「佐藤健さんは15年前の出来事をインストールしているようでした」映画『ひとよ』白石和彌監督に名古屋でインタビュー
11月8日に公開となる映画『ひとよ』は劇作家・桑原裕子さん率いる劇団KAKUTAの舞台作品を『凶悪』『孤狼の血』などで知られる白石和彌監督が映画化した作品です。15年前に、ある家族に起こった一夜の事件が母とその子どもたち三兄妹の運命を大きく狂わせ、再開した家族が葛藤や戸惑いの中で、一度は崩壊してしまった絆を取り戻そうともがく様子が描かれています。一家の母親を田中裕子さん、長男を鈴木亮平さん、次男を佐藤健さん、兄弟の末の妹を松岡茉優さんが演じています。
白石監督に名古屋でインタビューしました。撮影現場でのキャストの様子や映画の舞台となったタクシー会社についてなどを語ってくれました。(取材日:2019年10月25日)
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佐藤健さんは15年前の出来事をインストールしているかのよう
映画『ひとよ』は15年前に、ある家族に起こった一夜の事件が母とその子どもたち三兄妹の運命を大きく狂わせ、再開した家族が葛藤や戸惑いの中で、一度は崩壊してしまった絆を取り戻そうともがくヒューマンドラマです。
15年前に起きた事件の様子が映画の冒頭に描かれていますが、母親の田中裕子さん以外の3兄妹は子役が演じています。白石和彌監督は「15年前のシーンを最初に撮影し、3分くらいの繋いだ映像を健くんや大人の役者たちに観てもらってから(15年後の)撮影に入りました」と話し、その際の様子を「あそこで起きた事件が15年間、子供たちに残るものになります。映像を観る佐藤健くんの顔が凄くて、その出来事をインストールしているようでした」と語りました。
また佐藤さんと新人ドライバー役の佐々木蔵之介さんによるクライマックスのアクションシーンについて白石監督は「生々しくしたいとリクエストしたら、健くんが『じゃあ蔵之介さんに痛いのを我慢してもらうしかないな』って言っていたのがカッコいいなと思いました(笑)」と撮影時の佐藤さんの言動を振り返っていました。
映画『ひとよ』では佐藤さんの無精ひげや、やさぐれた感のある姿が話題になっております。なぜ、白石監督の映画では役者さんの新たな面を観ることができるのかを聞くと「特別なことはしていませんが、メイク“アップ”じゃなくてメイク“ダウン”を基本にしていて、キャスティングの時に(普段とは)違う雰囲気の役をあててみようというのはありますね」と教えてくれました。
スポンサーリンク温かさのあるタクシー会社の様子と朝日のシーン
映画の主な舞台となるのは3兄妹の生まれ育った実家であるタクシー会社です。ここで暮らす長男と妹の元に母親が15年ぶりに帰ってきて、東京でフリーライターとして働く次男も帰ってきます。撮影に入るギリギリまでロケ地となるタクシー会社が見つからなかったそうで、白石監督は「スタッフが毎朝4時にロケ地となった茨城県にある浜松タクシーの社長さんに会いに行ってお願いして撮影場所としてお借りすることができました。撮影中は、近くにプレハブを立ててそこで営業してもらって撮影しました」と教えてくれました。また15年という時間の経過を感じさせる家の中の美術について「お母さんがいなくなって兄妹だけになった食卓の感じや、昔のまま残っているものはなんだろうと想像し、かなりこだわって作りましたね」と語りました。
また白石監督は「タクシー会社そのものが疑似家族。それぞれの家族は問題を抱えているけどタクシー会社は温かくて」と事件以降に営業を再開させた音尾琢真さん演じる3兄妹の従兄の存在の大きさについても話しました。タクシー会社で働く事務員役の筒井真理子さんや新人ドライバー役の佐々木蔵之介さんにも注目です。
また映画の中で描きたかったこととして「厳しい状況の家族に朝日を見せてあげたかったんです」と話す姿に、白石監督の心根の優しさが垣間見えました。映画『ひとよ』はそれぞれが過ごした15年間や家族のこれからに想いを馳せ、親の願いと子供の気持ちについて考えたくなる、心地よい読後感のある映画です。ぜひ劇場でご覧ください。
作品情報
11月8日(金) 全国ロードショー
キャスト:佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、大悟(千鳥)、佐々木蔵之介・田中裕子
監督:白石和彌
脚本:髙橋泉
音楽:大間々昂
原作:桑原裕子「ひとよ」
製作幹事・配給:日活
配給協力:ライブ・ビューイング・ジャパン
企画・制作プロダクション:ROBOT
PG12
(c)2019「ひとよ」製作委員会
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