AIが被告人⁉︎愛知が舞台のSF法廷サスペンス映画『INTERFACE -ペルソナ-』 下向拓生監督にリモートでインタビュー
11月25日(土)から名古屋のシネマスコーレで公開の映画『INTERFACE -ペルソナ-』は愛知県で撮影されたSF法廷サスペンスです。個人の趣味嗜好を学習したAI(デジタルツイン)が普及し、AIが心を持ち始めた平成39年にAIを被告人として起訴することができる法律が施行された近未来が舞台となっています。
愛知地方検察庁”知能機械犯罪公訴部”に異動した新米検事の米子天々音が、喋る検察官バッジを相棒に、自死した女性のAI(デジタルツイン)を取り調べます。被害者のデジタルツインの”彼女”は「私は殺された」と供述するも、その心情は虚像なのか実像なのか…。AIと人間との葛藤と共生が描かれ、知らず知らずのうちに物語に没入してしまう作品です。愛知県生まれの下向拓生監督にリモートでインタビューし、作品について、出演者の津田寛治さんとの繋がり、本作でチャレンジしたことなどを聞きました。(取材日:2023年11月7日)
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愛知県の一宮市役所、旧本多忠次邸宅、東海愛知新聞社などで撮影!
映画『INTERFACE -ペルソナ-』はやがて現実に起こるかもしれない知能機械犯罪と、それに関わる検察、警察、司法の姿が描かれたSF法廷サスペンスです。個人の趣味嗜好を学習したAIの証言によって自死と処理されるはずだった一つの事案が、事件性をはらむと気づいた新米検事と喋る検察バッジ「テン」が謎に迫る姿が描かれています。物語は平成39年の設定。近未来やパラレルワールドのような雰囲気で、やがて現実に起こるかも知れないという思いを刺激します。また「このあと、どうなるの?」と展開に翻弄される面白さが味わえます。
映画『INTERFACE -ペルソナ-』のメガホンを執ったのは、一般企業で働きながら短編『N.O.A』、映画『センターライン』(2018年)などを制作してきた下向拓生監督です。本作は、自動運転AIについて描かれたSF法廷サスペンス『センターライン』の正統続編として制作されましたが、初めてでも楽しめる作品です。
愛知での撮影について聞くと下向監督は「育ちは富山県と福井県ですが、母の実家があるので生まれが愛知なんです。現在、両親は愛知で暮らしていて、わたしも帰郷するついでに色々できるので、制作での地の利がよかったんですよね」と愛知との縁を語りました。そして「前作の映画『センターライン』からのお付き合いで、今回も主人公が勤務する検察庁は一宮市役所に撮影協力して頂きました。また、検察庁以外の場所も出したいと思っていて、岡崎市にいいロケ地があるとのことだったのでお世話になりました」と話しました。
冒頭の市長(演:津田寛治さん)がインタビューを受けるシーンは、”文化的なイメージがある場所が良い”と岡崎市に相談して能楽堂が候補に挙がったそうです。下向監督は「残念ながら能楽堂はスケジュール的に空きが無かったのですが、新たに旧本多忠次邸を勧めてもらいました」と述べました。スパニッシュ様式を基調とした昭和の洋館「旧本多忠次邸」の重厚な雰囲気が場面をキリっと引き締めています。その他、オフィスシーンや会議シーンは「東海愛知新聞社」(岡崎市)、名古屋市など愛知県内で撮影した本作。ロケ地をめぐる楽しみ方もできそうです。
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「中学時代からファンだった」同じ中学OBの津田寛治さんが出演 福井の映画祭でつないだ縁からオファー
映画『INTERFACE -ペルソナ-』で愛知県の某市の元市長として津田寛治さんが出演。先述の本多忠次邸でインタビューを受けるシーンに登場します。津田さんとの関係を伺うと下向監督は「ちょっと話が長くなるのですが、僕の中学時代に津田さんが映画『模倣犯』(2002年)に出演して地元で話題になりました。福井県の僕が通っていた中学校の卒業生だったので、OBとしてビデオレターを貰おうと学校がお願いしたら本当にビデオレターが送られてきたんです。そういう思い出があって、その時からずっと僕は津田さんのファンだったんです」と声を弾ませました。また下向監督は「僕は社会人になってから映画制作を始めました。短編映画が福井の映画祭(福井駅前短編映画祭)で上映されることになって、その時の審査員が津田さんだったんです。そこで初めてお会いしました。中学時代のビデオレターの話をしたり、映画の講評を好意的に評価して頂いたりしてご縁ができました」と津田さんへの熱い思いを明かしました。
