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2022-06-19

「“熱”が出る回路を見つけた」映画『逆光』名古屋公開で須藤蓮監督にインタビュー 舞台挨拶や書店イベントも


 

6月25日(土)より名古屋シネマテークで公開となる映画『逆光』は俳優の須藤蓮さんと脚本家の渡辺あやさんが企画し、渡辺さんが脚本、須藤さんが監督をつとめた作品です。1970年代の広島県尾道を舞台に、東京の大学に通う主人公が先輩を連れて帰郷し、幼馴染や女友達と過ごすひと夏の物語を描いています。三島由紀夫の作品世界に深く共鳴して作られ、文学の香りが漂ってくる本作の監督をつとめた須藤さんが名古屋でインタビューに答えてくれました。脚本家の渡辺さんとの出会いや関係性、本作の企画の成り立ちや全国各地を転々としながら配給や宣伝を自ら行う理由などを語ってもらいました。(取材日:2022年4月25日)

須藤蓮監督が心酔する脚本家・渡辺あやさんからの「失敗してもいいから、君が撮れば?」

映画『逆光』は1970年代の広島県尾道を舞台に、三島由紀夫に心酔する青年達の恋愛模様を描いたひと夏の物語。2021年7月に映画の舞台である尾道で先行公開され、その後、全国で順次公開されています。本作は須藤蓮監督自らが映画のプロモーションのために各地域を訪れ、それぞれの地域の人を巻き込んで宣伝、配給をしていることでも注目を集めています。現在25歳の須藤監督はNHK連続テレビ小説「なつぞら」や大河ドラマ「いだてん~東京オリンピック噺~」、深田晃司監督作『よこがお』などに出演している俳優で、須藤さんと共に本作の企画をし、脚本をつとめたのは、NHK連続テレビ小説「カーネーション」、令和3年度文化庁芸術祭 テレビ・ドラマ部門 大賞を受賞した「今ここにある危機とぼくの好感度について」などの脚本家である渡辺あやさんです。

須藤監督は「ワンダーウォール」への出演をきっかけに「(脚本家の)渡辺あやさんとまた一緒に仕事をしたいと思って、自分で書いた脚本や関わった自主映画を観てもらったりしました」と本作の始まりを教えてくれました。「ワンダーウォール」は京都の歴史ある学生寮「近衛寮」の建て替えを巡る、大学側と寮に住む学生たちとの対立が描かれたドラマで、京都発の地域ドラマとして2018年7月にNHK BSプレミアムで放送され、2020年4月には「ワンダーウォール 劇場版」が公開されました。

自身が出演する作品の脚本を渡辺さんに書いてもらいたい願望があったと話し、2人で様々な企画を考えているうちに「2020年4月頃に渡辺さんが『1970年代の尾道だったら、いいんじゃない?』って言ってくれて、(脚本を)書いてくるんじゃないかという感じで、渡辺さんの直観に乗りました」と須藤監督の念願か叶った瞬間を振り返りました。須藤監督は「でも、撮ってくれる人がいなくて、自分がやることになりました。『失敗してもいいから、君が撮れば?』って言ってもらえて」と渡辺さんに背中を押してもらったことも話しました。

須藤監督は渡辺さんの脚本について「人の想像力が最も働く形で脚本が書かれていて、ものすごく緻密で丁寧なんだけど、過保護じゃない。かっこよくもあって、脚本が持っているべき、あらゆる要素をはらんでいると思います」と心酔している様子で語ってくれました。

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「僕の中に起きた変化を広く共有できたら、すごく楽しいことだと思います」

須藤さんは「尾道映画祭で初めて尾道に行っていたので、まさかここで映画を撮ることになるとは思っていなくて、いざ映画を撮ることになって、自分の足ですべてを見て回ろうとカメラマンと2人で2週間、1日14時間くらい、毎日歩いていました」とロケハンの様子を教えてくれました。おのみち映画資料館で見た小津安二郎監督のインタビューに影響を受けたそうで「『小津はロケハンをひたすら歩いて行った、夜は地元で飲んだのだ』みたいなのを見て、車を使わずにひたすら歩いて、歩いたんです」と話しました。「僕が尾道を歩き回っていることが噂になって『手伝います』って言ってくれる人が出てきて」と次第に尾道の方々との絆が生まれ「『自分の人生で一番熱が高くて、世界で一番面白いことをやるので、手伝ったほうがいいし、手伝ってください!力を貸してください!!』って言って回りました」とたくさんの人を巻き込んでいったことを熱く語りました。

