toggle
2023-01-12

「名古屋は日常の延長のよう」東出昌大さん主演映画『とべない風船』名古屋舞台挨拶に宮川博至監督、柿辰丸さん、遠山雄さんと登壇


 

2023年1月6日(金)より全国順次公開中の映画『とべない風船』は瀬戸内海の島を舞台に、主演の東出昌大さんが豪雨で家族を失った傷を抱えて孤独に生きる主人公を演じる、傷ついた心の癒しと再生を描いたヒューマンドラマです。広島でCMディレクターとして活動しながら映画制作に取り組んでいる宮川博至監督の初長編作です。三浦透子さん、小林薫さん、浅田美代子さんなどが出演し、平成30年に発生した西日本豪雨による土砂災害の記憶の風化への警鐘も踏まえ、被災した人々の想像を絶する経験や言葉にならない思いを反映した物語となっています。

映画の公開を記念して、名古屋の伏見ミリオン座で舞台挨拶が行われ、主演の東出昌大さん、宮川博至監督、出演の柿辰丸さん、遠山雄さんが登壇しました。先月、同じ場所で舞台挨拶に登壇していたという東出さんは、先月は名古屋で映画の撮影を行っていたそうで「名古屋は日常の延長のよう」と話し、告知はされていたなかったもののQ&Aコーナーが行われ、映画を観終えたばかりの観客からの様々な質問に笑顔で答えていました。(取材日:2023年1月8日)

「名古屋は日常の延長のよう」先月も同じ場所で舞台挨拶に登壇した東出昌大さん

映画『とべない風船』は瀬戸内海の島を舞台に主演の東出昌大さんが豪雨で家族を失った傷を抱えて孤独に生きる漁師を演じ、三浦透子さんが過去のトラウマから逃げるようにして実家のある島に帰ってきた元教師を演じる、傷ついた心の癒しと再生を描いたヒューマンドラマです。公開3日目を迎えたこの日、名古屋の伏見ミリオン座での映画上映後に公開記念舞台挨拶が行われ、東出さん、出演者の柿辰丸さん、宮川博至監督が登壇し、出演者の遠山雄さんが司会をつとめました。

東出さんが「日曜日の貴重な時間に来てもらい、ありがとうございます」と挨拶し、和やかな雰囲気で舞台挨拶がスタート。漁業組合の組合長を演じた柿さんは「私は30年、悪役俳優やっています。現場でもスタッフとか共演者から“組長”と呼ばれていたんですけど今回は“組合長”、“あい”があるんやで~」と会場を沸かせました。

また宮川監督は初めての伏見ミリオン座での舞台挨拶に感慨深げな様子で「すごく広くて、後ろのほうも見やすいんじゃないかな」と座席の配置に勾配のある劇場の後ろのほうを見上げながら話していました。この日、司会をつとめていた遠山雄さんは本作に漁師仲間役で出演していて、東出さんが「自己紹介しました?」と振ると「途中で必ず紹介してくれるんです」と東出さんの優しさに嬉しそうな表情を浮かべ「撮影中もたくさんコミュニケーションとれました。みなさんに久しぶりに会えてうれしいです」と話しました。

名古屋での舞台挨拶の感想を聞かれた東出さんは「先月の中旬頃にここで舞台挨拶をしているんです。先月はずっと名古屋で撮影していて、名古屋は日常の延長のようで、全く緊張していないです」と話し、前日の東京での舞台挨拶について「みんなガチガチに緊張して、ネットニュースになるからって」と笑いながら明かしていました。宮川監督は撮影を振り返り「2週間ほどの撮影で、劇場で公開できるとも思っていなかったので、嬉しかったです」と感想を述べました。

〈関連記事〉

東出昌大さんを絶賛「真面目な好青年。不思議な魅力がある。三船敏郎になりうる人」と片嶋一貴監督 映画『天上の花』伏見ミリオン座で舞台挨拶

「思ってもいない質問がくるもんですね」観客からの意外な質問の連続に笑顔

東出昌大さんからの投げかけで観客からの質問を募ることになり、前方の席の女性がすぐに手を挙げ、東出さんが使っていたマイクを直接手渡すと、会場から「キャー」と驚きと嬉しさの混じった声があがり、質問した女性はまさかの行動に恐縮しながら東出さんからマイクを受け取っていました。セリフの少ない漁師の憲二役で意識したことについて質問されると「言葉の少ない役はけっこう難しくて、憲二になっていれば気を遣わせないかなと思って、東出が黙っていると気をつかうので。早く憲二になるために、堀部(圭亮)さんや三浦(透子)さん、キャストの方と過ごす時は意識的に口数を減らしていました」と答えました。

