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2025-05-12

「撮影前後に震えていた」共演者との対峙を振り返る丸山隆平さん 主演映画『金子差入店』古川豪監督と名古屋でインタビュー


 

5月16日(金)から公開となる映画『金子差入店』は様々な事情から、刑務所や拘置所に収容された人に面会へ行くことができない人に代わって、面会室に出向き差入れを代行したり、手紙を代読する仕事“差入屋”を営む主人公と家族たち、彼らが巻き込まれる不可解な事件を描いたヒューマンサスペンスです。消せない過去を持ちながら懸命に生きる主人公の金子真司をSUPER EIGHTの丸山隆平さんが演じます。共演は真木よう子さん、寺尾聰さん、名取裕子さん、北村匠海さん、岸谷五朗さんなど確かな芝居が光るキャストが集結しています。脚本・監督を務めるのは、本作が劇場用長編映画デビュー作となる古川豪監督です。

主演の丸山隆平さんと古川豪監督が公開前に名古屋でインタビューに応じ、オリジナル脚本の執筆や本作の完成までの道のりについて、撮影現場のエピソード、丸山さんの役作りについてなどを時に笑顔を交えて話しました。(取材日:2025年5月2日)

丸山隆平さん「スキンケアを止めて、全身を石鹸で洗って、白髪もそのままに」

映画『金子差入店』は刑務所や拘置所に収容された人への差入れを代行する“差入屋”を営む金子真司が息子の幼馴染が殺害される事件と関わることで家族の絆が揺らぎ始める様子や、罪を犯した人とその家族、被害者家族などとの関わりが描かれ、人間のダークサイドから希望に満ちた光までを追いかけるヒューマンサスペンスです。“差入屋”の店主で主人公の金子真司役を丸山隆平さん、真司の妻を真木よう子さん、息子役を三浦綺羅さん、真司のおじを寺尾聰さん、猟奇的な殺人犯を北村匠海さん、ある事件の加害者を岸谷五朗さん、その被害者家族を川口真奈さん、知り合いの弁護士役を甲本雅裕さんなど年齢などがバラバラながら、様々な背景を持つ登場人物たちをリアルに演じています。

つらい過去を背負いつつ必死に生きる主人公の金子真司を生活感のある佇まいでリアルに演じている丸山隆平さんに、普段のイメージとは異なる役を演じるうえで準備したことを尋ねると「差入屋という職業に関しての知識がなかったので取材をしたかったのですが、それは難しかったです」と残念そうに言い「金子真司という人間を構築していくこと」に注力したと語りました。脚本を読み込んでいく中で「『もしかして監督の人間としてのエッセンスが入っているのかな』と思ってモデルとして古川監督の人柄を入れ込みながら真司を作っていきました」と監督を観察したエピソードを話しました。

さらに丸山さんは「スキンケアを止めて、全身を石鹸で洗って、白髪もそのままにしました」と、真司の習慣を想像して暮らすようにして、見た目に加齢や老いを感じさせ、説得力を出せるように準備をしたことを明かしました。古川監督も笑いながら「真司は使ったとしても、奥さんのリンスインシャンプー止まりだよね」と丸山さんの話に頷きました。一緒に作品を作りあげてきた二人の阿吽の呼吸が感じられる瞬間でした。

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「(様々な母親像を)俳優陣が見事に演じきってくださいました」と古川豪監督

映画『金子差入店』はふだん表に出ない職業である差入屋の仕事が描かれています。古川監督は「自分の中でこれ以上ないと構想を煮詰めるまで7年かかりました。加害者・被害者、それにまつわる人達が登場するので様々な価値観があるわけで、相当ナーバスに考えました」と”産みの苦しみ”を明かしました。また「登場人物たちが品行方正ではなくて、裏も表もある。差入店の店主を主人公に選んだことで、必然的に面会や差入にいく相手が重い事情を持っています。だから(バランスとして)主人公に枷や葛藤という重み持たせるために前科者にし、贖罪という意味を含めて生きているということに落ち着いた感じです」と構想を練り上げるまでの道筋を詳しく話しました。そこから4年ほど諸々の準備も要し、「構想から形になるまで11年」かかった理由を述べました。

映画『金子差入店』には様々な母親が登場します。主人公:真司の母(名取裕子さん)、真司の妻(真木よう子さん)、北村匠海さん演じる殺人犯の母(根岸季衣さん)、娘を殺害された母(村川絵梨さん)など、各々事情が異なる母親たちのキャラクターが印象的です。古川監督は「俳優陣が見事に演じきってくださいました」と述べるほど、個性豊かな母親たちが描かれています。

