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2025-04-21

「200歳まで生きますよ!歌もお芝居も、もっと上手くなりたい」芸能生活55周年の研ナオコさん 映画『うぉっしゅ』公開前に名古屋でインタビュー


 

5月2日(金)から全国公開される映画『うぉっしゅ』は認知症の祖母の介護をすることになったソープ嬢の葛藤と、祖母と孫の結びつきをコミカルに描いた人間ドラマです。祖母の紀江役を歌手で稀代のコメディエンヌの研ナオコさんが演じ、ソープランドで働く孫の加那を演じる中尾有伽さんとのW主演作です。また嶋佐和也さん(ニューヨーク)、中川ゆかりさん、西堀文さん、高木直子さん、赤間麻里子さん、磯西真喜さんなどバラエティ豊かな出演者が物語世界を彩ります。メガホンをとったのは永六輔氏の孫で『安楽死のススメ』にて映画監督デビューした岡﨑育之介さんです。オリジナル脚本で手がけた映画『うぉっしゅ』の公開前に主演の研ナオコさんと共に名古屋でインタビューに応じ、作品への思い、キャスティングについて、撮影秘話などを笑顔で話しました。

介護×ソープ嬢のWワーク⁉ 岡﨑育之介監督「シリアスな社会問題をポップなコメディにしていく」と意欲

映画『うぉっしゅ』は親に隠れてソープランドで働いている加那が、ひょんなことから祖母宅とソープ店を行き来して、”人の身体”を洗い続ける二重生活<ダブルワーク>をする1週間が描かれたポップなヒューマンドラマです。W主演の一人、孫の加那を演じるのは映画『窓辺にて』(2022年)やドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(2022年)などに出演、今注目株の俳優・中尾有伽さんです。そして認知症の祖母:紀江を芸能生活55周年の研ナオコさんがファニーに演じます。

脚本を執筆することについて岡﨑育之介監督は、「頭の中で全部できた状態で”よし、書こう”って書き起こすみたいな感覚です。脚本自体は早くて2日くらいで書ける時が多いですね。頭で考えて作るのも書くのも好きで、ポンって出す感覚。天才肌かもしれない」と茶化しつつ決め顔で答えました。すると研ナオコさんは声を上げて笑いながら「監督は書くのが好きなんですよ」と太鼓判を押し、息のあった掛け合いを見せました。孫娘が認知症の祖母の介護をするという設定について、岡﨑監督は「実際に父方の祖母が認知症で、孫である自分を全く覚えていなかった姿から着想を得たというのはあるかもしれないです」と述べました。会っている時にだけ気に掛けてもらえるが、会うとき以外は忘れられる存在の介護老人、”誰かを洗う”職種の介護職を身近で見て、介護とソープ嬢を繋げるアイデアが閃いたのは天才肌ゆえなのでしょう。

岡﨑監督は続けて「日本映画でいうと、暗くて陰鬱な状態から希望を見出そうという内容と、大衆的で消費されやすい内容とに二分されがちだという印象です。でも自分は両者を合体させる作風でやってきましたし、今後もシリアスな社会問題をポップなコメディにしていくという通底しているテーマがあります」と話し「”ソープ嬢がおばあちゃんの介護をする”というと、ジメっとしそうなテーマですが、明るくカラッと描きたいと思いました」と熱く語りました。

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「天才同士っ」と顔を寄せてニッコリ 研ナオコさんのキャスティングの決め手は?

主演の研さんのキャスティングの決め手について岡﨑監督は「楽しく観られないと意味がないと思っていたので、突き抜けるようなファニーなキャラクターを持っている方がいいなと考えていました。‟研ナオコさんしかいない”と思ってオファーしました」と明かしました。研さんは「声を掛けてくれたことが嬉しかったし、内容も面白いし、まだ若い監督でお手伝いできれば嬉しいなと。長いことやっていると、若い人にがんばってもらいたいと思うんです」と話し「特別扱いせずに、妥協しないで貫いてほしいと言いました」と条件を付けたと付け加えました。

岡﨑監督は「恐れ多いですけれど望むところだという気持ちで、最上級の作品を目指しますという形で研さんに恩返しすべくテイクを重ねて徹底して作らせて頂きました」と胸を張りました。研さんは撮影を振り返り「監督に言われた通りにやりました。まあ、監督が思っている感じでやれたのではないかなと…天才なんで自分も(笑)」と岡﨑監督の決め台詞を用いて笑いをとり、「天才同士っ」と研さんと岡﨑監督が仲良く顔を寄せ合いました。

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研ナオコさん「音楽も笑いも表現の仕方が違うだけで全く一緒」演奏シーンは私物のサックスで

実年齢よりも上の認知症のおばあちゃんを演じるため、素顔のシーンが多いことに対して研さんは「ベッドで横になっているのにメイクしているのはおかしいし、私はそれが当たり前だと思っています」と答えました。そして「私は常に生身だから」とサラリと話すところに、独特の存在感を放ち続ける研さんの真髄を垣間見ることができました。また研さんにお芝居と歌との違いを尋ねると「コメディやCM、ドラマなど何本もやらせていただきましたが、音楽も笑いも表現の仕方が違うだけで全く一緒です。同じ姿勢で取り組んできました」と仕事観をにじませました。また、劇中でサックスを演奏するシーンについて「私はもともとサックスを吹けるのよ。でも監督が撮影で用意してくれたサックスが上手く鳴らなくて、じゃあ私のを使うよと自分のを使いました」と私物のサックスが登場すると教えてくれました。

