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2023-10-30

中部大学、イーアス春日井など愛知県春日井市がロケ地に!映画『フィリピンパブ嬢の社会学』白羽弥仁監督&主演・前田航基さん他に名古屋でインタビュー


 

11月10日(金)よりミッドランドスクエアシネマ(名古屋駅前)、ミッドランドシネマ名古屋空港(豊山町)、中川コロナシネマワールドで先行上映される映画『フィリピンパブ嬢の社会学』は、愛知県春日井市出身の中島弘象さんによる実体験を描いた新書「フィリピンパブ嬢の社会学(新潮新書刊)」を原作に映画化された作品で、春日井市制80周年記念事業のひとつに採択されていてます。フィリピンパブの裏側で未だに行われている偽装結婚を背景に多文化共生のあり方を描いた、大学院生の青年とフィリピンパブ嬢の異色のラブストーリーとなっています。

主人公の大学院生・中島翔太役を2011年公開の映画『奇跡(監督:是枝裕和)』で鮮烈なデビューを飾った前田航基さんが演じます。ヒロインとなるフィリピンパブ嬢・ミカ役は、東京・愛知で開催された全国オーディションで抜擢された一宮レイゼルさんが演じ映画初出演を果たしました。また、共演にはカンヌ国際映画祭で高く評価された映画『PLAN75』のステファニー・アリアンさんや、津田寛治さん、近藤芳正さん、勝野洋さん、田中美里さんなど、国内外で活躍する俳優陣が脇を固めています。監督は映画「能登の花ヨメ(2008)」「ママ、ごはんまだ?(2017)「あしやのきゅうしょく(2022)」を手掛けてきた白羽弥仁さんがつとめ、日本で働く外国人女性労働者の実態をリアルに描きながらも、タイトルからは想像がつかないほど純粋なラブストーリーを誕生させました。

映画『フィリピンパブ嬢の社会学』は昨年の夏に撮影され、そのほとんどが春日井市内で撮影されました。有名スポットだけでなく、白羽監督がリサーチとロケハンを重ねて見つけ出した春日井の珍スポットも登場する今作について、白羽監督と主演の前田さん、一宮レイゼルさん、ステファニー・アリアンさんが名古屋でインタビューに応じてくれました。ロケ地についてはもちろん、前田さんが俳優人生で「これまでになかった」と話すラブストーリを演じた感想を聞かせてくれました。作品のみどころと合わせて紹介します。(取材日:2023年9月14日)

大学院生の実体験に基づいた研究ルポを映画化 日本で働く外国人女性労働者の実態をリアルに描いた異色のラブストーリー

映画『フィリピンパブ嬢の社会学』は、春日井市出身で原作者の中島弘象さんによる実体験を描いた新書「フィリピンパブ嬢の社会学」を映画化した作品です。物語はフィリピンパブを大学の研究対象にしていた日本の大学院生・中島翔太が、パブで偶然出会ったフィリピン人女性のミカに強く押されて、お付き合いを始めることになりますが、ミカは偽装結婚をしていることが判明します。しかも、月給6万円、ゴキブリ部屋に監視付、休みは月に2回だけというミカの過酷な生活環境も目のあたりにした翔太は、強く逞しく現状にめげることなく働き続けるミカを次第に大切に思うようになります。ある時、ミカに懇願されてヤクザの元に乗り込むことになる翔太ですが、ふたりの恋の結末はどうなるのか?

日本で働く外国人女性労働者の実態をリアルに描きながらも、タイトルからは想像できないほど純粋なラブストーリーとなっています。白羽監督が原作本に出会ったのは本屋さんだったそうで、手にしたとき「これはおもしろい!日本とどっかよその国との人間模様、人間関係をやりたいとずっと思っていた。それにぴったりな内容だと思った」と映画化を決めた経緯を教えてくれました。

今作の主人公・翔太のモデルで原作者の中島さんは、1989 年に春日井市で生まれ、中部大学大学院国際人間学研究科国際関係学専攻博士前期課程を修了されました。会社員として勤務するかたわら、名古屋市のフィリピンパブを中心に、在日フィリピン人について取材。講演、執筆、テレビやラジオなどの取材協力も多数行っていらっしゃいます。監督は映画化について、中島さん自身も熱心に動いてくれたことを明かし「中島弘象という一青年が本を書いて、面白い人で、春日井の会社に勤めているのは割と周知の事実で、みなさん原作を読んでいた。そういう意味では映画化までの話は早かった」と話しました。

