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2023-03-15

映画『赦し』アンシュル・チョウハン監督と松浦りょうさんに名古屋でインタビュー


 

3月18日(土)より全国順次公開(愛知:3/17~MOVIX三好、4/28~伏見ミリオン座)となる映画『赦し』は娘を殺された元夫婦と、犯行時に未成年だった加害者女性の葛藤や苦悩を通し、魂の救済というテーマに真正面から挑んだ裁判劇です。『Gensan Punch 義足のボクサー』などで国際的に活躍している尚玄さんと『台風家族』『ひとよ』などの演技も注目されているMEGUMIさんが娘を殺した犯人の再審が認められたことで再び引き合わされることとなった元夫と妻を演じています。

2019年公開の 映画『コントラ KONTORA』が高い評価を受けた日本を拠点に活動するインド人映画監督のアンシュル・チョウハン監督とポスタービジュアルで強烈な印象を放つ加害者の少女役で出演する松浦りょうさんが名古屋でインタビューに応じました。(取材日:2023年3月9日)

「キャラクターの感情と行動を描きたい」「役者の新しいイメージを作りたい」

映画『赦し』は娘を殺された元夫婦と犯行時に未成年だった加害者の女性が事件から7年の時を経て法廷で再会し、改めて事件と向き合うことになる物語です。懲役20年の刑に服している加害者に再審の機会が与えられることになり、ひとり娘の命を奪った女性を憎み続けている父親とつらい過去に見切りをつけたい母親、罪悪感に苛まれながらも口を閉ざしていた殺人の動機を打ち明けるべきか葛藤する加害者女性、3人の揺れ動く感情が臨場感たっぷりに描かれています。

アンシュル・チョウハン監督は本作で大切にしたこととして「キャラクターの感情と行動を描きたいと思いました」と話しました。被害者の父親役の尚玄さん、母親役のMEGUMIさん、加害者女性役の松浦りょうさん、母親の再婚相手役の藤森慎吾さんなどが裁判の状況によって変わっていくそれぞれのキャラクターの複雑な心境を表現しています。

以前から交友のあった尚玄さんを主演に迎えたことについて監督は「無精髭で太っていて年齢も高いイメージを(尚玄さんに)渡して、これになれるならぜひやってほしいとリクエストしました」と話しました。本作ではこれまでの尚玄さんのイメージを覆えすキャラクターを演じてほしいと思っていたそうで「尚玄さんに限らず、他の役者さんについても自身の映画で新しいイメージを作りたい」と常に役者の新しい魅力を引き出そうとしていると語りました。

松浦りょうさんと監督の出会いは新宿K’s cinema「目の印象がすごく強かった」

監督は松浦りょうさんとの出会いを振り返り「目の印象がすごく強かったのを覚えています。マスクをちょっとだけ外してもらって、顔全体を見せてもらいました」と話しました。松浦さんは同じ事務所に所属している円井わんさんが出演している 『コントラ KONTORA』を観に行った新宿K’s cinemaで監督に初対面したそうです。

その後、映画『赦し』のオーディションに松浦さんに参加してもらい、何度か演技を見て出演が決まったそうですが、監督は松浦さんが事務所に所属しているという点に懸念があったことを話しました。監督は「家に来てもらって、料理をして、みんなで映画について話しながらぞれぞれの役作りを進めたいと思っていて、マネージャーさんが間に入ることをちょっと面倒に思ってしまったんです」と俳優と密な時間を共有しながら映画を作っていく監督のスタイルを教えてくれました。

また撮影では即興的な演技を求めるそうで、監督の撮影スタイルについて松浦さんは「すごくやりやすかったです」と答えました。事件の回想シーンについて「動悸が激しくなるシーンの撮影は走って体が疲れた状態からスタートしました」と監督から撮影直前に走ってくるように指示があったそうです。松浦さんは「控室も1人で、孤独な状態を作っていただきました」と話し「尚玄さんは撮影が終わるまで話さないようにしてくださいました」と尚玄さんが被害者家族と加害者という役柄を演じるために距離を置いてくれていたことを明かしました。監督は「役者はみんな辛そうにしていました」とそれぞれが役に入り込んでいる撮影現場だったことも教えてくれました。

ロケーションを活かした撮影でキャラクターのこれからを演出

裁判シーンの撮影場所について質問すると、外観は茨城県水戸市の「三の丸庁舎」、法廷内は東京都内で撮影を行ったことを教えてくれました。劇中には尚玄さん演じる父親が法廷を飛び出し、外に飛び出ていくシーンもあります。別々の場所で撮ったとは思えなかったと伝えると、監督は「天才だから!僕だけじゃなくスタッフも含めてね!」と微笑みながら答えてくれました。

「三の丸庁舎」は旧茨城県庁の建物で、昭和5年に建設された近世ゴシック建築様式の建物です。レンガ張りの外観、大理石の階段、年代物のシャンデリアや時計、市松模様の石張りのフロアが印象的です。また、三の丸庁舎と茨城県立図書館の間にある芝生広場のロケーションがよかったことから、元々の脚本にはなかった演出を追加したことも教えてくれました。芝生広場を歩く父親と母親がこの後どうなるのかを想像させてくれるシーンになっています。

作品概要

映画『赦し』

3月18日(土)より全国順次公開(愛知:3/17~MOVIX三好、4/28~伏見ミリオン座)

監督・編集:アンシュル・チョウハン(『コントラ KONTORA』 )

撮影:ピーター・モエン・ジェンセン

音楽:香田悠真

出演:尚玄 MEGUMI 松浦りょう 生津徹 藤森慎吾 真矢ミキ

プロデューサー:山下貴裕 茂木美那 アンシュル・チョウハン

エグゼクティブ・プロデューサー:サイモン・クロウ ランカスター文江

アソシエイト・プロデューサー:前田けゑ 澤繁実 岡田真一 木川良弘

脚本:ランド・コルター

助成:文化庁 製作プロダクション:KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS

配給:彩プロ

2022年/日本/日本語/カラー/2:1/5.1ch/98分/原題(英語題):DECEMBER

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