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2023-04-04

映画少年がパンクロッカー…時を経て映画監督に!パンクバンド亜無亜危異ギタリスト:藤沼伸一さん初監督映画『GOLDFISH』名古屋でインタビュー


 

3月31日(金)より公開中の映画『GOLDFISH』は、人気絶頂期に活動停止したパンクバンド「ガンズ(銃徒)」が30年ぶりに再結成に動き出す様子が描かれた作品です。バンドメンバーを永瀬正敏さん、北村有起哉さん、渋川清彦さん、増子直純さん(怒髪天)、松林慎司さんが演じ、町田康さん、有森也実さんなど魅力的なキャストが出演しています。

本作『GOLDFISH』で初メガホンをとった、パンクバンド亜無亜危異(アナーキー)のギタリスト:藤沼伸一監督が名古屋でインタビューに応えてくれました。映画少年だったこと、作品がうまれたきっかけ、脚本のこと、撮影中のエピソードなど話しました。(取材日2023年3月27日)

藤沼伸一監督の経験を盛り込んだ脚本「人間のドラマにしたいなと思った」主演・永瀬正敏さんの驚きの役作り

映画『GOLDFISH』は、10代でメジャーデビューし人気絶頂期に活動停止したバンドメンバーが50代に再結成に向けて動き出す物語で、ミュージシャンの苦悩・挫折、孤独感などの普遍的なテーマも織り込まれた人間ドラマです。また、パンクバンド亜無亜危異(アナーキー)のギタリストである藤沼伸一監督が長編映画に初挑戦した作品です。

製作のきっかけを藤沼監督は「6,7年前に亜無亜危異の1回限りの再結成っていうのがありました。俺が新曲を書いて”やるかっ”てなったときにその時メンバーは5人だったんですが、1人(逸見泰成さん:2017年没)が亡くなって…。でもライブは中止せず4人でやったんですよ。俺たちの中でグッと来るものがあって、4人でバンドをやり続けることになってアルバムを出した時に、デビュー当時にスタッフをしていて今は映画プロデューサーをしている方(小林千恵さん)から映画を撮らないかと言われたのが始まりです」と話しました。「ただ、ドキュメンタリーだけだったら嫌でした。やるんだったら自分の思いの丈や、今、言いたいことを入れたいからフィクションにしたいと話したらOKをもらえて、この形になりました」と教えてくれました。

脚本について藤沼監督は「ドラマ的に作ったらいいんじゃないかと、脚本家の港岳彦さんとお互いに時間が合うときに2年くらいディスカッションを重ねて作りました。ホワイトボードを書いて、あのキャラはこういうことがあったとか、俺もインタビューしたりして、それ全部を踏まえてディフォルメして、人間のドラマにしたいなと思ったので本当と違うことにしてみたり」と吟味して作り上げたことを明かしました。主人公のイチは藤沼監督をモチーフにした人物。自分を投影した役に永瀬さんをキャスティングしたことについて藤沼監督は「脚本を書いている時、どんな人がいいか色々考えました。俺役はトム・クルーズがいいと思って」と冗談を挟み、「映画を作ると決まってから、国内外問わずすごい量の映画を観ました。永瀬さんの作品も結構見てて、『濱マイク』はリアルタイムで観ていたしSIONとか友だちも出ていました。それで永瀬さんに脚本を送ったら、監督に会いたいと。そこでお話をして決まりました」と述べました。

また、「ギターのピックをあげたらそれを使ってるし、”監督、ギター弾いてっ”てギターを弾く俺を永瀬さんが撮って、その映像を多分家で見て練習して、手元だけの代役もいらないくらい!」と永瀬さんの仕上がりの高さに舌を巻く藤沼監督の表情が印象的で、演奏シーンに期待が高まります。

メガホンを執ることが決まって知り合いに心得を聞いたり、「絵コンテ講座」をオンラインで受講したりした藤沼監督。しかし「永瀬さんって、絵コンテでしばりつけずに自由に動いてもらったほうがいいんじゃないかということで、段取りで動いて貰ったところをこちらがチェックしてライブで撮っちゃおうと撮影しました。スマホでも撮ったり、ふつうは撮影部の人はやめてくれっていうことなんだけど、この映画は監督が好きにしたほうがいいんじゃないですかって」といたずらっぽく微笑みました。劇中のレコーディングスタジオのシーンなど、実際にミュージシャンとして活躍してきた藤沼監督ならではのカット、カメラワークにも注目です。

