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2019-06-05

シルクロードの美しい風景の中で描かれる心の冒険 映画『旅のおわり世界のはじまり』 黒沢清監督に名古屋でインタビュー


 

6月14日から公開となる映画『旅のおわり世界のはじまり』は、第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞するなど、国内外で圧倒的評価と人気を誇る黒沢清監督が自ら脚本を書き下ろした作品です。1か月に及ぶウズベキスタンロケに挑み、シルクロードの美しさを背景に心の冒険を描いた今作で、主人公・葉子を演じるのは「フレームに写っただけで独特の強さと孤独感が漂う」と監督が絶賛する前田敦子さんです。また、葉子と行動を共にする番組クルーに加瀬亮さん、染谷将太さん、柄本時生さんなど、それぞれ黒沢監督が信頼を寄せる実力派俳優がキャスティングされています。黒沢監督に名古屋でインタビューし映画の見どころを教えてもらいました。(取材日:4月26日)

映画『旅のおわり世界のはじまり』の公開を記念して、名古屋市内で「Nagoya meets Tashkent」と銘打ったコラボイベントが開催されます。文化講演会やグルメイベントなどの予定もご紹介します。

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ウズベキスタン観光大使・前田敦子さん主演「強さと弱さを同時に表現できる本当にすごい女優」

映画『旅のおわり世界のはじまり』は、ウズベキスタンと日本の国交樹立25周年と、日本人が建設に関わった同国のナボイ劇場の完成70周年を記念して製作された両国にとって初となる合作映画です。「見知らぬ国に行くと慎重ながら大胆な行動をとってしまう」という監督は、映画祭などで海外に行くことが多く「(現地で)時間が空くと危険を推測しつつも、よせばいいのにバスに乗ってしまうんです。危険な目や不安になることもあるけど、それを繰り返すうちに、その国のことが分かってくるんです」と自身の海外での過ごし方を話し、それが今作の物語や主人公の行動のベースになっていることを教えてくれました。

監督が話すように、観ている側に「よせばいいのに・・・」と思わせる行動を怯えつつも大胆にとっていく主人公・葉子を演じるのは「Seventh Code」「散歩する侵略者」に続いて三度目の黒沢作品出演となり、先日ウズベキスタン観光大使に就任した前田敦子さんです。“舞台で歌う”という夢への情熱を胸に秘めたテレビ番組のリポーター役で、未知の環境に一人で投げ込まれた不安や緊張、閉塞感を繊細な表情で伝えています。

前田さんについて監督は「AKB(48)の時の印象があるのかな。孤立している時ほど前田敦子はいちばん輝くんです。でも、普段の前田さんはもっと愛想がいいですからね(笑)」と笑顔で話し、「はっきりした強い意志と、その意志が挫けるんじゃないかという脆さも同時に表現できるすごい女優です。一言では言えない矛盾した感情の揺れ動きを一瞬にして表現できてしまうんです」と更に前田さんの魅力を教えてくれました。

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前田さん体当たりの演技に挑戦!「相当きつかったようです」

劇中には脚本通りの演技とは別に、前田さんが自然に表現したことをそのままドキュメンタリーのように撮っている部分もあるそうです。「観ていて区別がつかないくらい本人はそれが自然にできてしまう。アドリブかと思ったら台本通りだったり、葉子のセリフだと思ったらアドリブだったり。本当にすごい才能です」と監督が認める前田さんは、(劇中で)撮影のため、ほとんど火が通っていない名物料理のプロフを美味しそうに食べるレポートや、街角にある小さな絶叫マシーンのような遊具に連続で乗り笑顔でレポートしたりと苛酷な撮影を懸命にこなしていくレポーターの役を体当たりで演じています。監督は「本当にある遊具なんです。演技でやってくれればいいなぁと思っていたんですが、演技どころではなく相当きつかったようです(笑)」と振り返り、「映画に写っている若い係員は実際の係員なんですが、映画の狙いを話したら瞬時に理解して操作してくれました。あっというまに(スピード)を最高マックスにして・・・。彼がすごかったです(笑)」と前田さんの体当たりの演技を労いつつ、意外な協力者がいたことも明かしてくれました。

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標高2,443mの山頂で名曲「愛の賛歌」を熱唱

慣れない異国の地で全編出ずっぱりのハードな撮影が続く中、前田さんがどんな苛酷な場面も気にならなかったほどプレッシャーを感じていたというシーンが、標高2,443mの山頂で歌うクライマックスシーンです。試行錯誤したという曲については監督が昔から好きだった“愛の賛歌”を選曲。しかもエディット・ピアフの原曲のままの歌詞を希望したのも監督だったそうです。「日本でよく知られている越路吹雪さんの“愛の賛歌”の歌詞はロマンチックな恋の歌に聞こえますが、原曲は狂気に近い激しい恋の歌です。前田さんだったら軽々歌えるだろうと思いお願いしました」と話しつつも、実際の前田さんについて「ものすごいプレッシャーだったようです。半端な気持ちでは歌えない曲ですよね。歌手としてのプライドもあるでしょうし、完璧に歌い切りたいということで相当練習していたようです」とクライマックスシーンに至るまでの前田さんの様子も教えてくれました。


“愛の賛歌”の歌の壮大さに向き合いながら歌い上げる葉子の姿はまさに世界のはじまりを感じさせてくれます。ぜひ映画館でお楽しみください。

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絶妙な存在感のバランスで主演を支える実力派俳優 加瀬亮さん、染谷将太さん、柄本時生さん

