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2024-09-26

名古屋オールロケの映画『はじまりの日』圧倒的な歌唱シーンに心揺さぶられる音楽劇 日比遊一監督と主演の遥海さんにインタビュー


 

 10月5日(土)からミッドランドスクエアシネマで先行公開され、10月11日(金)から全国公開される映画『はじまりの日』は、名古屋オールロケで撮影された日比遊一監督の最新作です。かつて一世風靡したロックスターの「男」とシンガーを夢見る「女」という対照的な二人を軸にして描かれるのは、再び光を放つことへの優しい視線と、自信を小さな一歩に変える勇気です。人間模様に加え、映画オリジナルの素敵な楽曲・圧巻の歌唱シーンが魅力的な音楽映画です。主役の一人である「男」役をJAYWALKのヴォーカリストとして活躍した中村耕一さん、ヒロインの新星の歌姫である「女」役を遥海さんが演じます。映画初出演の二人の脇を固めるのは高岡早紀さん、山口智充さん、岡崎紗絵さん、羽場裕一さん、秋野暢子さん、麿 赤兒さん、竹中直人さんなど魅力的な共演者です。公開前に日比遊一監督と、主演の遥海さんがインタビューに応えてくれました。音楽劇を製作した理由、ロケ地へのこだわり、撮影秘話などを話しました。(取材日:2024年8月28日)

「歌で引っ張る映画を名古屋で作りたい」 アメリカ生活が長かったからこそ気づいた日本の素晴らしさ

映画『はじまりの日』は、かつてのロックスターの「男」が今では清掃員としてつつましい暮らしをする中で、アパートの隣人であり仕事の同僚である「女」の歌声を偶然聞いたこと契機に止まりかけた自分の気持ちが動き出す様子と、家庭の事情で歌手になる夢を諦めざるを得なかった「女」が「男」と交流の中で芽生えた自信を力に変えて、夢に向かって進む姿が描かれたドラマです。素晴らしい楽曲・歌唱シーンが作品世界に彩りを与え、心震える音楽劇としても楽しめます。映画『はじまりの日』を製作したのは、名古屋出身でニューヨーク在住の日比遊一監督です。熱田区近辺を舞台に描かれた自伝的映画『名も無い日』(2021年)が記憶に新しいですが、本作は前作とはテイストが異なる作品です。

音楽劇を作ろうとした経緯を伺うと日比監督は「前作の『名も無い日』は作家にとって最後にやるようなプロジェクトだと思うのですが、それを先に製作させてもらって…頭の中が真っ白になりました」と当時の気持ちを明かしました。そして「その時期はコロナ禍で時間があり、いつか挑戦したいこととして『グレイテスト・ショーマン』や『アリー/スター誕生』のような作品を名古屋で、歌で引っ張る作品を作りたいとか、歌詞を書き留めていたりしていました。それが形になって本当にラッキーだと思っています」と話しました。歌に着目した理由について「天災とか9・11もそうですが、人類って歌で救われてきたことがたくさんあったと思います。同じ釜の飯より一緒に歌を歌おうみたいな。だから自分が歌映画を撮って、皆で口ずさめるような歌を作ってという思いがこの作品作りのきっかけになりました」と熱く語りました。

また、主役の二人が清掃員である意味について、「男」が罪を犯した過去を持つことと「女」がヤングケアラーであることに触れながら「私はアメリカ生活が長いので、セカンドチャンスという意識が日本では非常に薄いことに気がつきました。主役の二人が出会う場所を考えたときに”清掃”…神棚を洗い清めるという意味が語源のようですが、主人公の「男」が罪を償い清めるという意味と、遥海ちゃんが演じるヒロインと清掃員として出会うとしたらメタフォームとしていいと思いました」と述べ、社会的な背景をエンタメに昇華させて描きたかったという思いを話しました。そして日比監督は「なぜ日本はこんなに清らかで美しい国なのかと世界中で言われますが、影の存在があるからだと僕は思っている。テレビ塔や地下鉄など海外の方が綺麗で清潔だと言うけれど、深夜・早朝に一生懸命やってくれる人がいるっていうのを世界に見せたかった」と母国と離れたからこそ再発見できた日本や名古屋の素晴らしさを話すと、主演の遥海さんも「海外と全然違いますよね。日本は住みやすい場所だと感じます」と13歳までフィリピンで暮らしていたことに触れながら監督に頷きました。

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「遥海さんと中村耕一さんの今を刻みたかった」中村さんと遥海さんの歌声に注目!