映画『逆光』について「最初は自分が出演したくて作ってたけど、そういうわけではなくなった」と気持ちの変化を話しながら「低予算で、俳優が1人増えるのも大変で」と最終的に主人公を演じながら監督をつとめたことを明かしました。須藤監督に主演と監督を兼任した感想を聞くと「自分の芝居にOKを出すのは楽だと思っていたけど、編集の時に自分の芝居をボロボロに言わなければいけなくて、ハードでした」と振り返りました。さらに、監督の大変さについて「いっぱいありますね。全部大変です。役者って撮影期間の数日間しか映画に関われないけど、監督は企画から宣伝の最後まですべての大変さを全部経験できました。それがやりたかったことだし、大変な目にあわないと成長できないタイプなので」と笑顔で答えました。

熱い気持ちで映画『逆光』を全国に届けようとしている須藤監督は「ワンダーウォール」に出合ったことがきっかけで「“熱”を出したい、行動にブレーキをかけない!と思いました。僕は“熱”が出る回路を見つけたんです!変化が起きていると“熱”が上がって、現状維持を目指すと“熱”が下がるんです」と語りました。さらに須藤監督は本作を撮る前と撮った後の大きな変化を口にし「『生きづらい、死んでもいい、死ぬ勇気もない、とにかく不安』というところから『とにかく面白い、生きていて楽しい、変えられるかもしれない』という僕の中の変化を人と共有したいと思いました」と話しました。そして須藤監督は「僕の映画を観て、動こうと決めてくれた人が何人もいて、人に変化が起きることがいいことだと自分の身をもって知っています。僕の中に起きた変化を広く共有できたら、すごく楽しいことだと思います」と明るい表情で映画を全国に広げていく目的を語りました。

映画『逆光』の名古屋シネマテークでの公開にあたり、須藤監督と渡辺さんは舞台挨拶や名古屋市内の書店でのイベントに登場する予定です。この機会に、須藤監督に会いに行き、須藤蓮さんが発する“熱”を直接感じてください!

6/25(土)名古屋シネマテーク公開初日に須藤蓮監督と渡辺あやさんの舞台挨拶

日時:6月25日(土) 20:10~

場所:名古屋シネマテーク(名古屋市千種区今池1-6-13 今池スタービル2F)

名古屋や近郊で様々なイベントも

6/23(木) マルゼミ(丸善ジュンク堂ゼミナール)で監督・主演の須藤錬さんが『逆光』の魅力を語る

日時:6月23日(木)18:30~

場所:ジュンク堂名古屋栄店B2ギャラリースペース

6/24(金) 映画「逆光」名古屋シネマテーク公開記念トークショー 須藤錬さん×渡辺あやさん

日時:6月24日(金)18:00~19:00

場所:TSUTAYA BOOKSTORE 則武新町(イオンモール Nagoya Noritake Garden内)

6/23(木)~7/3(日) 映画『逆光』パネル写真展

喫茶では逆光をイメージした、『サマージュース』と、逆光ブレンドを使用した『コーヒーフロート』も提供

場所:グランド喫茶 シヤチル SHACHILL(名古屋市千種区 今池 1-5-9 オフィスイリヤビル 1F)

時間:11時半OPEN- 21時CLOSE 土日モーニング9時より営業中 祝日関係なく月曜日は定休日

作品概要

映画『逆光』

6月25日(土)より名古屋シネマテークで公開(3週間)

上映時間

6月25日(土) 〜 7月1日(金) 20:10

7月2日(土) 〜 7月8日(金) 16:45

7月9日(土) 〜 7月15日(金) 12:10

名古屋シネマテーク(今池)

Address:名古屋市千種区今池1-6-13 今池スタービル2F

名古屋市千種区今池1-6-13

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真夏の尾道。東京の大学に通う22歳の晃(須藤蓮)は、退屈を持て余す先輩吉岡(中崎敏)を伴って帰郷する。晃は、自宅の一室を吉岡に提供し、何かと世話を焼く。幼馴染の文江(富山えり子)に頼んで同世代の女性みーこ(木越明)を紹介してもらい、4人で出かけたりもするようになるが……。吉岡に好意を持つ晃の心情が、眩い夏の太陽に乱反射する。

京都にある大学の自治寮建て替えをめぐる映画『ワンダーウォール』で出会った脚本家渡辺あやと俳優須藤蓮が、1970年代の尾道を舞台に静かで美しい物語を作り上げた。須藤蓮は監督にも初挑戦。上映地域に長期滞在する独自の宣伝スタイルも話題性十分だ。不器用に三島由紀夫を紐解く生硬な20代のドラマを、不器用さを恐れずに描く瑞々しさに、大友良英の音楽が静かに響く。

企画・監督 須藤蓮

企画・脚本 渡辺あや

音楽 大友良英

エグゼクティブプロデューサー 小川真司

出演  須藤蓮、 中崎敏、 富山えり子、 木越明、 SO-RI、 三村和敬、 河本清順、 松寺千恵美、 吉田寮有志  他

2021年 62分


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