前田さん、初のラブストーリーに「僕がやると面白くなんねんなって(笑)」

翔太役を演じた前田さんは、映画「奇跡(監督:是枝裕和)」で弟の前田旺志郎さんとW主演つとめて以来11年ぶりの主演となりました。今作で演じた翔太の役作りについて質問すると「普通の大学院生が経験するには確かにハードだけど、根本的には好きな人と一緒になるためという“愛の力”なので、そこはあまり歪んだ見方をせずに、好きだから行くしかなかい!という気持ちで演じました」と話しました。ミカのためにヤクザのもとに乗り込む場面があることから「本人(原作者の中島さん)も怖かったと仰ってたから、そんなにデンとはしていなかったにしろ、もう行くしかないっていう、本当に背水の陣に近いようなところがあったんじゃないかな」と実話に基づく作品を演じるうえで感じたことを明かしました。さらに「翔太は頼りがいがある。なんでも“分かった”って言ってくれるところがあるから、かっこいい役だと思っていたんですけど、いざ試写で観たときに、僕がやるとやっぱちょっと面白くなんねんなって(笑)」と前田さんらしく関西弁で話し大きく笑う姿に、監督も笑顔で頷いていました。

前田さんはこれまで、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(17)、連続テレビ小説「おかえりモネ」(21)、映画『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(15)、『セーラー服と機関銃 -卒業-』(16)、『ハルチカ』(17)、『任侠学園』(19)、『キネマの神様』(21)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(22)など多くの話題作に出演されていますが、ラブストーリーの主人公を演じるのは初めてのことだそうで「ラブストーリーって全部ときめくようにできてると思ってたんですけど、(僕がやると)なるようになんねんなって思って(笑)。これまでにない、いい経験でした!きっとこれからもこんな物好きな監督ってなかなかいない!」と笑いながら話すと、すぐに監督から「こらっ(笑)」とツッコミが入ったものの、続けて「わざわざ僕にってなかなかないチャンスだと思うんですよ!もちろんリスペクトをこめて。ほんとに僕でやってくださるってよく決心してくださったなって。本当にありがたい。だから内容読む前に設定をきいて、“やってみたい!”って思ったんですよ」と白羽監督への感謝の気持ちを明かしました。すると監督は「津田寛治さんがびっくりしてたよ。“え?きみか?”って!」とミカのボス役を演じた津田さんの本音の一言を紹介。前田さんも「してましたしてました(笑)」と付け足していました。

日本で働く外国人労働者の実態がリアルに描かれ、これまで一般には知られていないような現実にも気付くことができる今作は、前田さんが翔太を演じることでシリアスな作品になりすぎないバランスのよさも今作の魅力のひとつ。このことについて監督は「それは最初から狙いですよね。これはキリっとした男前で成立する話じゃない」と話すと、今度は「本人の前で言わなくても(笑)」と前田さんからツッコミが入る場面も。続けて監督は「この映画は深刻な問題を抱えているからこそ、とにかく面白くしたかった。そこは(前田さんに)200%やってもらったと思っています。あなたでよかったですよ」と絶賛!それを聞き前田さんは「ありがとうございます」とホッとした表情で応えていました。

ヒロイン役・一宮レイゼルさん、愛知・東京で開催されたオーディションで大抜擢!

