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2023-05-17

【密着レポート】名古屋を舞台にしたミュージカル映画『はじまりの日』中部電力MIRAI TOWER・Hisaya-odori Park(久屋大通公園)ミズベヒロバで撮影


 

2024年春の公開を予定している映画『はじまりの日』はモントリオール映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した『健さん』、故・樹木希林さんが企画・出演した『エリカ38』などで注目を集める名古屋出身の日比遊一監督が、愛知を舞台に制作しているミュージカル映画です。この映画は、かつてロックシンガーとして一世風靡した<男>の再生と、いつかスターになりたい<女>の誕生の物語とされています。ヒロインはミュージカル「RENT」で2020、2023年にミミ役を演じ、この秋に上演されるミュージカル「ラグタイム」の出演が発表されたばかりの本格派・実力派のシンガーの遥海さんです。そして、地元の中京大学・岡崎女子大学・愛知教育大学のダンス部総勢30人が華麗にパワフルにダンスパフォーマンスするところも見逃せません。

愛知を舞台に名古屋市の協力のもと撮影がスタートしていて、5月12日には名古屋を代表する新たな聖地・中部電力 MIRAI TOWER(旧・名古屋テレビ塔)やHisaya-odori Park(久屋大通公園)ミズベヒロバでヒロインの遥海さんが歌い、大勢のダンサーが出演するシーンが撮影されました。撮影現場の様子と日比監督のインタビューをお伝えします。(取材日:2023年5月12日)

名古屋が舞台のミュージカル映画『はじまりの日』日比遊一監督・ヒロインを演じる遥海さんのプロフィール等

「映画『アリー/ スター誕生』のような作品が名古屋を舞台にできたら」ヒロインは10年程前に注目していたシンガー・遥海さん

日比遊一監督の最新作である映画『はじまりの日』の撮影が始まって4日目の5月12日。中部電力 MIRAI TOWERで劇中の特別なシーンの撮影がありました。その撮影開始前に、日比監督がインタビューに応えてくれました。前作『名も無い日』(2021年公開)の重厚なヒューマンドラマとはガラリと作風を変えて、ミュージカル映画を制作する経緯を聞くと「人類って9・11とか3・11にしても、なにか問題があったとき歌の力で蘇ってきた歴史があると思います。コロナ禍で辛いことや大変なことがあって、そんな中で生まれた企画です。僕はいつか、ミュージカルもやりたいなと思っていました」と言いました。以前、日比監督が”名古屋三部作を作りたい”と話していたことについて触れると「すべて違うジャンルの映画を作りたいと考えていました。35年も海外にいたという自負があるので、僕でしか表現できないものは何だろうと考えたときに、今回はミュージカルだと」と述べ、「しかも今回は8割くらい英語です。世界の人、より多くの人に見てもらうためのチャレンジです」と意欲的に話しました。

映画『はじまりの日』の制作に意欲みなぎる日比監督ですが「実は『名も無い日』で本来、監督作最後に撮るようなセルフポートレート的なものを撮ってしまったので…僕の中で真っ白になってしまったんです。その頃コロナ禍になって、ある種ぼくの中で消化できたというか、次に行けた。もしコロナ禍がなく通常の時間が過ぎていたら、映画人生も終わっていたかもしれない」と虚ろな時期があったと明かしました。そして「好きな歌を聞くうちに元気を貰いました」と歌が復活の源であり、ミュージカル映画に繋がったと振り返りました。また、本作の歌曲の7割ほどを日比監督が当時の自分の気持ちを込めて書いたと教えてくれました。ストーリーの詳細を聞くと、チラッとプロデューサーの顔色を確認した日比監督は「テレビ塔周りの清掃員が主人公です。清掃員同士の男と女が出会ってそれぞれ復活・誕生していくというストーリー…今日はここまでかな」とニヤリ。ヒロインの<女>役は遥海さんだと発表されましたが、かつて一斉風靡したロックスターの<男>役は発表前で、5月末に明らかにされる予定だそうです。

