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2025-05-01

鈴木亮平さんと有村架純さんによる「兄と妹の絆」を感じる結婚式シーンのエピソードも!映画『花まんま』前田哲監督に名古屋でインタビュー


 

4月25日(金)から全国公開されている映画『花まんま』は、早くに両親を亡くし大阪の下町で暮らしてきた兄妹の不思議な体験、妹の<秘密>にまつわる人々との繋がりをも織り込んだヒューマンドラマです。両親亡き後、両親との約束を守り妹を親代わりとして守ってきた兄を鈴木亮平さん、ある秘密を抱える妹を有村架純さんが演じます。意外にも初顔合わせのお二人の兄妹ぶりは必見です。

133回直木賞を受賞した小説『花まんま』の内容を膨らませて17年越しに映像化したのは映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018年公開)『そして、バトンは渡された』(2021年公開)の前田哲監督です。前田監督がミッドランドスクエアシネマの舞台挨拶前にインタビューに応えてくれました。完成までの道のり、「アドリブ探し」のポイント、撮影の様子について話してくれました。(取材日:2025年4月29日)

前田哲監督「皆さん、役を生きているので自然と出る言葉が面白かった」「アドリブシーンを探してもらえるといいな」

映画『花まんま』は朱川湊人さんによる第133回直木賞受賞作を映画化した、ハンカチ必須のエモーショナルな作品です。早くに両親を亡くした兄妹の子ども時代の不思議なエピソードが描かれ、ラストに「フミ子は明日、大好きになった同い年の男と結婚するのだ」という叙述と婚約者のキャラクターの提示で締めくくられた原作の内容と、兄妹が大人になってからのオリジナルストーリーで織りなし、ハイライトの結婚式まで私たちを惹きつけてやまない展開となっています。映像も美しく大きなスクリーンで観ていただきたい映画です。

「兄貴は損な役回りやで」と言いながら亡き両親の約束もあり、妹を大切に見守る兄:加藤俊樹を鈴木亮平さん、「一生のお願い」を幾度も言うようなコケティッシュな面を持ち、<ある秘密>を持つ妹:フミ子を有村架純さん、フミ子の婚約者を鈴鹿央士さん、そのほかファーストサマーウイカさん、酒向芳さん、キムラ緑子さん、六角精児さんなど味わい深いキャストが顔を揃えています。芸達者なキャスト陣が勢揃いということで撮影中はどんな様子だったのかと伺うと、前田監督は「関西出身の俳優さんに多く集まっていただけたので、関西弁のテンポが早くて、そこから出るアドリブ…皆さん役を生きているので自然と出る言葉が面白かったです」と笑顔を見せました。

具体的なエピソードを聞くと、(兄役の)鈴木亮平さんと、その幼馴染役のファーストサマーウイカさんのちょっとしたやり取りのシーンを挙げて「毎回テストで違うことを言って切り返してという感じで、一番面白かったものを採用させて頂いてました。だからリアルですよね。そういう感じで他のシーンをご覧いただいて、アドリブシーンを探してもらえるといいな」と話しました。そして前田監督は、動物学者で”カラス語”が話せるフミ子の婚約者役の鈴鹿央士さんについて「カラスに道を聞いて、その直後に亮平さんに道を教えるシーンがあります。そこで、”カー”って央士くんが無意識に言っていて」とクスクス笑いながら「央士くんだったらカラスと喋ってても違和感ないなぁって。央士くんは素晴らしいよね」と褒め、映画『花まんま』のアドリブ探しのポイントを教えてくれました。

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「人間・鈴木亮平さんと人間・有村架純さんの兄と妹の絆っていうものが出た瞬間だった」涙なみだの結婚式、スピーチシーンに注目

鈴木さんと有村さんは関西の出身ということで関西弁の心配なく撮影にのぞめたようです。意外にも2人は初共演、前田監督は「関西弁を自由に喋れることもあり、非常に2人の相性が良かった」と評しました。鈴木さんは衣装合わせの時から、演じる俊樹がどんな場所で服を買い、どんな着方をするかなど綿密に準備していたそうで、有村さんは「フミ子を全部掴んでいるっていうのが初日からわかりました」と前田監督が舌を巻くほどの解析度だったそうです。朝の出勤時、自転車の鍵を忘れたフミ子(有村さん)に俊樹(鈴木さん)が鍵を軽く投げて渡すシーンがあります。前田監督は「この兄妹にとって日常のことだから、2人は目を合わせずにやっているんですよね。その時の有村さんの口元にも注目してほしいです」と言い「そこら辺にいる兄妹感を、初日にプロフェッショナルな2人が自然にそういう風にできるっていうところが素晴らしいなと思いました」と振り返りました。

劇中のクライマックスである結婚式のシーン。俊樹が親代わりとしてスピーチする場面について、前田監督は「最初の台本とかなり変わっています。亮平さんから関西人特有の笑いを入れたいと提案があり、じゃあ一緒に考えていきましょうとなりました」と明かしました。そこで、前田監督は鈴木さんに兄・俊樹を演じて生で体験した感情をフィードバックしてくださいとお願いし、アイデアを出し合って作ったと加えました。参列者を目の前にした鈴木さんは「感情が出るまま」演じたそうで、前田監督は「役者は普通、感情をコントロールしようとするんですよ。でも計算なしで、全部さらけ出したのがあの芝居です。今、感じたものをそのまま出そうというところがすごい俳優だなと思いましたね」と感情を爆発させた鈴木さんを絶賛しました。

