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2021-06-16

「わーここまで言ったの初めて!」映画『はるヲうるひと』佐藤二朗監督が名古屋で舞台挨拶に登壇


 

6月4日から公開中の映画『はるヲうるひと』は山田孝之さんが主演し、愛知県出身の佐藤二朗さんが原作・脚本・監督・出演の4役を務めていて、佐藤監督が主宰する演劇ユニットで上演された舞台の映画化作品です。愛知県南知多で全編を撮影し、架空の島の売春宿を舞台に三兄妹と4人の遊女の複雑な関係が描かれています。6月12日と13日に愛知・聖地巡礼キャラバンが行われ、名古屋のセンチュリーシネマで行われた舞台挨拶に佐藤監督が登壇しました。公開から1週間が経った今の気持ちや映画化までの道のり、愛知での撮影が決まった内海のゲストハウス“とんぱ~れ”について、舞台版との違いについてなど、地元での舞台挨拶とあって、かなり深いお話もたっぷりとしてくれました。さらに、6月12日から放送がスタートした佐藤さんが主演するNHKの土曜ドラマ「ひきこもり先生」のポストカードがプレゼントされました。舞台挨拶の様子をレポートします。(取材日:2021年6月12日)

 

鳴り止まない大きな拍手で迎えられた佐藤二朗監督

映画『はるヲうるひと』は架空の島の売春宿「かげろう」を舞台に、三兄妹と4人の遊女の複雑な関係を描いた物語です。店を仕切る凶暴凶悪な長男・哲雄を佐藤二朗さん、長男に頭があがらない次男・得太を山田孝之さん、持病を患い床に伏せる長女・いぶきを仲里依紗さんが演じ、坂井真紀さんが姉御肌の遊女、向井理さんが客の1人として出演しています。

6月12日と13日に愛知・聖地巡礼キャラバンが行われ、原作・脚本・演出・出演をつとめた佐藤二朗さんが名古屋センチュリーシネマで行われた舞台挨拶に登壇しました。販売されている50%の座席は完売で、佐藤監督は映画を堪能したお客様からの鳴り止まない大きな拍手で迎えられました。公開から1週間が経ち、SNSなどでの感想を見ているという佐藤監督は「反響の多さや熱量の大きさにびっくりしています」と答え、自身のTwitterでのリツイートしたい気持ちはあるものの「それをやり出すと僕のTwitterが感想だらけになってしまうので我慢しています」と話しました。

愛知県出身の佐藤監督は「東京にいる年数の方が長くなってしまいました。52−18はいくつですか?」と最前列の取材陣に質問し「34年ですか、東京出て30年位になりますが、小中高と青春時代を過ごした愛知県、東郷高校、田んぼのあぜ道、親からは名古屋には不良が多いで行ったらいかんと言われていました」と話し、今回の地元での舞台挨拶が実現したことを喜んでいる様子でした。

知多半島の内海は学生時代の初○○の思い出の地!?

映画『はるヲうるひと』は全編を愛知県南知多で撮影していますが、佐藤監督は「僕が愛知県出身なんですよ。それが理由で愛知県でロケをしたわけではなく、離島の設定に合うロケ場所をスタッフが探してきて、イメージに合う場所を選んだら愛知県だったんです」と話しました。ロケ地となった内海について「初めて言いますけど、大学の夏休みに親友と愛知に帰ってきて生まれて初めてナンパに行ったのが内海なんです。勇気がなくて1人も声をかけられずに終わったんですけど。俺なんでこんな話してんの?」と青春時代の苦い思い出がある場所だったことを明かしました。また、売春宿「かげろう」として撮影した場所について佐藤さんが「‟とんぱ~れ”というラーメン屋もやっているゲストハウス、そこが『はるヲうるひと』の為に建てたのではないかというような建物なんです」と話し、「食堂、女郎部屋、待合室、いぶきの部屋、2階の蝶の間、全てを‟とんぱ~れ”で撮影できたんです」と奇跡的な物件であったと振り返りました。

俳優たちが宿泊しているホテルも‟とんぱ~れ”から徒歩30秒ほどの場所だったそうで、佐藤監督は「撮影は2019年の2月オフシーズンでひっそりとしていて、道を挟んで海が広がっていて、すべての条件が整っていてました。山田孝行は撮影の前日に(現場に)入って、海が広がっていて誰もいなくて、ぐぁーっと鬱状態になって、得太になったんですって。『あーもうダメだ俺この島から出られない』と思ったそうです」と主演の山田さんの様子を教えてくれました。撮影期間中、メインキャストは東京と行き来することもなかったそうで「女郎たちと三兄妹はずっとこの現場にいれられていて良かったと思います」と語りました。

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「僕は俳優なんで、俳優のお芝居が好きなんです」

映画『はるヲうるひと』は佐藤監督の演劇ユニット「ちからわざ」で2009年に初演、2014年に再演された舞台を映画化した作品です。映画化の流れについて佐藤監督は初監督作品『memo』の脚本を高く評価してくれた『幼獣マメシバ』の脚本家である永森裕二さんについて語りました。「永森裕二は(年齢が)1個上の愛知県人で、僕が相当信用している人で、(監督としての)2作目の相談をしている中で(舞台「はるヲうるひと」の)再演を見に来てくれて『これを映画にするのは?』と言ってくれました」ときっかけとなった出来事を教えてくれました。

