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2021-04-15

早稲田大学在学中の是枝裕和さんの講義がきっかけ 福田麻由子さん主演映画『グッドバイ』宮崎彩監督にリモートインタビュー


 

4月17日から名古屋シネマテークで公開となる映画『グッドバイ』は、早稲田大学在学中に是枝裕和さんの講義を受け、映画製作の世界に足を踏み入れた宮崎彩監督の長編デビュー作品です。ある家族に訪れた「距離」の変化によって起こった、揺らぎと決別を繊細なタッチで描いた物語で、福田麻由子さんが主演しています。

名古屋での公開を前に、名古屋の映画情報サイトCine@nagoya(シネアナゴヤ)は宮崎監督に単独リモートインタビューを行いました。映画製作のいきさつや是枝さんとの出会い、自主映画でありながらたくさんの人を巻き込んで完成させた宮崎監督の熱量、主演した福田麻由子さんへの想いなどを聞きました。(取材日:2021年4月12日)

早稲田大学の講義で出会った是枝裕和さんからの指摘で生まれた映画

映画『グッドバイ』は福田麻由子さんが主演し、桜が咲いている短い期間に起こる、ある家族の変容と決別が描かれたヒューマンドラマです。今作が長編映画デビュー作となる宮崎彩監督は「18歳まで大分県で育って映画は年に1~2回観るくらいで、小説を読むことが好きなタイプでした」と話しました。宮崎監督が映画製作に興味を持ち始めたのは、早稲田大学に入学し学科の垣根を超えて受講することができた映画に関連する講義だったそうです。

宮崎監督の大学在学中と重なる2014年から是枝裕和さんは早稲田大学理工学術院教授に就任されていて、日本映画界を支える著名人をゲストに招き展開される「マスターズ・オブ・シネマ映画のすべて」など映画に関係する様々な講義を担当していました。宮崎監督はこのような講義を「東京っぽいなぁと軽い気持ちで」受講し「3年生で1年間かけて映画制作の実習をする授業が受けられることを知りました」と話しました。大学2年の時には外部のワークショップで映画制作を経験し、3年生で受講した映像制作実習では、30名~40名ほどの学生の中から宮崎監督の企画が選ばれ、25分の短編作品「よごと」を完成させました。

その後、宮崎監督は「大学にいるうちに企画だけは立てよう」と、新たな映画の企画を考えて、是枝さんに見せたそうです。“主体性のないオジサン”をめぐる女性たちのオムニバスのプロットを見た是枝さんから「“オジサン”と娘の関係の一編が宮崎さんの一番描きたいことではないのか?」と指摘されたことを参考にして、視点を“娘”に切り替えてプロットを改めたと話してくれました。この企画が本作『グッドバイ』に繋がりました。本作では主人公の父親と、主人公が働く保育園の園児の父親二人が“主体性のないオジサン”として登場します。なんとも言えない危うさを感じさせる存在感は「つかみどことがないから分からない。だからこそ知りたくなるし、求めたくなる」という宮崎監督の意図が反映されているのかも知れません。衝撃のラストシーンにもご期待ください。

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1人ではじめた映画の企画 主演の福田麻由子さんまで届いて感涙

映画『グッドバイ』で主役を務めるのは福田麻由子さんです。宮崎監督が初めて福田さんを認識したのは、テレビドラマ「女王の教室」だったとのこと。「ほぼ同じ年くらいの子が、テレビの裏側に存在し、“聡明で冷静で”という役を演じていて、その印象が強かった」という当時の思いと、「その後も、自分の中で、ずっと福田麻由子という女優が残り続けていたし、ドラマで活躍を続けていたので拝見していました」と大人になるまで福田さんに惹かれていたことをお話しされました。

映画『グッドバイ』の主人公・さくらのキャラクターについて宮崎監督は「器用だけれども、あまり何かに熱を持つことがなく、何となく冷めているところや、少女から女性へと向かう過渡期の年代をイメージしているときに、自分の中でずっと持ち続けていた福田麻由子さんの顔が浮かんだ」と話しました。また「少女から女性に代わって、冷静さから熱を帯びてくる感じの福田麻由子さんを見たいし、きっと繊細に演じてくれると想像して、福田さんをイメージして脚本を当て書きしました」と教えてくれました。

宮崎監督自身は福田さんの事務所に直接出演オファーをし、1度断られてしまったそうですが、あきらめきれずに再度申し入れて、マネージャーと福田さん本人と話したところ出演が決まったそうです。宮崎監督は「福田さんに脚本を読んでもらえて、話を聞いてもらえたことが嬉しくて、その帰り道に感極まって泣き出したことはよく覚えています」と幼い頃からあこがれていた人に自分の思いが届いた喜びを語りました。また撮影を進める中で、宮崎監督と福田さんの成育環境の共通点を見つけ、作品中の家族観のイメージの共有をしていったことをお話しました。