映画『はじまりの日』はミュージカル映画なので、キャストの歌唱力が必要不可欠です。ヒロイン役はどのようにして決まったのかを聞くと、日比監督は「10年ぐらい前に、ニューヨークで放送されていた番組で遥海さんが歌っているのを見たんです。印象的な声だったから名前をメモしていたんですよ」と当時を振り返りました。映画『はじまりの日』のヒロインのキャスティングに際し「ソニーに勤めている友人に相談したところ”この子はどうだ”って、遥海さんの名が挙がりました。自分のメモを確認したら同じ名前で驚きました」とオファーに繋がったと述べました。そして「自分の映画から世に出ていく人を起用するのも監督として一つのやりがいだと思っています」と話しました。

オファーしたときの遥海さんの反応を聞くと「本人にまず脚本を読んでもらいました。すると、本人から”これ私です!ぜひやらせてください!”と言ってくれました」と述べ「彼女自身が今の地位を築き上げてきた子だから共感するんじゃないかな」と話しました。ヒロイン以外の配役について日比監督は「僕はキャスティングが80%だと思っているので、時間をかけて考えます。その俳優さんに合った役が一番ですから、いろんな面を見て決めました」と話し、本作にも手ごたえを見せました。<男>役の配役ついて突っ込んで聞くと「意外なキャストだと思います。遥海さんと二人の演技が素晴らしいし、歌手としても僕が思っていた以上に素晴らしい」と絶賛。「レディー・ガガさんが出演した映画『アリー/ スター誕生』のような作品が名古屋を舞台にしてできたらいいなというのもあります」と明かしました。

映画『はじまりの日』で中部電力MIRAI TOWER(旧・名古屋テレビ塔)を新たな聖地に

中部電力MIRAI TOWER(旧・名古屋テレビ塔)は2022年11月に国の登録有形文化財に認定されました。日比監督は「生まれ故郷の名古屋を舞台に、熱田神宮とか名古屋城のような偉人が作った聖地もいいけれど、映画を通して自分たちの時代の新しい聖地を作りたいと思いました。映画という文化を次世代に残したいという気持ちもあります」と話しました。劇中の重要なシーンを中部電力MIRAI TOWERをバックに撮影することに対して、並々ならぬ想いを感じさせる日比監督。その理由を聞くと「日比家は、テレビ塔の建設の際に立ち退いて熱田区に引っ越しました。実はかつてテレビ塔の真下のあたりに家があったんです。だからMIRAI TOWERは僕の心の聖地と言えるので、何とか映画の舞台にしたいと思ったんです」と中部電力MIRAI TOWERとの意外な繋がりを教えてくれました。また「僕は35年も海外にいるので、久しぶりに名古屋に帰って来た時、テレビ塔がものすごく変わっていて驚きました。その変化したテレビ塔周りを舞台にして世界に発信したいというのも一つです」と加えました。

日比監督は「熱田神宮にお参りに来る大人たちを見て”こんな大人になりたくない”と名古屋を出たんですが、自分の故郷が素晴らしいと50を過ぎて思うのは皮肉ですよね」と苦笑い。「自分の知っている街、故郷・名古屋を今度は世界に伝えられるストーリーを作りたいと思います」と語りました。インタビューの最後に「新しい映画を通して、東海地方の聖地をつくりたいと思っています。また、日本でミュージカル映画は少ないと思いますが2024年春に公開となりますので、ぜひとも映画館でご覧ください」とアピールしました。

中部電力MIRAI TOWER内で撮影 遥海さんの歌声に圧倒 学生ダンサーの皆さんも参加

 インタビューの後、18時過ぎから中部電力MIRAI TOWER内での撮影が始まりました。主演の遥海さんとダンサーたちとのアンサンブルシーンです。ダンサーは愛知の中京大学・岡崎女子大学・愛知教育大学のダンス部の皆さんです。昨年、中京大学に日比監督自ら出演をお願いに行き、そこからほかの大学のダンス部に声をかけ30人の出演が決まったそうです。各大学の先生方は「舞台経験はありますが、映画出演はなかなかできない貴重な経験です」と教え子たちの出演に目を細めていました。そして「映画の話は昨年11月に頂いたのですが、練習を始めたのは今年の3月初めからです」と教えてくれました。短い時間でダンスを仕上げた学生ダンサーの皆さんは、控室に居るときは互いに動きの確認などをして過ごしていました。

