toggle
2022-07-28

「成田凌君は理屈を飛び越えて理解」 映画『コンビニエンス・ストーリー』三木聡監督に名古屋でインタビュー


映画『コンビニエンス・ストーリー』の公開を前に三木監督が名古屋でインタビューに応えてくれました。初タッグを組んだ成田凌さんについて、前田敦子さんや片山友希さんの魅力、脚本を執筆する際の苦悩や楽しみなども話してくれました。(取材日:2022年7月12日)

「成田凌君は三木監督の映画をよく見ていますよ」キャスティングのきっかけは『時効警察』に出演したあの人?!

映画『コンビニエンス・ストーリー』のコンビ二は、ただ欲しいものが手に入るだけの便利な場所でなく、生と死のギリギリのところに屹立する異界への入口として登場します。コンビ二が舞台の物語にしようと企画したのは映画評論家のマーク・シリングさんです。三木聡監督は「外国人から見ると、コンビ二って変な世界に感じるみたいなのね。何でもあって、しかもちょっと異世界感があると・・・マークさんがプロットにしました」と企画の経緯を話しました。マークさんのプロットから脚本化するにあたり「幻想と現実の狭間を行き来する“繋ぎ手”として、主人公が脚本家と言うのはちょうどいい立ち位置なんです。皆さんの認知度もある職業ですし」と設定を決めたそうです。そして「主人公が実は一番まともです」とニヤリとし、「はっちゃけたキャラクターや、生きているんだか死んでいるんだかよく分からないキャラクターらの芝居の中で、主人公は違ったアプローチをしていく必要がある役です」とも述べました。

三木監督は「『時効警察』というドラマを2019年に久しぶりにやったときに、二階堂ふみさんに出てもらいました。その時に“成田凌君は三木監督の映画をよく見ていますよ”と聞いていて、その1年後くらいにキャスティングに入りました」と意外な人物の名を明かしました。そして、「脚本家という生きている世界でのフラットな芝居も含めて、異世界に踏み込むときに何か持ち合わせている彼のポテンシャルがいい、という話になって成田君に結びつきました」と二階堂さんの一言がキャスティングの一助になったエピソードを教えてくれました。

撮影中の成田さんの印象を聞くと、三木監督は「俺の話(脚本)だから、突拍子も無い動きや台詞があるんだけど、成田君は理屈を飛び越えて理解して、役柄に合わせた動きで、さもその人物が生きているように作っていく計算を現場でしていました」と語り、「出来事と出来事の間を、上手くつなぎとめてくれるのは面白いやり方だし、そこを丁寧にやってくれる役者さんなんだなという印象でした」と信頼を見せ、相性の良さを感じさせました。

〈関連記事〉

「初めて親が褒めてくれた」成田凌さん初主演映画『カツベン!』周防正行監督と愛知津島で舞台挨拶

成田凌さんの潤んだ目は自前 大倉忠義さん主演映画『窮鼠はチーズの夢を見る』行定勲監督にインタビュー

二階堂ふみさんとGACKTさんが栄のオアシス21に登場!映画『翔んで埼玉』名古屋も埼玉化!?

映画『リバーズ・エッジ』名古屋先行上映舞台挨拶に二階堂ふみさん、吉沢亮さん、行定勲監督が登壇

「ある種の天性、才能があるんだろうな」と前田敦子さんを絶賛 片山友希さんの芝居にも注目!

映画『コンビニエンス・ストーリー』の主人公である脚本家の加藤がコンビニで出会う店員を名乗る妖しげな人妻・惠子を前田敦子さんが演じ、同棲中の恋人で女優のジグザグを片山友希さんが演じています。三木監督は前田敦子さんについて「物事の本質に辿りつくスピードがものすごく速いです。表現なのか感性に従って演じた結果なのか本人に聞いても分からないかも知れないけど不思議なところがありますね。ある種の天性、才能があるんだろうなと感じました」と絶賛しました。また、前田さんがある台詞を言うシーンを試写で観た知人の感想として「色っぽいし、ゾクッという怖さもあると言っていました」というエピソードを挙げ、フィルムノワールの“運命の女”を思わせる前田さんの存在感をアピールしました。