公開初日に名古屋シネマテークで舞台挨拶予定

映画『グッドバイ』は主人公・さくらと、桜の花の様子が重なり合って進む物語です。2018年の撮影時を振り返り宮崎監督は「東京の桜が思いのほか早くに散ってしまって撮りきれなかったので、2019年に1年越しの撮影をしました」と教えてくれました。その撮影延期のおかげで美しい映像が撮れて新たな演出プランも誕生したそうです。映画『グッドバイ』は親子の距離の変化と決別がテーマです。主人公と暮らす母親、そして離れて暮らす父親、共に「(母親・父親)らしくない」存在を意図したキャスティングが秀逸です。繊細なタッチで描かれた家族の綻びをスクリーンでご覧ください。

大学卒業後、仕事をしながら映画を完成させた宮崎監督。現在のお勤め先は、東映の制作部だと教えてくれました。「演出部ではないので、、」と自分で企画などはまだできていないそうですが、今後が楽しみな存在です。名古屋シネマテークでの公開初日には宮崎彩監督の舞台挨拶が行われます。名古屋の映画館に足を運ぶのは初めてで、名古屋の映画ファンの皆さんに会えることを楽しみにしている様子でした。

映画『グッドバイ』は4 月17日~23日、連日20:35~名古屋シネマテークで上映です。初日の4月17日には宮崎彩監督の舞台挨拶が予定されています。

名古屋シネマテーク 32日間の休館・営業再開後に支配人の永吉直之さんにインタビュー(2020年6月)

Address:名古屋市千種区今池1-6-13 今池スタービル2F

名古屋市千種区今池1-6-13

名古屋シネマテーク 営業再開後に支配人の永吉直之さんにインタビュー

【作品情報】

『グッドバイ』

4 月17日~23日 連日20:35~名古屋シネマテークで上映

共に暮らす母。離れて暮らす父。父を求める娘。
知らないほど、近くおもう。

ありふれた家族の姿を通して家族のゆらぎを切り取った本作は第15回大阪アジアン映画祭にて初上映され、注目を集めた。
主人公のさくらに「女王の教室」「白夜行」などで子役として非凡な才能を発揮し、近年ではNHK 連続テレビ小説「スカーレット」『蒲田前奏曲』などで深みを増した演技を見せる福田麻由子。娘から女性に変わりゆく役柄を繊細に演じ切った。さくらの母を小林麻子、園児の父親・新藤を池上幸平、保育園の同僚役に、『仮面ライダーゼロワン』に女性ライダー役で出演するほか、バラエティでも活躍中の井桁弘恵、離れて暮らす父を『シン・ゴジラ』などの吉家章人ら実力派キャストが演じ、それぞれの役柄に血を通わせた。
監督・脚本は是枝裕和監督の元で映像制作を学び、本作が初長編監督作となる新鋭・宮崎彩。日常の機微を積み重ねた丁寧な演出で、ゆっくりと、しかし確実に変わりゆく家族の姿を優しく、せつなさを込めて浮き彫りにした。娘から女性に変わりゆく主人公の視点から、家族の変容と決別をほろ苦く描く、鮮烈なデビュー作。

あらすじ・ストーリー

郊外の住宅地、その一角にある上埜家。さくらは母親と二人で暮らしている。仕事を辞めたさくらは、友人の頼みから保育園で一時的に働くことに。
そこで園児の保護者である、新藤と出会う。やがて彼に、幼い頃から離れて暮らす父の姿を重ねるようになるさくら。ある晩、新藤家で夕飯を作ることになった彼女は、かつての父親に関する“ある記憶”を思い出す。一方、古くなった家を手離すことに決めた母。
桜舞う春、久しぶりに父が帰ってくる──。

出演:福田麻由子 小林麻子 池上幸平 井桁弘恵 佐倉星 彩衣 吉家章人

監督・脚本・編集:宮崎彩

撮影:倉持治

照明:佐藤仁

録音:堀口悠、浅井隆

助監督:杉山千果、吉田大樹

制作:泉志乃、長井遥香

美術:田中麻子

ヘアメイク:ほんだなお

衣裳:橋本麻未

フードコーディネート:山田祥子

スチール:持田薫

整音効果:中島浩一

ダビングミキサー:高木創

音楽:杉本佳一

配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト

共同配給:ミカタ・エンタテインメント

2020年|66分|16:9|5.1ch

©️AyaMIYAZAKI


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