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2022-12-19

東出昌大さんを絶賛「真面目な好青年。不思議な魅力がある。三船敏郎になりうる人」と片嶋一貴監督 映画『天上の花』伏見ミリオン座で舞台挨拶 


 

12月9日(金)から公開中の映画『天上の花』は、詩人の三好達治(演:東出昌大さん)と萩原朔太郎の妹:慶子(演:入山法子さん)との同棲期を中心に、愛と戦争に翻弄される姿が描かれた作品です。原作は萩原朔太郎の娘である萩原葉子が書いた同名小説で、幼いころから父:朔太郎の弟子だった三好達治を知っていた作者が描いた物語で、虚実が入り混じった世界観に想像力が膨らみます。16年4ヶ月の片思いを実らせた三好達治…その愛がどのような結末を迎えるのかスクリーンで見届けた観客の前に、主演の東出昌大さん、片嶋一貴監督、寺脇研プロデューサーが登場し、舞台挨拶が行われました。

名古屋で映画の撮影を行っている東出さんは撮影の合間に私服で登壇、片嶋監督が“東出さんの魅力”を語り、観客からの質問に応じ、舞台挨拶後にサイン会も行われるなど、映画を楽しんだ観客にとって特別な時間となりました。(取材日:2022年12月17日)

東出昌大さんの口から“なごやん”!名古屋めしの話題で和やかに

映画『天上の花』の公開から1週間、伏見ミリオン座で舞台挨拶が行われました。映画の余韻に浸る観客が待つ会場に主演の東出昌大さん、片嶋一貴監督、寺脇研プロデューサーが登壇しました。寺脇プロデューサーが挨拶した後、東出さんは「いま名古屋で撮影しておりまして、その合間を抜けて舞台挨拶をさせていただきます。バリバリの私服です」とはにかみ、「映画では怖い役だったので、舞台挨拶では和やかな空気でお届けできれば」と挨拶。片嶋監督は「観客に考えてもらえる映画を作りたいと思っていました。皆さんの感想から手ごたえを感じています」と力強く話しました。

名古屋の印象を東出さんは「撮影でよく来ていました。栄えているところが密集していて、少し離れればのどかなところがあって、いい町ですね」と述べました。「そういえば今日、(撮影の)現場で“なごやん”っていうお饅頭が出て、いただきました。今までも味噌煮込みうどん、ひつまぶし、手羽先など一通りいただきましたよ」と名古屋めしに話題が移ると、片嶋監督は「初めて天むすを食べたとき(美味しさに)驚いたことありました!」と乗っかり「僕の敬愛する落合博満さんがドラゴンズの監督になったとき、名古屋が好きになりました」と話すと観客席がどっと沸き、和やかにトークが始まりました。

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東出昌大さんの達者な包丁裁きにびっくり 戦争でジリ貧になっていく、人が狂っていく姿を見せたかった

名古屋めしの“食つながり”で寺脇プロデューサーが「映画での三好達治の包丁さばき。東出さん素晴らしかったです。達者だとは知っていましたが」と称賛すると東出さんは「いやいや、魚をさばきながら台詞を言うのは…自然に見えるようにすごく練習したと思います」と謙遜しつつ明かしました。そして「福井県の三国。雪に閉ざされるのは達治にとって慶子と二人きりでいられる世界でした。東京には食べ物がないが、三国ではお魚だけはいっぱい食べられますよっていう口説き文句だったし“食べる”ことがこの映画のテーマの一つで、食べ物がない、生活がジリ貧になっていくっていうのは戦争を描いた1つのモチーフだと思います」と述べました。「監督がどうしても文学と戦争をテーマにしたいと始まった企画だった」という寺脇プロデューサーの言葉を受け、片嶋監督は「もともと昭和12年の日華事変のころの戦争に翻弄される市民が描きたかったんです。ある戯曲をシナリオライターの荒井晴彦さんに持っていったところ紹介されたのが『天上の花』で、僕のやりたいことが詰まっている台本で幸せな形で進められました」と話しました。

