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2023-12-07

名古屋今池に新しい映画館「ナゴヤキネマ・ノイ」2024年2月に誕生へ クラウドファウンディングも好発進


 

2024年2月頃の開館を目標に名古屋市千種区今池に新しい映画館(ミニシアター)「ナゴヤキネマ・ノイ」が設立されることが発表されました。2023年7月28日に閉館したミニシアター、名古屋シネマテークの跡地を改装してオープンする予定で、元・名古屋シネマテークスタッフの永吉直之さん、仁藤由美さん、また2019年に急逝した名古屋シネマテークの元支配人、平野勇治氏のパートナー安住恭子さんの3名が共同代表をつとめる合同会社ナゴヤキネマ・ノイが運営します。新しい映画館のオープンに際し、クラウドファンディングを始めることも発表されました。12月6日0時にキックオフしたクラウドファウンディングは開始から36時間で400人を超えるサポーター、800万円を超える金額が集まっています。説明会で発表されたことや会場の様子をご紹介します。(取材日:2023年12月5日)

新しい映画館「ナゴヤキネマ・ノイ」名古屋シネマテーク跡地に2024年2月頃に開館

2023年7月28日に閉館したミニシアター、名古屋シネマテークの跡地で名古屋シネマテークの元スタッフの永吉直之さん、仁藤由美さん、また2019年に急逝した名古屋シネマテークの元支配人、平野勇治氏のパートナー安住恭子さんの3名が新しい映画館「ナゴヤキネマ・ノイ」設立の説明会を行いました。「ナゴヤキネマ・ノイ」は閉館から4か月が経った名古屋シネマテークの跡地を改装し、映写設備、座席のメンテナンスを行って再生させて、2024年2月頃に開館する予定です。永吉さん、仁藤さん、安住さんの3名が共同代表をつとめる合同会社ナゴヤキネマ・ノイが運営を行い、映画館業務は永吉さんと仁藤さんが担います。

シネマテークの閉館が決まった直後から、3人で何度も話し合い、永吉さんと仁藤さんが「ナゴヤキネマ・ノイ」設立を決心する後押しをしたという安住さんは「平野勇治が亡くなる前に『僕は映画をプレゼントしてきたんだ』と言っていて、私はそれがシネマテークの仕事をしていく基本精神だったんだろうと思います。永吉さんと仁藤さんは多分、同じ想いで運営してきたんだろうと思うんです」と話しました。

「ナゴヤキネマ・ノイ」の劇場支配人に着任する永吉さんは「多様な映画を観てもらえる場所は必要だと思ってます」と名古屋でミニシアターを設立する意義を伝え、名古屋シネマテークと同じ場所、同じ規模で開館することについて経営の厳しさがあるのではないかという質問に「客席数が一緒であれば、収益はそんなには変わらないので、支出を減らすことで何とかバランスを取る方法を探してみたいと思っています。建物の持ち主が映画に大変理解があるので、それも大きな後押しになっています」と答えました。また仁藤さんは「大きく後押しをしてもらったのは今池の街の皆さんです」と答え、街を歩くとたくさんの声をかけられ「映画館がないと寂しいという声もすごく多くいただいた」と話しました。

「ナゴヤキネマ・ノイ」の劇場名はジャン=リュック・ゴダールの『新ドイツ零年』から

「ナゴヤキネマ・ノイ」という劇場名の由来について質問があがると、仁藤さんは「ジャン=リュック・ゴダールの『新ドイツ零年』という映画があって、それが不意に浮かびました」と答えました。開館をしようと決心した11月から考え始めたそうで「新しいという意味合いと零年のゼロのどちらかを映画館の名前に入れたいと思ったのですが、ゼロは興行的に不吉な数になるので」と話し、「新しい」のドイツ語で「ノイ」を永吉さんと安住さんに提案したとこと「あっさり了解」となった経緯を明かしました。「(劇場名に)“名古屋”を付けるのか、“今池”を付けるのかは悩んで相談しました」と今池の街への強い気持ちがあったことも話し「少し大きく、“ナゴヤ”と名乗らせていただくことにしました」と伝えました。

「ナゴヤキネマ・ノイ」で上映される作品ラインナップについて永吉さんは「映画の内容は(シネマテークと)同じ人間が考えるので、同じような路線のものを中心に考えていけるといいなと思っています」と答え、様々な映画館があることの良さを語りながら「小さなサイズの劇場ではちょっとクセのある映画が好まれることはあります。アート系、芸術的な作品やドキュメンタリー、社会性の強い作品を届けられるといいと思います」と話し、多様な映画を上映していきたいと伝えました。さらに永吉さんは「映画は世界に無数にあってほとんどの映画を観たことがなく、30年程、映画館で仕事していても、ごく一部しか観られていないので、当然これからも観たい映画、上映したい映画は無数に出てくると思います」と語りました。

