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2017-08-24

シアターカフェの大須にじいろ映画祭2017初体験レポート


名古屋市中区大須にあるTheater Cafe(シアターカフェ)で8月19日・20日の2日間に渡ってわれた大須にじいろ映画祭2017に行ってきました。LGBTをテーマにした短編映画の上映と監督やキャストによるトークを楽しみ、初日の上映後に行われた交流会にも参加してきました。(取材日:2017年8月19日)

大須観音から徒歩4分のシアターカフェ

名古屋の人気観光スポットでもある大須は味のあるお店が軒を連ねる下町情緒のある商店街でありながら、若者の流行発信地でもあるというカオスな雰囲気があり、私も子供の頃からよく遊びにきていました。

ハトがたくさんいる大須観音から歩くこと4分、仁王門通から大須通へ抜ける脇道を左に入ったところにシアターカフェはあります。大須通側から行くと1階に白肉屋という格安ステーキ丼で有名な焼肉屋さんがある建物の2階です。

シアターカフェの入口は建物裏手の階段を2階に登ったところにあり、中は入口近くのフリースペース、中央のカフェサービススペース、奥のシアタースペースとコの字型になっていました。

シアターカフェは今から5年ほど前に、映画が大好きな2人の女性スタッフが立ち上げた座席数20席ほどの小さなシアターです。運営しているのは名駅のシネマスコーレや今年で22回目を迎えるあいち国際女性映画祭などでのスタッフ経験があり、映画愛に溢れている江尻真奈美さんと林緑子さん。金曜日〜日曜日の週4日、午後から夕方過ぎまで他ではなかなか観られないインディーズ映画や短編映画、アニメーション作品などが上映されています。上映後に監督やキャストなどのトークイベントが行われることが多く、作り手と観客の距離がとても近い点も魅力です。

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今年で3回目となる大須にじいろ映画祭

シアターカフェに来られているお客さんのために何かできないかという思いから始まったLGBTをテーマにした映画作品を上映する大須にじいろ映画祭は今年で3回目を迎えました。シアターカフェの江尻さん選りすぐりの国内の映像作家さんによる短編映画が観られるとあって、初日は予約で満席となっていました。

選りすぐりの上映作品と上映後トーク

Aプログラムでは、映画祭初日に30歳の誕生日を迎えた名古屋出身の藤井三千監督の短編映画『鏡』と『月を、さがしている』の2作品が上映されました。大学で映画論を研究していたという藤井監督、論文を書くための経験としてインディーズ映画の撮影現場にスタッフとして参加したことをきっかけに、映画を作りたい気持ちが爆発したそうです。

『鏡』は映画の作り方を学ぶために入学した学校での卒業制作として作った作品で、主演の栗田一生さんは同じ学校で映像演技の勉強をしていた同期なのだとか。栗田さん主演での作品制作の準備をしているところに、役者の集まる飲み屋で作品への参加を熱望した桑山こたろうさんに出会い、桑山さんと栗田さんの顔が似ていたことから、この2人の物語を作ることに決めたそうです。『鏡』は同性の親友に想いを寄せる主人公・浩一のせつない片想いが描かれています。相手が異性であっても同性であっても、想う気持ちは同じだということが伝わってくる作品でした。

上映後のトークで藤井監督は「(LGBTテーマの作品を作るにあたって)色々と調べたり知識を深めてみても、結局、誰かを好きとか誰かを想うとか、誰かに申し訳ないと想う気持ちは、どんなマイノリティでもマジョリティでも同じということが伝えたいことなので、リサーチはやめました」と答えていたのが印象的でした。

『月を、さがしている』は藤井監督が映画学校に入学する前に制作した作品で、都会で暮らす5人の女性たちによる女性同士の牽制と女友達には見せない本音の部分が描かれていました。5人の女性がそれぞれに個性的で、夢や目標と生きる術のバランスを取りながら毎日をなんとか過ごしている痛々しく感じました。(昔の自分を思い出して、ちょっと苦しかったです)見るたびに異なる印象を受けそうなで、また観たいと思わせる作品でした。