そして「それだからこそ、その気持ちを有村さんが感受した」と述べ、「人間・鈴木亮平さんと人間・有村架純さんの兄と妹の絆っていうものが出た瞬間だったと思います」と声に力を込めました。実際、有村さんはそのスピーチの内容をあまり知らない”受けの芝居”だったそうで、前田監督は「有村さんは初めて聞いた感じで演技できたと思いますし、参列者役の方々にもスピーチの内容を言わず、そのままの生の反応…みんな本当に感動して涙されていました」と、スタッフやカメラマンも目が潤んでいたとハンカチ必須の名シーンの裏側を教えてくれました。

企画から17年で結実した映画『花まんま』「いろんな縁があって、運があって、奇跡だと僕は思っています」

前田監督に原作の『花まんま』を映像化しようとした理由を聞くと、家族や人の繋がりがテーマになったものが「自分の琴線に触れるとしか言いようがないんです」と言い、17年前から映画化に向けて動いていたと明かしました。脚本も7稿ほどまで進めていたもののタイミングが合わずに頓挫し、その後も幾度かチャレンジしたが企画が流れていったそうです。企画が動き出したきっかけを伺うと、前田監督は「出版社の文芸春秋さんが『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』『そして、バトンは渡された』とずっと関係があったご縁で、当初の『花まんま』への強い思いを担当者の方が覚えていてくださって、“今も熱意がありますか?”と連絡をくださったんです」と答えました。そして『老後の資金がありません』(2021年公開)の縁で東映での制作が進行したそうです。前田監督は「プロデューサーの須藤泰司さんと僕に共通するのはニール・サイモンとかビリー・ワイルダーとか古き良き映画が好きで、リスペクトが大きいところですね」と作品作りの伴走者について言及しました。須藤さんはこれまでテレビドラマの『相棒』や、映画『探偵はBARにいる』『レジェンド&バタフライ』などで活躍されています。

原作から大きく話を膨らませた脚本家の北敬太さんについて前田監督は「ああ、脚本はプロデューサーの須藤さんが書いたんですよ」とサラっと答えました。北海道生まれだから北っていうペンネームなんだと話しつつ「同志社大学を4年、だから関西留学してましたって彼は冗談で言ってます」と関西を外から見る点がよいと評しました。具体的には「東大阪だから町工場とか、お好み焼き屋を持ってくるとかベタ過ぎるやんって思うわけだけど、堂々と描けるのは外からみた分かりやすさだと思うんです」と加えました。

映画『花まんま』では前田監督があるポイントだけ注文して、あとは北さんに自由にプロットを考えてもらったと述べました。そのおかげで先に死んでしまった側の気持ち・残された側の気持ちが共に描けて「僕はそこがグッとくる点でした」と話しました。また、映画の好みが似た北(須藤)さんとはいろいろとアイデアを交えたそうです。前田監督は「『天国から来たチャンピオン』(1979年日本公開)っていう映画が僕のなかの金字塔で、それのオマージュしたシーンから始まっています」と上手く取り込めたと満足げな表情を見せました。

原作にある幼い兄妹と出会うシーンや、オリジナルストーリーの大人になった兄妹と対峙する繁田仁を演じた酒向芳さんの名演について話題が移ると、前田監督は「もともと細いのに、幼いフミ子と出会うシーンのために10キロほど痩せてくれて…倒れるんちゃうかなと。ほんまに素晴らしい」と賛辞を送りました。そして「酒向さん、キムラ緑子さん、六角精児さんは舞台をベースにしている人ですから芝居に説得力がありますし、3人とも仲良しなんですよ」と撮影時の様子を語りました。そして「緑子さんなんて段取りの時から涙を流して…早すぎますよって」と笑顔で振り返りました。

「いろんな縁があって、運があって、奇跡だと僕は思っていますけど、映画は奇跡の部分が大きいと思っています。17年前でなく、このタイミングだから亮平さん・有村さんという2人が出て下さった。央士くんも酒向さんもそうですけど…巡り合わせかなと思います」とまとめ、最後に「名古屋の皆さん!『花まんま』は何回か見るといろんな発見がある映画だと言われるので、ぜひ何度も見ていただきたいです。俳優さんが話したり動いたりするところに目が行きがちですが、実はその横にいる俳優さんたちが何かしているところが面白いので、それを大発見していただければと思いますよろしくお願いします」と締めくくりました。

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作品概要

映画『花まんま』

2025年4月25日(金) ROADSHOW

出演:鈴木亮平 有村架純 鈴鹿央士 ファーストサマーウイカ 酒向芳 六角精児 キムラ緑子ほか

監督:前田 哲

原作:朱川湊人『花まんま』(文春文庫)

配給:東映

公式サイト:https://hanamanma.com

©2025「花まんま」製作委員会


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