瀬戸内海・小豆島で撮影「青と黄色が際立つ仕上がり」の理由は?映画『海辺へ行く道』横浜聡子監督インタビュー
8月29日(金)より公開の映画『海辺へ行く道』は、『ジャーマン+雨』『ウルトラミラクルラブストーリー』などを手がけてきた横浜聡子監督による最新作です。本作は孤高の漫画家・三好銀さんの晩年の傑作「海辺へ行く道」シリーズを映画化し、約800人のオーディションを経て主演に抜擢された15歳の原田琥之佑が14歳の美術部員・奏介を演じます。

舞台はアーティスト移住支援を掲げる海辺の街。夏休みの奏介と仲間たちは、演劇部の絵や新聞部の取材を手伝うなど忙しく過ごす中、街に現れるあやしげな“アーティスト”たちに翻弄されます。自由奔放な子どもたちと秘密や嘘に満ちた大人たちが交錯するこの物語で、想像力が乱反射する海辺を舞台に愛おしさとユーモアあふれる様々な出来事を描き出しています。原作者である三好銀さんとの出会いや本作の監督をつとめることになった経緯、小豆島での撮影や俳優陣の現場での様子についてなどを横浜監督にオンラインでインタビューしました。(取材日:2025年8月5日)
9/7(日)【松岡ひとみのシネマコネクション VOL.88】『海辺へ行く道』トークイベント付き上映会
新着情報
Contents
「いち読者として連載を楽しみに」「三好さんのファンがいたことも嬉しかった」
映画『海辺へ行く道』は三好銀さんの同名漫画シリーズを原作とし、横浜聡子監督によって実写映画化された作品です。アーティスト移住支援を掲げる海辺の町を舞台に、14歳の美術部員・南奏介とその仲間たちが、夏休み中に不思議な依頼を次々と受ける姿を描いています。
横浜監督は三好銀さんとの出会いについて、2008〜2009年頃に三好銀さんの「いるのにいない日曜日」内の一遍をモチーフに自主映画を制作したこととあわせて「劇場公開時にお会いすることができ、そのご縁で帯の使命をいただきました」と話しました。

オンラインインタビューに応じる横浜聡子監督
本作のプロデューサーが原作である「海辺へ行く道」のコミックの帯に横浜監督がコメントをしているのを発見したことがきっかけで監督のオファーがあったそうで「毎月、いち読者として連載を楽しみにしていて、映像化したい気持ちはあったのですが、自分から動き出すのが苦手なタイプで」と話し「映画の仕事をしている人の中に、三好さんのファンがいたことも嬉しかったです」と当時の気持ちを振り返りました。
「瀬戸内海はとにかく太陽の光が強い。他の場所と違う明るさがありました」小豆島のフィルムコミッションの姿勢も決め手に
映画化に向けて最初に直面したのは「無機質で直線的な建物と曲線的な自然物の融合の中、人が座って海を見つめる」といった原作にある画を実写で撮影できる場所を探すことでした。スタジオを借りて海の背景を書き割りでという案も出たそうですが、資金面での目途が立った頃から「海のある土地にロケハンに行きました」と言い、当初から瀬戸内海でやりたい気持ちはあったものの東京からの日帰りが難しい距離の遠さが気がかりだったそうで、伊豆半島や能登の珠洲市も見に行ったことを教えてくれました。

ロケ地探しの中で瀬戸内海も一度、見に行ってみようという話になり、実際に見に行ってみたところ「瀬戸内海はとにかく太陽の光が強い。他の場所と違う明るさがありました」とイメージに合ったそうで、瀬戸内海の中でも最も大きな島である小豆島のフィルムコミッションの協力的な姿勢も決め手になったそうです。
〈関連記事〉
注目子役・新津ちせさんの成長物語 映画『駅までの道をおしえて』父親役の滝藤賢一さんと共に名古屋でインタビュー
ご近所トラブルが予想外の展開に!映画『ミセス・ノイズィ』篠原ゆき子さん、愛知県出身の天野千尋監督に名古屋でインタビュー
思春期の役者たちを輝かせるために キャスティングの決め手は「この人なら面白くしてくれるんじゃないか」
映画『海辺へ行く道』は主演をつとめるのは、約800人のオーディションを経て主演を射止めた15歳の俳優・原田琥之佑さんです。原田さんが演じる14歳の美術部員・奏介を中心に、先輩役の蒼井旬さん、後輩役の中須翔真さん、同級生役の山崎七海さん、新津ちせさんなど若い俳優たちが多く活躍しています。

