「栩谷は荒井監督を観察しながら丁寧に形成」映画『花腐し』荒井晴彦監督と主演の綾野剛さんに名古屋でインタビュー
11月10日(金)より伏見ミリオン座他にて全国公開となる映画『花腐し』(読み: ハナクタシ)は第123回芥川賞を受賞した松浦寿輝氏による同名小説「花腐し」が原作で、監督をつとめる荒井晴彦さんの手により“ピンク映画へのレクイエム”というモチーフが取り入れられて大胆に脚色された作品です。綾野剛さんが主演を務め、柄本佑さん、さとうほなみさんが共演し、映画監督の男と脚本家志望だった男が、ある女優との奇縁によって交錯してゆく切なくも純粋な愛を描いた物語になっています。
名古屋の伏見ミリオン座で開催された舞台挨拶付き先行上映会の前に荒井監督と映画監督・栩谷役を演じた綾野さんにインタビューすることができました。(取材日:2023年10月24日)
新着情報
「圧倒的完成度の高さの脚本。映像化に畏怖があった」「栩谷は荒井監督を観察しながら丁寧に形成しました」
映画『花腐し』は同名小説「花腐し」を原作に、荒井監督が“ピンク映画へのレクイエム”というモチーフを取り入れ大胆な脚色に挑戦した作品です。脚色について荒井監督は「原作を読んで、(男2人が)喋っているだけなんでね。困ったなーっていう。雨ははずせないし。最後に“祥子が現れて栩谷が後を追うように階段に足をかけた”っていうのが小説の終わりなんですよ。そこだけははずせないなって。そこへ合わせれば、あとはいじっていいんじゃないかって」と大胆な脚色を試みたきっかけと、荒井監督が一番知っている映画業界を描き、映画監督と脚本家志望の男たちを登場させたことを教えてくれました。
また、荒井監督は大胆な脚色ゆえに“原作をだいぶ変えた”と言われることもあると話し「骨格は残したつもりです。万葉集の話と大きな骨格は残してあります。言い訳すると」と笑みを浮かべながら話しました。
綾野さんに脚本を読んだ時の感想を尋ねると「 映画人の匂いが湧き立つ“脚本”に出会いました」と力強く話し「圧倒的完成度の高さと、読み物として完成されている強度がありました」と続けました。そして「これを映像化する上で、この完成度をどこまで追求できるのかという畏怖や緊張感もありました。」と語りました。綾野さんは荒井監督に「“栩谷をどう生きればいいですか?”と聞いたら、“脚本なんてただの書き物だから自由にやればいいんだよ”と潔く仰って、その時 “目の前に栩谷がいる”と。それからは荒井さんを観察しながら栩谷を丁寧に形成していきました」と役作りについて教えてくれました。
今作で2人の男、栩谷と伊関との奇縁を結ぶ女優・祥子役を演じるのはゲスの極み乙女のドラマーであり、俳優として様々な作品で活躍中のさとうほなみさんです。純粋な女性を大胆に演じたさとうさんについて綾野さんは「ほなみさんはとにかくエンジンの大きい方で、すごく直感的ですが、地に足が着いている。シンプルに言うととてもかっこいい方です。素敵でした」と魅力を語りました。
DVDの特典映像に!?ある撮影エピソードで綾野さんが「楽しかった」と振り返る
映画『花腐し』で印象的なのは現代をモノクロで、過去をカラーで描いていく演出です。この演出について荒井監督は「昔からやりたかった。普通の映画は現代がカラーで過去はセピアやモノクロになったり。でも大体、過去のほうが輝いていたんじゃないのかとずっと思っていてね。特に歳とると」と明かしました。綾野さんも「過去がカラーって残酷ですよね。いい思い出も葛藤した記憶もすべてカラーとして残っている。映画的演出として表現されているからこそ、現在のモノクロは、芝居で情報過多なサービスは必要ないと判断しました」と話しました。
さらに荒井監督は「大瀧詠一の曲を使ってね、“想い出はモノクローム 色を点けてくれ”ってお客さんに説明しているんですよ」と話すと綾野さんが「マキタスポーツさんが歌っていらっしゃるんです」と付け足しました。すると荒井監督は「ホントはあそこで(綾野さんが)一緒に歌っているんだけどね」と劇中には登場しないシーンがあったことを暴露。綾野さんはいきなりギターを渡され、弾いていたことも明かし「楽しかったです」と撮影時を振り返りました。「あれDVDに入れるかね。特典として(笑)」と荒井監督が問いかけると綾野さんは「構いません」と微笑みながら答えました。
また、そのエピソードについて綾野さんは「マキタスポーツさんが芝居中にアドリブで弾いてみる?と仰って」と撮影当時は驚き焦ったことを落ち着いた様子で明かし「本来なら“弾けません”の一言で終わってもいいのですが、栩谷がギターを弾けるということに違和感がなかったんです。情報が少ない人物だからこそムードがある方なので、直感で弾くことを選択しました」と役者としての直感を働かせながら演じていたことを教えてくれました。
マキタさんからあった“突然のフリ”の話に続き、荒井監督からも“突然のフリ”があったそうで「祥子と歌うところも現場で荒井さんが“歌える?”と仰って」と綾野さんが話すと、荒井監督は「そうそうそう。シナリオにはなくて現場でね」と答えました。綾野さんは「分かりました」と即時に答えたそうで「テストをあまりしない現場でしたので、本番中にチューニングしていくという感じでした」と明かしました。荒井監督からも“突然のフリ”に対応した綾野さんが「栩谷として」歌うシーンがどこで登場するのか、また栩谷が歌う理由にも思いを馳せながら、映画館のスクリーンでご覧ください。
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作品概要
11月10日(金)伏見ミリオン座ほか全国公開
出演:綾野 剛 柄本 佑 さとうほなみ 吉岡睦雄、川瀬陽太、MINAMO、Nia、マキタスポーツ、山崎ハコ、赤座美代子、奥田瑛二
監督:荒井晴彦
原作:松浦寿輝『花腐し』(講談社文庫)
脚本:荒井晴彦 中野太
製作:東映ビデオ、バップ、アークエンタテインメント
制作プロダクション:アークエンタテインメント
2023年/日本/137分/5.1ch/ビスタ/モノクロ・カラー/デジタル(R18+)
配給:東映ビデオ
Ⓒ2023「花腐し」製作委員会
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