毎熊克哉さんの小学校時代の同級生がサプライズで質問 映画『「桐島です」』伏見ミリオン座で舞台挨拶 製作総指揮の長尾和宏さんと共に登壇
7月4日(金)から伏見ミリオン座他にて全国公開されている映画『「桐島です」』は、1974年に起きた連続企業爆破事件に関与したとして指名手配され、半世紀にわたって逃亡生活をしてきた桐島聡の人生を描いた作品です。2024年1月に衝撃的なニュースとして日本を騒がせた逃亡犯の桐島聡のナゾに満ちた軌跡を『夜明けまでバス停で』(22)で第96回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督、脚本賞をはじめ数々の映画賞を受賞した脚本家の梶原阿貴さんと高橋伴明監督のコンビがシナリオ化し、医師の長尾和宏さんが『痛くない死に方』(21)に続き、高橋監督作品の製作総指揮を務めます。
主人公の「ウチダヒロシ」を名乗る桐島聡を20代~70代まで演じるのは、主演映画『ケンとカズ』(16)で注目されNHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』、大河ドラマ『光る君へ』、映画『初級演技レッスン』(25)など様々な役で魅了してきた毎熊克哉さんです。そのほか奥野瑛太さん、北香那さん、高橋惠子さんなどが出演しています。伏見ミリオン座での公開10日目、上映後のスクリーンの前に主演の毎熊克哉さんと製作総指揮の長尾和宏さんが登壇。撮影秘話についてなど話し、観客とのQ&Aタイムも盛り上がった舞台挨拶の様子をレポートします。(取材日:2025年7月13日)
新着情報
20代~70代を演じた38歳の毎熊克哉さん「俳優として挑みたい」高橋伴明監督との初タッグを語る
満席となった伏見ミリオン座での上映後、余韻にひたる観客の前に毎熊克哉さん、長尾和宏さんが登壇すると拍手が鳴り響きました。司会を務める長尾さんが客席に向かって「ご覧になって、この作品いかがでしたか?」と問いかけると登場の時以上の大きな拍手が客席から送られました。毎熊さんは「客席がパンパンの満席で嬉しいです。そして伏見ミリオン座で舞台挨拶するのも初めてでとても嬉しいです」と挨拶して舞台挨拶がスタートしました。

高橋伴明監督から桐島役のオファーが来た時の気持ちについて長尾さんが尋ねると、毎熊さんは「2024年1月にニュースで騒がれた当事者を演じるのは怖かったけれど、この作品を高橋伴明監督が撮られるということに俳優として挑みたいという気持ちの方が強かったです」と答えました。オファー前は、指名手配のポスターの顔くらいしか知らなかったとのことですが、オファーを受け、桐島聡についていろいろ調べたそうです。毎熊さんは「桐島はテロリストだから映画を作るべきでないと考える方もいると思います。でもどんな評価も受けようと映画つくりには真摯に向き合いました」と覚悟を持って臨んだと明かしました。

脚本を読んだ感想を聞かれた毎熊さんは、「言葉にしづらいメッセージを脚本から感じ取りました。余白があって良い(脚)本でした」と話すと、長尾さんも「そうですね、静かな印象の脚本ですね」と同意しました。次に監督は演技の注文が多かったか?と長尾さんが質問しました。毎熊さんは「伴明監督はベテランなので厳しいやり取りもあるかもと少し身構えていた」と語りつつ、「時代遅れと思われそうですが僕は半分古いタイプで、厳しい演出も僕のなかでは悪い気がしないんです。でも伴明監督は僕のことをジッと見ているだけで『うん、OK』と、ほとんど1テイクで撮影していったので注文は全くなかったですね」と撮影時を振り返りました。客席では「ほぼファーストテイクだったんだ」という驚きや、少し残念そうな表情を浮かべる毎熊さんの様子に微笑むなどの反応が見られました。

50年の歳月を演じる上での役作りに話が及ぶと、毎熊さんは「うーん。そういう裏話はしたくないな」と笑いながら、38歳の自分が大学生から70才代まで演じることに不安があったと明かし、「自分の努力と言うよりはヘアメイクの力を信じて演じてきたんですが、自分の年齢以上、特に60代・70代は自分の想像でやっていくしかない。でも、よく考えると60代は身近にいるんですよ。大体どれくらい腰が痛いとか…」とチラリと長尾さんを見つめました。すると客席から笑い声が響き、会場内に和やかな空気が流れました。毎熊さんが「60代・70代に見えるっていう絶妙な所を目指したいと思って演じました。上手くできたか分かりませんが頑張りました」とまとめると、長尾さんが「良かったですよ!」と太鼓判を押しました。
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Q&Aで毎熊さんの小学校時代の同級生がサプライズで質問 観客との交流を楽しむ
Q&Aタイムになると多くの人が手を挙げました。一人目の質問者が、毎熊さんがこれまで多く演じてきた陰のあるタイプと桐島役との違いは何かと尋ねると毎熊さんは「悪い役を多く演じてきましたね、クズとかクズとか…」と自虐的な言い回しで笑いをとりました。続けて「子供の頃からヒーローより人間らしさを感じる敵のほうが結構好きだったんです。悪い役を演じる時は、悪いことをするまでの過程を考えます。桐島の場合は過激な思想を持っているように思えなかった。リーダー格でもないし影の薄いキャラクターだったのだなと思いました」と分析。「そんな桐島が何故メンバーに加わったのかを考えるのが楽しい作業で…そういう意味では、悪い役に限らず、どんな役も全部一緒かも知れません」と役柄を演じるうえでの違いはないと話しました。ギターの弾き語りのシーンについての質問が飛ぶと毎熊さんは「最低限、歌を楽しそうに歌って見えるくらいは(上達したい)と撮影現場でもずっとギターを持って、撮影の合間に練習していました」と教えてくれました。毎熊さんや北香那さんが奏でる『時代おくれ』は桐島の想いが重なり、観る者の心を震わせます。

