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2025-01-10

阪神・淡路大震災から30年 富田望生さん主演映画『港に灯がともる』 堀之内礼二郎プロデューサーにインタビュー


 

2025年1月17日に公開となる映画『港に灯がともる』は阪神・淡路大震災が起こった翌月に誕生した在日コリアン女性の灯(あかり)が、親から聞かされる震災の記憶や帰化をめぐる家族内の不和で精神を蝕まれ、そこからの回復を目指すなかで希望を見出していくアフター震災ストーリーです。主演は富田望生さんで、この作品が映画初主演となります。監督は、NHK朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』、ドラマ『心の傷を癒すということ』など多くの作品を手掛けた安達もじりさんです。また長年の相棒ともいうべき堀之内礼二郎プロデューサー(現在はNHKから独立 以下堀之内プロデューサー)とのタッグも魅力的です。共演は甲本雅裕さん、麻生祐未さん、青木柚さん、伊藤万理華さん、山之内すずさん、渡辺真起子さんなどバラエティ豊かな面々が揃い、物語世界をリアルに表しています。

公開前に本作『港に灯がともる』の堀之内プロデューサーにインタビューが叶いました!企画が立ち上がった経緯と神戸について、富田望生さんの魅力などお話ししました。

「あの瞬間にユートピアが生まれた」と言われる丸五市場などオール神戸ロケ!堀之内礼二郎プロデューサー「生身の神戸を表現できたら」

阪神・淡路大震災の翌月に誕生した一人の女性・灯(あかり)の視点を通して港町・神戸が描かれる映画『港に灯がともる』は、家族などから震災の記憶を聞かされつつ実感に乏しい世代の心情や、家族との葛藤、震災前後の神戸の街や人々の様子が描かれたヒューマンドラマです。NHK放送局のドラマ『まんぷく』『花燃ゆ』『カムカムエヴリバディ』などで一緒に仕事をしてきた安達もじり監督と、堀之内プロデューサーの最強タッグの作品という点も見逃せません。お二人は震災直後を描いたドラマ『心の傷を癒すということ』(NHK土曜ドラマ2020年、劇場版2021年)も一緒に制作しています。

堀之内プロデューサーは「『心の傷を癒すということ』はある種、当事者の立場や気持ちに寄り添う作品でした」と述べ、震災後30年というタイミングでどんな作品を作るか…と神戸市で取材し、市民の半数以上がすでに震災を経験していないという事実にかなり驚いたそうです。「でも、神戸の人々は震災のことを必ず感じながら生きている、住んでいるんです。それで、震災を体験していない立場の主人公を描くことで、そういった立場の方に寄り添える作品にしたいと思いました」と話しました。そして「『心の傷を癒すということ』とある意味で対になる作品として動き出しました」と加えました。

映画制作の経緯を伺うと、堀之内プロデューサーは『心の傷を…』の主人公のモデルになった安克昌医師の弟(安成洋)さんが発起人であったと話し、「震災と心のケアの2つをテーマに描いてほしいという思いを受けて、改めて取材をしました」と明かしました。そして「震災で最も被害を受けた長田区は、様々なルーツを持った方が非常に多いんです。劇中で描かれる丸五市場は震災が起きた日が定休日の火曜だったから火災が起きず被害が小さかったんです」と言及しました。取材で心に残った言葉として「”あの瞬間にユートピアが生まれた”、と言う方もいました」と述べる堀之内さんに、その言葉の意味を尋ねると「人どうしがルーツなど関係なくつき合える、弱っていたら助けるということが実現した瞬間・場所になったということです」と教えてくれました。また「それで人と人が繋がっていけるような世の中を願う人々の物語が描けるのではないか」というアイデアに繋がったと語りました。灯のルーツにかかわる長田区が大きな意味を持つのも頷けます。

神戸市は現在もコリアン、イスラム系、中国系、ベトナム系、ウクライナの人々などが住む多国籍で優しい街だと話す堀之内プロデューサー。神戸のことを「誰でも受け入れるよっていう、器の大きい街なんです。その優しい神戸の雰囲気、生身の神戸を表現できるといいなということでオール神戸ロケなんです」と声に力を入れました。

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「生きやすさ」を見つけていく主人公を富田望生さんが熱演 編集で気づいた富田さんの心音、呼吸のすごみ

