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2024-12-27

映画『シンペイ ~歌こそすべて』先行上映の長野で好感触 いよいよ名古屋で公開! 神山征二郎監督インタビュー 


 

1月10日(金)より伏見ミリオン座で公開される映画『シンペイ~歌こそすべて』は明治・大正・昭和という激動の時代を生き抜き「ゴンドラの唄」「シャボン玉」「東京音頭」などを作曲した中山晋平氏の人生を描いた伝記映画です。信州に生まれた中山晋平を演じるのは、歌舞伎俳優の中村橋之助(4代目)さんです。18歳から亡くなる65歳までを演じ、映画初出演であり初主演映画とは思えないほどの好演ぶり。脇を固めるのは志田未来さん、渡辺大さん、中越典子さん、吉本実憂さん、三浦貴大さん、緒形直人さんなど魅力的かつ豪華な面々です。

メガホンを取るのは日本映画界の重鎮、『ハチ公物語』、『時の行路』など多数の作品に関わってきた神山征二郎監督です。新作映画の『シンペイ~歌こそすべて』の公開前に名古屋でインタビューに応えてくれました。作品ができた経緯、出演者のあれこれ、これまでの映画人生についてなど語りました。(取材日:2024年12月19日)

神山征二郎監督  大病から復活  映画『シンペイ~歌こそすべて』は「いい映画になる気がした」

映画『シンペイ~歌こそすべて』は信州に生まれ、少年時代に見た旅楽団に魅せられ音楽の道を志した中山晋平の作曲家人生を描くヒューマンドラマです。2000曲ほどの童謡や大衆歌謡曲を作ってきた大作曲家なので、「シャボン玉」「東京音頭」などの一度は耳にしたことがある曲がどのように生まれてきたのかを知ることができる音楽史として惹かれる方も多いのではないでしょうか。

神山征二郎監督に、前作の『時の行路』(2020年)から久しぶりのインタビューということで近況を伺うと「『時の行路』の撮影時に大病になって、助監督やキャメラマンなどの力を借りて完成させて、名古屋にも来ましたね」とその頃を振り返り「癌っていうのは5年くらい再発などのチェックをしなきゃならなくて、一昨日が最後の検査日だったんですが…一応治りました」と二コリとしました。

中山晋平氏の人生を描くことになった経緯を伺うと、神山監督は大学(日本大学芸術学部映画科)で10年以上後輩の新田博邦さんと3年前に知り合ったことがきっかけだと話しました。神山監督は「新田さんはギターが得意な、音楽ができるプロデューサーなんです。お近づきになったときに『中山晋平を音楽映画として作りたいんです』って言われて、僕も昔からやりたかったんだよ、ということで始めました」と述べました。そして自身が15歳の時に地元ののど自慢大会で準優勝するほど歌が好きだったエピソードを加え、「中山晋平さんにはいい曲が多いし、変化に富んだ人生を送っているので、いい映画になるような気がしていた」と力を込めました。

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映画初出演・初主演の中村橋之助さんがシンペイを好演 神山監督に縁があるキャストが脇を固める

映画『シンペイ~歌こそすべて』では、フレッシュな魅力があふれる中村橋之助(4代目)さんが映画初出演かつ初主演しています。橋之助さんを起用した理由を神山監督は、「僕はお会いしたことがなかったけれど、何か中山晋平っぽい顔をしているなと思って」という直観でオファーをしたそうです。歌舞伎俳優である橋之助さんが映画撮影のために2か月のスケジュールを空けることの大変さを語り「ピアノを弾く役だから、自分で先生を付けてできる限りの勉強もしてくれました」とオファーを受け、全力でやり遂げてくれたことに感謝の意を表していました。橋之助さんの現場での様子を聞くと「3歳から手取り足取り歌舞伎の稽古を積んでこられたので、芸の力を感じました。下駄をはいて歩くなど、若い役者さんであれば撮影前に訓練してもらうのですが、橋之助さんはプロ中のプロで心配ない。逆に他の出演者に足さばきなどの所作を教えてくれました」と振り返りました。