『GOLDFISH』と『バニシング・ポイント』が映画館で並んだ日「藤沼少年に教えてあげたい」

藤沼監督に映画との関わりについて伺うと「俺は、音楽より先に映画少年だったの。小学生の時とか絵描き志望で、映画館にも一人で行く、家で絵を描く、友だちはいらないみたいなタイプだったんですよ。外に出るようになってカツアゲに遭ったり殴られたりとかがあって、不良になるしかないと不良になって、映画は置いといて音楽に向かいました」と話しました。

少年時代にどんな映画をみていたのか聞くと「ちょうどアメリカニューシネマっていうのがあって、『イージー・ライダー』(1970年)とか『バニシング・ポイント』(1971年)とか、その時あったのを片端から観ていました」と答え、「この間、シネマート新宿で『バニシング・ポイント』と『GOLDFISH』のポスターが並んでて、もう感激しました、すげえって!そこで、写真を撮りました…藤沼少年に教えてあげて、お前長生きしろよと伝えたいですね」と天からのご褒美のようなエピソードを教えてくれました。そして『バニシング・ポイント』を号泣しながら鑑賞したことも明かしました。現在の映画の好みを尋ねると、「何でも観るけど、ブン投げるような説明がない映画が好きです。説明されすぎると観客の主観が一辺倒になるじゃないですか。”うわッすげえ引っかかったから今日、飯はいいやっ”てなるような映画が好きなんです」と藤沼監督の映画へのこだわりが見える答えが返ってきました。

タイトル『GOLDFISH』に込めた意味 死神役のキャスティングに自信

映画『GOLDFISH』のタイトルと、金魚にまつわる衝撃のシーンを最初に決めていたという藤沼監督。そのシーンについて「何てことするんだ…みたいな。脚本の港さんが、人が考えつかないことが面白いと受け取ってくれました」とそのアイデアが採用されたことを述べ、「タイトルを『GOLDFISH』にしたのは、金魚ですよね。金魚ってフナから品種改良されて鑑賞用に作られた魚です。綺麗に着飾って、いわゆる奇形で、人から見られるだけなんですよ。それで、エンターテイナーは、金魚鉢のように周りから見られるだけのために作られたものっていうのを根底に置きました」と語りました。

また、シド・ヴィシャスなど、ロッカーが夭折することに触れ「26になったら死にたいっていう美学とか、麻薬に溺れてとか、何か辛いことがあってとか自決したりする人とかを勝手に解釈するのは、俺、すごく失礼だと思っています。その人の心の中って分からないから、じゃあ死神だと。死神が釣り人みたいに糸を垂らして、食いついてきた人が(死に)行っちゃう。”死神にくっついて行ったのは誰?”という話にしたいと思いました」と述べ、「死神役は、絶対町田康にしたいと考えていました。町田町蔵のころから知り合いで、あの気持ち悪さを出してほしいと思って」と笑いました。「ホラーだよね、気持ち悪いよね」と町田康さんのキャスティングに自信をみせました。

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ベテランぞろいのキャスト陣 存在感を放つ成海花音さんにも注目

藤沼監督は「死神の存在を、論理的じゃなく見えちゃう子をひとり、劇中に置こうと考えました。シャーマン、巫女さん…ミコちゃんから最終的にニコという名前になったんです。若くてショートヘアでスポーツ系じゃない、絵を描いている子。永瀬さん演じる父親を見下すのでなく見下ろしている感じの雰囲気が出たら良いなと。俯瞰で全体を見られる女の子というイメージがあって、その俺の全体像を、脚本の港さんに預けました」とニコのキャラクターが出来上がるまでの経緯を話しました。そしてニコが絵を描くシーンの背景を語り、その文学的な構想に驚く記者に「俺が編みだしたキャラです。パンクスには見えないでしょ?」とニヤリとしました。

