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2022-05-25

「スクリーンの似合う子」の真意に迫る 伊藤健太郎さんの表情に注目 映画『冬薔薇』阪本順治監督インタビュー


 

6月3日より全国ロードショーとなる映画『冬薔薇(ふゆそうび)』は伊藤健太郎さんを主演に迎えた、阪本順治監督のオリジナル脚本による作品です。ある港町で半端な不良仲間とつるみ、友人や女性から金をせびってはダラダラと生きる青年・渡口淳を中心に描かれる群像劇です。伊藤さん演じる淳の両親を小林薫さん、余貴美子さんが演じているほか、眞木蔵人さん、永山絢斗さん、毎熊克哉さん、坂東龍汰さん、河合優実さん、佐久本宝さん、和田光沙さん、笠松伴助さん、伊武雅刀さん、石橋蓮司さんなどが出演しています。

公開を前に阪本監督にオンラインインタビューを行いました。伊藤さんが演じる淳のキャラクターがどのように生み出されたのか、撮影初日の伊藤さんの様子や阪本監督が伊藤さんに「封じた」こと、伊藤さんへの想いを話し、完成披露上映会での「スクリーンが似合う子」という発言の裏にある真意、撮影で意識していたことも説明してくれました。また、淳のキャラクターだけでなく、他にも「当て書き」をしていたキャラクターがいることも教えてくれました。(取材日:2022年5月19日)

映画『冬薔薇』の公開2週目となる6月11日に、阪本順治監督と伊藤健太郎さんが名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマで舞台挨拶に登壇することが発表になっています。舞台挨拶付き上映の詳細、チケット等についてもご紹介します。さらに名古屋の映画情報サイトCine@nagoya(シネアナゴヤ)では映画『冬薔薇』の公開を記念して、非売品のプレスシートを2名様にプレゼントします。応募方法は記事後半に掲載しています。

【舞台挨拶レポート】「健ちゃん頑張ります」「老後はお任せください」伊藤健太郎さんが映画『冬薔薇』名古屋の舞台挨拶に阪本順治監督と登壇

伊藤健太郎さんのクローズアップは「何も語っていないけれど、饒舌にみえる」

映画『冬薔薇』はある港町を舞台に、伊藤健太郎さんが演じる“学校にも行かず、半端な不良仲間とつるみながら、友人や女性から金をせびってダラダラと中途半端に生きる渡口淳”を主人公とした物語です。伊藤さんが演じることをイメージして脚本を書き下ろした阪本監督は「せっかく復帰するのだから、彼のこれまで培った手練手管が通用しないもののほうがよいだろう。そうでないと2年ぶりに映画をやる意味がない、休んでいた意味がないと思いました。(淳を)考えることをやめて堕ちていく人として、どこまで堕落させるか考えて描きました」とこれまで見せたことのないキャラクターを作った理由を明かしました。

劇中の淳は不良にもなりきれず、将来設計も行き当たりばったりで、お金にもだらしない、かなりの“ロクデナシ”です。阪本監督は「悪事を働いても自分を許して、言い訳をしてしまう」と淳のキャラクターを説明しました。本作を観ていくうちに、なぜ淳がここまでの“ロクデナシ”になってしまったのかを感じ取ることができるはずです。本作は淳と同じ世代の若者にも、淳の親世代の観客にとっても、心に響くものがあるのではないでしょうか。

阪本監督は撮影初日に伊藤さんのお芝居を初めて見た時のことを振り返り「『今のしぐさはいらない、今の目の動きはいらない、何もしない芝居というのがある』と言わせてもらいました」と話し「俳優さんは年を重ねても、じっとするのは仕事をしていないように思って、何かしなきゃいけないと思ってしまう。それを伊藤くんに対しては封じていきたかったんです」とその意図を説明しました。あえて試練となる現場を伊藤さんに用意した阪本監督は「彼もこの役をやるにあたって、新鮮だけど追い詰められた部分もあるし、僕が追い詰めた部分もあります。それを乗り越えれば、この1本を彼がやった意味があると思う」と映画復帰をする伊藤さんへの想いを教えてくれました。

5月中旬に東京で行われた完成披露上映会で「スクリーンの似合う子」と伊藤さんを評していた阪本監督は「何も語っていない(伊藤)健太郎のクローズアップが観客を魅了できるか。観客の印象に残せるクローズアップがこの映画の価値のある場面であり、それに耐えられる子だなと思いました」と改めて、完成披露上映会での発言を説明しました。さらに「言葉を放たれた時の戸惑い、自分に対する戸惑い、考えをやめたときの表情。何も語っていないけれど、饒舌にみえるクローズアップを撮っていこうと思っていたんです」と撮影時に意識していたことを話しました。この撮影に向き合った伊藤さんについて「私の意図を理解してくれたからこそ、非常に優れたクローズアップが撮れたと思っています」と出来上がった作品に対する自信をのぞかせました。

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「小林薫さん、余貴美子さん、石橋蓮司さん、永山絢斗あたりまで当て書きです」

