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2022-08-23

映画『掘る女 縄文人の落とし物』松本貴子監督が名演小劇場で舞台挨拶 縄文時代の魅力と発掘女子について笑顔でトーク


 

8月19日(金)から名演小劇場にて公開されている映画『掘る女 縄文人の落とし物』は、縄文の遺跡現場で目をキラキラ輝かせて発掘する女子たちを描いたドキュメンタリーです。”土偶好き女子”にはたまらない、そして何かに夢中になっている人、夢中になる何かを探している人にも共感できる作品です。公開3日目の21日、松本貴子監督が舞台挨拶にいらっしゃいました。うずまき好きが高じて土偶に行きついたこと、作品を作るきっかけ、発掘する女性たちの魅力など和やかにお話ししてくれました。ゲストに専門家の折井克比古さん(樹林舎編集長/スワニミズム会員)も登壇しての縄文トークに観客も興味しんしんの様子でした。(取材日:2022年8月21日)

「あんなに楽しそうに土を掘っている女子たちが!」土器や石を拾ったきっかけで考古学の世界へ

映画『掘る女 縄文人の落とし物』は3つの縄文遺跡の現場を舞台として、発掘に夢中になる女性たちを描いたドキュメンタリーです。ドキュメンタリーというと固いイメージになるかもしれませんが、登場する女性たちの楽しそうな姿、ところどころに挟まれるアニメーション、『銀河鉄道999』のメーテルを演じた池田昌子さんのナレーションと肩の力を抜いて観られる優しい作品です。

舞台挨拶は、松本貴子監督自らyoutubeに上げるためにカメラをセットする所からスタートしました。「東京では春風亭昇太さんにお越し頂いて盛り上がりました。そういうダイジェストみたいなものを作ってyoutubeにアップしています。ご覧になってくださいね」と笑顔でアピール。松本監督、司会の神取恭子(フリーアナウンサー)さん、専門家の折井克比古さんはお揃いの「掘る女」Tシャツを着て登壇しました。(残念ながら非売品だそうです。)

名古屋での公開の反響を伺うと、松本監督は「”コメダでコーヒーを飲んでから名演小劇場に来て映画を観ました”というツイートを見たので、わたしも今日はコメダに寄って、ここにやってきました」と答え「皆さん、映画の感想をツイッターなどでつぶやいて頂きたいです」と話しました。折井さんにスワニミズムについて伺うと「長野県に諏訪市というところがあります。そこは遺跡があったり、諏訪大社に代表されるように昔からの信仰があったのですが、その諏訪の研究をする人たちの集まりで諏訪湖とアニミズムをくっつけた造語です。スワ三ニズムといいます」と教えてくれました。

折井さんは映画の感想を「あんなに楽しそうに土を掘っている女子たちというのが印象に残っています」と話し、自身が子どものころ黒曜石がとれる畑で黒い石を拾った時の喜びも語りました。「子どものころに興味を持った一番はじめの嬉しさを、今まで持って生きている方たちが出てきたのが印象的でした」とまとめると、松本監督は「土器や石を拾ったことがきっかけで、考古学の世界に入るというのはすごいですよね」頷きました。「大竹さん(出演者)もキラキラと目を輝かせて話して下さったり、八木さん(出演者)に至っては、その感動を20何年たった今も土偶女子として持ってらして、専門家なのに土偶のことを可愛いと言っているんですよね」と発掘女子の魅力を語りました。

「極上のうずまきは縄文なんですよ」

松本監督に縄文や土偶に興味があったのかを尋ねると「20代でテレビ業界に入ってしばらくした頃に”うずまき”が気になりだして…。今日もスペインで買ったうずまきの指輪をしているんですけど、いろんなうずまきを見ていたら、縄文土器とか土偶にうずまきがついているのを発見して、極上だと。極上のうずまきって縄文なんですよ」と熱く語りました。うずまきについて折井さんが「蛇の形をしたものだとか、うずまきの周りに三角形が点いているものとかいくつかのパターンがあるんですよ」と補足すると、松本監督は「私は見るだけなんですけど、折井さんは調べる人です」と笑いました。