孫娘の加那を演じた中尾有伽さんの魅力について尋ねると岡﨑監督は「奥行きを作れる女優さんで、現場でも役のままの状態です」と語りました。そんな中尾さんとのセッションのような芝居を研さんは楽しんだそうです。2人の様子を岡﨑監督は「中尾さんは役にかなり入り込むタイプの女優さんで、一方研さんは、独特の間もありながら自然体で、これまでのお仕事で培われた反応の能力があります。孫が何かすることに対して祖母がリアクションするというところが2人噛み合って、コミカルなやり取りに繋がったと印象に残っています」と楽しそうに振り返りました。

岡﨑監督×音楽:永太一郎さんの‟いとこコンビ”に注目 ポップな絵と音作りで研究

映画『うぉっしゅ』の全編を通して感じるのはポップでカラフルな世界観です。孫の加那が自分の遊びに祖母を連れ出すシーンが一番のお気に入りだという岡﨑監督は「祖母の紀江自身もそれで元気をもらっていて、被介護老人にとって決められたレクリエーションより普通にみんなが遊んでいるように遊んだほうが楽しいと気づく主人公の成長も描けて良いシーンになったと思います」と自信を見せました。前作『安楽死のススメ』は監督と同年代の男性が主人公でしたが、本作の映画『うぉっしゅ』は女性の目線で描かれた作品です。岡﨑監督は「多くの女性の方々に共感性をもって観て欲しい。広く多くの人が楽しみやすいエンタメ作品として自分には遠い存在である女性たちを描くというのは挑戦でした」と率直に話しました。

映像・音響ともに魅力的な本作。そのこだわりを岡﨑監督に伺うと「実は僕のいとこの永太一郎が音楽をやっております。僕が映像を作って、彼が音楽をつけてっていう‟いとこコンビ”で、気兼ねのない仲です」と述べました。ポップなエンタメ作品に挑戦するということで岡﨑監督は「2人で自分のセンスの部分よりも、ビジュアル面の客観視を強めるためにSNSを見て、音楽もTikTokで流行っている音楽などを聴きました。若い女の子が少しでも入りやすい作品にしようと2人で作りました」とコンビ愛をにじませました。研さんは「本当に、監督はいろいろ調べるのが早いんですよ」とニッコリしました。劇中で登場するカラーボールのシーンは、ポスタービジュアルにもあるようにカラフルで圧巻です。撮影の様子をうかがうと監督は「当日、カラーボールが研さんのお顔に当たるのはマズイ…と思っていたのですが研さんが『いいよ、いいよ』とおっしゃったので、ガンガン当たってしまう中、撮影しました」と明かしました。研さんが「監督の好きなシーンだもんね」と温かな眼差しで見つめる姿が印象的でした。

研さん「歌もお芝居も、もっと上手くなりたい。200歳まで生きますよ」ドラゴンズ戦の始球式にも意欲

芸能生活55周年の研さんに今後の映画出演への意欲を尋ねると「全然、断る理由がないですね」と述べ、「‟私が感じたまんまでしかできないよ”って先に言うのですが、どんな役でも声をかけて頂けるだけで本当に幸せです」と噛みしめるように答えました。「前に、大学生が作る映画に出たんですよ。お金を払おうとするから‟学生はお金を払っちゃダメ”って」と若い人を応援する気持ちも表しました。今後の芸能活動については「もっとお芝居が上手になりたいですし、歌に関してはもっと上手になりたいです…すべて上手になりたいですね」と意外な答えが返ってきました。「まだ全然納得していませんから。歩みを止めてしまうと本当に維持ができないんですよ。どんどん進んでいかないとダメになると思うので怖いです。私は200歳まで生きますよ」とチャーミングに話しました。

最後にドラゴンズファンの研さんに、井上新監督を据えたドラゴンズの今期の予想を尋ねると「最下位だけは避けて欲しいと思うんですよ。でも私は2軍のほうが好きなんです。先日も中部国際空港から沖縄(キャンプ)に行きました」と熱いドラゴンズ愛を見せました。研さんは「チームの雰囲気はすごく良くなって、監督と選手の距離が縮まった感じです。笑顔があるんだったら、もっと頑張れるだろうと。オープン戦ももうひと頑張りできるだろうと…。でもまだ予想はできない」と楽し気に話しました。岡﨑監督は「今までで一番饒舌でしたね」と驚きつつニッコリ。始球式の話題になると研さんは「いいですね~、出たい」と目を輝かせ、「名古屋では野球と『うぉっしゅ』!をプッシュしよう」とまとめました。

作品概要

映画『うぉっしゅ』

2025年5月2日(金) ミッドランドスクエア シネマ 他全国公開

<あらすじ>ソープ店で働く主人公・加那(中尾有伽)。ある日、母から電話が。「一週間だけ、おばあちゃん の介護してくれない?」 仕事のことを隠していた加那は、ソープ嬢ということを秘密に、翌日から祖母宅⇔ソープ店を行き来して、“人 の身体”を洗い続ける二重生活〈ダブルワーク〉をすることに。認知症が進み、名前すら覚えていない祖母・紀江(研ナオコ)の介護に奮闘する加那。会うたびに“初対面”を繰り返してゆく毎日。「どうせ忘れる」相手に対し加那は、祖母との暮らしの中で、本当の事を素直に打ち明けられている自分に気付く。そして祖母の知らなかった、これまでの人生と孤独が垣間見えてきて…。

出演:中尾有伽 研ナオコ 中川ゆかり 西堀文 嶋佐和也(ニューヨーク) 髙木直子 赤間麻里子 磯西真喜

監督/脚本:岡﨑育之介

企画:岡﨑育之介 音楽:永太一郎

共同プロデューサー:神原健太朗 ムラタマリエ

ラインプロデューサー:赤間俊秀

制作プロダクション:役式

宣伝協力:浅田飴

©役式

配給:NAKACHIKA PICTURES

2023年|115分|カラー|DCP


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