映画『冬薔薇』には、伊藤健太郎さん演じる淳の父親役で小林薫さん、母親役で余貴美子さん、両親の職場の年長者役で石橋蓮司さんが出演しています。阪本監督はこれまでの伊藤さんの同世代俳優との共演経験の多さが念頭にあったそうで「脚本を書く時に(伊藤)健太郎をベテラン俳優で囲ってみたいと思いました。両親が出てきて、両親の職場に年長者がいて、その人たちと1対1で芝居を交わす機会を設けたいと思いました」と様々な年代の俳優が出演している理由を教えてくれました。

具体的なキャスティングについて聞くと「小林薫さん、余貴美子さん、石橋蓮司さん、永山絢斗あたりまで当て書きです」「スケジュールまだ聞いてないのに」と明かしてくれました。伊藤さんだけでなく、当て書きしていたキャストが多くいたことについて「この人にやってほしいと僕の中に自然に顔が浮かんだ人たちで、姿形を思い描きながら書いていて、ダメだったら嫌だったので、脚本が仕上がる前にスケジュール聞いちゃいました」と話しました。さらに阪本監督は「ベテランだからといって偉そうにする人たちじゃないことも知っているし、自分を前に前に出そうとしない、自然体で、健太郎を迎えてくれるだろうし、間口と懐のある人たちで(伊藤さんを)囲ってあげたいというのがありました」と主演をつとめる伊藤さんを想ってのキャスティングだったことも語りました。

淳の不良仲間として永山絢斗さん、毎熊克哉さんが出演、淳のいとこ役で坂東龍汰さん、河合優実さんも出演していて、若い俳優たちによるヒリヒリするようなお芝居は非常に魅力的で、それぞれのキャラクターの背景も注目してほしい部分です。永山さんは阪本監督の2017年公開の映画『エルネスト』に記者役で出演しています。阪本監督は「毎熊くんは、江波杏子さんのしのぶ会で初めて会って印象に残っていて、いつか(出演してほしい)と思っていて」と明かし「坂東くんと河合くんは、これから伸びていくいい俳優だと推薦がありました」と話しました。キャスティングに際して、俳優たちと会って話をすることを大切にしている阪本監督は「それぞれ味わい深くて、彼ら彼女たちがいなければベストのキャスティングになりませんでした」と素晴らしい出演者に恵まれた作品であることを語り「彼らにも何もしないという芝居もあると話しました」などと教えてくれました。

様々なジャンルの映画を撮ってきた阪本監督は「上手に生きられない、人との関わりが苦手で愛し方も愛され方もわからない人たちを描くことが多くて、今回もそれは踏襲しました」と話しました。さらに「自分の恥をさらさないと映画を作る意味はないと思います」と語り、本作について「自分の欠けた部分や下手したら同じ行為をしていた、同じ言葉を放っていたという場面もあります」「観客にばれないように、自分の恥部は描いたと思っています」と話しました。インタビューの合間に俳優や関わる人への深い愛情を感じ、阪本監督の作品作りの姿勢を教えてもらったことで、多くの俳優が信頼を寄せる理由が垣間見えました。

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6月11日(土)に名古屋で阪本順治監督と伊藤健太郎さんが舞台挨拶に登壇!

映画『冬薔薇』の公開2週目の週末に阪本順治監督と伊藤健太郎さんが名古屋にやってきます。名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマでの上映前に舞台挨拶に登壇する予定です。チケットは6月3日(金) 10:00~よりチケットぴあで販売スタート。6月1日(水) 11:00まで先行抽選の申し込み受付中で、6月2日(木) 18:00頃から順次、結果発表が開始する予定です。

日時:6月11日(土) 10:30~の回

場所:ミッドランドスクエアシネマ

ゲスト(予定):阪本順治監督、伊藤健太郎さん

チケット販売に関する詳細はこちらでご確認ください!

映画『冬薔薇』プレスシートプレゼントの応募方法

映画の公開を記念し、映画『冬薔薇』プレスシート(非売品)をCine@nagoya (シネアナゴヤ)の公式Twitterをフォロー&リツイートされた方の中から抽選で2名様にプレゼントします。B5版16ページ(表紙・裏表紙含む)で、イントロダクション、ストーリー、阪本順治監督と伊藤健太郎さんそれぞれへのインタビュー、スタッフ紹介や撮影の様子などの充実した内容です。

応募方法:Cine@nagoya (シネアナゴヤ)のTwitterアカウントをフォローし、以下の投稿をリツイートしてください。映画『冬薔薇』への期待や鑑賞予定の日程、鑑賞後の感想など、作品に向けた熱い想いのコメントは当選者決定の参考にさせていただきます。

プレゼント内容:映画『冬薔薇』プレスシート(非売品)

応募締切:6月13日(月)まで

当選数:2名様

*当選者には後日DMにてご案内をいたします。

作品概要

映画『冬薔薇(ふゆそうび)』

6月3日(金) ミッドランドスクエアシネマほか全国ロードショー

出演:伊藤健太郎 小林薫 余貴美子 眞木蔵人 永山絢斗 毎熊克哉 坂東龍汰 河合優実 佐久本宝 和田光沙 笠松伴助 伊武雅刀 石橋蓮司

脚本・監督:阪本順治

©2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERS

配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ

2022年|日本|カラー|スコープサイズ|5.1ch|109分|PG12

https://www.fuyusoubi.jp


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