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2017-11-30

映画『鋼の錬金術師』の曽利文彦監督にインタビュー 俳優たちへの感謝と運命に導かれたイタリアロケ秘話


12月1日に公開となる映画『鋼の錬金術師』は荒川弘さんの大ヒットコミックを実写化した作品で、「Hey! Say! JUMP」の山田涼介さんが主人公のエドワード・エルリックを演じ、本田翼さん(ウィンリィ・ロックベル役)、ディーン・フジオカさん(ロイ・マスタング役)、蓮佛美沙子さん(リザ・ホークアイ役)、本郷奏多さん(エンヴィー役)、内山信二さん(グラトニー役)、夏菜さん(マリア・ロス役)、佐藤隆太さん(マース・ヒューズ役)、松雪泰子さん(ラスト役)など豪華なキャストが人気のキャラクターに扮していることでも話題となっています。

映画の公開も間もなくというタイミングで、名古屋にプロモーションに来られた曽利文彦監督にインタビューをすることができました。予定時間を大幅にオーバーするほど、たくさんの制作秘話や作品に込めた想いを語ってくださった様子をご紹介します。(取材日:2017年11月27日)

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アニメ・コンベンションin NYCの熱狂ぶりを振り返る

日本時間11月20日にニューヨークで開催されたアニメ・コンベンションで上映された映画『鋼の錬金術師』、1500人を収容できる会場が超満員となった上映の様子を現地で見てきた曽利文彦監督は「すごい盛り上がっていて、温かい感じだった。キャラクターが出るたびに、こんなに沸くかなと思うくらい。終わった後も、止まない拍手ってこういうことかっていうくらい絶賛してもらった。」と話し、クライマックスで各キャラクターが活躍すると応援上映のような雰囲気になって、海外のノリの良さを感じたとその熱狂ぶりを振り返っていました。

上映後に記者から「成功の秘訣は??」とインタビューを受けたことを明かし、「ハリウッドで日本のコミックを映画化したものにいい印象をもっていないらしく、それと比べられ、何が違うのかを聞かれた」と話していました。監督は「この作品は、アメリカでも人気があるけれど、原作(者)は日本人。舞台はヨーロッパ調であっても、ハートの部分は完全に日本人なので、そこを外すか外さないかはものすごく大きいですねと話したら納得していた」と教えてくれました。「外側は寄せていけるけれど、文化とかハート、メンタル、根っこの部分はなかなか寄せられない。明らかに違う文化なので、日本人の原作者が書かれたものは、日本人の手で映画化したほうがフィットするんだなと思った。」とニューヨークで感じたことを語ってくれました。

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原作者の荒川弘先生や書店員さんの反応

曽利監督は「(映画『鋼の錬金術師』をご覧になった)荒川先生が試写室から出てきたときに、満面の笑顔で楽しかったと言ってくれた。嬉しくて腰を抜かしそうだった。」と話し、山田さんと喜びを分かち合ったエピソードを披露してくれました。(漫画「鋼の錬金術師」を連載していた)ガンガン編集部の方からは「この映画のために、今まで映画化しなかったんだね。」と言ってもらうことができ、監督冥利に尽きると感じたそうです。

本屋大賞などを選んでいる書店員さんたちに映画を観て書いてもらったレビューやコメントを呼んだ監督は「男泣きするくらい良くて、エンタメに精通していて、厳しい目を持っている方が多いので、評価が高くて嬉しかった。」と話し、「娯楽・エンタメ作品として楽しかったと言っていただけるのが嬉しい。スタッフ、キャストはだんだん自信が湧いてきた。」と公開前の今の気持ちを教えてくれました。

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兄弟愛や命というテーマに絞り、1本の映画としてカタルシスを得られる作品

今作でこだわった部分や描いたテーマについて曽利監督は「(原作は)27巻もあるのでいろいろなテーマ性を含んでいるんだけど、欲張らずに原作の3分の1くらいのエピソードを映画の中に入れようと思った。」と話し、「コミックス原作なので見た目も重要。名シーンもあるのでそれを織り交ぜながら、ハートやメンタルの部分、兄弟の愛情や命に対する視点にテーマを絞り込んでいる。」と答えてくれました。大泉洋さん演じるタッカーとキメラのエピソードがしっかりと描かれていて、曽利監督は役者さんのお芝居の表現力の凄さを感じられる場面だと話し「現場でも山田・大泉の対決は凄かった。舞台を見ているような鬼気迫るものがあった。」と撮影時の様子を教えてくれました。

映画の冒頭でエドとアルの兄弟がある過ちを犯すのですが、曽利監督は「命に対するアプローチを間違える。そこに対して、子供も大人も関係なく容赦ない神の天罰がやってくる、そのドライさ加減がすごい強烈。それをどう跳ね返していくのかを原作では描いている。だから名作なんだな。」と荒川先生が描いた原作の魅力を語っていました。

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本物の機関車にこだわったイタリアロケと本物のアルケミストの地での撮影