津田さんにオファーした決め手を聞くと「元市長は凄く大事な役で、目力が無いといけないと考えていました。そこで津田さんの顔が浮かんで事務所にお声がけしましたら、快く引き受けて下さいました」と答えました。そして津田さんはAIと人間の関係に興味を抱いていたとのことでした。下向監督が熱望した津田さんの目力にご注目下さい。
津田寛治さんが登場するシーンでは、名古屋で活躍する大前りょうすけさんが元市長の秘書として出演します。主人公の検事を演じる吉見茉莉奈さんは愛知出身で、前作『センターライン』から引き続き新米検事の米子役を好演しています。
検察バッジ(スマートバッジ)の開発に苦戦「“生感”みたいなもの、映画マジックを大事にしたかった」
映画『INTERFACE -ペルソナ-』は平成39年の近未来が舞台で、AIが心を持ち始め、人間を害することが起きたことで、AIを被告として裁判するという世界が描かれています。検事バッジがスマート化し、検事事務官として存在する点もとてもユニークです。検事バッジが人格を持ち、主人公と掛け合う姿はコミカルで微笑ましく、見どころの一つと言えるでしょう。現実におけるAIと人間の葛藤と共生の未来が予言されているようです。
下向監督に検事バッジの「テン」について聞くと、「2019年に充電期間を頂いて、2020年はコロナ禍で自分の中で…語弊がありますが、割といい機会でいろいろ考えることができました。もともと2019年の時からスマートバッジが喋るというアイデアがありました。でもそれが実現しないと先に勧めないと思ったので最初にバッジの開発から始めたんです」と述べました。CGだと思っていましたと伝えると「僕はCGを使った映画、例えば山崎貴監督などの作品が好きです。でもCGがない時代のパペットを使うとか映像トリックを使うとかの工夫をして特殊効果を狙うのも好きなんです。本作では”生感”みたいなもの、映画マジックを大事にしたくてCGではなく開発することにしました」と語りました。
開発がスムーズに進んだのかと伺うと「どういう構造にするか2020年にやってみたのですが、上手くいかなくて1年間くらい解決しなかったんです」と話し、「2021年になったときに開発だけじゃ進まないと思って、ストーリー作りと同時並行でやってきた感じです」と開発の苦労を滲ませました。監督自ら開発して完成させた検察バッジはとてもチャーミング。劇中のアイコンのような存在です。「モノ」ではなく、下向監督がいう”生感”を感じられることでしょう。
「本質的には、アイデンティティの話です」気になる今後は!?
下向監督の前作『センターライン』は自動運転が普及した平成39年に、車同士の正面衝突による死亡事故が起こり、自動運転を制御していた人工知能のMACO2を過失致死罪で起訴しようとするストーリーで、人工知能のMACO2は「誤作動ではなく、わざと殺しました」と供述。その真偽は…という内容でした。『センターライン』の続編として作られた本作『INTERFACE -ペルソナ-』もAI(デジタルツイン)が「私は殺された」と供述しAIが”心”を持つ点で重なります。SF法廷劇としても、ミステリーとしても引き込まれる作品で、続編やシリーズ化を期待したくなります。
今後の制作について聞くと下向監督は「特には、まだ…ですね」と言いましたが、愛知で撮影した作品を今後も期待していると伝えると「是非!そうなったら取材してくださいね」と朗らかに応えてくれました。下向監督は映画『INTERFACE-ペルソナー』について「本当に、いろんな人に観て貰えたらうれしいです。1番は若い人かな。宣伝上SFとか言われていますが、作品の本質はアイデンティティの話なんです。若い人は、なぜ自分は自分なのだろうと悩むと思うので」と若者に寄り添った気持ちを述べ、「もちろん大人の皆さんにも見ていただきたいです」とアピールしました。AIと人間の葛藤と共生が描かれた映画『INTERFACE -ペルソナ-』を是非スクリーンでお楽しみください。
前作『センターライン』は11月10日よりU-NEXT配信(見放題配信)スタート!<U-NEXT>
(Amazon Primeでも11月配信予定)
作品概要
2023年11月25日(土)よりシネマスコーレで公開
監督・脚本・編集:下向拓生
出演者:吉見茉莉奈 合田純奈 大山真絵子 澤谷一輝 入江崇史 松林慎司 みやたに 長屋和彰 荻下英樹 星能豊 涼夏 南久松真奈 青山悦子 小林周平 冥鳴ひまり(VOICEVOX)大前りょうすけ 津田寛治
ロケーション協力:いちのみやフィルムコミッション 岡崎市観光推進課 旧本多忠次邸 東海愛知新聞社 日本陶磁器センター