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2020-12-11

坂本龍一さん、松任谷由実さんなど日本を代表するアーティストの言葉で綴る映画『音響ハウス Melody-Go-Round』相原裕美監督に名古屋でインタビュー


 

12月18日から名古屋のセンチュリーシネマで公開となる映画『音響ハウスMelody-Go-Round』は東京・銀座にあるレコーディングスタジオ“音響ハウス”の45年の軌跡を描いたドキュメンタリー作品です。“音響ハウス”は1974年12月に設立され、1970年代から1980年代にかけて起こった音楽ジャンル「シティ・ポップ」の総本山として現在もなお注目を集めています。今作は「シティ・ポップ」がどのように形成されていったのかを、坂本龍一さんをはじめ多彩なアーティストや関係者へのインタビューで紐解くアーカイブとしての魅力があり、また、映画のために作られた楽曲「Melody-Go-Round」を作り上げていく模様から、人が音楽をみんなと作り上げる喜びを再確認できます。

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』の監督である相原裕美さんが名古屋でインタビューに答えてくれました。(取材日:2020年11 月24日)

記録用動画の企画から“音響ハウス”を愛する人々の熱量で映画化

この映画が企画された当初は“音響ハウス”設立45周年の20分程度の記録用動画を考えていたそうです。音響ハウスは貸しスタジオのため所属アーティストもいなく、写真すら撮っていなかったため困っていたところ「1975年の入社以来ずっと働いている方が居る。これだけ長く第一線でメンテナンスを担っている人はいません。」と遠藤さんの存在を“音響ハウス”の高根社長から知らされ、彼をメインにした映像を作る方向になったそうです。話し合う中で音響ハウスを愛する人にも取材しようと社長がレコーディングエンジニアの飯尾芳史さんとギタリストの佐橋佳幸さんを相原監督に引き合わせたことで「(高根社長・相原監督・飯尾さん・佐橋さんの)4人で打ち合わせする体制になりました」と語りました。

そこで「昔の人の証言や遠藤さんだけの内容では未来に繋がる感じにならない」と考え、新たに楽曲を作り、このレコーディングの模様も加えて入れていく方針が決定したと教えてくれました。4人の熱量が膨らみ「規模が大きくなってしまったので一般の方にもご覧いただける映画の形にしようと、著名な方にも証言をいただくなどの工夫をしました。」と思わぬ映画化となったいきさつを笑顔で述べました。「ミュージシャンに光が当たるのは当然ですが、その楽曲に携わる裏方に目を向ける形があっても良いのではないかと感じています。」とも話し、長年レコーディングエンジニアやミュージックビデオを手がけていた相原監督の音楽を作る人々への深い思いが垣間見えました。この映画から“音響ハウス”や音楽を愛する人々の熱量を改めて感じることでしょう。

“音響ハウス”は「実験場」みたいな場所 坂本龍一さん、佐野元春さん、葉加瀬太郎さん、矢野顕子さん、松任谷夫妻などの証言

“音響ハウス”との出会いや思い入れ、楽曲の誕生について語るのは坂本龍一さん、高橋幸宏さん、松任谷由実さん、松任谷正隆さん、矢野顕子さん、佐野元春さん、綾戸智恵さん、葉加瀬太郎さん、Divid Lee Roth(ヴァン・ヘイレン)さんなど錚々たるメンバーです。“音響ハウス”を愛する人々が「運命の出会い」「夢が広がる場所」「5つ星スタジオ」「オーラがある」という言葉で表現しています。

相原監督は「インタビューの素材は映画で使われた量の10倍ほどあります。」と打ち明け「編集は大変でした。」と語りました。編集時に気をつけたのは、「インタビューを文字に起こしてから並べ替えて、インタビューの話し手の最後の言葉やテーマが次の語り手に繋がるように工夫しました」と教えてくれました。また、劇中のインタビューで“音響ハウス”を「実験場」という印象的なワードで表す人が複数見られました。その意味についてはスクリーンにて自身でお確かめください。

相原監督は「70年代後半から80年代にレコーディングの世界が変わりアナログからデジタルへと変わる移行期でしたし試行錯誤しながらやる時代でした。音楽も新しいものが生まれました」と「シティ・ポップ」が誕生した当時の背景を話してくれました。現在、再注目される「シティ・ポップ」の代表的な楽曲を、当時を思い出しながら、または新鮮な音楽としても映画を通して世代を超えて楽しめます。

“音響ハウス“の新たなジェネレーションを繋ぐコラボレーション ボーカルHANAの伸びやかな声が響く楽曲

劇中で豪華なメンバーが顔をそろえるのはインタビューだけではありません。前出の飯尾氏、佐橋氏が発起人となった映画の主題歌作りには、作詞を担当した大貫妙子さん、葉加瀬太郎さん、高橋幸宏さんなど素晴らしいメンバーが集結しています。”音響ハウス“に関係が深いミュージシャンによるコラボ新曲「Melody-Go-Round」のレコーディング風景では、一流プレイヤーによる音の重なりを感じられ見ごたえ聴き応え充分です。

重鎮がそろった中で、14歳のHANAさんがボーカルを担うことに驚きを覚えるかたも多いでしょう。彼女が選ばれた理由を相原監督は「ボーカルをベテランにすると世代感的に上がってしまうし、現在も稼動しているスタジオだから成長がみえる新人のボーカルを入れたい」と考えて飯尾氏に相談したそうです。その際に「たまたまデモテープを録っていたHANAさんの声をみんなできいて“いいね”となりました」とボーカル決定秘話を教えてくれました。若干14歳の少女が重鎮に囲まれて歌うという緊張感をインタビュー中の表情からも伝えつつも、歌唱ではのびのびとした歌声を響かせています。「歌唱指導の大貫妙子さんがいい感じで教えていました。HANAさんにとって貴重な体験になったことでしょう。」とレコーディングの様子を教えてくれました。

この映画の主題歌「Melody-Go-Round」は映画だけでなく配信でも聞くことができ、劇場ではCDつきのパンフレットも購入できることを監督が教えてくれました。撮影時は昨年11月でコロナの影響はなかったそうですが、コロナ禍の今、「音が響く」ことと、人と人が響きあうみたいな、そういったものを映画『音響ハウスMelody-Go-Round』で再確認してくれたら嬉しいです」と最後に熱をこめて話しました。奇跡の音が降る場所“音響ハウス”の世界を覗いてみませんか。

作品概要

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』

12月18日(金)よりセンチュリーシネマにて公開

監督・脚本:相原 裕美

出演:佐橋佳幸、飯尾芳史、高橋幸宏、井上鑑、滝瀬茂、坂本龍一、関口直人、矢野顕子ほか

2019年 / 日本 / カラー / ビスタ / Digital / 5.1ch / 99分

配給:太秦

主題歌 Melody-Go-Round/HANA with銀音堂

公式サイト:onkiohaus-movie.jp

©2019 株式会社 音響ハウス


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