三木監督の世界観が印象的に表現されたシーンで、テンションの高い演技を見せた片山友希さん。映画『茜色に焼かれる』(2021年)で第46回報知映画賞新人賞、第43回ヨコハマ映画祭助演女優賞など5つの章を受賞した注目の女優さんです。三木監督は片山さんについて「彼女は映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねえんだよ!!』(2018年)の時に、“叫びオーディション”みたいなのに出てくれて、テンション高くやってくれました。結局、違う役で出演してもらいましたけど」と出会いをふり返りました。

映画『コンビニエンス・ストーリー』では、三木監督が脚本を執筆する中で「(舞台の)年代がいつなのか良く分からないっていう所に、片山君の芝居の表現方法があっても面白いんじゃないかと・・・片山君が、はまるだろうと早い段階で思っていました」と話しました。また、普段は脚本が上がってからキャスティングするところを、今回は執筆中の早いうちにオファーしたことも付け加えました。監督の期待通り、撮影中も「一歩踏み出す勇気が要る役も“はーい”と自分がどう見えるか気にせず、思いっきりやってくれました。てらいなくできる役者さんだなと思います。片山君にやってもらってよかった!」と三木監督が微笑みました。

〈関連記事〉

渋川清彦さん、飯塚健監督 映画『榎田貿易堂』名古屋公開初日舞台挨拶

名古屋にキャスト勢揃い!映画『泣き虫しょったんの奇跡』舞台挨拶で「おつかれサマー!」

「現実と異界との地続きのあいまいな感じ、結論を明確に作らない方向に」 鑑賞後の考察も楽しんで

映画全体に流れているノスタルジックな雰囲気について三木監督は「80年代の単館系でやっていた映画のイメージを手がかりにしました。シーンによっては昔の16ミリのフィルムカメラのレンズを今のデジタルカメラにつけて撮影して、独特の雰囲気が出るような調整をしました」と述べLED電球を駆使して画面の色を“ちょっと古い時代”と思わせるライティングにしたことも明かしました。レトロなイメージをコンビ二内にある駄菓子からも感じることができます。ある年代の方にはきっと懐かしい「あんず棒」。三木監督は「あんず棒、昔よく買っていたんだよ」とノスタルジーをご自身でも感じていたようです。

映画の中で登場する山のコンビ二“リソーマート”について、三木監督は「(企画の)マークさんが日本のコンビ二で持った違和感とは逆転する形を狙って作っていくようにしました。ある種のノスタルジーな感じ、異世界のようなところという設定は面白いかなと思います」と自信を見せました。どんなコンビ二なのか気になる方は、映画館でお確かめください。

主人公が脚本家で、スランプ中と言うことから、三木監督に脚本を書くときの苦悩や楽しみを聞くと「脚本を書くときは、テーマや設定があったら、雑多にとにかく何でもいいから書きます。それで羅列して眺めて“1本の線”が見つかるまでが難しいですね。線みたいなものが見つかると1本の話になってくる傾向が僕にはあります」と答えました。「でも、線が並んでいるだけではつまらなくて、線から外れた所に面白みがあると思っています」とも話し、「僕にとって、“結論が無い”であるとか“意味が解体していくこと”に、快感があるんだろうと思います」と自己分析。「『熱海の捜査官』でもそうでしたが、物語自体が異世界と生きている世界との地続きがあいまいで結論を明確に作らない方向にしようと。また、意味の無い演出を持ってくると、そこに意味を持ち込もうとするじゃないですか、その感じを映画体験として持ってくれれば嬉しいです」と語りました。

物語の登場人物や小道具に何か引っかかるネーミングがつけられていることも見所のひとつです。鑑賞後に色々と考察したくなる場面やアイテムが目白押しの映画『コンビニエンス・ストーリー』をぜひ劇場でご覧ください。

作品概要

映画『コンビニエンス・ストーリー』

2022年8月5日(金)よりミッドランドスクエア シネマほかにて公開

出演:成田凌、前田敦子、六角精児、片山友希、岩松了、渋川清彦、ふせえり、松浦祐也、BIGZAM、藤間爽子、小田ゆりえ、影山徹、シャラ ラジマ

監督・脚本:三木聡

企画:マーク・シリング

公式サイト:https://conveniencestory-movie.jp/

公式Twitter:@cv_story_movie

(c)2022「コンビニエンス・ストーリー」製作委員会

 


関連記事