観客としてよくシネマテークで映画を観ていたという安住さんは「シネマテークで上映していた映画はどれも面白くて、裏切られることはなかったんです。そういう映画を選んできた2人がまだいるので、観に来て損はない映画館になっていきたいと思います」と自信をもって答えました。映画の上映ということについてはシネマテークの精神が継承されていくこと、平野さんから受け継いだ「映画のために」「映画の裏方として」という映画に対する愛情が伝わってくる説明会でした。

オープニング作品は名古屋披済会病院を取材したドキュメンタリー映画『その鼓動に耳をあてよ』

2月の開館にあたってのオープニング作品には名古屋の救急医療の最先端を担う名古屋披済会病院を取材したドキュメンタリー映画『その鼓動に耳をあてよ』(配給:東海テレビ放送、配給協力:東風)が決定していて、今後の予定作品は『〇月〇日、区長になる女。』(配給:『〇月〇日、区長になる女。』製作委員会)『フジ ヤマコットントン』(配給:ンデラィコ)ほか、カール・テオドア・ライヤー、ロベルト・ロッセリ ーニ、ジャック・ロジェ、ジャン・ユスターシュなどヨーロッパの映画監督作品の特集上映が予定されています。

「ナゴヤキネマ・ノイ」ではチケットの予約システムを考えているそうで、その理由について「遠方から来られるお客様が劇場まで来て、席があるかどうかわからないと(来館を)躊躇されるのは当然だと思うので、何らかの予約の仕組みを作ったほうが良いと思っています」と話し、これまでの先着・自由席というシステムについて「一番早く劇場に来た人から順番に入れて、好きなところに座れるのはいい仕組みだと思っています」とこれまでのお客様の気持ちを大切にしながら、公平さのある方法を考えていると伝えていました。

36時間で800万円を超える支援 クラウドファウンディング「上積みできればありがたい」

「ナゴヤキネマ・ノイ」のスタートにあたって改装工事や機材整備など充実した設備のために、1000万円を目標金額としたクラウドファンディングが始まっています。12月6日0時にキックオフすると多くのサポーターからの支援が集まり、開始から36時間で400人を超えるサポーター、800万円を超える金額が集まっています。説明会で永吉さんは「椅子も壁も床も、映写機材もそのままのものが残っています。全体的な劇場の構造は変えずに、使えるものは一般社団法人シネマテークから買い取って使って、直せるものは直して、新しくできるものは新しくしてと考えています」「全部を自己資金で賄うことが難しいので、クラウドファンディングを行うことにしました」と話しました。「初めてのことなので集まるかどうかわからない」と不安もにじませ、目標金額の設定には迷いもあったそうです。

目標金額を超える金額が集まったらどんなことに使いたいかという質問に「今、椅子は張り替える方向で考えているけれど、スプリングやクッションも弱っているので新調できたら」「音響もよいバランスだと思っていますが、経年劣化もあるので変えられたら」「スクリーンも今、使えるものですが、反射率の高いスクリーンに変えられたらいい」などと語り、オープンにあたって「使えるものは使っていくつもり」としながらも、より良い環境で映画を楽しんでもらえるように、まず最初の設備工事の充実につなげていきたいとし「できれば達成したいし、上積みできればありがたい」と答えました。

クラウドファウンディングのリターンとして映画館のロゴの入ったステッカー、バッジ、Tシャツ、トートバッグなどが予定されています。「ナゴヤキネマ・ノイ」のロゴやクラウドファンディングの告知フライヤーなどのデザインでは、名古屋芸術大学・芸術教養領域リベラルアーツコースの有志学生と教員からの協働支援を受けています。教員の方から「映画文化の継承と発展の場として」と声がかかり協働することになったそうですが、学生たちから刺激を受けることも多いようで、仁藤さんは「逆に継承されている気持ちになることが多くて、足りないことに手を差し伸べてくれる人がいる、とてもいいことが起きていると思います」と話しました。

クラウドファウンディングのリターンの中で早々にSOLD OUTとなったのは春~初夏にかけて、「ナゴヤキネマ・ノイ」で開催が予定されているイベント「トリオ・ザ・ピエタ トークと朗読と音楽と」への招待がセットになっているもの。大島真寿美さん、小泉今日子さん、向島ゆり子さんの出演が予定されているイベントです。大島さん、小泉さんはクラウドファウンディングへの応援コメントも寄せていて、多くの映画人、文化人が「ナゴヤキネマ・ノイ」の誕生を心待ちにしていることが伝わってきます。

Motion Galler:新しいミニシアター、「ナゴヤキネマ・ノイ」スタートに向けて!

施設概要

ナゴヤキネマ・ノイ

名古屋市千種区今池1-6-13 今池スタービル2F (場所:元・名古屋シネマテークの跡地)

電話:開通準備中

メールアドレス:nagoyakneu@gmail.com

公式サイト:https://nk-neu.com/

 


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