葉子と行動を共にする撮影クルーのメンバーとして3人の実力派俳優が揃い物語に深みを与えています。優秀だけどどこか仕事に倦んだカメラマン・岩尾役に加瀬亮さん。テレビ映えする映像ばかり気にして現地の人と触れ合えないディレクター・吉岡役を染谷将太さん。天真爛漫なADの佐々木約役を柄本時生さんが演じ、それぞれが絶妙な存在感で前田さんを支えているところも今作の見どころのひとつです。


監督は3人の俳優について「一度行ったら簡単に帰ってこられないウズベキスタンでの1か月の撮影で、出番が毎日あるわけでもない・・・それでも大丈夫ですか?」とオファーし、3人が快く出演を引き受けてくれたことを嬉しそうに話してくれました。ただ、異国の地での滞在で思いがけないアクシデントもあったそうで、「加瀬さんは携帯をタクシーに置き忘れて警察まで取りに行ったり。柄本さんはホテルのエレベーターに閉じこめられてしまったり・・・。オフの日に危機的状況に陥っていたようです」と異国の地ならではのエピソードも明かし、「そういうことを笑い話にできる人たちで良かったです」と実力、人柄ともに撮影に臨みやすい素晴らしいキャストに恵まれたことを改めて感じているようでした。

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日本×ウズベキスタン初の合作映画 「ウズベキスタンの大スターに感謝しかありません」

日本とウズベキスタンの合作映画となった今作で日本人クルーと現地ウズベキスタン人の橋渡し役として重要な存在である通訳兼コーディネーターのテムル役をウズベキスタンの人気俳優、アディズ・ラジャボフさんが演じています。誰よりセリフ量の多い難役を好演したアディズさんに監督は「ウズベキスタンでは知らない人間のいない大スターですが、本当にジェントルな方です。自分が表にいると見物人が集まってしまうからと、カメラが回っていない時間はあえて奥に控えていてくださった。本当に感謝しかありません」と話しました。
また、撮影は日本のペースで行われたものの、スタッフはほとんどがウズベキスタン人だったという撮影現場で特に活躍してくれたのは“現地の通訳の方たち”と監督は話します。「初めは2人だったのが撮影が始まると15人くらいほど、日本語が喋れる方が集まってくれました。撮影が進む中で通訳の仕事だけでなく雑用もこなしてくれました。その姿を見て他のウズベキスタン人スタッフも合わせて動いてくれました」と現地スタッフに助けられながら作り上げた映画であることを感慨深げに話しました。

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ウズベキスタン観光大使・前田敦子さん主演 映画『旅のおわり世界のはじまり』ムビチケを2名様にプレゼント!

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名古屋市内で開催されるコラボイベント「Nagoya meets Tashkent」& JICA中部パネル展

映画の公開を記念して、名古屋市観光文化交流局国際交流課、名古屋ウズベキスタン友好協会、東京テアトルの共同主催で、「Nagoya meets Tashkent」と銘打ったコラボイベントが開催されます。6月16日には名古屋市公会堂で文化講演会「シルクロード文化の魅力、ウズベキスタンの魅力」や観光トーク、中央アジアの味覚が楽しめるグルメイベントが、6月21日からはJICA中部・なごや地球広場でパネル展が行われ、カフェでウズベキスタンメニューが提供されrます。映画を観て、ぜひ参加してみてくださいね!!

名古屋市・タシケント市交流開始&映画公開記念
ウズベキスタンを知るイベントNagoya meets Tashkent(タシケント)

日時:6月16日(日) 12:00開場   参加無料/当日先着150名

場所:名古屋市公館 地下鉄市役所駅③出口徒歩3分

Part1 文化を知ろう!14:00-15:00
「シルクロード文化の魅力、ウズベキスタンの魅力」
講師:宮崎千穂(名古屋大学)
主催:名古屋市観光文化交流局国際交流課 後援:外務省

Part2 観光トーク!15:10-15:40
「シルクロード遺跡が集結!ウズベキスタン」
ラジオDJとしても活躍するMEGURUが、ウズベキスタン観光の魅力を「ウズベク通」とディスカッション。
主催:名古屋市観光文化交流局国際交流課 協力:ウズベキスタン共和国観光開発委員会

Part3 映画にも登場!
ウズベキスタン料理プロフを食べてみよう!15:50-16:20
中央アジアの味覚!絶品ドライフルーツ&国民食のプロフ試食
主催:名古屋ウズベキスタン友好協会 後援:ウズベキスタン大使館

映画『旅のおわり世界のはじまり』パネル展

期間:6/21(金)〜6/30(日)  <10:00〜18:00 月曜休館>
場所:JICA中部 なごや地球広場 (「名古屋駅」徒歩13分)

隣接する「カフェ クロスロード」に同期間中限定で「ウズベキスタンメニュー(ランチ) 」が仲間入り!



作品概要

映画『旅のおわり世界のはじまり』

6月14日(金) ミッドランドスクエアシネマほかで全国ロードショー

映画『旅のおわり世界のはじまり』は、“舞台で歌う”という夢への情熱を胸に秘めたテレビ番組リポーターを務める葉子が巨大な湖に棲む“幻の怪魚”を探すため、番組クルーと共に、かつてシルクロードの中心地として栄えたウズベキスタンを訪れます。収録を重ねますが約束どおりにはいかない異国でのロケで、いらだちを募らせるスタッフたちと、目の前の仕事を淡々とこなしていく葉子。ある日の撮影が終わり、ひとり街に出た葉子は、聞こえてきた微かな歌声に誘われ美しい装飾の施された劇場に迷い込みます。その扉の先で、夢と現実が交差する不思議な経験をする葉子。彼女が、旅の果てで出会ったものとは・・・?

監督・脚本:黒沢清

出演:前田敦子、加瀬 亮、染谷将太、柄本時生、アディズ・ラジャボフ

配給:東京テアトル

©2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

公式サイト:https://tabisekamovie.com/

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