝明、永島敏行、渡辺裕之/隆大介、石垣祐磨、杉浦太陽、葛山信吾、嘉門タツオ/左伴彩佳(AKB48)、柏原収史ほか
監督:金子修介
共同監督・脚本:宮下玄覇
音楽:池辺晋一郎
製作:ミヤオビピクチャーズ
2021年/日本/日本語/カラー/ビスタ/5.1ch/135分/
配給:彩プロ PG-12
(C)2021ミヤオビピクチャーズ