 映画『はじまりの日』は音楽をきっかけに再生・誕生するシンガーの姿を描くので主演俳優の歌唱力は不可欠です。主人公の「男」役は歌唱力は折り紙付きながら演技経験がほぼ無い中村耕一さんが演じます。ヒロインの「女」役はミュージカルの出演の経験はあるけれど、映画は初出演の遥海さんが抜擢されました。遥海さんはソニー損保のテレビCMでジングル歌唱をしているので、彼女の歌声を知らないうちに耳にしている人も少なくないでしょう。これまでもミュージカル『RENT』などに出演し、2025年2月28日から御園座で上演されるミュージカル『SIX』の主要キャストの一人を演じることが発表されています。まさに、新星の歌姫である「女」役に遥海さんはピッタリです。遥海さんに撮影前に取り組んだことを伺うと「監督に何も準備して来ないでほしいと言われました」と意外な答えが。「歌は小さい頃からやってきたので”やってやるぞ”という気持ちでした。でも映画で台詞を言うことに不安があったので監督にレッスンを受けていいですかって聞いたらダメだって」と無口なヒロインとは真逆の明るい表情でアハハと笑いながら日比監督をチラリ。

日比監督は「リアリティ…彼女なりの言葉でないと。オブラートに包まれた遥海ちゃんは面白くないし、間違いなく歌が上手い。今の彼女を刻みたかった…中村耕一さんの今を刻みたかった。俳優として準備するというよりは遥海ちゃんの存在感でこの役はできると確信していました」と話しました。遥海さんに役柄との共通点を聞くと「私、今ではこんなに話していますが13歳の時に来日したとき、日本語が全くできなかったんです。だから誰かに話しても分かってもらえないとか、頑張って生きないと自分がダメになるという切実な思い、歌手になる夢、音楽で不安を発散しているところがヒロインと共通していて、共感しかありませんでした」と答え、自分の過去の経験が引き出しとなったとも話しました。

「男」役の中村耕一さんとの共演について遥海さんは「声って嘘をつかないんだなと感じました。今まで何をしてきたのか…多分いろんな経験をしてきたと思うのですが、経験が声になるってすごい!暖かさが隠しきれない感じの方です」と目をキラキラさせました。中村さんと二人で歌うシーンについて伺うと「撮影前に中村さんのライブを見に行きました。マイクを握った瞬間、何かが外れちゃったと思うくらい中村さんの歌がすごかったんです。それを聞いて自分のままでいいんだって思えました」と興奮気味に話し「二人で歌った時、調和ではなく個としてぶつかっていく感じで歌いました。めちゃくちゃ楽しかったです」満面の笑顔を見せました。二人の魂を込めた歌は聞きごたえ充分!見ごたえがあるシーンです。

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高岡早紀さん、竹中直人さん、岡崎紗絵さんなど魅力的な共演者たち「ロケ地っていうのは、主人公の一人です」と監督自ら探したのは?

 映画初出演の遥海さんを悩ませたのは場所や日程の都合で時系列で撮れないということで、遥海さんにとって大きなチャレンジだったようです。遥海さんは「いちばん最初に撮ったシーンが「母親」役の高岡早紀さんとの場面でした。初対面のご挨拶をして、高岡さんが和やかに話をしてくれていて、その直後に激しいシーンを撮影したんですよ。気持ちの持っていき方が難しかったです」と教えてくれました。そして高岡さんの雰囲気が本場で一瞬にして変わる俳優スイッチを目の当たりにして驚いたと話しました。俳優スイッチの話題から遥海さんは「竹中さんも凄くて!これから『男』を怒鳴るシーンなのに、直前までキャストやスタッフさんに可笑しいことを言うんですよ」と竹中さんの切り替えの速さに舌を巻いたそうです。日比監督も「モニターを見ながら、竹中さんの顔を見られなくなるんです。笑いをこらえてね…本当にあの人はひどい」と親愛を込めて話しました。映画『はじまりの日』には高岡さん、竹中さん以外にも魅力的な共演者が揃っています。名古屋のローカル番組「ぐっさん家」で名古屋に縁がある山口智充さん、前作『名も無い日』にも出演した名古屋出身の岡崎紗絵さんのほか、羽場裕一さん、秋野暢子さん、麿 赤兒さんなど味わい深い面々が出演しています。

