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2022-05-26

まっすぐに夢を追う青年の生き様を描いた映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』主演の尚玄さんに名古屋でインタビュ―


 

6月10日に全国公開となる映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』は、義足のために日本でのプロボクシングライセンスが取得できず、フィリピンに渡ってプロボクサーを目指した土山直純さんの実話をもとに、まっすぐに夢を追う青年の生き様を描いた物語です。メガホンを執ったのは第62回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞したブリランテ・メンドーサ監督。主演は沖縄出身で国際的俳優として活躍している尚玄さんです。企画と主演をつとめた尚玄さんが名古屋でインタビューに応えてくれました。作品への思い、メンドーサ監督の演出メソッド、撮影秘話を話してくれました。(取材日:2022年5月13日)

「彼の物語が誰かの夢の後押しになる」 バックグラウンドの重なりから共鳴

映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』は実力がありながら義足であるため日本ではプロボクシングライセンスが取得できず、フィリピンに渡ってプロボクサーを目指す青年の果敢な挑戦を描く物語です。尚玄さんは「主人公のモデルになった土山直純さんとは10年来の友達です。彼の物語が、誰かの夢の後押しになるんじゃないかなと思いました」と企画のきっかけを述べました。「直純さんとはボクサーとして出会って、数回目まで義足とは気がつかなかったんです。彼のこれまでのプロセスや義足などの話を聞いていく中で映画にできると強く思うようになりました」と語り、土山さんの母親にも話を聞きに行きストーリーに反映したことも教えてくれました。

尚玄さんは「僕は日本人離れした外見で、芝居を始めた頃はキャスティングされても外国人役なんですね…。自分が日本に属していない感覚で、もどかしさがありました」と明かし、NYに演技の留学をしたことや「海外のオーディションを受けて役を勝ち取っていったという僕のバックグラウンドが彼と重なって共鳴したんです」と話しました。

あこがれだったボクサー役への挑戦 迫力の試合シーン

尚玄さんは「実は、ボクサーに憧れがあったんです。芝居で一度はボクサー役をやってみたかった」と想いを吐露し「年齢的にギリギリでした。演じられてよかった」と笑みを浮かべました。スクリーンに登場する尚玄さんの姿は、まさにボクサー。役の為に10キロの減量をして現地入りした際、メンドーサ監督に「体重を落としすぎ!」とまさかのダメ出しを受けたエピソードも教えてくれました。その鍛え上げられた肉体をスクリーンで確認してください。

ボクシングシーンではメンドーサ監督が「強すぎなくていいから当てて」とディレクションしたことを明かし「僕以外は、ファイターでした。撮影中は僕もアドレナリンが出ていますが、終わってみると青あざになっていました」と迫力のボクシングシーンの撮影の裏側を明かしました。試合のシーンについて「コロナ前に撮影できました。何百人もの観客に声援を送られ、名前を呼んでくれるのはハイになります。だからボクサーはリングに戻りたいのだろうなと体感できました」と語りました。

ドラマなのかドキュメンタリーなのか分からなくなるほどの試合シーンは大迫力です!尚玄さん自身「また、ボクサーを演じたいんですよね。今も練習を続けています」とボクシングの虜になった様子でした。

台本がない!?即興のような撮影はメンドーサ監督のメソッド

映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』のメガホンを撮ったのはフィリピンの巨匠ブリランテ・メンドーサ監督です。尚玄さんは「フィリピンが舞台になるから現地の監督が良いと考えました。親交のあるエリック・クー監督(2019年公開『家族のレシピ』)に相談したら、エリックがメンドーサ監督が良いのではないかと言いました。メンドーサ監督が釜山国際映画祭に来るから、君も来ないかと」とエリック監督がメンドーサ監督と引き合わせてくれたエピソードを教えてくれました。もともとメンドーサ監督のファンだった尚玄さん。釜山で監督と初めて対面し、東京国際映画祭で再会して具体的に話をしたそうです。

尚玄さんは映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』の撮影に入る前にメンドーサ監督から呼ばれフィリピンでのワークショップに参加したエピソードを明かし「当時、監督が撮っていた作品『復讐』の1シーンに出演することになりました」と、まさかの映画出演に驚いたと話し、実際の撮影に参加する中でメンドーサ監督独特の演出方法に初めて触れたことを振り返りました。また「監督は信頼を深めるため互いの人生を話す時間を持ってくれました。役の準備期間も話をたくさんしました」と撮影前のコミュニケーションを明かしました。尚玄さんは「撮影中は説明もあまりなく、そもそも台本が渡されないのでどんな作品になるのか分からないんです」と尚玄さんは二ヤッと笑いました。

俳優の新鮮なリアクションを撮影するメンドーサ監督のメソッドを説明し「役としてそこに居て、どう感じるのかという僕の表情を撮る…直前で台詞を渡されるという即興のような撮影現場でした」と振り返りました。完成した映画を観た尚玄さんは「メンドーサ監督はすごい人だなと思います」と称賛しました。

必要以上に義足を誇張しない「心の深い部分を描けるようにしたかった」

尚玄さんは「この映画の好きなところは、必要以上に義足を誇張していないところです。自分が一人の男として、拳が強いことを認めて欲しかっただけで特別視して欲しくない…という心の深い部分を描けるようにしたかったのです」とアピールしました。「日本ではマイノリティであることを誇張して描かれがちですが、フィリピンでは義足が普通に受け入れられているし、その空気を映し出すメンドーサ監督はさすがだと思いました」と日本との違いを口にしました。尚玄さんはクランクイン前からフィリピンのボクシングジムでボクサーたちと一緒に生活してリアルな空気を掴んでいったそうです。「劇中のあるシーンでは、日本とフィリピンの価値観の違いが描かれています。どちらが良いとか悪いとか一概には言えませんが、この場面はメンドーサ監督だから撮れたと思います」と手ごたえを見せました。

映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』は主人公や、彼に関わる人々の人間模様も魅力的な作品です。特に主人公とコーチの師弟関係については尚玄さんが「役の僕が証明したかった」と語るほど大きなウエートを占め、師匠役のフィリピンの名バイプレイヤーのロニー・ラザロさんの好演が光ります。主人公の生き様をぜひ、スクリーンでご覧ください。

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6/11(土) 『義足のボクサー GENSAN PUNCH』舞台挨拶付き上映

映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』名古屋での公開翌日となる6月11日(日)に舞台挨拶の開催が決定しました。名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマでの上映後に主演の尚玄さんが登壇する予定です。開催概要の詳細は以下の通りです。チケットは販売中、ミッドランドスクエアシネマでのホームページ、または窓口で購入可能です。※座席数に限りがありますので、お早目にチケットをゲットしてくださいね!

日時:6月11日(土)14:00の回(上映後 舞台挨拶) 

場所:ミッドランドスクエアシネマ2(名古屋駅前 シンフォニー豊田ビル2階)

登壇者(予定):尚玄さん

チケットはこちらより購入可能

※インターネットチケット購入ページより、6/11(日)を選択してください

作品概要

映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』

6月10日(金)ミッドランドスクエアシネマほか全国公開

5月27日(金)沖縄先行公開

6月3日(金)TOHOシネマズ日比谷にて先行公開

2021年東京国際映画祭ガラ・セレクション部門正式出品作品

2021年釜山国際映画祭アジア映画の窓部門キム・ジソク賞受賞

監督:ブリランテ・メンドーサ

出演:尚玄、ロニー・ラザロ、ビューティー・ゴンザレス、南果歩ほか

https://gisokuboxer.ayapro.ne.jp/

(c)2022「義足のボクサー GENSAN PUNCH」製作委員会

 


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