佐藤監督は「舞台は誰が主役とかないんですけど、映画では僕が演った得太を主役にしてシナリオを書きかえて、山田孝之に最初にあたって一度断られたんですけど、そのあと、山田孝之が決まった途端に動き出したね」と話しました。「山田孝之は日本最高級の俳優だと思ってます。頭悪くて泣き虫でそのくせよく吠えると言うどうしようもないチンピラを山田孝之で観たかった」「内圧を抱えた仲里依紗を観たかった。坂井真紀はむちゃくちゃいい俳優だと思ってますので、一番の姉ご肌で、みんなを体を張って守っているようで、実は誰よりも弱かった坂井真紀を観たかった」などと熱く語りました。さらにワンシーンだけサラリーマン役で出演している向井理さんについて「この映画で女郎に一番ひどいこと言うのは僕じゃなくてあのサラリーマン!何の責任もなく、何の悪意もなく、ひどいことを言って気づかずに帰っていく人を向井理でぜひ観たかったんです」と言い、「僕は俳優なんで、俳優のお芝居が好きなんです。魂に触れたときの俳優の顔や芝居が観たい、自分がやりたいという思いがあってこの脚本を13年前に書きました。僕が演った得太に山田孝之が共鳴してくれて、得太に寄り添いたいと言ってくれて、本当に感慨深いですよ」と佐藤監督だからこそ実現できたキャスティングと魂のぶつかり合うようなお芝居が生まれた裏側を話してくれました。

センチュリーシネマでは着席不可の座席の一部に映画『はるヲうるひと』出演者のキャラクター写真が貼られていて、まるでキャスト陣が並んで座っているように感じた方もいたのではないでしょうか?来場の記念にと座席の写真を撮っている人の姿もありました。

「いい質問ですね!」舞台版との違いを語り「わーここまで言ったの初めて!」

舞台挨拶の後半でティーチインの代わりに事前にSNS募集した質問に答えることになり、山田さん演じる得太が金髪の理由を聞かれると「舞台では僕が演じたのですが、どうしようもないチンピラがやりたかったんです。演出の人と話して金髪にドカジャンのスタイルにして、そこは映画も変えたくなかったんですよね」と答えました。また「クライマックスでユウさん(かげろうの客)のとぼけたセリフを入れるのは賭けでは?」という質問に対して佐藤監督は「いい質問ですね!これは舞台にはないんですよ!」と興奮気味に答え「コミカルとシリアスを分けるのもナンセンスだと思っていて同じ地平にあると思います。笑っていたらいつの間にか涙がこぼれている、そういう瞬間におかしみや面白さを感じるので、ぶち込んだと言うよりは僕の中では成立していて、狙いとしては僕らしい表現だなと思ったのも事実ですし、思いついたときには軽くガッツポーズをしました」とこれまで明かしていなかった話を披露しました。佐藤監督は「「神の舌を持つ男」の1話の空き時間であれを思いついたんです!(向井)理も良く知ってますよ!『あのとき書いたんですか?』と驚いてました」と話しました。

さらに佐藤監督は「ラストシーンを変えようと思って、舞台ではクライマックスの後に三兄妹は誰も出てこないんです」と話し「永森さんから『得太といぶきの良さげなシーンを作って』と言われて子供時代の回想とラストシーンを足したんです!わーここまで言ったの初めて!いいのかなぁここまで言っちゃって。ネタバレにならないよね」と少し心配そうにしながら「このシーンを思いついた時も心の中でガッツポーズですよ」とたくさんの想いが詰まった作品が出来上がるまでの過程を振り返ってくれました。こんなにも語ってくれたのは地元パワーもあったのかもしれません。佐藤監督のお話を聞いて、もう一度スクリーンで観たくなった方も多いのではないでしょうか?

作品概要

映画『はるヲうるひと』

センチュリーシネマほかにて公開中

“全編、愛知県南知多で撮影!佐藤二朗が主宰する演劇ユニット【ちからわざ】で2009 年に初演、2014 年に再演され演劇界からも絶賛された舞台を映画化した作品”
ある置屋にその「三兄妹」はいた。長男の哲雄は店を仕切り、その凶暴凶悪な性格で恐れられている。次男の得太は哲雄にこびへつらい、子分のようにしたがっている。長女のいぶきは、長年の持病を患い床に伏してる。ここで働く4 人の個性的な遊女たちは、哲雄に支配され、得太をバカにして、いぶきに嫉妬していた。女を売る家で唯一女を売らず、それどころか優遇された箱入り娘。しかも、いぶきはだれよりも美しかった。その美しいいぶきを幼少から見守り寄り添う得太であった…

出演:山田孝之 仲里依紗 今藤洋子 笹野鈴々音 駒林怜 太田善也 向井理 坂井真紀 佐藤二朗

原作・脚本・監督:佐藤二朗

制作プロダクション:ラインバック

企画・配給:AMGエンタテインメント

配給協力:REGENTS

製作:AMGエンタテインメント/ハピネット

© 2020「はるヲうるひと」製作委員会(R15+)


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