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2022-03-18

ドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。〜おかえりお母さん〜』信友直子監督に名古屋でインタビュー


 

3月25日に公開となるドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。〜おかえりお母さん〜』は2018年に観客動員20万人を超える大ヒットとなった『ぼけますから、よろしくお願いします。』の続編となる作品です。ドキュメンタリー制作に携わるテレビディレクターの信友直子さんが広島県呉市で暮らす自身の両親、認知症を患う母親と耳の遠い父親の暮らしを撮影した前作は令和元年度文化庁映画賞、文化記録映画大賞を受賞するなど高く評価されています。

信友監督は前作公開後も両親をとり続け、今作では認知症がさらに進行して脳梗塞を発症した母親と母親との暮らしを決して諦めない父親の姿が映し出されています。映画公開に向けて、信友監督が名古屋でインタビューに応じてくれました。今作の制作を決めたコロナ禍のある出来事や両親への想いなどを話してくれました。(取材日:2022年3月9日)

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続編の決め手は古いテープに記録されていた幻想的な映像

ドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。〜おかえりお母さん〜』は広島県呉市で暮らす90代の両親の姿を娘である信友直子さんが自身の視点で丹念に映し出した作品です。2018年に公開した前作『ぼけますから、よろしくお願いします。』は認知症の母親と耳の遠い父親の暮らしに密着したドキュメンタリーで、大ヒットを記録しました。信友監督は「1作目を作り終えたときに達成感があって、燃え尽きた感がありました」と話しながらも「映画の公開直前に母が倒れて脳梗塞になって、映像は撮っておかないといけないと思いました」と撮影を続けた理由を話しました。

2020年に「その後の信友家」としてテレビで放送はしたものの映画化の踏ん切りがつかなかったそうです。しかし、コロナ禍のステイホーム中に古いテープを見つけ「プロのカメラマンが撮った父と母の元気な頃の映像が出てきて、これは第二弾を作れということだと思ったんです」と決心がついたことを教えてくれました。今作の中でも触れているのですが、信友監督は乳がんを患った経験を映像作品にまとめたセルフドキュメント「おっぱいと東京タワー〜私の乳がん日記」を制作し、2009年にフジテレビで放送されています。この作品に制作にあたって「呉のきれいな映像と父と母のインタビューをプロのカメラマンに撮ってもらったんです」と当時を振り返り「古いテープの中に父と母の日常生活の風景、食事風景などの幻想的な画があったので映画の最初と最後に持ってこようと思いました」と明かしました。信友監督は「1作目は密着ドキュメント感が強かったのですが、2作目は映画の美的な要素を含めた作品になるといいなと思いました」と前作との違いについても話しました。

父親の様々な変化 夫婦仲の良さと家族の絆が伝わってくる

ドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。〜おかえりお母さん〜』は2018年公開の『ぼけますから、よろしくお願いします。』の続編となる作品です。信友監督は「前作は母の認知症が主なテーマでちょっと笑える部分がありましたが、今作は(脳梗塞を患い入院した)母だけを観ていたら、どんどん弱っていくので私も辛かったです」と撮影中の気持ちの違いを話しました。父親の様子について「母を慰めようとしたのか、カラ元気なのか、私を励まそうと思ったのか、ものすごく明るくなってきて、冗談を言うようになりました」と今作で献身的で可愛らしい父親の姿が多く映し出されている理由を明かしました。父親が家事全般を引き受けて母親を介護する姿に「私も父があそこまで家事ができるようになるなんて思ってもみなかったです」と意外だったと話し「父は好奇心が強くて家事をやってみたかったけれど、母に遠慮していたのかも」「どなたでもポテンシャルはあると思います」と父親の変化は特別なものではないかもしれないと言及しました。

今作の中で信友監督は高齢の両親を気遣って自身の生活拠点を変えるべきか父親と相談しますが「呉には帰らず見守る」選択をします。父親の気持ちについて「父は自分のやりたいことを戦争で諦めてできなかった無念があり、小さいころから『自分のやりたいことを見つけてやりなさい』と言われていました」と話し「娘が一番好きなことをやめさせたくない、父のプライドもあるのかなと思いました」と父親の気持ちを慮りました。

今作では母親の看取り、その後の父親の暮らしも映し出されています。信友監督は両親の撮影が仕事になったことで「母の最期に寄り添うことができた。心置きなくお別れできた満足感はあります」と今作を作ったことで悲しい気持ちに丁寧に向き合うことができたと話しました。また、父親の希望で母親のお骨は仏壇に置いたままにしているそうで「(母は)特等席に座って、父と私の様子をずっと見ています。今、3人暮らしをしているような気分です」と優しい笑顔を見せてくれました。今作からは夫婦仲の良さや家族の絆が伝わってきます。信友監督は「2人の可愛らしい年寄りのやり取りをみて、歳を取るのも悪くないな、明日からも頑張ろうと思ってもらえる癒しになってほしい」と多くの人に今作を鑑賞してほしいと伝えました。

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作品概要

『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』

3月25日より伏見ミリオン座、ミッドランドスクエアシネマほかで公開

監督・撮影・語り:信友直子

プロデューサー:濱潤、大島新、堀治樹

制作プロデューサー:稲葉友紀子

編集:目見田健

撮影:南幸男、河合輝久

音響効果:金田智子

ライン編集:池田聡

整音:富永憲一

製作プロダクション:スタッフラビ

製作:フジテレビ、ネツゲン、関西テレビ、信友家

配給・宣伝:アンプラグド

2022年/日本/ドキュメンタリー/101分/ビスタ/2.0

公式サイト https://bokemasu.com/

©2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会


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