ロケ地について尋ねると日比監督は「自分で歩いて探し、あのアパートを見つけたときは鳥肌が立ちました」と理想通りの場所に巡り合えた喜びをにじませました。しかし取り壊しを理由に断られ、紆余曲折したそうです。「何度もお願いして、映画の撮影が終わるまでは残すってことになりました。でも取り壊しを3年も待ったからと、今は下地になってしまいました」と、映画の聖地として残したかった気持ちがあったと述べ、「本当にロケ地っていうのは、主人公の一人なんですよ」と強い思いを見せました。劇中のアパートは日比監督の言うところのセカンドチャンスを目指す人、障がいを持つ人、社会から疎外された人など問題を抱えた人々が暮らす場所という暗示があるそうです。監督が選んだこだわりのロケ地の数々。新旧入り混じる名古屋の魅力を味わえます。

遥海さんは「クランクインまで、映画の主役ができるなんて信じられなかったんです。夢みたいなお話だったので、マネジャーさんに本当なのかとずっと聞いていました」と微笑み、日比監督は「映画ができること自体が奇跡なんですよ。お金が集まってもダメになるときがあるし、上映されることも奇跡です」と語るように、様々な奇跡によって皆さんに届けられる映画『はじまりの日』がまもなく公開されます。観る者の肩をそっと押してくれる素敵なドラマ、素晴らしい歌唱を是非大きなスクリーンで味わってください。

名古屋先行公開記念舞台挨拶&レッドカーペットイベント・中部電力 MIRAI TOWER前でトークイベントも!

10月5日(土)の名古屋での先行公開を記念して、ミッドランドスクエア シネマで映画『はじまりの日』公開初日舞台挨拶が行われます。舞台挨拶には中村耕一さん、遥海さん、日比遊一監督が登壇します。舞台挨拶が行われるのは、10月5日(土)9:30~の回(上映終了後に舞台挨拶)、12:50~の回(上映開始前に舞台挨拶)の2回で、1回目と2回目の上映の間に劇場内ではレッドカーペットイベントも実施されます。

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10月6日(日)には映画の中でも印象的なシーンで登場する中部電力 MIRAI TOWERの前でトークイベントが行われます。野外特設ステージでの中村耕一さん、遥海さん、日比遊一監督が登壇するトークイベントは観覧無料となります。トークイベントが行われるのは、10月6日(日)の13:00~、15:00~、いずれも30分程度で、立ち見、撮影もOKのイベントとなっています。

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さらに、9月20日(金)~10月19日(土)まで中部電力 MIRAI TOWER内のTHE TOWER HOTEL NAGOYA 4階 ギャラリー“on hold”で映画「はじまりの日」特別展が行われています。ホテル内のギャラリーですが、宿泊者以外の方も立ち寄ることができ、日比遊一監督が厳選したシーンカットやメイキング映像が特別に展示されています。

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作品概要

映画『はじまりの日』

10/5(土)よりミッドランドスクエア シネマ他にて名古屋先行公開、

10/11(金)より全国公開

監督         日比遊一

出演         中村耕一、遥海、高岡早紀、山口智充、岡崎紗絵、羽場裕一、秋野暢子、麿赤兒、竹中直人

かつてロックスターとして一世風靡した「男」。ある事件がきっかけで、音楽を封印し、ビルの清掃会社で働きながら質素に暮らしている。仕事場とアパートを往復し、生きる意味を問う事すらしない男の日々。かつて男のファンだった同僚の寺田が、唯一心ゆるせる相手だ。男の隣人は会社の同僚の「女」だった。夜な夜な女と母親の激しいやり取りが男の部屋に響き渡ってくる。ある日、公園で一人口ずさむ女の歌声に大きく心を揺さぶられる男。それをきっかけに男の日々は、ゆっくりと動き出す。

※PG12

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

https://hajimarinohi.jp/


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