清掃員という役柄のため、ヒロイン含めて最初の衣装は作業着です。モップや雑巾を手にして掃除をする動きをダンスで表現しています。照明、カメラ・美術・メイクなど様々なスタッフが現場を動き回る中でリハーサル、何度かテストがあり、いよいよ本番です。日比監督の「アクション!」という掛け声のもと、歌曲を流して一つ一つ撮影していきました。時に監督自身が「こういう風に動いてみて」とお手本を示して遥海さんにディレクションする場面が見られました。緊張と緩和が繰り返される撮影現場。取材陣や、そのシーンに関係ないスタッフは映りこまないようにしゃがんで息を殺して見つめることしかできません。撮影したシーンを確認する日比監督の眼差しから、物つくりの厳しさが察せられます。

監督は撮影前にもスタッフに声をかけるなどして、細やかなコミュニケーションを図っており、信頼関係ができあがっています。「もう一回」と数回粘るシーンがあるものの、スタッフ一丸となって、日比監督のイメージする絵を作ろうと奮闘していました。現場で耳にした歌曲は、とてもキャッチーで、エモーショナル。”もっと聴きたい”と思わせる遥海さんの歌声に圧倒されました。8曲ほど歌曲があるそうで、ほかの曲も楽しみになります。室内ではダンサーたちが華やかな衣装で踊るシーンも撮影されました。オシャレな小道具を使ったシーンのため、テストのたびに直しが入り時間を要しましたが遥海さんとダンサー達は演技に集中していました。

Hisaya-odori Park(久屋大通公園)ミズベヒロバで夜明けまで撮影 躍動感溢れるパフォーマンス

22時30分ころHisaya-odori Park(久屋大通公園)ミズベヒロバに移動。監督やスタッフが道具を設置したり、パフォーマンス場所の確認のため真剣な表情でミーティングする姿が見られました。近くを通りかかった人々が興味津で足を止めがちになるものの、警備員に促されて現場から離れていきました。

水辺に緑色の大型トラッシュボックスが置かれ、ヒロインの遥海さんとダンサー達がスタンバイし、Hisaya-odori Park(久屋大通公園)ミズベヒロバでの撮影がスタートしました。5月とはいえ肌寒いのではないかと感じましたが、半袖の作業着風の衣装を身に着けた出演者の皆さんは元気なパフォーマンスを見せてくれました。水辺に入ってダンスをするシーンもあり、躍動感溢れる姿に胸が高まります。

遥海さんのソロシーンの撮影になり、待機時間となったダンサー達はトラッシュボックスの中に入って防寒したり、ジャンプして体を温めたり、振りつけの確認をしたりと思い思いに過ごし、現場をエンジョイしているようでした。彼女達に付き添う先生方の「青春の1ページみたいね」という言葉が印象的でした。「映画という文化を次世代に残したい」という日比監督の想いが受け継がれたと感じさせる撮影裏でした。夜明けまで撮影された、映画を代表する華やかなミュージカルシーンをスクリーンで観られるのが楽しみです!

日比監督が「一斉風靡したロックスターの再生と、人前では話も出来ないような女性が1回歌い出すとすごいみたいな物語です。すごい作品になると思います」と目を輝かせる映画『はじまりの日』は、これからも撮影が続きます。名古屋のいろんな所で撮影が予定されているようです。完成が待ち遠しいですね!今後も名古屋の映画情報サイトCine@nagoya(シネアナゴヤ)では、映画『はじまりの日』の情報をご紹介していきます。

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作品概要

劇場用長編映画『はじまりの日』

企画・プロデューサー・脚本・監督 日比遊一

製作・制作プロダクション ジジックス・スタジオ

公 開 2024年春予定https://hajimarinohi.jp

公式サイト: https://hajimarinohi.jp

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Twitter @hajimarinohi_ jp

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