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2019-02-19

戸田恵梨香さんと大原櫻子さんダブル主演映画『あの日のオルガン』平松恵美子監督に名古屋でインタビュー


 

2月22日に公開となる映画『あの日のオルガン』は太平洋戦争末期、日本で初めて保育園を疎開させることに挑んだ保母たちの実話をもとにした作品です。保母として53人の子供たちの命を守るために、疎開先で幾多の困難を乗り越えるヒロインたちの奮闘を描いた真実の物語。戸田恵梨香さんと大原櫻子さんがダブル主演をつとめ、映画『ひまわりと子犬の7日間』を手掛け、長年山田洋次監督との共同脚本、助監督を務めてきた平松恵美子さんが監督・脚本を担当しています。平松監督が名古屋でインタビューに応じてくれました。(取材日:2019年1月31日)

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原作のモデルに魅力を感じて生まれた「怒りの乙女」

映画『あの日のオルガン』の主人公は思っていることをはっきりと口にし、周囲にも厳しく指導をする女性です。平松監督は「(戸田さんが演じた)主人公のモデルになった先生がとても魅力的でした。今の世の中では職場や社会、学校で不条理な事があってもなかなか怒れないじゃないですか」と話し「いつも、自分が思い入れをしたい人物を見つけるようにしています」と映画作りにおける出発点について語りました。劇中で主人公に「怒りの乙女」というあだ名をつけたのは平松監督のアイディアで「その人が真ん中にいる疎開保育園を描きたいと思いました」と語りました。

大原さん演じる新米保母について「強い人が主人公で引っ張っていく映画ってあんまり面白くないんですよ。それより、引っ張り回される人視点から描いた方が面白い」と話し、「ユーモアがあり笑いも起きる構造にしていこうと思いました」と映画としての構成を作っていたと教えてくれました。

平松監督は「戸田さんの中には太い幹があるんです。ぶれないし、しっかりと陰影がある表現のできる女優さんです」と評し、「ぐらぐら怒っているけど、悲しみや絶望の表現は極力抑えてもらったので、ストレスフルだったと思います」と撮影時の様子を振り返り「この年齢でこういう表現ができるすごい人だなと思いました」と話しました。

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子どもたちの自然な様子を撮るための様々な工夫

戸田さんと大原さん以外の保母を演じた女優さんを選ぶオーディションでは「みんなにお芝居以外にアカペラで童謡を歌ってもらい、子どもに関するエピソードを話してもらいました」と話し「どんなふうに歌うのかどんな曲を選ぶのかを聞いてみたかったんです。保母さん顔負けの振り付きで歌ってくれる子もいました」とその意図や様子を明かしました。「7人が並んだときの様子や声のトーン、顔立ちなどがでこぼこした感じが欲しいなと思いました」とキャラクターの異なる女優さんを選んだと話しました。また平松監督は「子どもとのコミュニケーションを嫌がらず、子どもたちが自然にお芝居をできる関係性が築ける方を選びました」と保母役の選定理由を述べました。

撮影以外の時間も保母役の女優さんに子どもたちの対応を任せたことで「子どもたちの自然なやりとりや振る舞いや表情が出ると考えていました」と語りました。兄弟姉妹役には本当の兄弟や本当の姉妹を選ぶなどの工夫もしていたそうです。

疎開先が見つかったと田中直樹さん演じる所長が保育所に走り込んでくるシーンの撮影で平松監督は「田中さんになるべくたくさんの子を抱き上げながら台詞を喋ってくださいとお願いしたんです」と振り返り「数回のテストや本番でも、誰が抱き上げられるのか子どもたちがワクワクしているんですよ!そこまで子どもたちが喜ぶと思っていなかったので成功したなと思いました。田中さんは背が高いので余計に楽しかったみたいです」と語りました。田中さんの頑張りと子どもたちの笑顔はぜひスクリーンでご覧ください!

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自転車の二人乗りシーンと童謡「この道」への想い

平松監督は「1982年に原作の初版が出版された時に映画化の話が出たものの頓挫。それから何年も経った2014年に私の元に映画化の話が来てプロットを制作したのですが、再び予算面で頓挫してしまったんです」と話し「2016年の年末に、予算の目処がついたと再度連絡をもらって、過去に制作したプロットをもとに脚本を作りました」と長い年月がかかって、映画化が成立したことを明かしました。脚本と監督をつとめたことで平松監督は「(予算のことを考えると)東京大空襲の火の海を逃げ惑う何百人もの人たちと脚本には書けないじゃないですか」と笑いながら話し、「どうやってコンパクトに効果的に描くかを考えました」と監督として撮りたい画と予算とのバランスを考えながら脚本を書いていたと語りました。

映画で使われている様々な童謡の中で「この道」について「疎開先の駅からお寺まで行く道、その道を行きつ戻りつしたという事、道は人生そのものなのでとてもふさわしい曲だなと思ったんです」と大原さんと佐久間由衣さんが2人で自転車に乗るシーンで使用している理由を話しました。またこのシーンの撮影には困難があったそうで「大原さんと佐久間さんが自転車の2人乗りの練習をしたら見事にひっくり返ってしまったんです」と明かしました。一時は2人乗りの撮影を止めるべきではという声もあったのですが「『このシーンは必要だとわかるよね』と珍しくスタッフを怒ったんです!」と撮影できる方法を考えようとこだわったそうです。平松監督自身が男性スタッフを後ろにのせて2人乗りができるか実験をした上で、可能な方法を考え何とか撮影を成功させたことを教えてくれました。



作品詳細

映画『あの日のオルガン』

2019年2月22日(金)ミッドランドスクエアシネマほか全国公開

出演:戸田恵梨香、大原櫻子、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由、福地桃子、白石糸、奥村佳恵、林家正蔵、夏川結衣、田中直樹、橋爪功

監督・脚本:平松恵美子

原作:久保つぎこ『あの日のオルガン 疎開保育園物語』(朝日新聞出版)

音楽:村松崇継 

主題歌:アン・サリー「満月の夕(2018ver.)」(ソングエクス・ジャズ)

配給:マンシーズエンターテインメント 

文部科学省特別選定作品(一般劇映画)

©2018「あの日のオルガン」製作委員会

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