映画『フィリピンパブ嬢の社会学』でヒロイン・ミカ役を演じたレイゼルさんは、1997年4月23日にフィリピンで生まれ、12歳で来日し石川県加賀市で育ちました。母国語のタガログ語のほか、日本語、英語が流暢なトリリンガルタレント・女優として活動されています。映画のオーディションを受けたのは今作が初めてになるそうですが、見事、ヒロイン役を射止め、ミカ役で映画デビューとなりました。今まで演技経験がなかったというレイゼルさんですが、ミカ役が決まった時の気持ちを聞くと「(ミカ役決定の)連絡が届いたときは仕事をしていたんですが、結果を聞いて泣き出してしまって。トイレ行って、お母さんに連絡して、お母さんも泣いてくれて。嬉しさで泣き出してしまって。でも、その後、お芝居ぜんぜんできないのにどうしようっていう不安に変わって・・・」と葛藤があったことを教えてくれました。続けて「パブで働いたこともなかったし、お友達もそういう方がいなかったので、実体験は無かったけど母がタレントとして日本に来ていたので、母の姿を見たり話を聞いて共感しました」とお母様の存在に助けられたと話しました。

また、ミカと同じお店で働くパブ嬢を演じたステファニー・アリアンさんは撮影にあたり、実際にパブで働く方々に会いアドバイスをもらったそうです。その印象を「(パブで働く人)みんな優しい、心はめちゃいい。だからなんで悪口があるのか分からない」と偏見をもつ人がいることに驚いたことを教えてくれました。そして「(パブ嬢の)ライフスタイルは、みんなお姉さんみたいになるし、カラオケがあるから好き!」と笑顔で話し周りの笑いを誘っていました。

「なんじゃこの公園は!?」 春日井の珍スポット“鬼ヶ島公園”もロケ地に!

映画『フィリピンパブ嬢の社会学』は春日井市制80周年記念事業のひとつに採択されています。“made in 春日井”を合言葉に撮影のほとんどが春日井で敢行されました。原作者である中島さんの出身校・中部大学もロケ地のひとつとなり、昨年の夏にキャンパスで撮影が行われたそうです。前田さんは自分が通っている大学と比べて「ぜんぜん規模が違くて、敷地もでかい、持て余すくらいの緑があって羨ましいなぁと思いました」と中部大学の印象を聞かせてくれました。撮影は夏休み中に行われたそうですが、エキストラとして中部大学の学生さんが出演しているそうで、前田さんは撮影の合間に「(学生さんと)普通に喋ってましたね。“何の勉強してんの?”とか、“そろそろ就活や”とか、明後日が誕生日やって子もいました」と交流があったことを教えてくれました。

中部大学のほかにも、今作では勝川駅前通商店街、弘法大師像、落合公園など春日井を代表するスポットで撮影が行われていて、春日井市民の方や訪れたことがある方には、見慣れた場所が劇場のスクリーンに登場するという感動を味わってもらえる作品になっています。新旧、様々な春日井のスポットがロケ地となっている中で、翔太のアルバイト先や翔太とミカがデートする場面では“イーアス春日井”が登場。常に多くのお客様で溢れる人気スポットですが、なんと撮影はゲリラ的に敢行されたとのこと!監督は「映っている一部は本当のお客さんなんですよ」と撮影の裏側を教えてくれました。

イーアス春日井は2021年にオープンしたばかりの商業施設ですが、前にこの場所にあった「ザ・モール春日井」のシンボルだったステンドグラス“ラスティングメモリー”が店内のあちこちに再現されています。長年、地域に愛されてきた「ザ・モール」の記憶やそこで過ごした人々の思い出を継承してくれている、老若男女から愛される場所になっています。ゲリラ的に撮影が行われたということで、もしかしたら「たまたま居合わせた!」という方もいるかもしれませんね!ぜひスクリーンでチェックしてください。(イーアス春日井:愛知県春日井市六軒屋町字東丘22)

また、ロケ地には春日井の珍スポットも登場!翔太がミカに懇願されてボスの元に恐々乗り込む前、気合いを入れるシーンに奇妙な鬼のモニュメントが並ぶ“鬼ヶ島公園”が登場します。隠れた人気スポットとはいえ、市民でも知らない人が多いマニアックな場所“鬼ヶ島公園”を見つけ出した経緯を監督に尋ねると「実をいうと、あのシーンのためにロケハンを色々してたんですが見つからなくて。そしたら、ある本に“東海地方の変わった場所”っていう特集があって、そこに載ってたんですよ!」と珍スポット発見のきっかけを教えてくれました。案内してくれた春日井市役所の方にも「“よくそんなとこ見つけましたね”って言われて」と公園に行ったら「これは面白い!って、あそこにしたんです」と話しました。