映画『港に灯がともる』は、主人公の灯という女性が高校を卒業する2013年頃から2025年の今に至るまで彼女が過ごしてきた12年を描いたもので、震災後を描く”テーマ主義”のものではないと堀之内プロデューサーが話すように、一人の女性が「生きやすさ」を見つけていく過程が丁寧に紡がれています。その12年の中にコロナ禍やウクライナ戦争などが織り込まれているので、ドキュメンタリーのように感じる方もいるかもしれません。富田望生さんを主演に迎えた理由を尋ねると、堀之内プロデューサーは「様々な作品に出られてるのを見て、凄いな…いつかご一緒したいと願っていました」と言い、「富田さんなら灯という難しい役でも真摯に向き合って演じてくれると思いました」と熱い思いでオファーしたと話しました。

撮影中の富田さんの様子を聞くと、「安達もじり監督の作品性もあるのですが、生っぽさというか、”そこで生きてください”ってことを役者さんに伝えるんです。そのアプローチもあり富田さんは撮影中ほとんど神戸で暮らして、神戸という町を感じて生きるということを真摯にやって下さいました」と振り返りました。また双極性障害を発症した主人公を演じたことについて「富田さんは全力で役に飛び込んでくれて、カットが掛かっても普通に戻ることができなくて時々怖くなる時すらありました。撮影の都合で急かすということはせず、ちゃんと戻ってこられるまで待つということをチーム全員でやっていました」と富田さんとスタッフ一同で灯という主人公を作っていったと明かしました。また、東日本大震災を小学生で体験した富田さんですが、本作は震災を知らない世代を演じるため極力意識させないように配慮するなどバックアップ体制をしっかり敷いていたと堀之内さんは述べました。

あるシーンについて「富田さんは台本を読んで頭では相手が何というのか知っているはずなのに、灯として初めて聞くように反応することができるんです。本番中はまさに灯として生きているんです」と堀之内プロデューサーは驚きに満ちた表情で言いました。そして「相手の台詞に反応してマイクが拾ってしまうほど心臓が大きく高鳴ることもあったのですが、それを活かした場面もあります。」と教えてくれました。

編集する過程で気づいたこととして、”灯の呼吸”だと語る堀之内プロデューサーhttps://www.google.com/adsense/new/u/0/pub-5337645305481511/home。「深呼吸するとか、時間をかけて呼吸を整えるシーンとかから、この映画は呼吸というものを大事にしていく作品だと発見しました。呼吸しない人間はいないので、多くの方に共感していただけるのではないかと思っています」と述べ、「富田望生さんが灯として、僕が考えてもいないような表現をしてくれたからこそ、究極の“我が事映画”にしてもらえました」と絶賛しました。

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そもそもプロデューサーの仕事とは? 堀之内プロデューサー:今後は関西を拠点に制作

これまでNHK在籍時にたくさんの作品にかかわってきた堀之内プロデューサーに、プロデューサーの仕事について伺うと「作品の責任者として、初めから最後まで全部見守るってことが一番大きいですね」と答えました。「最初に監督を選んで、脚本家を選んで、制作メンバーを集めて、ストーリーが出来てきたらキャスティングとだんだん仲間を広げていきます。PRや作品を届けた後の反響への対応をしたり、作品を使ったその後の展開の企画をしたりなど、作品と一番長く付き合っていけるのがプロデューサーの醍醐味です」と具体的な内容を教えてくれました。

堀之内プロデューサーに今後の動向を伺うと、独立した現在は「ミナトスタジオ」という神戸を拠点とした映画スタジオと一緒に仕事をしていると述べ、「僕らは企画や取材や脚本作りなど、結構時間をかけることを大切にしているので、今から動きだしている作品があります」と次作への意欲を見せました。また、「どうしても映像制作は東京に集中してしまいがちになるので、関西の映像文化を引きついで、受け継いで、残していくことをこの先、長い目線でやっていきたいという想いがあります」と関西・神戸への熱い気持ちを溢れさせました。

作品概要

映画『港に灯がともる』

2025年1月17日(金)より新宿ピカデリー、ユーロスペース他全国順次公開

(愛知:伏見ミリオン座、ミッドランドスクエアシネマ、ミッドランドシネマ名古屋空港で公開)

出演:富田望生 伊藤万理華 青木柚 山之内すず 中川わさ美 MC NAM 田村健太郎 土村芳 渡辺真起子 山中崇 麻生祐未 甲本雅裕

監督・脚本:安達もじり

脚本:川島天見

音楽:世武裕子

製作:ミナトスタジオ

配給:太秦

公式サイト:minatomo117.jp

©Minato Studio 2025

 


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