本作『掘る女 縄文人の落とし物』を作る経緯について松本監督は「これはきちんと残したいと思った人とか物を撮りたいと思っています。たまたまNHKで「土偶ミステリー」という番組を作ったんですよ。そこから熱が上がってきて「英雄たちの選択」という歴史番組も作りました」と述べ、監督自身は調べることは得意ではないけれど、縄文についての本をいっぱい読んだこと、そこから縄文人と今生きる私たちが”生活者”として同じだとリアルに感じたことを話しました。また、博物館のガラスケースにある土器などを見て”これはどこから来たのだろう”という思いから「もし縄文を映画にするんだったら、発掘という切り口がいいんじゃないかとぼんやり思い始めたところから今に至っています」と語りました。

現場では出たとこ勝負 縄文の精霊の采配?!

作中に登場する発掘女子は発掘歴30年の大竹さん、中堅の八木さん、大学院生の伊沢さんの3人が柱となっています。発掘の視点で映画を作ろうと思った際、業界的に作業員は女性が多いものの専門家職は女性が少ないと聞いたとのことです。そこで松本監督は「女性の取り組みを見たら面白いんじゃないか」と発掘をやっている人の紹介を募ったそうです。「まず、大竹さんに出会って、あとは出たとこ勝負ですね」といたずらっぽく監督は微笑みました。中堅どころの八木さんと出会い、「大竹さんがレジェンド的な人だったので、若い人がいたら面白いんじゃないかと思って探していたんです。すると伊沢さんに出会って”この人だ!”と密着しました」と彼女たちとの出会いを語りました。また「作業員さんのおばちゃんたちも本当に楽しくて!何かあると産直でお菓子を買って来てくれたり、立ち話したりしました」と話し、意気投合した池田さんに現場に行くたびに顔を出すようになったことを明かしました。「あるとき、池田さんに”ここは結構すごいかも”といわれてついていったら、あの釣手土器が出てきたんです」と声を大きくしました。

折井さんが、大竹さんが考古学を始めたきっかけの書籍の著者:藤森栄一さんのことを語った後に、赤いジャケットを着た学芸員さんが来るシーンに感動したことを話すと、松本監督は「マニアックすぎて皆さん、何の話かと思われているかもしれません」と笑い、その学芸員さんが実は藤森栄一さんの孫の藤森英二さんだったと教えてくれました。「その時、私は恥ずかしながら藤森栄一さんも知らなければ、藤森英二さんの存在も知らなかったんです。英二さんが来た時も、その人が誰なのかまったく知らなかったんです」と打ち明け、撮影していたのも偶然だったと語りました。「縄文時代に神様という概念はないと思うんですが、もし縄文的なアニミズム的な精霊がいたとしたら、私への采配ですね」と松本監督。不思議な縁に導かれて、作品ができたことに感謝しました。最後に折井さんは「ドキュメンタリーとしても映画としても、音楽も素晴らしかったし、いい作品です」、松本監督は「映画は明るく楽しく元気にと作りました。もしちょっと元気のない人がいたら見せてあげてください、今日はありがとうございました」とアピールしました。土を掘る音、発掘する女子たちの輝く笑顔など魅力いっぱいの映画『掘る女 縄文人も落とし物』ぜひスクリーンでお楽しみください。

舞台挨拶後、松本監督はサイン会・写真撮影で観客との交流を楽しんでいました。土偶好き女子、発掘を経験された方などと笑顔を交えていた姿が印象的でした。名演小劇場では『掘る女 縄文の落とし物』のパンフレットや手ぬぐいのグッズも販売しており、お買い求め頂けます。『掘る女 縄文人の落とし物』公開記念として、松本監督の『氷の落とし物』も名演小劇場で上映しています。合わせてお楽しみください。

作品概要

映画『掘る女 縄文人の落とし物』

8月19日(金)より名演小劇場にて公開

監督・プロデューサー:松本貴子

ナレーション:池田昌子

撮影:門脇妙子

音楽:川口義之(栗コーダカルテット)

タイトル文字・イラストレーション:スソアキコアキコ

配給:ぴけプロダクション

配給協力:プレイタイム

©︎2022 ぴけプロダクション

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