本作でニコを好演するのは成海花音さんです。映画『ブレイブー群青戦記―』でスクリーンデビューを果たし、最近はNetflixの『舞妓さんちのまかないさん』に出演する期待の女優さんです。ニコ役は沢山の応募があり、オーディションから選ばれたそうです。成海さんについて藤沼監督は「俺、芝居芝居している人はちょっと苦手なんですが、彼女は物怖じしない喋り方で、そこに惹かれました」と決め手を述べました。また、「オーディションの後で知ったんですが、佐伯日菜子さんの娘さんです。ニコの苗字が偶然”佐伯”で狙ったわけじゃありません」と笑い、撮影中に佐伯日菜子さんが見学に来たことも教えてくれました。

映画『GOLDFISH』は、主演の永瀬正敏さんはじめ、北村有起哉さん・渋川清彦さんなど芝居の上手い役者さんが揃い、物語に没入させ心を揺さぶります。藤沼監督は「凄いですよね。どんどんお話をその方向に持っていく。モニターを見ながら”もう、完成してるじゃん”って思いました」と感謝しました。
「撮影中は永瀬さんがいろんな人とおしゃべりをして、カメラをやられているのでいつも写真を撮っていましたね。休憩時間とか自分が空いている時はカメラを2つ3つぐらい持って、いつも人の隣にいました」と撮影裏の様子を教えてくれました。

コインランドリーで、洗濯物が螺旋周りするシーンについて「マリ(亜無亜危異のギタリスト:逸見さん)が使っていたギターの色の黄色や赤の服を入れて回しました」と、自身のメンバーへの思いを込めた演出について語りました。マリさんの死がこの作品と切り離せないものであると改めて感じる瞬間でした。

藤沼監督に生きることについて伺うと「うーん、俺はあまり意識していないかな。楽天的に生きています。死神の糸みたいなもの…そういうものを俺はあまり感じないけど、そういうのを感じる人が良いとか悪いとか考えていません。周波数っていうのもあると思うし。生きるのが面倒くさかったり大変だったりする人もいるけど、大変じゃない人もいるもんね。俺のおふくろなんか、死と生に対してもう何か違う次元にいて、人生後半だからもういいんじゃないみたいな、周りが亡くなっても笑っちゃってファンキーだよね。生きることに淡泊というのか、何だろう…あんな感じがちょっと好きですね」と笑いました。

藤沼監督初メガホンの映画『GOLDFISH』は、監督ご本人が「何回も見ると面白い」と言うように、見るたびに新たな発見がある作品です。ぜひ劇場にお越しください。

作品概要

映画『GOLDFISH』

3月31日(金) よりセンチュリーシネマほかにてロードショー

永瀬正敏  北村有起哉 渋川清彦 /町田康 /有森也実 増子直純(怒髪天) 松林慎司 篠田諒 山岸健太 長谷川ティティ 成海花音 Skye(WENDY)Johnny(WENDY) Sena(WENDY) Paul(WENDY) 山村美智 林家たこ蔵 うじきつよし Mioko RICO(REGINA) PANTA(頭脳警察) 稲田錠(G.D.FLICKERS) 豪起 まちゃまちゃ 井上あつし(ニューロティカ) 仲野茂(亜無亜危異) 藤沼伸一(亜無亜危異) 寺岡信芳(亜無亜危異) ユウミ

監督 藤沼伸一

企画・プロデュース 小林千恵

エグゼクティブプロデューサー 篠田学

プロデューサー 片嶋一貴

脚本 港岳彦 朝倉陽子

エンディングテーマ「心の銃」(作詞/作曲:アナーキー)

企画 パイプライン ミュージック・プランターズ

製作プロダクション ポップライン ドッグシュガー

協賛 ロック酒 都商会

特別協力 奈良美智

配給・宣伝 太秦 パイプライン

製作 GOLDFISH製作委員会

共同製作 沖潮開発

2023年/99分/カラー/シネマスコープ/DCP 5.1ch

公式サイトhttps://goldfish-movie.jp/

Twitter @GOLDFISH_2023

©2023 GOLDFISH製作委員会


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