脇を固めるキャストにも注目で、素敵な面々がスクリーンに登場します。キャスティングについて質問すると神山監督は「50年以上も監督をしていますから、その時々の主役・準主役をやった人たちが入っています。三浦貴大さん(『学校をつくろう』)・渡辺大さん(『ラストゲーム最後の早慶戦』)は主役だし、緒形(直人)君は僕の映画の3作(『草の乱』『郡上一揆』『北辰斜にさすところ』)で主役でした。酒井美紀ちゃんが15歳で出演した『ひめゆりの塔』では”この子は天才だな”と思っていたんですよ。中越典子さんは『救いたい』という作品で大きな役で出てくれて”いい女優さんがいる”って安心したんです。今回も彼女の鹿児島弁、完璧でしたよね」と、それぞれの出演者に対して惜しみない賛辞を送りました。

劇中、登場人物の出身地によって言葉が違うところも人物の造形として面白く感じられるかも知れません。例えば坪内逍遥(川崎麻世さん)は明治維新から旭丘高校の前身の愛知外国語学校の卒業まで名古屋で育ったので名古屋弁で話していますし、野口雨情(三浦貴大さん)は茨城訛りで話しています。また中山晋平の唄を数多く歌唱した佐藤千夜子(真由子さん)は山形弁と、作中で様々な日本語の響きを味わえます。神山監督は「あの頃はテレビやラジオがなくて標準語がなかった。それぞれの地域の言葉を話しているっているのを表現しました」と話しました。

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映画『シンペイ~歌こそすべて』が31作品目の神山監督は、これまでの監督のお仕事について「僕はメジャーな作品も非メジャーな作品も多くしていますが、自分がやりたくてできるっていうことは少ないんです」と明かしました。そして18歳で日本大学芸術学部映画科の監督コースに入学してからずっと監督一筋でやってきたと述べ、日本映画の全盛期から、テレビの登場で映画を観る人が減っていく空気感、コロナ禍のこと、配信なども含めてこれまでの映画人生を語りました。師匠の新藤兼人監督から、神山監督がデビューした30歳ころに言われた言葉が「来た仕事は断ってはいけない」、「依頼が来たら、やりますって言いなさい」であったと教えてくれました。神山監督は幼少期に犬にかまれて以来、実は犬が苦手だったのに『ハチ公物語』のオファーを引き受けたと苦笑いしながら話しました。

映画『シンペイ~歌こそすべて』について神山監督は「撮影している最中から『早く見たい』っていうお声がとても多かったんです」と明かしました。「中山晋平を知っている人もいるのだろうし、歌が楽しみとか観客の視点から思ったかもしれませんが、『ハチ公物語』の時もそんな感じでした」と嬉しさを隠しきれない表情で述べました。現在、先行上映されている長野での評判を尋ねると「もう2度見ましたとか言う人がいたり、休日はほぼ満席だったとか聞いています。エンドマークがでると拍手が起こるとも聞きました」と長野での熱い反応に手ごたえを見せました。エンディングソングは『ゴンドラの唄』で長野県出身・在住の上條恒彦さんが歌唱。新たに収録した圧巻の歌声で映画の余韻を深めます。「プロの歌です」と神山監督も太鼓判を押し、「私より少し年上なのですが、よくやってくださった」と感謝しました。

いよいよ1月10日から全国公開されるということで、現在の気持ちを伺うと「ロケした地元は大成功しています。でも全国でどうなるのかハラハラドキドキ…分からないです」と答えました。岐阜出身の神山監督は「岐阜・名古屋の友達、同級生たちも待ち構えていますよ。名古屋は重点地区ですから応援よろしくお願いします」と茶目っ気を入れたコメントで結びました。今後もやってみたい企画が5・6本あるというエネルギッシュな神山征二郎監督の新作映画『シンペイ~歌こそすべて』いよいよ1月10日公開です。作曲家:中山晋平の伝記音楽映画。ぜひお近くの劇場でご覧ください!

作品概要

映画『シンペイ~歌こそすべて』

2025年1月10日(金)より伏見ミリオン座ほか全国公開

監督:神山征二郎

出演:中村橋之助、志田未来、渡辺大、染谷俊之、三浦貴大、中越典子、吉本実憂、高橋由美子、酒井美紀、真由子、土屋貴子、辰巳琢郎、尾美としのり、川﨑麻世、林与一、緒形直人、ナレーション:岸本加世子

企画プロデュース :新田博邦

脚本 :加藤正人、神山征二郎

エンディングテーマ :『ゴンドラの唄』上條恒彦

2024年 /日本 /127分

配給 :シネメディア

公式サイト: https://shinpei-movie.com/

©「シンペイ」製作委員会2024


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