撮影でこだわった部分として「背景」が外せなかったと話した曽利監督は「どうしても本物の機関車が欲しかった。これを日本の機関車でやってはいけない。ヨーロッパのハガレンの世界にある機関車を求めてイタリアに行った。」とイタリアロケを選択した理由を明かしてくれました。機関車のシーンの撮影では、イタリアの国鉄が全面的に協力をしてくれていて、100年程前に走っていた機関車を貸し切って、年2回の観光シーズンにだけオープンする廃線になった路線を使って撮影を行ったそうです。

また、冒頭のアクションシーンはシエナから北へ1時間ほど行ったところにあるヴォルテッラという街で撮影したそうです。ロケハンに行ったときに市の担当者に「フルメタル・アルケミストのロケ地を探している」と話したところ、アニメファンだった担当者が非常に興奮した様子になり、市長を連れてきて全面協力を約束してくださったそうです。3日間の撮影の間、通路を全面封鎖したり、以前にヴォルテッラで撮影を行ったハリウッド映画『トワイライト』の際には使用できなかった雰囲気のある通路の撮影も許可が出たそうです。

さらに撮影を行った教会裏の広場の壁には錬金術師のサインが刻まれていて、市の担当者によると数100年前に本物のアルケミストが実際に儀式を行った場所だったことがわかり、運命に導かれたような気持ちになりテンションが上がったと教えてくれました。

成長したエドが登場するシーンは、ヴォルテッラの撮影地をドローンでフルにスキャンしてCGで再現しているそうです。曽利監督は山田さん以外はすべてCGだと話し、「(山田さんを)現地で撮影したところ、東京のスタジオで撮影したところ、東宝の屋外で撮影したところが入り乱れている。そういう時代に入った。虚構の世界とリアリティの垣根が全くなくなっている。」と進化した技術について語り、撮影自体は「山田くんが一人でジャンプしたり、転んだりしている。とても静かなもの。」だったそうで、全カット絵コンテを描いていた曽利監督は「本人も何をしているかわからない。山田くんは大変だった。」と山田さんの労を労っていました。

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アルフォンスの実存化によって、日本のVFXが新たなステージへ

VFXやCGで今回新たにトライしたことを問われた曽利監督は「アルフォンスの実存化」だと答え、「アルフォンスが実際にそこにいるように見えることが重要で、これだけ長時間、主人公としてほぼ出ているキャラクターをCGで作ることが技術的にクリアになるまで待っていた。」と教えてくれました。山田さん演じるエドとCGのアルが喧嘩をしたり、入り乱れてアクションをするのは技術的にも大変なのだそうですが、俳優にとっても「勘のいい役者さんじゃないとできない。」ものだと話していました。「山田君は天才なんで、彼は見事ですね。」と山田さんの身体能力の高さを絶賛していました。

また、アルフォンスの動きと声は新人俳優の水石亜飛夢さんが演じてるのですが、顔は映画の中で一切動いていません。それにも関わらず、そこに感情を感じるのは「山田くんの演技と水石くんの声のお芝居(によるもの)」で「そこに人格を感じてもらえたのなら、山田くんも水石くんも喜ぶ。」と曽利監督は話し「CGと人の競演で泣けるって、いろいろなものが変化する。これから先が面白い。」と日本のCG技術の進化や現状について自信を見せていました。

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作品情報

『鋼の錬金術師』

12月1日(金)、ミッドランドスクエア シネマほか 全国ロードショー IMAX・4D 上映決定!

全世界シリーズ累計発行数7,000万部を突破した荒川 弘の伝説的コミック「鋼の錬金術師」。

海外でも絶大な人気を誇る原作が、主演・山田涼介、オールスターキャストで遂に完全実写映画化。

 

運命に挑む兄弟エドとアル。幼き日に最愛の母を生き返らせようと、禁断の術を犯したエドは手脚を失い、アルは魂だけの鎧の身体になった。必ず弟の身体を戻す――そう決心し、鋼の義肢、オートメイル(機械鎧)を身に着けたエドは、やがて“鋼の錬金術師”と呼ばれる存在となる。
身体を取り戻す唯一の手がかりは、謎に包まれた「賢者の石」。「賢者の石」を求めて旅をする兄弟の前に立ちふさがる美しき最強の敵、ホムンクルス。それはやがて国家を揺るがす恐大な陰謀に巻き込まれていく…。
壮大な旅の果てに、待ち受ける驚愕の真実とは? 兄弟の絆を懸けた、感動の冒険が、いま始まる!

出演:山田涼介、本田 翼、ディーン・フジオカ、蓮佛美沙子、本郷奏多、國村 隼、石丸謙二郎、原田夏希、内山信二、夏菜、大泉 洋(特別出演)、佐藤隆太、小日向文世、松雪泰子

原作:「鋼の錬金術師」荒川 弘(「ガンガンコミックス」スクウェア・エニックス刊)

主題歌:MISIA「 君のそばにいるよ」(アリオラジャパン)

スタッフ
監督:曽利文彦(『ピンポン』)
脚本:曽利文彦 宮本武史
制作プロダクション:OXYBOT
音楽:北里玲二

上映時間 2時間13分

 

(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会

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