次の「桐島は何を信じていたと思うか」という質問に対して毎熊さんは「長年のうちに何かを捨てないようにしながらも諦めてしまったこともいっぱいあったんじゃないか」と語り出し、「自分が20代だったころに思い描いていた理想と違う未来がやって来て、自首という形でケジメをつけて終わりなのか、そのまま生き続けることが自分にとっての罪滅ぼしなのか等、いろんな感情があったと思います。最後に“桐島です”と名乗った理由は…正直分からないです」と桐島に想いを馳せました。「信じてきたものとかは、どこかにそっと置いて行ったのかな」と丁寧に答えました。
最後の質問者が「小学生の頃の同級生です」と名乗ると毎熊さんはすかざず「オカちゃん?」とリアクション。去年のシネマスコーレの舞台挨拶にも来たという同級生を、懐かしそうな表情で見る毎熊さんの素のような様子に客席は大盛り上がり!“オカちゃん”は桐島が政治的問題や外国人への不当な扱いに激高するシーンについて、役として・個人的にどう思ったのかと質問を投げ、毎熊さんは「家が近所で…」と彼を紹介しつつ「今も人種差別など昔ほどじゃないけれど残っているのを見て僕自身悲しくなります。演じていてもひどく寂しい気持ちになりました」と明かし「桐島はかつて日本が良くならないかと(間違った方法で)活動した人間です。でも長年たっても日本が変わらなくて、やりきれなさが突如爆発してしまうっていう姿を演じて…でも結局自分で感じていたことでもあるので」と無意識にリンクしていたかもしれないと答えました。

Q&Aの後、フォトセッションが行われ客席の皆さんは熱心にカメラを向けていました。連写する音が鳴り響くなか、毎熊さんと長尾さんは長めにポーズをとってくれました。長尾さんは「実は僕もこの作品に出演しているんですよ。2度3度と見て探してみてくださいね」とアピールしました。毎熊さんは「この作品の背景を知っている年配の方が圧倒的に多いのかなと思っていましたが、若い世代の方にも見ていただいて嬉しく思います。この作品は1970年から始まりますが2024年まで描いていて、つまり今を描く映画でもあると思っています。いろいろ語りあってくれたら嬉しいです」と結びました。
舞台挨拶後はパンフレットを購入した方へのサイン会が催され、長蛇の列ができました。毎熊さんは一人一人の感想を丁寧に聞きながらサインし、観客との交流を楽しんでいました。
作品概要
7月4日(金) 伏見ミリオン座、イオンシネマ名古屋茶屋、刈谷日劇、イオンシネマ豊川 ほか全国公開

〈あらすじ〉
1970年代、高度経済成長の裏で社会不安が渦巻く日本。大学生の桐島聡は反日武装戦線の活動に共鳴し、組織と行動を共にする。しかし、一連の連続企業爆破事件で犠牲者を出したことで、深い葛藤に苛まれる。組織は警察当局の捜査によって、壊滅状態に。指名手配された桐島は偽名を使い逃亡、やがて工務店での住み込みの職を得る。ようやく手にした静かな生活の中で、ライブハウスで知り合った歌手キーナの歌「時代おくれ」に心を動かされ、相思相愛となるが…。
出演:毎熊克哉、奥野瑛太、北香那、原田喧太、山中聡、影山祐子、テイ龍進、嶺豪一、和田庵、伊藤佳範、宇乃徹、長村航希、海空、安藤瞳、咲耶、長尾和宏、趙珉和、松本勝、秋庭賢二、佐藤寿保、ダーティ工藤 白川和子、下元史朗、甲本雅裕 高橋惠子
監督:高橋伴明
製作総指揮:長尾和宏
企画:小宮亜里
プロデューサー:高橋惠子、高橋伴明
脚本:梶原阿貴、高橋伴明
音楽:内田勘太郎
撮影監督:根岸憲一
照明:佐藤仁
録音:岩丸恒
美術:鈴木隆之
衣裳:笹倉三佳
ヘアメイク:佐藤泰子
制作担当:柳内孝一
編集:佐藤崇
VFXスーパーバイザー:立石勝
助監督:野本史生
ラインプロデューサー:植野亮
制作協力:ブロウアップ
配給:渋谷プロダクション
製作:北の丸プロダクション
2025年│日本│カラー│アメリカンビスタ│5.1ch│日本語│105min
Ⓒ北の丸プロダクション





