お酒を飲むシーンで東出さんが一升瓶を片手でもっていたことについて、どのような演出だったのか聞かれると「一升瓶って普段どうやってもちます?あ、2本の手か、考えたこともなかった!」と意外な指摘に驚いた様子で「サラリーマンの役だったら両手で持っていたと思いますが、漁師だし、ということで(役に)なりきっていたんだと思います」と話し、「思ってもいない、取材でも語らないような質問がくるもんですね」と映画を観た観客との時間を楽しんでいる様子でした。

宮川監督の『テロルンとルンルン』(2018年公開)が好きという観客から、本作の最後に登場したおもちゃについて質問があがり、宮川監督は「サルのおもちゃは前回の映画でテーマになっていまして、同じものを使用しました」と答えました。質問をした方が「前作もことも感じられて、(前作と)同じ人の再生がテーマかなと思って、すごく嬉しかったです」と感想を伝えると、宮川監督は御礼の言葉を口にし、嬉しそうな表情を浮かべました。他にも上映後の舞台挨拶ということで、ラストシーンについての質問など、深いやりとりが行われていました。

三浦透子さんの「マイク大丈夫です!」エピソードに会場から拍手

観客から共演した三浦さんについて質問されると、遠山さんは「はじめての共演で、呉での撮影で、けっこう空き時間があったので、『ドライブ・マイ・カー』を観に行きました!この人とお芝居できるんだと興奮しながら撮影に向かいました。お酒を飲むと楽しい方で、演技も素晴らしかったです」と初共演の感想を述べました。柿さんは居酒屋のシーンで三浦さんを撮影するカメラの隣に座っていたそうで「入ってくる時の彼女を見て、涼しい目ってこんな目なんだ、目力が強くて、僕をじっと見ているようで、、」とエピソードを披露。

東出さんは「元々同じ事務所で、事務所内のワークショップでご一緒していたけど、映像のカメラ前でお芝居をするのは初めてでした」と映像作品での共演が初めてだったことを話し「普通でいることって難しくて、普通にお芝居をするのは怖いことなんです。(三浦)透子ちゃんはカメラがあってもなくても一緒で、舞台挨拶しても、控室にいても、カメラ前にいても普通なんですよ。普通でいるという胆力は本人が鍛えようと思って鍛えたものかもしれないけど、その力は女優さんとしてすごいスキルだなと思っています」と共演の感想を語りました。客席から「東出さんもそうですよ」と声があがると「僕も普通でありたいと思って、過ごしています」と笑顔で答えました。

さらに船に乗り込むシーンで三浦さんが海に落ちそうになった瞬間にマイクを共演者に投げて「マイク大丈夫です!」と言って、自分の身よりもマイクの無事を優先した勇姿を紹介し「プロだなぁと思いました」と話すと、客席からその場にはいない三浦さんに向けるかのような拍手がおきました。宮川監督は脚本を渡した後にメールのやりとりする機会があったそうで「かなり論理的に理解されたい方で、映画で描かれてない裏側まで、きちんと2人で詰めていきました。きちんと計算した上で現場に臨むスタイルの方なんですけど、現場に入るとすごい和やかで、撮影前に鼻歌とかで歌ってくれたりしました」とリラックスした様子だったことを明かしました。

作品概要

映画『とべない風船』

1月6日(金)より、伏見ミリオン座にて公開 全国順次ロードショー

心は晴れないのに、空は憎らしいほど青かった–。
豪雨災害後の瀬戸内海の島を舞台に、傷ついた心の癒しと再生を描いたヒューマンドラマ

陽光あふれる瀬戸内海の小さな島。数年前の豪雨災害で妻子を失って以来、自ら孤立している漁師の憲二(東出昌大)は、疎遠の父(小林薫)に会うために来島した元教師の凛子(三浦透子)に出会う。凛子もまた、夢だった仕事で挫折を味わい、進むべき道を見失っていた。二人は互いに心を閉ざしていたが、あたたかくてお節介な島の人々に見守られ、少しずつ打ち解けていく——。
甚大な自然災害によって、あるいは人間関係の小さな綻びによってもたらされる喪失を抱えながら、私たちはどのように生きていくのか–。
美しい島々が連なる多島美(たとうび)を有する瀬戸内海の島を舞台に、恋人でも家族でもない二人の永遠に晴れそうにない心の行方を描いた感動作が誕生した。

監督・脚本:宮川博至

出演:東出昌大、三浦透子、小林薫、浅田美代子 原日出子、堀部圭亮、笠原秀幸、有香、中川晴樹 柿辰丸 根矢涼香 遠山雄 なかむらさち

プロデューサー:奥野友輝

配給:マジックアワー

2022 年/日本/カラー/1.85:1/5.1ch/DCP/100 分

 


関連記事