東出さんが「三国という場所で、戦争(空襲)から離れたはずの二人が愛や憎しみに狂っていく。そんな人間の狂い方も見せたかったのですか」と片嶋監督に質問すると「そう。戦争の中、戦時でなくてもああいう形(DV)になることもあるが、戦争があったからこその姿をやらなきゃと思いました」と熱をこめて語りました。

観客に全力でこたえるQ&Aタイム、サイン会で観客と交流「男のダメっぷりの集大成から学ぶべきものがあれば」と片嶋監督

東出さん、片嶋監督、寺脇プロデューサーのトークの後、観客からの質問に答えるQ&Aの時間が設けられました。“監督一押しのシーンは?”という質問に対して片嶋監督は「日によって違うけど」と笑い「トンネルのクライマックスです。撮り終えたらクランクアップで、東出や入山さんが演じてきたキャラクターが集約されて、ギリギリのところでのぶつかり合いがありました」と話し、撮影現場の雪景色を作る裏話を披露。「見せ場になったと思います」と自信を見せると客席から賛同の拍手が起こりました。

“言葉で伝わらないから手が出るというのは、戦争と同じですよね?”という質問に片嶋監督は大きくうなずき「振り上げた手をどうやって収めるのか…人が生きていくうえで重要だと考えています。それがスクリーンに少しでもにじみ出ていたらいいなと思います」と答えました。寺脇プロデューサーは「この作品はウクライナ侵攻や、安保関連の防衛についての議論が行われる前に撮影されました。でも今、この作品を見て戦争について考えるきっかけになるといいなと思います」と観客に語りかけました。

“作品の回想シーンの入れかたが難解では?”との質問に片嶋監督は「考えながら観て、後から分かる構造にしたいと考えていました」と答え、寺脇プロデューサーは「分かり易くはないが、考えてみるといろいろ分かってくる、何度も観たくなるものを作っていくのも良いかと思っています」と付け加えました。そして「開戦の年のシーン、昭和16年と遭えて映像に文字を入れなかったのですが、何年のことなのか分からなかったとご指摘いただく機会がありました。戦争が遠くなったと感じます」と語り「だからこそ、こうした戦争を描いた映画を作る意味があるのではないでしょうか」と述べました。

“東出さんの魅力”についての質問に片嶋監督は「もともと気になっていた俳優でした。スキャンダルがあって本当はどんな人かと思って実際会ってみると真面目な好青年。不思議な魅力がある。三船敏郎になりうる人」と絶賛すると会場から温かい拍手がおくられました。東出さんのうれしそうな笑顔と、深くお辞儀する姿が印象的でした。

最後に片嶋監督は「主人公:三好達治のダメっぷりは、僕・東出・プロデューサー・脚本家の荒井さんなどのダメッぷりの集大成…男たちのダメっぷりを描いたものです。何か不条理な中で生きるための原動力になればと思います。今日、何かを感じていただけたならばありがたいです」と結びました。最後のフォトセッションでは観客のリクエストにこたえ、東出さんが一人で手を大きく振るポーズもしてくれました。

舞台挨拶の後にはサイン会が行われ、パンフレットを手に長蛇の列ができていました。握手を望む人に快く応じる東出さんの様子から「会う人会う人彼のファンになる」という片嶋監督の言うとおりの人柄が伝わってきました。

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作品概要

映画『天上の花』

12 月 9 日(金)より伏見ミリオン座ほかにてロードショー

原作:萩原葉子「天上の花―三好達治抄―」

出演:東出昌大 入山法子 浦沢直樹 萩原朔美 林家たこ蔵 鎌滝恵利 関谷奈津美 鳥居功太郎 間根山雄太 川連廣明  ぎぃ子 有森也実 吹越満

脚本:五藤さや香 荒井晴彦

監督:片嶋一貴

プロデューサー:寺脇研 小林三四郎

配給宣伝=太秦

2022年/カラー/ビスタサイズ/5.1ch/125分/PG12

©2022「天上の花」製作運動体


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