横浜監督に撮影現場で意識したことを聞くと「子供を輝かせるために、大人が押し付ける“子供らしさ”ではなく、彼らがそのまま映画の中に居てもらうことを大事に考えていました」と答えました。しかし、そのために具体的に大人ができることはあまりなかったそうで「彼ら自身にお互いにコミュニケーションをとってもらって、対話してもらって、関係性を築いてもらってその雰囲気を撮りました」と話しました。「子供は大人の目があると見られていると意識してしまう」と言い、敢えて大人がその場からいなくなる環境を作り思春期の俳優たちだけで過ごす時間を作ってもらったことを明かしました。

また本作では子供たちを取り巻く大人の登場人物も魅力的です。麻生久美子さん、高良健吾さん、唐田えりかさん、剛力彩芽さん、菅原小春さん、村上淳さん、宮藤官九郎さん、坂井真紀さんなどが出演しているのですが、横浜監督は「原作でも色々な人が現れては消えていくんです」と様々なキャラクターが次々と登場する原作の面白さを紹介し「生活感を感じない、カメラが回っていないときに何をしているかイメージをしづらい人を選んだつもりです」とキャスティングについても教えてくれました。

さらに「この人なら面白くしてくれるんじゃないかなという可能性を感じる人を選びました」とも話し、妙な関西弁で実演販売をする高岡役の高良さんについて「高良さんを見ていると演出アイディアが色々とが浮かんできます」と楽しみながら演出プランを練ったことを振り返り「(高良さん自身も)シナリオには書いていない動きもしてくれました」と現場で生まれたシーンがあったと語ってくれました。主婦の心を手玉に取っていく高岡の言動に注目です。

映画監督である諏訪敦彦さんが奏介にある依頼をする美術商A氏役で出演していることについて「怪しさと軽やかさ、風通しのよさ、ご自分の言葉で芸術やアートを語れる人をと考えてお願いしました」と話しました。また諏訪さんは“こども映画教室”を開催したり、大学で教鞭をとるなどの経験もあり、子どもたちと積極的にコミュニケーションをとっていたそうで「いつもフラットにコミュニケーションを取られ、
〈関連記事〉
こども映画教室をきっかけに生まれた映画『ライオンは今夜死ぬ』諏訪敦彦監督に名古屋でインタビュー
あの大物俳優もモトーラ世理奈さんのお芝居に注目!映画『風の電話』諏訪敦彦監督と共に名古屋市内で舞台挨拶
「青と黄色が際立つ仕上がりになったと思います」色にこだわった理由を語る
瀬戸内海・小豆島で撮影した本作は、ポスタービジュアルにもあるように海や空の青色と黄色のコントラストが印象的な作品です。横浜監督に色へのこだわりについて聞くと「実際に目に見える海の色、土の色、砂の色とは全然違う色を映画の中では見せています」と答えました。「原作はノスタルジックな雰囲気があり、時間や場所が限定されておらず、実在する場所かどうかも怪しいのです」と話し「この世界にアクセントを加えられるようなパンチの効いた何かができると良いと思っていて、色で面白いことができないかと考えました」と映像の色調を調整する演出を取り入れたことを教えてくれました。

オンラインインタビューに応じる横浜聡子監督
今後の展望について横浜監督は「企画ありきではなく、自分が面白いと思う、気になっていることを積み重ねて今の自分にしか書けないオリジナルをやりたいというのが願望です」と話しました。企画から入るほうが動きやすい一方で、今の感覚や視点を反映できるオリジナル作品への思いが強くあることをうかがわせ、『海辺へ行く道』を経て、創作の幅がさらに広がっていくことが楽しみになりました。
作品概要
8月29日(金)より全国公開

原作:三好銀「海辺へ行く道」シリーズ(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督・脚本:横浜聡子
出演:原田琥之佑
麻生久美子 高良健吾 唐田えりか 剛力彩芽 菅原小春
蒼井旬 中須翔真 山﨑七海 新津ちせ
諏訪敦彦 村上淳 宮藤官九郎 坂井真紀
製作:映画「海辺へ行く道」製作委員会
配給:東京テアトル、ヨアケ
©2025映画「海辺へ行く道」製作委員会
公式サイトumibe-movie.jp





