鬼ヶ島公園は春日井市出川町にある普通の公園ですが、赤鬼と青鬼の大きなモニュメントがあることから珍スポットとして知られています。青鬼の背中は滑り台になっていて遊ぶこともできます。前田さんは公園について「最初、資料で写真だけ見たときは規模感も分からへんし、なんのためにあるのかもよく分からへんし、なんじゃこの公園は?と思って」と謎に感じたそう。続けて「(実物を見たら)まぁまぁな規模感であるじゃないですか!なんでや?って思って(笑)。滑り台にもなっているし(笑)」と撮影時を思い出しながら話しました。

監督も鬼の滑り台は印象的だったそうで「あの滑り台をロケハンで見たとき、ここに座らそうっと決めてました」と強調。前田さんは「(翔太が)心の準備をする場面があって、僕、鬼の周りを3分くらい周ってるカットがあったんですよ」と笑いながら付け足し。鬼(ボス)退治に向けて鬼ヶ島公園で気合いを入れた翔太がどんな結末を迎えるのかは、ぜひ映画館でお楽しみください。(鬼ヶ島公園:春日井市出川町3丁目5)

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ロケ弁は春日井グルメ! “made in 春日井”の映画『フィリピンパブ嬢の社会学』

映画『フィリピンパブ嬢の社会学』は、原作を読んだ白羽監督の「この素晴らしい多文化共生の実話をどうしても映画にしたい」という熱い想いに原作者の中島さんが勤める会社の社長が共感され製作に至った作品です。発足した映画製作実行委員会のみなさんは「地域活性化の願い」や「どうやったら春日井が元気になるか」という想いを大切に今作を「made in 春日井」という合言葉のもと“ロケ地、ロケ弁、宿泊施設、必要な備品やエキストラもできる限り春日井市内で調達しよう!”という考えで製作をサポートされたそうです。

ロケ弁の話題になると監督は「うなぎ屋さん。水徳(すいとく)さんのお弁当が美味しくてね。みんな楽しみに待ってましたね!」と話しました。前田さんとレイゼルさんも大きく頷き「ロケ弁は全部美味しかったけど、特にうなぎ、美味しかったです」と絶賛!撮影の合間に楽しんだ春日井グルメを教えてくれました。そんな春日井グルメは劇中にも登場します!前田さんやレイゼルさんが美味しそうに頬張る姿に、鑑賞後は春日井グルメが食べたくるかもしれません(笑)

インタビューの最後に前田さんは「タイトルがちょっと難しい雰囲気あるんですけど、まっすぐ純粋なラブストーリーです。春日井のことはもちろんですが、フィリピンの文化のことも、僕も恥ずかしながら知らないことがたくさんあったので、これを機会にフィリピンのイメージや春日井とフィリピンの交流が色んな人の目に触れる機会になれば意味のあることだと思います。春日井の方にたくさんご協力いただきました。ありがとうございました!」と公開を待ち望むファンと製作に携わった方へメッセージをおくりました。

作品概要

映画『フィリピンパブ嬢の社会学』

11月10日(金)よりミッドランドスクエアシネマ ・ミッドランドシネマ名古屋空港、中川コロナシネマワールドにて先行上映

原作:中島 弘象「フィリピンパブ嬢の社会学」(新潮新書)

監督:白羽 弥仁

出演:前田航基、一宮レイゼル、ステファニー・アリアン、津田寛治、近藤芳正、勝野洋、田中美里、宮本忠博

製作・配給:キョウタス

《ストーリー》
フィリピンパブを大学の研究対象にしていた日本の大学院生・中島翔太(前田航基)は、パブで偶然出会ったフィリピン人女性のミカ(一宮レイゼル)に強く押されて、お付き合いを始めることになります。しか、し、彼女は偽装結婚をしていることが後になって判明します。

月給6万円、ゴキブリ部屋に監視付、休みは月に 2 回だけといった彼女の過酷な生活環境を目のあたりにする翔太。一方、強く逞しいミカは現状にめげることなく働き続け、故郷・フィリピンの両親の元に翔太を連れていきます。彼女を大切に想う気持ちが次第に強まる翔太は、ミカに懇願されてヤクザの元に乗り込むことになりますが―

 

 


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