登場する母親たちの造形で参考にしたことについて尋ねると古川監督は「作品の準備をする中で、僕自身が人の親になりました。改めて自分の親や周囲の人たちの子育てをずっとリサーチしてみて、愛情を持つ人・義務で行う人など多様な価値観があって難しい問題だと思いました。今の世の中の言葉で”毒親”とありますが、社会という立ち位置から見ると(劇中の)人物たちはどうだったのか、どこで歯車が狂ったのか、この作品のテーマは何かを考えながら、いろいろな親の形や周りとの関わり方をとても重視しました」と答えました。主人公の真司も、真司の子供(三浦綺羅さん)も、殺人犯(北村匠海さん)も、劇中に登場する女子高生(川口真奈さん)も親によって少なからず影響を受けた「子ども」です。親の影響を受けて子どもがどうなるのか、彼らの救いも含めて目が離せないストーリーが展開されます。

劇中の「金子差入店」の店舗も本作の立派なキャストといえるでしょう。古川監督に店舗のロケーションについて聞くと、店舗だけ使用するつもりで以前は酒屋で現在は空き家となっている場所にロケハンに出向いたところ、奥の居住空間も撮影に使えるのではないかとなり、店舗だけではなく、金子家の台所、浴室、寝室などの居住空間も一軒まるごとを借りて撮影できたことを教えてくれました。

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「余裕がなくて、記憶にない」丸山さんが語る緊張感のある現場での癒しとは?

職業柄、犯人やその家族とマンツーマンで向き合うことが多い真司を演じるにあたり、役者同士の対峙で思い出に残っているエピソードを丸山さんに伺うと「正直、撮影期間中は一個一個を噛みしめたり、蓄積しておく余裕がなくて、記憶にないことがめちゃめちゃあるんですよ」と明かしました。「お芝居の中で感じた怒りが消えなくて、そのままの感情で帰ったりしていました」と精神的にも過酷な撮影期間だったことを明かしました。差入れを依頼する犯人の母親役の根岸季衣さんと向き合うシーンについては「撮影の前後に震えていました。お芝居でいろいろな方向から追い詰めてくださって、真司としてそれに返していく感じでした」と撮影の様子を説明しながら話してくれました。

丸山さんは殺人事件の犯人役の北村匠海さんと対峙した場面については、当時の詳細は覚えていないとしながら「その場の緊迫した空気感を撮影するために、テストなしで撮影をしたみたいです」と言い「鮮度の高いカットが収められているので、リアルなんじゃないかと思います」と真司として生きた撮影期間を振りかえりました。

おじ役の寺尾さんとのシーンについて聞くと丸山さんは「真司にとって、唯一、ポロっと弱音を吐ける相手がおじです。癒しという面もありますが、自分の弱さや不甲斐なさを合わせ鏡でみせられるような存在でもあるのでシンドイ面もあります」と役柄について述べた後、「寺尾さんは撮影の合間に『もうちょっと肩の力を抜いていいんだよ』みたいなことを、空気で伝えてくれたと思います」と話しました。そして「クランクアップの時に『もっといろんな作品をやりなさい。掘り下げていろんな役を演じたら見えて来るものがある』と熱く言ってくださったんです」と目をキラキラさせて話す様子から、丸山さんにとって寺尾さんは撮影中も今後も師匠のような存在になったのではと感じられました。

厳しい雰囲気のシーンが多いなか、”ほっこり”したシーンを伺うと丸山さんは「家族で食事をするところですね」と断言し「あのシーンは皆それぞれ何かを抱えているけれど談笑していて、あの時間は凄く和みましたね。唯一に近いぐらい癒されましたね」と話しました。丸山さんは「真司に向き合いながら、自分の中に取り込んでいくのは厳しくて、初日から最後まで苦しかったです」と改めて撮影期間について話し「スッキリして終わる物語ではないです。映画を観た方がどの人物に目が行くのか、その人物に対して憎しみだけではなく、愛でてあげることができる映画になればいいなと思います」とアピールしました。

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作品概要

映画『金子差入店』

5月16日(金)ミッドランドスクエアシネマほか全国ロードショー

出演:丸山隆平 真木よう子/三浦綺羅 川口真奈 北村匠海 村川絵梨 甲本雅裕 根岸季衣 岸谷五朗 名取裕子 寺尾聰

監督・脚本:古川豪

主題歌:SUPER BEAVER「まなざし」

配給:ショウゲート

©2025「金子差入店」製作委員会


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