Bプログラムでは、4つの短編作品が上映されました。今回の上映作品で最年少監督だった田丸さくら監督(19歳)が高校生の時に作った短編映画『ふたり』はYouTubeで5万回以上も再生された話題の作品。現在もYouTubeで観られるのですが、江尻さんがぜひスクリーンで観てほしいと思った結果、今回の上映が決まったそうです。

『ふたり』は32分の作品で一緒に暮らしている交際歴の長い20代中頃くらいのレズビアンカップルの1日が丁寧に描かれています。2人の会話ややりとりがとても穏やかで、過激な内容が多い印象のあったLGBT映画のイメージが覆った作品でした。同性同士ではあるけれど、お互いを大切に愛おしく思う気持ちは同じだと感じさせてくれて、(世の中にたくさんいるふたりのような方々も含めて)ふたりの穏やかな日々がいつまでも続いてほしいと思いました。

上映後のトークで『ふたり』に出演していた神門実里さんが映画出演時とはとは全く異なる金髪で登場し、撮影時のエピソードを話してくれました。神門さんは井口昇監督による女優アイドル プロジェクト「ノーメイクス」でセンターを務め、現在はアイドル活動と女優活動をしています。『ふたり』の撮影は「ノーメイクス」への参加前で、共演の青柳糸さんも神門さんが連れてきてに撮影をしたそうです。神門さんは当時に比べるとかなり忙しくなられたようで、今後は商業映画でのデビューも決まっているのだとか。

32分の作品なのに脚本は1.5ページしかなく、セリフのほとんど全部がアドリブだったそうです。ふたりの間に流れる雰囲気や会話がとても自然だったのは、監督の采配と2人の女優さんの頑張りによるものだったようです。田丸監督は「LGBTであることを悩む描写などではなく、男女カップルと変わらない、普通の同性カップルを描きたかった」と話していました。普段はインディーズ映画の製作スタッフやプロデューサーとして活動をしている田丸監督にとって『ふたり』は初であり唯一の監督作品であるそうです。

そのほかにもAプログラムの藤井監督が映画学校の授業内実習中に作成したという『はだか』(『鏡』の原型になった作品)、レズビアンの女子高生に片思いをしていた男子高校生と彼女から告白されて戸惑う女子高生を描いた『群青に染まる』(監督:岩村高志)や男性カップルの一方がバイセクシャルで、結婚することを告げられたゲイの男性の葛藤が描かれた『いとしいひと』(監督:丸山夏奈)など様々な視点からのLGBTテーマの作品が上映されました。

上映後の交流会でサプライズ!

AB両プログラムの上映後には、来場していたゲストと観客の皆さん、映画祭のスタッフさんによる交流会が行われました。参加者からの様々な差し入れをつまみながらお酒もいただき、監督やキャストに作品の感想を伝えたり質問をしたりなど、映画を観るだけに留まらないとても贅沢な時間を過ごすことができました。

この日は藤井監督の30回目の誕生日ということで、映画祭スタッフが準備したバースデーケーキも登場し、全員でお祝いするひとコマもありました。ロウソクの火を吹き消し、栗田さんからケーキを食べさせてもらう藤井監督の可愛らしい姿を垣間見ることができました。

映画好きなお客さんどうしの交流も活発に行われ、映画によって繋がりが増えていく素敵なコミュニティスペースとしての一面を持つシアターカフェは名古屋において唯一無二の映画館だと感じました。

次回の大須にじいろ映画祭に向けて

次回の大須にじいろ映画祭は2018年2月に大須演芸場で開催予定で、現在は大須にじいろ映画祭2018フィルムコンペティション(映画祭で上映する短編作品)の公募がスタートしています。応募作品は60分以内の作品でテーマがLGBT(レズ・ゲイ・バイ・トランスジェンダーなどセクシャルマイノリティ)であれば、実写、アニメーション、ドキュメンタリーなどジャンルは問わないそうです。スタッフがセレクトして映画祭でお披露目し、上映時にはグランプリが選ばれます。

応募要項は以下の公式サイトをご確認ください。

http://osurainbowfilmfestival.org/entry

基本情報

Place:Theater Cafe(シアターカフェ)

Address:名古屋市中区大須2-32-24 マエノビル2F

Tel:052-228-7145

※営業時間は13:00-21:00(火-木曜定休)

Map:

名古屋市中区大須2-32-24
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