9/6より開幕の「あいち国際女性映画祭2017」監督合同記者会見レポート
今年で22回目を迎える「あいち国際女性映画祭2017」は2017年9月6日(水)~10日(日)まで、5日間の日程で開催されます。開幕前日となった9月5日に、名古屋市東区のウィルあいちで監督合同記者会見が行われました。期間中に作品の上映が行われるキーレン・パン監督、シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督、山上千恵子監督の3名、映画『用心棒』に出演された俳優の司葉子さんがゲストとして出席した監督合同記者会見をレポートします。(取材日:2017年9月5日)
女性監督や女性の活躍を描いた作品を集めた映画祭
「あいち国際女性映画祭」は1996年(平成8年)に名古屋市東区にある愛知県女性総合センター(ウィルあいち)のオープニングイベントとしてスタートしました。この映画祭がとても好評だったため、それ以降、毎年開催され、国内唯一の女性映画祭として今年で22回目となりました。女性監督の作品や女性の活躍をテーマにした作品の上映や国内外の女性監督によるフィルムコンペティションも行われるなど、充実した内容が魅力です。公益財団法人あいち男女共同参画財団理事長の説田一成さんから上映作品やトークイベント、フィルムコンペティションの紹介があり、また、今年初めての試みとなるサテライト会場のミッドランドスクエアシネマで上映を行うことについて、平日夜の仕事帰りにも映画祭ならではの作品を楽しんでほしいと話していました。
「あいち国際女性映画祭2017」今年の特徴は?
あいち国際女性映画祭2017運営委員会顧問の野上照代さんは、黒澤映画の制作助手として1951年公開の『生きる』以降全ての作品に記録・編集・制作として参加していて、2007年公開の山田洋次監督の『母べえ』は野上さん一家がモデルになっているそうです。野上さんはあいち国際女性映画祭に初回から参加していて、映画祭のシンボルのような存在のように感じました。野上さんは「今年はディレクターの陰謀?で、いつもとちょっと変えてくれたので、楽しみにしています」と話し、黒澤明監督の作品も2作品上映され、女性映画祭としては珍しい男性ゲストの仲代達也さんとのトークイベントも紹介されました。
ディレクターの木全純治さんは今年の傾向としてアジアの力が大きくなっていることを挙げ、フィリピン映画の躍動や香港の新しい監督、ロシアやイスラエルの作品にも注目してほしいと話していました。また日本の映画館はシネコンが増え、SFやアクション、戦争モノなどが多く上映され、女性監督が得意とする家庭問題や社会問題をテーマにした作品の上映の機会が減っていることに警鐘を鳴らし、女性監督を支援していく必要性を訴えていました。
スポンサーリンク3名の女性監督からの熱いメッセージ
『29+1』のキーレン・パン監督は香港で舞台俳優としてのキャリアがあり、自身が30歳の時に小劇場での一人芝居用に29歳から30歳になる女性を題材にした脚本を作りました。小規模でスタートした公演が好評で何度も再演され、この作品を元に映画化をすることになったそうです。『29+1』はキーレン・パン監督にとって初の長編作品であり、人生の変化に直面していくこと、自分の力ではコントロールできないことに向き合っていくことなど、女性だけではなく共感してもらえる内容だと思うと話していました。『29+1』を映画化したことで、様々な国で容易に観てもらうことができるようになり、映画のパワーを感じているそうで、働くことに一生懸命になりすぎて、自分にとって大切なものを見失ってしまうというテーマを世界中の人に共有できる良い機会をもらったと語ってくれました。
『キタキタ』のシーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督は昨年のあいち国際女性映画祭にも参加していて、2年連続での参加となりました。『キタキタ』は北海道・札幌で働くフィリピンの男女のラブストーリーで、盲目の人に対する恋も描かれています。フィリピンでは独立系の映画が興行的に成功できるのは非常に珍しいそうですが、『キタキタ』はフィリピンとアメリカで上映されており、かなりヒットしているそうです。フィリピンでは女性監督も増えてきているが、見出されていない才能も多くあるので、フィリピンでも女性監督のための映画祭ができればいいと思うと話していました。
ドキュメンタリー映画『たたかいつづける女たち~均等法前夜から明日へバトンをつなぐ~』の山上千恵子監督は、作品に込めた想いを語りました。30年前の均等法が作られる前日の夜に想いを伝えようと女性たちが労働省まで走ったことを撮影していて、数年前に労働省の中だけでなく外でも女性たちが運動をしていた歴史を残しておこうと考えたそうです。均等法から30年後の今、たくさんの女性に話を聞いたところ、性による差別だけでなく、いろいろな差別や格差が生まれていてることがわかったと話していました。過酷な仕事に就いている人がいて、若い人の中には働くのが怖いと考えている人もいて、女性たちは未だにしんどい思いをしているという提言をしたいと思われたそうです。
あいち国際女性映画祭に初参加の司葉子さん
舞台で毎年のように名古屋に来ているけれど、あいち国際女性映画祭を知らなかったと話した司さんは、日本だけでなく、世界を視野に入れた映画祭は素晴らしい企画だと思い、映画人としてとてもうれしい、もっと多くの人に参加してもらいたいと話していました。
3人の監督と司さんのフォトセッションではカメラマンからのリクエストにこたえ、様々なポーズで撮影を行う例年にない楽しいフォトセッションになりました。司さんが「イチニ」の二で笑顔になることを3人の監督に伝えたり、司さんがリードをして手でハートマークを作ったり、腕を組んだり、円陣を組むようなポーズも披露してくれました。
女性監督や女性の活躍がテーマの作品が上映されるあいち国際女性映画祭2017では、日本で初上映となる13作品を含む33作品が上映され、9作品でトークイベントが行われます。フィルムコンペティションは新人女性監督の登竜門として、多くのクリエイターの作品が集まっており、まだ見ぬ新しい才能に出会うことができます。世界の様々な作品から刺激を受け、監督やゲスト、観客との交流の機会もある楽しみどころ満載の映画祭にぜひ出掛けてみてはいかがでしょうか?
基本情報
Date:2017年9月6日(水)~10日(日)
Place:ウィルあいち (名古屋市東区上堅杉町1 )、ミッドランドスクエアシネマ
Map(ウィルあいち):
Tel:052-962-2520(あいち国際女性映画祭事務局)
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