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2019-09-12

原作にはない「今」という視点にこだわった 映画『アイネクライネナハトムジーク』今泉力哉監督に名古屋でインタビュー


 

9月20日より全国で公開となる映画『アイネクライネナハトムジーク』は人気作家・伊坂幸太郎さんと斉藤和義さんとの交流から生まれた唯一の恋愛小説が原作で、三浦春馬さんと多部未華子さんがカップル役で3度目の共演をしていることでも話題の作品です。「出会い」をテーマにした連作短編集を長編映画として完成させた今泉力哉監督に名古屋でインタビューすることができました。

監督オファーを受けた際の気持ちやどうしても原作に追加したかったポイント、現場での役者さんとのやりとりについて語ってくれました。(取材日:2019年8月30日)

原作者・伊坂幸太郎さんからの推薦を受けた今泉力哉監督が長い時間をかけた珠玉の群像劇

映画『アイネクライネナハトムジーク 』は伊坂幸太郎さんの連作短編集が原作ですが、映画では三浦春馬さん演じる主人公「佐藤」の偶然の出会いから始まる10年越しのラブストーリーを中心とした「出会い」をテーマにした長編の群像劇になっています。監督をつとめた今泉力哉さんは『愛がなんだ』を大ヒットさせ、ダメ恋愛映画の旗手と呼ばれるなどし、細かな心理描写や観ている人の共感を誘う作品は多くの人の心を捉えています。

本作の監督オファーを受けたのは2013年頃だそうで、原作の伊坂さんからの推薦があったと聞いた時の気持ちを「嬉しいけど、怖いって思いました」と答えました。プロジェクトのスタートから完成まで時間がかかった要因として「俺の名前を誰も知らないので、知名度のある役者さんをキャスティングできなくて」と話し、「今泉の名前をあげようと、制作会社に育ててもらった(笑)」と2018年公開の『パンとバスと2度目のハツコイ』がその一環であったことも明かしました。「あまりに時間がかかると普通なら企画が流れてしまったりするんですけど、みんなが粘り強くやってくださって」と監督としてまだ名前の知られていなかった当時から映画の完成まで、伊坂さんに今泉監督を紹介した映画ライターで編集者の門間雄介さんを含めて、様々な人々のサポートがあったことに感謝の気持ちを述べていました。

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佐藤を理解し満開の笑顔をみせた主演の三浦春馬さん

三浦春馬さん演じる主人公の佐藤は“劇的な出会い”を待つごく普通のサラリーマンです。今泉監督は三浦さんについて「初めてお会いした時に、普通の人を演じるのが難しいということをわかっていてくれたことに安心しました」と話しました。今泉監督は三浦さんと事前に役について細かな設定を話し合うなどはせず、現場で佐藤のキャラクターを作っていったそうです。

しかし、一度だけ今泉監督と三浦さんとの間で意見がずれたことがあったと明かしました。バスに乗った多部未華子さん演じる紗季を佐藤が見送るシーンでみせた「満開の笑顔」について、今泉監督は「そこそんなに笑顔になれますか?と聞いたら、三浦さんが佐藤は笑顔じゃないですか?と言われ、編集で繋いでみたら、あ、間違いなく笑顔だなって思いました」と三浦さんの意見に納得できたことを教えてくれました。撮影現場での役者さんとの対話について「そういう話ができると映画は豊かになっていくので、全ての場面を一緒に考えられればと思っています」と今泉監督の考えを聞くことができました。

普通の男・佐藤を主人公にしていることについて今泉監督は「不器用で優しさがズレている人に惹かれるので、そういう人を真ん中におくと、それでもいいんだと思えたり、自分もダメなところがある人が認めてもらえたような気になったりすると思います」と話しました。映画『アイネクライネナハトムジーク』は佐藤の10年間にヤキモキする場面もありますが、かっこいいヒーローではなく、親近感や共感を感じられる愛おしい佐藤を始め、様々なキャラクターがみせる奇跡のような瞬間をスクリーンで味わい、自分自身のこれまでの「出会い」について想いを馳せてみるのも良いかもしれません。

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原作にはない「今」にこだわった

今作の脚本を担当したのは伊坂幸太郎さん原作映画の数々の脚本を手がけてきた鈴木謙一さんです。今作が初の原作小説のある映画だったという今泉監督ですが、当初は自身で脚本も書くつもりでいたそうです。「小説や漫画を脚本にするのは、基本的にエピソードを削ってまとめていく作業なんですよ。群像劇が好きなので、サブエピソードとかも面白くて、全然、削れなくて」と一人で書く時間をもらったものの、全く書けなかったらしく、「これはもう別の才能だなと思いました。いつか書けたらいいなと思います」とハニカミながら話していました。この経験があって、先に公開されていた『愛がなんだ』についても脚本家に参加してもらったそうです。伊坂さんからは「今泉さんの個性を活かしてほしいと言ってくださったり、脚本が完成した後にも、完成までにさらに今泉さんの色がプラスされるといいですねと気遣ってくださって」と心強い言葉をかけてもらったと振り返っていました。

今泉監督は短編連作集の1篇目「アイネクライネ」に物語の重要なテーマが描かれていると話し「劇的な出会いよりも後々になって出会った相手がその人で良かったかどうかが大事というのが原作の主題のひとつですが、映画を作っていくうちにそれは実は穴のある言葉だなと思いました」と語り、映画化にあたり「原作にはない、今という視点」にこだわったと明かしました。

今泉監督は「原作を否定することにならないかという意見も出ていて、撮影現場でも試行錯誤して、ギリギリまで迷いました。それでも、今という視点、を描いたことは正しかったと思っています」と強いこだわりがあったことを教えてくれました。原作もごく普通の人々の「出会い」をテーマに描かれていますが、映画『アイネクライネナハトムジーク』は「出会いがない」とか「まだ出会っていない」と感じている人にとっては「まず、今の生活や、今、まわりにいる人を大切にすることの大切さ」を感じさせてくれる作品にもなっています。

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映画『アイネクライネナハトムジーク』オリジナルブックカバーをプレゼント

映画の公開を記念して、映画『アイネクライネナハトムジーク』のオリジナルブックカバーをCine@nagoya(シネアナゴヤ)の公式Twitterをフォロー&リツイートされた方の中から抽選で1名様にプレゼントいたします。映画のロゴ

応募方法:Cine@nagoya(シネアナゴヤ)のTwitterアカウントをフォローし、以下の投稿をリツイートしてください。

プレゼント内容:映画『アイネクライネナハトムジーク』オリジナルブックカバー

応募期間:2019年9月27日(月)まで

当選数:1名様

※当選者へは後日DMにてご案内をいたします。

 



作品概要

映画『アイネクライネナハトムジーク』

2019年9月20日(金)全国ロードショー

原作:伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎文庫)

監督:今泉力哉

出演:三浦春馬、多部未華子、矢本悠馬、森絵梨佳、恒松祐里、萩原利久、成田瑛基、八木優希、こだまたいち、MEGUMI、柳憂怜、濱田マリ、藤原季節、中川翼、祷キララ、伊達みきお、 富澤たけし、貫地谷しほり、原田泰造
主題歌 斉藤和義「小さな夜」

©2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会


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